真剣で私たちに恋しなさい!S   作:黒亜

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特別任務

―九鬼家、4日目。

眠りの中、誰かの気配を感じる。

昨日は確かに廊下で一人で寝たはずだが……。

 

 

「ん……?」

 

「……あ、起きた。」

 

「……何してるんだ?」

 

「おはようございます、海斗。」

 

「答えになってないんだが、クッキー。」

 

 

目を覚ました先にいたのはクッキー第4形態。

何故か海斗に馬乗りになって至近距離で顔を覗き込んでいる。

 

 

「修理は終わったのか?」

 

「おかげさまで。」

 

「そりゃ良かった……で、質問に戻りたいんだが何をしてる?」

 

「………………海斗を起こしにきました。」

 

「おい、完全に今の間で考えただろ。」

 

「いえ、半分は本当です。」

 

「残り半分が気になってしょうがないんだが。」

 

「海斗の寝顔鑑賞タイムを満喫していました。」

 

「あんな顔を近づける必要があったのか?」

 

 

それこそ息がかかり、まつげの一本一本まで見えるかという距離だった。

あれだけ距離をつめると逆に顔全体が見えるのかという疑問もあるが。

 

 

「あわよくば海斗が寝ぼけて顔を前に動かせば、口づけとかできるかもなどと

考えてはいませんので誤解のないように。」

 

「それが本音か。」

 

「久しぶりの海斗ですから、大目に見てください。」

 

「それよりこの毛布わざわざ持って来てくれたのか?」

 

「? いえ、私が来たときには既にかかっていましたが……。最初から海斗が

使っていたのではないのですか?」

 

「いや、借りるのも悪いと思って頼んでないんだけどな。」

 

 

不思議に思いつつもクッキーをひょいと持ち上げて立ち上がる。

 

 

「これではまるで扱いが赤子のようです。」

 

「しょうがないだろ、軽いんだから。」

 

「まあ、海斗の寝顔も目一杯堪能できたので、そろそろ帰ります。本音を言え

ばもっとくっついていたいのですが、これ以上帰りを遅くしてファミリーの皆

を心配させるわけにもいきません。」

 

 

クッキーは海斗のピンチを助けるために黙って出てきてくれたのだ。

何日も帰らなければ皆心配しているだろう。

 

 

「ああ、そうだな。行って、安心させてやれ。」

 

 

そう言って、海斗はクッキーをぎゅっと抱きしめてあげた。

クッキーもいきなりの海斗からの抱擁に驚きを隠せない。

 

 

「長い時間くっついてるのは難しいから、これで我慢してくれな。」

 

「ずるいですよ、いつもは私からアタックしてばかりでそれも上手くあしらっ

ているくせに…………ありがとうございます、海斗。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「おー、やっと起きてきたか。」

 

「別にそんなに寝坊したわけでもないだろ。」

 

「まぁ、下っ端はもっと早起きしろってことだ。」

 

 

朝一番に食事へ向かうとあずみが待っていた。

今日は誰の部屋にも邪魔していないのに変わらず怒られている気がする。

まあ、口が悪いだけでそこまで機嫌は悪くないのだろうが。

 

 

「ったく、頭ぼけてんじゃねぇのか。」

 

「少し遅かっただけでそこまでか。」

 

 

あずみが額をぺしぺしと叩いてくる。

調子の悪い機械か何かか。

 

 

「ま、異常はないってことにしといてやる。」

 

「それはありがとよ。」

 

「じゃあ、さっさと今日の仕事の話させてもらうぞ。」

 

「おう、どんと来い。」

 

「つっても、今日のはちょっと特殊なもんだ。」

 

「というと?」

 

「それは我から説明しよう。」

 

「うお、九鬼英雄。」

 

「使用人なんですから、敬語を使いましょうねー。」

 

 

さっと冷たい刃物が首筋に当てられる。

英雄の前だから猫かぶりモードだが、やることは過激そのものだ。

 

 

「よい、あずみ。我も海斗のことは買っておる。多少の無礼をとやかく言うつ

もりはない。」

 

「了解しました。」

 

「今日の仕事というのは我直々の頼みなのだ。」

 

「一体なんだ?」

 

「うむ、我はあのユートピア事件以来、二度と同じような過ちは繰りかえさな

いようにと週に一度親不孝通り全体を監視して回る日を設けているのだ。」

 

「へぇ……。」

 

「過ぎたこととはいえ、初めからもっとあの地域に気を配っていれば友である

冬馬の行いにも気づいて未然に防げたかもしれないのだ。もう我が責任を持っ

て、あのようなことは起こさせん。それが友との約束でもある。」

 

「事情は分かったが、今日の仕事と何か関係が?」

 

「普段なら我とあずみの二人で視察に行くのだが、九鬼の家系上どうしても外

せない用事が入ってしまってな。今日の見回りが我は行けそうにないのだ。そ

こで海斗にはあずみの付き添いとして我の代わりに行ってもらいたいのだ。」

 

「私は一人でも大丈夫と行ったのですが……」

 

「確かにあずみの腕に不安などないが、あの場所は一人きりで行くには危険す

ぎるところである。万が一何かあったときにも一人ではろくに連絡もできない。

海斗なら実力の面でも一番の適役である。」

 

 

英雄の目は真剣だ。

こちらを信頼して頼ってくれているのが分かる。

 

 

「なるほど、分かった。その仕事引き受けよう。」

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