「海斗、そろそろ風呂の準備をするのだ!今日こそは我と一緒にお風呂でじゃ
ぶじゃぶしよう!」
そういえば許可も下りてしまったんだった。
紋白から言い出したこととはいえ、色々とこちら側の配慮を忘れてはならない。
本来ならありえないことなのだから。
「早速向かうぞ、海斗しゃがむのだ。」
膝の上から飛び降りて、床を軽く叩いてみせる。
よく分からないが指示通りに紋白が示す場所に腰を落とす。
海斗がかがんだのを確認すると紋白は海斗の肩の上に乗った。
「おー、海斗の上はやはり高いな。」
「これがしたかったのか?」
「うむ、我は高いところからの景色が好きなのだ。海斗とも触れていられるし
一石二鳥である。」
ちょうど肩車の体勢、重さは例のごとくほとんど感じない。
紋白も並んで歩くより海斗に近づくことができて満足そうだ。
この状態で風呂まで向かうこととなった。
「…………にしてもすれ違う使用人の視線を集めてる気がするんだが。」
「これからのことは結構自慢して色々な者に話しておるからな。」
「おいおい、まじか……。」
海斗はそのせいで自分に突き刺さるような視線を送られていると考えていたの
だが、実際のところほとんどのメイドたちは紋白への羨望の眼差しというほう
が正しかった。
もっとも海斗が気づけるはずもないので責められているようにしか感じない。
「さぁ、一緒に入るぞ。」
「本当にいいのか……?」
「我が望んでることなのだ、海斗は気にするでない。」
紋白は言葉どおり本当に気にしていない様子で服を脱いでいく。
本人が許可しているのだから悪いことをしてるわけではないのだが……。
そうこうしている間にとうとう一糸纏わぬ姿になる紋白。
海斗も頭をかきつつその後を追った。
入ってみると流石の九鬼。
清潔感漂う風呂がそこには広がっていた。
海斗もタオル一枚しか身に付けておらず、紋白にいたっては何も持たずに隠す
こともなく堂々としている。
警戒心のかけらもない様子だ。
「海斗、早速背中を流してくれないか?」
「あー、一人じゃ届かないもんな。ほら、体洗うタオル貸してみ。」
「うむ、頼んでもよいか?」
「どうせなら髪から全部洗ってやるぞ。俺は今は紋白の執事なんだしな。」
「おおー、では我は大人しくしているぞ。」
確かに小さくまとまってじっとはしているものの背中からわくわくしている様
子が見て取れるようだった。
海斗はシャンプーを適量手にとって、紋白の頭をわしゃわしゃする。
「むぅ……、なかなかにくすぐったいものであるな。」
「自分でやるのとは勝手が違うからな。つっても、紋白なんて人からやっても
らうのは慣れてるもんじゃないのか?」
「メイドにやってもらったことはあるにはあるが、なんだか海斗の手つきは上
手いというか気持ちよいのだ。」
「別に俺も手慣れてる覚えはないけどな。」
海斗は動物たちの毛づくろいをしてやっていたりすることがあるので、髪を洗
う手使いにもそれが反映されているのだろう。
泡をお湯で流して長い髪も洗い終えたところで、次はいよいよ体の番だ。
「じゃあ、ちょっとくすぐったいかもしれないけど我慢してくれよ。」
「分かった……よし!きてよいぞ。」
「別に目をつぶる必要はないけどな。」
気合を入れすぎて目をぎゅっとつむっている紋白につっこみつつ、まずは紋白
の背中に手を伸ばしていく。
真っ白でやわらかく、穢れのない肌が広がっている。
それは美白というよりも幼さ残る体躯に見合った一転の曇りもない無垢という
表現のほうが適当だ。
「くぅ……」
脇の下まで手が回ると流石に我慢できなかったのか声を漏らす。
「前は自分で洗うか?」
「いや、海斗がやってくれると嬉しいぞ……。」
「……了解。」
海斗は紋白の口から我慢しきれずに時折漏れ出る嬌声を聞き流しながら、全身
を隈なく洗ってやったのだった。
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「ふ〜、やはり温まると体が安らぐな。」
なんとか体を洗い終え、湯船に入って二人で落ち着いていた。
「海斗の洗い方が上手すぎて少し声が抑えられなかったが。」
「本当にな、ヒュームとかが聞きつけて来たらマジで困るぞ。」
「だから、叫び声は我慢したぞ。」
「いや十分まずかったような……」
だが、そこは九鬼の設備。
プライベートな空間である風呂場に防音が施されてないなんてことはない。
そこは設備に助けられたところか。
「なんだかこうして海斗と一緒に湯船につかっているというのは不思議な感覚
であるな。」
「こんなに近いしな。」
「もっと近づいてもよいか?」
「ん?」
紋白はそう言うと部屋でやっていたように海斗の膝の上に座ってくる。
しかし、勿論その格好は裸である。
紋白のすべすべとしたお尻が直に当たっているのだ。
こんなところをもし過保護な老執事に見られたら……
(……殺されるな。)
鬼のような形相が脳裏に浮かんだ気がしたが、目の前の紋白の笑顔で中和する
ことにした。