真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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廊下でのエンカウント

「ふぅ……」

 

 

海斗は湯上りの体を涼ませるために廊下を歩いていた。

寝るとき以外は基本執事服というルールらしいので楽な格好というわけではな

いが、休息のひと時だ。

 

 

「おー、海斗」

 

 

そんな廊下で遭遇したのは弁慶だった。

クローン組はこの九鬼邸で生活をしている。

逆に今まで会わなかったのが不思議なくらいだ。

 

 

「よっ、弁慶」

 

「聞いてはいたけど本当に来てたんだね。う〜ん、執事服もきまってるし。髪

が濡れてるってことはお風呂上りってとこかな。」

 

「そういう弁慶は何してたんだ?」

 

「うーん、私は今から主の部屋に行こうと思ってたんだけど……そうだ、海斗

も一緒に来なよ。」

 

「そんな俺がいきなり行ったりして大丈夫なのか?」

 

「むしろそれで驚く義経の顔が見てみたいんじゃない。海斗が来ることなんて

全く考えもしてないだろうしさ。」

 

「お前本当に悪い臣下だな。」

 

「いいの、いいの。義経だって最終的には絶対喜ぶんだから。」

 

「本当に喜ぶのか?」

 

「……海斗ってそれだけ人のこと理解してあげられるのに、どうして自分のこ

ととなるとこうまでダメダメなんだろうねぇ。」

 

「なんだ、俺は今馬鹿にされているのか?」

 

「いやいや、私はそういう海斗が好きだよ。」

 

「はぁ……?」

 

 

弁慶は嬉しそうに海斗の腕を組み、しなだれかかってくる。

その顔はいつものように酔いで赤く染まっているのか、それとも……

 

 

「じゃ、行こうか。」

 

「分かったから、そんなに体重かけてくるなって。」

 

「んぅ〜……だめ〜?」

 

「駄目じゃない、駄目じゃないから。ぎゅうぎゅう押し付けてくるな。」

 

 

弁慶の場合、意図的に胸を中心に当ててきているのがまる分かりだ。

この二日でステイシーといい、弁慶といい、何かとやわらかい圧迫攻撃を受け

ている海斗であった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おーい、義経ー」

 

 

義経の部屋のドアの前まで来た二人。

呼びかけとともにコンコンとドアをノックして、義経の反応を待つ。

 

 

「あれ、弁慶か?何か用か?」

 

 

ドア越しに義経の返事が返ってくる。

弁慶だけが喋っているので当然こちらの様子は伝わっていない。

 

 

「うーん、暇だから遊びに来たんだよ。」

 

「分かった、今開けるから待っててくれ。」

 

 

何も疑わず普段どおりの気持ちでドアを開けた義経の前に立っていたのは、弁

慶ではなく海斗だった。

 

 

「うわぁ!」

 

「はははっ、本当に義経は期待通りのリアクションしてくれるよね。」

 

「よっ、驚かして悪かったな。お邪魔させてもらったぞ、義経。」

 

「かかか、海斗君!?」

 

 

義経が驚くのも無理はなかった。

声だけは弁慶が発しているのにドアの前にスタンバイしているのは海斗という

意地悪ないたずらをよく思いつくものだ。

当の仕掛け人は主の不甲斐ない姿に大笑いしている。

 

 

「急にごめんな。」

 

「いや、義経もいきなりのことでびっくりしただけだ。海斗君ならいつでも歓

迎だ。ほら、遠慮せずに入ってくれ。」

 

「義経ー、私は歓迎じゃないのか?」

 

「弁慶は騙して面白がってたじゃないか。ちょっとは外で反省したらどうなん

だ。」

 

「ひどいなー、私は義経のためにわざわざ海斗を連れてきてあげたのに。」

 

「う……分かった、弁慶も入ればいいだろう。」

 

「うんうん、分かってくれればいいんだよ。」

 

 

そういうわけで義経の部屋に入った三人。

とりあえず適当に腰を下ろす。

 

 

「海斗君、執事の格好なんだな……。」

 

「勤務中はこれを着てろっていう話らしいからな。」

 

「どう、義経としての感想は?」

 

「義経はとても似合ってると思うぞ!」

 

「ありがと。皆そう言ってくれるな。」

 

「これで分かったでしょ、共通の見解なんだって。海斗は元の素材が素材だか

らね。」

 

 

ぽんぽんと肩を叩く弁慶の言ってることは海斗にはよく分からなかったが、隣

の義経はしきりにうなずいていた。

 

 

「そうだ、海斗君ちょっと待っててくれ。今、お茶を淹れるからな。」

 

「別に気を遣わなくてもいいぞ。こっちが勝手に来ただけなんだからな。」

 

「まぁまぁ、義経が海斗に淹れてあげたいってことなんだから、大人しく座っ

てればいいんだよ。……ぐびぐび。」

 

「で、お前はお前で何を先に飲んでるんだ。」

 

「ぷはー!あー、海斗も飲む?」

 

「いや、俺は義経のお茶を待ってるから。」

 

「うーん、残念。でも海斗に川神水飲ませるとああなっちゃうし……、あれは

あれで私は嬉しいんだけど。」

 

「どういうことだ?」

 

「まー、あの海斗はまた別の機会に楽しませてもらうってことで。……義経も

さらにメロメロになっちゃいそうだし。」

 

 

海斗の理解が追いつく前にまた弁慶がすり寄ってくる。

 

 

「なんだ、今度はどうした?」

 

「すぐに三人になっちゃうからね。今は海斗を独占、ふふふ。」

 

「はぁ……」

 

 

弁慶の色気溢れる体を使ったアピールがこれ以上大胆になる前に早く義経の帰

還を望む海斗だった。




ほんと予約投稿を忘れてすみません
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