「ここが新たな技術開発とかを進めてる部屋だそうだ。」
「で、やっぱり付き合ってたりするの?」
「だからデートじゃなくて案内だし、たった一回でお姉ちゃんの知り合いとそ
んなに関係が深くなるわけないって。」
九鬼の施設の案内が始まってもまだ友達の追及は終わっていなかった。
「でもサーヤ、沙也佳って名前呼び捨てにされてるじゃん。」
「流川さんは基本女の子でも名前呼びなの。お姉ちゃんもそう言ってたし。」
「へ〜、ほんとかなぁ?」
疑ってかかる友達に沙也佳もたじたじという様子だった。
「その辺にしといてくれ。」
「流川さん……。」
「俺がたまたま暇だったから沙也佳に街を案内しただけだ。別に沙也佳と俺が
どうこうってことはないから、あんま勘ぐるなよ。」
「ん〜、そっかー残念ー。サーヤってすごいモテるのに男子からの告白はこと
ごとく断るし、面白いスクープだと思ったのになー。」
「サーヤは可愛い顔してしっかり者だからねー。」
「やっぱ沙也佳はモテるのか。」
「へっ!?ちょっと、変なこと言わないでよ。流川さんが真に受けて誤解しち
ゃうでしょ。」
「誤解も何も、つい先週クラスの男子に告白されたばっかじゃん。」
「その前なんて後輩の子からもアタックされちゃってたし、サーヤのモテモテ
伝説止まるところを知らずみたいな。」
「まあ、沙也佳は可愛いし気配りができるからな。」
「る、流川さん……!」
「すごーい、サーヤの良いところ分かってもらえてんじゃん。ここで可愛いだ
けじゃないていうのが流石いい男って感じだよね。」
「もう十分でしょ。私と流川さんが何もないって分かったんだから。」
沙也佳がこれ以上話を続けないようにと中断を謀る。
そこで沙也佳の友達はニヤリと笑うと……
「じゃあ、サーヤは流川さんのこと好きじゃないの?」
「……!」
「付き合ってないのは分かったけど、これだけかっこいい人に街を案内しても
らってるうちに普通の女子なら芽生えちゃったりしないわけー?」
「流川さんは見た目だけじゃなくて…………あ、」
そこで沙也佳ははっと気づく。
“確かに海斗さんは外見もとても凛々しくて見惚れてしまうこともありますが、
そうじゃなくて内面のほうがもっと素敵で……!!”
いつだったか自分の姉が言っていたことだ。
今思っていたことと全く同じ。
姉妹はこんなところでも似てしまうのか……なんだか恥ずかしくなって顔を伏
せてしまう沙也佳だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんとか問題なく一大仕事を終えた海斗。
そして現在は昨日に引き続き、紋白とお風呂タイムだ。
「むぅー、海斗のシャンプーは気持ちよすぎてあっという間に終わってしまう
な。海斗はプロになれるぞ。」
「なんのプロだ。」
湯船の中でたわいもない話をする。
こんなゆったりとした時間を過ごしているのはあの執事二人と戦っていたとき
には想像もついていなかった。
「紋白は家族と風呂に入ったりしないのか?」
「兄上は風呂は一人で考え事をする場所にしているのでな。でも、姉上とはよ
く一緒に入るぞ。我が姉上の背中を流してあげたりするのだ!」
「それは微笑ましいってか、いいことだな。」
「うむ。こうして我が入ってればいきなり途中で入ってくるかもしれんな。海
斗が一緒だと分かればそんなこともないと思うが。」
「流石にこれ以上敵を増やすのは勘弁だなぁ……」
あくまでもしもの話ということで盛り上がっていたのだが……
そんなときに急にドアの開く音がした。
「まさかな……」
「オーウ、海斗。」
「……ステイシー?」
そこに立っていたのは水着姿のステイシーだった。
「どうしたんだ?」
「いや、昨日の紋様の様子がおかしかったとかあずみが言うから、海斗が変な
ことしてないか見張っとけってことらしいぜ。」
「……どれだけ信用がないんだ、俺は。」
「まー確かに昨日は誰が見てもふにゃふにゃって様子だったからな。」
それはもしかしなくとも海斗が体を洗ってやったせいである。
「しかし、我もそろそろ出ようと思っていたところだ。」
「そっか、じゃ監視にきた意味ほとんどなかったな。」
「いや海斗は少しここに残れ。」
「は?」
そう言ってステイシーは紋白をさっさと脱衣所に導くと、すぐに戻ってきた。
「一体なんだよ?」
「そんな構えなくても、別に罰ゲームしようとかってわけじゃないぜ。むしろ
その逆、労をねぎらってやろうってんだ。」
「労をねぎらう?」
「主人の体を洗ってて、自分の体なんて洗えてないだろ?だから、特別に私が
海斗の体を洗ってやるよ。」
「…………は?」
ステイシーの突拍子もない一言は、それこそ揚羽が入ってきたかと思ったとき
と同じくらいの衝撃を海斗に与えたのだった。
風呂って最高のシチュエーションらしいです