ここ川神院は多くの武道家を輩出することで有名だ。
これから将来を担っていくことになる沢山の人材を育てている。
武神・川神百代もまた日々修行を積む一人である。
そんな武道の最高峰である川神院。
今日も修行僧たちがせっせと鍛錬に励んでいた。
「あー、義経とカルガモの話して終わってしまった。」
「夢中になりすぎよ……。」
そんなところに海斗はやってきていた。
一子のほうは帰宅しているだけなのだが。
「あ、お帰りなさい。一子殿、海斗殿。」
修行僧の一人が手を休めて、挨拶をする。
「俺にお帰りなさいはおかしいだろ。」
「いえ、でも最近は頻繁に来てくださるようになりましたし。なにより一子殿
がそれはもう……」
「ちょっとストォーーップ!早く行きましょ、海斗!」
「おい、別にそんな押さなくても……。」
「いいから、早く!」
物凄い勢いの一子に流されて、その場を通り過ぎた。
そして奥には目的とも言うべきか……
「お、海斗!待ってたぜ!」
「あぁ~海斗くんだぁー。今日も会えるなんて嬉しいなぁー。」
「ほんとこの妹たちは調教されてるねぇ。」
そこには板垣三姉妹がいた。
3人はあのカーニバルのあと、ここ川神院で心の鍛錬みたいなものを受けてい
るのだが、要するに修行と雑用である。
戦いのあと行き場をなくした三人を川神院で見てくれるように頼んだのは海斗
だった。
鉄心もわざわざ自業自得で路頭に迷う者を全て引き取るわけではないが、未来
ある若者に手を差し伸べるくらいは普通のことだと考えている。
それも海斗が頼んできたのなら尚更だ。
川神院は武道に関しては気合の入れようもかなりのもの、それこそ世間的に見
れば厳しすぎる修練も平生のこと。
ただ力を間違った方向に伸ばさないようにするにはある意味うってつけの場所
でもあるのだ。
それぞれ実力はあるため、正しいやり方を学べばさらに伸びる可能性は十二分
に備えている。
「上手くやってるか、天使?」
「オウ、ばっちりだぜ!正直掃除とかメンドイけど、海斗がウチらのために用
意してくれた環境だしな。ちっとは頑張る気にもなるってもんだぜ。」
「確かにネ。海斗が来ると言ったら、みるみるやる気を出していたヨ。」
「そりゃあ海斗くんが来てるのに違うことなんてしてられないからねー。一緒
にいれるときはずぅーっといたいよー。」
「ははは、なんだか任せっぱなしで悪いネ。」
「いや頼んだのも俺だし、それに苦じゃないしな。」
海斗は3人の面倒を見る係になっていた。
というか、川神院との中継役と言ったほうがいいだろうか。
亜巳はともかくとして他二人は海斗の言うことなら大抵素直に聞くので、非常
に物事が進みやすい。
いや、今では亜巳も従順などでは決してないにしても、妹たちの“海斗の良い
ところ合戦”を聞かされ続け、またそれがぴったり本人に当てはまってしまっ
ているのを確認させられ、少しは信頼している。
「これから鍛錬だから、海斗も一緒にやろうぜ!」
「いや俺はいいって。それより見てるから頑張れ。」
「海斗って全然試合とかしてくれないわよね。」
「流石に一子みたいに毎日やってたら疲れちまうからな。」
「またそうやってごまかす。」
一子に横でぐちぐち言われながらも目的地へと向かった。
「おーっと、来てたのか海斗。」
闘技場に行くと百代が既に胴着姿で鍛錬を始めていた。
こちらに気づいて走ってきた。
「なんだ遂に私と勝負する気になったか?」
「いや、今日もただの見学だから。」
「ちぇー、いいじゃんかよー。一回くらい戦ってくれたって。」
「命が危ないだろ。」
「お、お得意の“女の子なんだから”か?私なら大丈夫だぞ。」
「いや、俺の命。」
「なんでだよ!一応私もか弱い美少女だぞ。差別せずに言ーえーよー!」
「分かってるよ、百代だって女の子だから心配なんだよ。」
「ってことは私に傷をつけられるというんだな。面白い、ならその実力を戦い
で見せてもらおうじゃないか。」
「どうしろっつーんだ。」
毎度のことながら海斗は勝負の申し込みをひらりひらりとかわし続け、渋々な
がらも百代は練習に戻っていった。
天使や一子たちも始めて、海斗はそれを隅のほうで眺める。
皆それぞれ個性や動きの癖などがあって、それを観察しているだけでも海斗は
面白かった。
特に百代の技のバリエーションは豊富で自分の戦いに応用できる。
ただほとんどはドがつくほどの派手な技のオンパレードなのでそう使う場面は
ないだろうが……。
「おっと手が滑った。」
ぼーっと眺めていた海斗に百代のそんな声が聞こえたかと思うと、すぐさま気
弾がちょうど海斗のいるところにとんできた。
咄嗟に回避行動をとる。
「……あぶねーな。」
「ハンセイシテマス。」
「絶対わざとだよな……。」
「やっぱり今のをよけられるんだもんなー。あー、戦いたい。」
百代はそれだけ言うと、返事など期待していないとばかりにまた鍛錬に戻って
いった。
「海斗!」
「ん?」
後ろを振り向くと修行が一段落したのか一子がいた。
「お腹すいてない?」
「まぁ、すいたな。」
「これアタシがおにぎり作ったから……よかったら食べて。」
「ほんとか?ありがとな、一子。」
「えへへ……。」
「オイ!テメェ!」
「うわぁっ!」
一子に天使のゴルフクラブが振るわれる。
一子のほうもなんとか回避し、薙刀を手に取った。
「ウチの前で海斗といちゃつこうなんていい度胸じゃねーか!」
「そんなのアタシの勝手でしょ!」
「なら試合で蹴りつけようぜ!」
「望むところよ!」
二人はそのまま鍛錬の一環なのか、それともただの意地なのか、勝負を始めて
しまった。
しかし、こんな光景も今までは見られなかったもの。
カーニバルが終わって仲良くなった証拠。
「オラ、死ね!」
「やられてたまるもんですか!」
仲良くなった……はずである。
海斗はおにぎりを食べながら、苦笑いしつつも平和だと感じていた。
既存のキャラもSになり、気持ちを明かしたものが多いので
前作とはまた違った感じになっていますね。