真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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苦戦必至!九鬼の三強

現れたのは九鬼家の主であり、武道四天王でもある九鬼揚羽だった。

 

 

「実際に会うのは初めてであるな、流川海斗。」

 

「とうとう主人が自ら登場か。」

 

「百代からも少々噂は聞いていたが、まさかヒュームとクラウディオの二人が

かりでまだ決着がついておらんとはな……。」

 

「すみません、予想以上に手強い相手でしたのでお気をつけを……」

 

「言われずとも分かっておるわ。こうして対峙していると刺すような闘気が伝

わってくるのが痛いほど感じられる。よくこれほどの力を今まで隠し通せてい

たものだ。」

 

 

何も隠し通せていたのは海斗の実力だけでなく、一子たちが他言しないでおい

てくれたおかげなのだが……。

とはいえ、海斗の特異体質がなければ確かに即ばれることだ。

 

 

「若獅子タッグマッチトーナメントでは見事な戦いぶりであったが、今回の件

については別である。罪は罪、しっかりと償ってもらうぞ。」

 

 

言葉も早々に終えると揚羽は突進してくる。

アイドリングとして様子見で入ることもなく、最初から全力中の全力で向かう

という勢いが見られる。

しかもそれをする相手が強者の中でもトップレベルの人間なのだ。

海斗も十分に警戒して身構える。

 

 

「九鬼家決戦奥義!古龍昇天破!!」

 

「っ!?」

 

 

揚羽の拳が海斗の上着をかすめる。

警戒をしてこれだ、油断が少しでもあったなら一撃で急所を打ち抜かれてそれ

でおしまいにされていただろう。

 

 

「……速いな。」

 

「フハハハ、鍛錬は欠かすことなく続けておるからな。まだまだ腕は訛ってお

らんわ。」

 

「流石、多くの部下を統べる大物となると違うな。慢心なんてこれっぽっちも

ないってか。」

 

 

ここまでの実力者ならその強さゆえの付け入る隙を狙っていくのが定石である

のだが、最初から本気で来られたのでは厄介なことこの上ない。

 

 

「大人しく粛清されてもらおう。」

 

「……そうもいかないんだけどなっ!」

 

「何!?」

 

 

海斗は揚羽の放った拳を今度はその手のひらでしっかりと受け止めていた。

威力を殺された拳はそこで止まってしまう。

 

 

(こいつ、さっきの一撃だけで我の攻撃を見切ったか……!)

 

 

驚く揚羽をよそに海斗は逃がさないようにその拳をしっかりと握りこむ。

一歩間違えばカウンターもくらう距離感だ。

 

 

「……川神流、炙り肉。」

 

「ぐっ……!貴様、百代の技まで……」

 

「このまま一気に終わらせる。」

 

「そうはさせませんよ。」

 

 

海斗の追撃を防ぐかのように糸が邪魔をしてくる。

 

 

「くそ、また糸か……」

 

「糸にばかり気をとられているなよ?」

 

「な……っ!」

 

 

ヒュームの鋭い蹴りが数センチ横の空気を薙ぐ。

執事たちの連続攻撃をかわすのになりふりはかまっていられない。

転がるようにして、なんとか大ダメージは防げたが、揚羽への反撃の機会など

完全に逃してしまった。

 

 

「はぁ、このレベルの相手と三対一は流石に厳しいか……。」

 

「そう思うなら早々に降参するのも手であるぞ、九鬼雷神金剛拳!」

 

「断る、無双正拳突き!」

 

 

拳同士がぶつかり合い、各々の威力が相殺される。

そのまま次の攻撃へ移ろうとしても、傍らのヒュームがそれを許さない。

一撃の蹴りが重く鋭い。

回避に集中すれば、連撃にはつなげられない。

 

 

「そちらに逃げるのは分かっておりました。」

 

「しまっ……!」

 

 

海斗の右足に絡まる糸。

執事の連携でここに誘い込まれたのだ。

3人を一挙に相手にする思考の隙間をつかれた。

 

 

「終わりだ!」

 

(まずい……!)

 

 

糸によって強制的に導かれる体。

その先に待ち構えるヒューム。

くらえば一撃で終わってしまう。

海斗は躊躇いながらも体に気を纏わせる。

 

 

「ふっ!」

 

「む……!」

 

 

だが、海斗の体にかかる力は突然なくなった。

見れば引きずっていた糸は断ち切られている。

 

 

「これは驚きましたね……クッキー。」

 

「クッキー、なんでここに……」

 

「ふっ、無論海斗の助太刀だ。私のビームサーベルを使った形跡があったから

な。」

 

「九鬼のロボが主に逆らうのですか?」

 

「悪いが友のピンチを助けないポンコツには作られていないからな。」

 

「なかなかにいい気概だ。」

 

「おいクッキー!気持ちはありがたいが、どう考えても相手が悪すぎる。お前

は大人しく帰れ。」

 

「海斗は同じことを言えば、私を見捨てて帰るのか?」

 

「それは……」

 

「私とて同じことだ。心配するな、何も最初からこの三人を倒そうなどとは考

えていない。」

 

 

クッキーはそう言うと、自らの剣を収める。

 

 

「おい、何を……」

 

「私は海斗の力を信じている。だから私が作るのは一瞬の隙だけだ。」

 

 

クッキーは丸腰で三人に向かって一気に突っ込んでいく。

制止する海斗の声は届かなかった。

 

 

「ともに散れ!!」

 

 

次の瞬間、クッキーは体内の電気を全て放出した。

一瞬であれだけの量、回路が焼ききれてしまってもおかしくない。

 

 

「くっ……!」

 

 

クッキーの作ってくれたチャンス、無駄にするわけにはいかない。

次で確実に仕留めるべく、必殺の一撃を用意するが……

 

 

「海斗っ!」

 

「っ……!」

 

 

つい動きが止まってしまった。

戦闘中には考えられない行為だが、確固たる理由があった。

 

 

「紋白……」

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