予約投稿をする暇すらあらず、投稿できませんでした
なのでなんとなく朝投稿
「海斗さん、お待たせしました。」
「いつもいつも悪いな、由紀江。」
昼休み。
海斗たちのクラス2−Fには由紀江が来るのが毎日のこととなっていた。
勿論、手には手作りお弁当が握られている。
「いえいえ!悪いなんてそんな!海斗さんに食べていただけて嬉しいのは私の
ほうですから。」
「こんな美味いのいつも食わしてもらってる俺のほうが感謝してるって。」
「海斗さん……。」
そんなことを言われれば笑顔にならずにはいられない。
自分がその人のためだけに作ったものでこんなに喜んでくれるのだから。
今この瞬間のためだけでもずっと家事などの経験をしておいて良かったと由紀
江は心から思う。
「はぁ、まゆっち羨ましいわー。」
「仕方ないとは分かっているが、自分もやっぱりそうだな。」
「私の愛の激辛料理も食べてほしいのに。」
一子、クリス、京がまわりで呟く。
ファミリーの中で一人だけ一年生で海斗といる時間が自ずと少ないということ
で昼休みの時間は由紀江優先ということになったのだ。
昼食は勿論、海斗ともできるだけ多く話せるように配慮されている。
とはいっても全面的に譲る気などさらさらないので、海斗の席を中心に皆が近
くまで集まっているのだが。
とにかく賑やかなランチタイムだった。
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「紋様のおなーりー!」
「ムサコッスよ、そこまでへりくだらなくてもいいのだぞ。」
「いえ、紋様の偉大さは昨日でよく分かりましたから。あ、着きました。」
「フハハ、ここが二年の教室か!」
九鬼紋白と武蔵小杉がやってきたのは二年の階。
転校初日で1−Sを掌握した紋白は九鬼のクローンである義経たちの様子見が
てら二年生がどんなものかを見に来ていた。
そして、ある教室の前で立ち止まる。
「随分と騒がしいな。」
「ここは2−Fですね。」
中から何やら様々な声が聞こえてくる。
気になって中を覗いてみると……
「海斗、食後に私のLOVEドリンクをどうぞ。」
「京、それ真っ赤だぞ!しかも致死量だ!」
「ていうか、ただのタバスコよね。」
「失礼な、これでもきちんとブレンド済み。」
「あはは…………って、海斗さーーーーん!!??」
「ちょっと海斗!?なに普通に飲んでるの!?」
「いや慣れりゃ問題ないぞ。それに京が手間かけて作ってくれてんのには変わ
りないしな。」
「さすが海斗、私の愛を全部受け止めてくれる。」
「いや、なんか絶対に違うぞ!」
………
……
…
「なんだか個性的な連中が多そうだな。あの多くの女子に囲まれておる真ん中
の男は誰だ?」
「あれは流川海斗先輩です。」
「流川海斗か……。どんな男なのだ?」
「簡単に言ってしまえば1年生の間での人気ナンバーワン。ファンクラブまで
あって、多くの女子の憧れです。」
「ほう……何故そんなに人気があるのだ?」
「色々とインパクトが強い人なんですけど、第一に見た目がかっこよくて、走
れば速いしスポーツもそつなくこなす、弓だって弓道部のエースと張り合うく
らいの実力でできます。ファンの噂では勉強までできるって言われてますね。
テストは平均くらいなのにたまに図書室で困ってる子に教えてくれたりするっ
ていうんですけどそれがとても分かりやすいらしいんです。」
「確かに人に教えられるのが本当に頭の良い者とは言うからな。」
「そして何より優しいんですよね。男女分け隔てないながらも自然なレディフ
ァースト精神を忘れないっていうか。ほんとプレミアムな人です。」
「人を惹きつける人材か……。面白いな、早速スカウトしようではないか!」
ずんずんと歩いて教室に入っていく紋白。
そこに他クラスだとか一年生だとかいう躊躇はない。
まさにその姿は威風堂々。
一直線に向かってくる少女に海斗も気づく。
「流川海斗。」
「なんだなんだ?」
「お前に用がある、少し廊下に出てもらおうか。」
紋白はそれだけ言うと答えを聞くまでもなく背を向け、廊下に出る。
それは九鬼の人間の自信の表れでもある。
海斗はよく分からないままついていった。
「我は九鬼紋白!流川海斗、お前九鬼に就職する気はないか?九鬼は人材を必
要としている。」
「いきなりな話だな。」
「給料は好条件を約束するぞ。」
「……悪いけどそういうのは無理だ。俺みたいに常識ない奴は人の下で働くの
は向かねぇんだよ。悪いな、紋白。」
「……様をつけないと串刺しだぞ。」
一瞬前にはそこにいなかったヒュームが立っていた。
気配は消していてもやはり学校のどこでも護衛をしているのだ。
「俺はそういうの苦手なんだよ。紋白は紋白だろ?」
「忠告はしたぞ。」
「ヒューム、よい。いきなり誘ってすまなかったな。」
随分とあっさり引き下がる。
その聞き分けのよさはさっきの堂々とした感じからは微塵も感じられなかった
もの。
そのまま去っていく背中を海斗は放っておけなかった。
「ちょっと待て、紋白。」
「?」
海斗の呼びかけに紋白は立ち止まって振り返る。
海斗は一歩近づいて言う。
「働くのは無理だけど、なんかあったら力にはなるぞ。先輩としてな。お前は
色々独りで抱え込みそうだ。」
なんとなく感じた雰囲気。
本当にまわりにはこういう奴が多いと思った。
なんでも自分で解決しようとしてしまう。
「だから、遠慮なく頼ってこい。」
自然な動きで海斗は紋白の頭を撫でる。
そう、頭の上に手をおいて“触れた”のだ。
「! おっと。」
数秒の経過を待たずしてヒュームの鋭い蹴りが飛んでくる。
主人の護衛にしては強すぎる威力。
海斗は受けようとはせず、紋白を掴みながらそれをかわした。
「な……俺の攻撃をかわすとは……。」
「危ねぇな。俺が蹴りだけを避けてたらお前の主に当たるとこだぞ。執事失格
なんじゃねぇのか?」
「ヒュームの蹴りを……。」
紋白もヒューム自身も攻撃をかわせるほどの身のこなしに驚いていたが、ヒュ
ームに関してはそれどころではなかった。
(この男、いつの間に近づいた……。この俺が触れるまで気づけないとは……、
気も感じられず気配は希薄ではあるが、五感が全て利く状態で欺かれるなんて
何者だ、この男。)
ヒュームの攻撃も一瞬だが、海斗の回避もまた一瞬。
しかも紋白の安全まで考えての咄嗟の行動。
「……食えない奴だ。」
今まで遭遇したことのない未知。
底の見えない目の前の男。
「過保護も程々にな。それが逆に紋白を追いつめることにもなる。ま、だから
こそいつでも俺に頼りな。」
「あ、ああ!分かったぞ海斗!」
「チッ……」
警戒するヒュームとは逆に紋白は海斗に早くも何かを感じたようだ。
少なくともよく実力を知るヒュームを出し抜いたあの動き。
たった一言二言で分かる小杉の言っていた意味。
とても不思議な出会いとなった。
タイトルで分かる登場ヒロイン