「特別に私が海斗の体を洗ってやるよ。」
「なんでそうなる。」
「細けぇことは気にすんな。メイドってのは奉仕するものらしいぜ。」
「ステイシーにそんな気持ちは微塵もないだろ。」
「ファック、黙って座ってな。」
無理矢理に海斗は椅子につかされる。
ステイシーが一度言い出したらなかなか聞かないことはこの何日かで十分に思
い知らされているので海斗もさして抵抗しなかった。
「あー、タオル忘れちまったな。」
「じゃあ、またの機会で……」
「ま、いっか。手で洗えるしな。」
「おい、ちょっと待て。」
「アァン?」
両手でボディソープを泡立てているステイシーに待ったをかける。
というか、何故そんなに嬉々としてやっているのか。
「言わずとも分かってもらいたいんだが、いくら何でも素手で男の体に触るの
はどうなんだ?父親思いの親孝行娘だって、タオルで背中を流すまでにとどま
るはずだぞ。」
「私は海斗の娘じゃねぇ。」
「だったら、なんだよ。」
「メイドだ。」
「……ごもっとも。」
見事に言い負かされた(?)海斗は大人しく受け入れることに。
流石にこの格好、この場所でステイシーを相手に抵抗するのは危険だ。
……いや、勿論怪我のことを言っているのだ、うん。
「ほら、背中からいくぞ。じっとしてな。」
「…………おう。」
若干の痛みを予想して、身構えた海斗だったが背中に触れたのは、普段のステ
イシーの荒々しさからは予想できない優しげな手。
広い背中を滑らかにすべり、その温もりを伝えてくる。
「意外と上手いんだな、こういうの。」
「なんだ、力いっぱい引っ掻かれるとでも思ったのか?」
「正直背中が削れるくらいの犠牲は覚悟の上だったな。」
「……リクエストに応えて、現実にしてやろうか。」
「冗談だって。」
本当にできる力は持っていそうなのであまり怒らすのはやめておこう。
「ハン、私だって一応性別上女だからな。これくらい楽勝ってやつだ。」
「一応じゃなく、ステイシーはれっきとした可愛い女の子だ。」
「……ハッ、よく言うぜっ!」
「痛いわっ!」
ばしーんと小気味良い音が響き渡る。
背中は確実に赤くなっているだろう。
「どうなんだ、主とのお風呂ってのは。」
「こっちが最低限の配慮をするしかないだろうな。紋白がどうにも無防備すぎ
るから。」
「変なことしてないよな?」
「なんだ、変なことって。」
「さっきあがっていったときも、どっか上せてるような顔してたからな。勿論
風呂につかりすぎてって意味じゃなくさ。」
「…………いや、」
「チッ、お前は私の部下だ。あんまフラフラしてんじゃねぇ。」
「それ、まだ続いてたのか。」
「嫌なのかよ。」
その言葉からはステイシーにしては自信なさげな不安が感じ取られた。
「ん、嫌っていうかな……いつでも対等に気兼ねなく話せて、俺にステイシー
のこと守らせてくれるってんなら、肩書きはなんでもいいよ。」
「は……」
思わず言葉に詰まってしまう。
ステイシーも海斗のことは他とは違う特別な男だとは思っていた。
それでも明確な感情ではなく、あくまでからかいの延長線上としてステイシー
は接してきたのだ。
しかし触れ合う機会が多くなれば、自ずとその不思議な魅力に気づかされる。
先ほどの質問だって知らぬうちの独占欲だ、それも主を相手にして。
「…………これじゃ李を馬鹿にできねぇな。」
「どうした?」
「いや、海斗にご褒美をやろうと思ってな。」
「……?」
背中を洗い終えて、次は海斗の腕をとる。
あろうことか、その腕を自分の主張する双丘の間に挟んだのだ。
「ちょ、なにして……!」
「遠慮すんなよ。」
挟まれているというよりはもはや埋まっている。
ただでさえガード面積が少ないビキニ。
そもそも胸の間なので、水着は意味を成していない。
「どうだ、気持ち良いだろ。」
「そういう問題じゃなくてだな……。」
気持ち良いか良くないかで言えば、当然前者に決まっている。
それほどまでにステイシーのモノが凶悪だということなのだが。
「ぐ……」
「お、喜んでんのか?」
「あんま上下に擦るな。」
「ハッ、聞こえねーな。ほら、こんなのはどうだ。」
胸の外側に手を添えて、圧力をかけてくる。
相当きつく挟まれているのにやわらかさが包む感触だけだ。
「よーし、次は前だな。」
「それはやめろっ!」
なんとか暴走を阻止する海斗だった。
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昨日、一昨日と人のベッドを借りて、一緒に寝てしまった。
今朝なんてあずみにあらぬ疑いをかけられ、釘を刺されたわけだし、もう誰か
の部屋に邪魔をするというのは避けるべきだ。
「ここでいいか。」
流石は九鬼。廊下でも寝るのに十分なスペースがある。
壁に背中を預け、そのまま眠りにつくことにした。