だれか書く時間をください
「むぅ……」
目の前の女子たちの様子は様々だ。
ふくれっ面で何かを訴えようと視線を向けてくる者。
ジトーっとした目で冷ややかな抗議を浴びせてくる者。
いじけた風に上目づかいでこちらを見つめてくる者。
「海斗!自分に手を出さないのはまだしも、他の女に断りなく手を出すとは一
体どういうつもりなんだ!?」
「クリス……お前は俺の嫁か。」
「よよよ、嫁だと!?そんな……んん、海斗が望むならやぶさかではないが、」
「あの、私も海斗さんに妻として尽くしたいです!」
「なっ!?どうして、まゆっちが割り込んでくるんだ!」
「私は……2番目でも構いません。海斗さんにお仕えして、少しでもお助けで
きればそれだけで幸せです。」
「わお、大胆な発言」
こと由紀江に関してはあの川神水での事件以来、元々内に秘めていたMの部分
を刺激されたのか、海斗に献身する姿勢が顕著になっていた。
「二人とも落ち着きなよ。」
「なんでまた京は冷静なんだ!まさか……自分の知らないうちに海斗とキスを
経験済みなのか!?」
「私だって海斗の唇に吸い付きたいに決まってる!!」
道の真ん中で何を声高に叫んでいるんだよ……
「考えてもみてよ、あの燕先輩だよ。私たちを惑わすための嘘をついてるって
可能性は十分ある。」
「うわー、ひどいなー。」
「頭もまわるし、納豆小町として人前に出てるんだから演技力もあるでしょ。」
「う~ん、なら証拠としてここでキスして見せてあげよっか?」
「なっ!?そんなことが許せると思うのか!」
「よーし分かった、正妻の私が海斗に唇を捧げよう。」
「何故そこで京が入ってくるんだ!?」
「私も海斗さんになら全てをゆだねる覚悟ですっ!」
「待て、まゆっちは何の話をしているんだ!?」
「おい、ちょっと落ち着……」
収拾がつかなくなりつつある事態をどうにかしようとするが、乙女たちの暴走
はなかなか止まらない。
「とにかくー、海斗クン私たちのラブラブぶり見せてあげよ?ね?」
「海斗、私に情熱的なのちょうだい……」
「海斗さん、私はいつでも大丈夫です。」
「待て、それなら自分も欲しいぞ……」
迫ってくる4人の少女。
完全に冷静さなど欠如して、周りが見えていないのだろう。
どうにか止めるしかないが……
「ダメ!!」
「……っ!」
迫ってきていた少女たちがびくっと肩を震わせ、硬直する。
叫んだのはずっと黙っていた清楚だった。
投げかけられたのはたったの一声。
しかし、その一声は彼女たちを止めるのに十分な役割を果たした。
(今の、一瞬感じた威圧感は一体……)
誰もが感じたそれは気や殺気ではない。
言葉で人を制する力とでも言おうか。
事実誰もが動きを止め、その言葉に逆らえなかった。
「海斗君は私の彼氏なんだから……!」
清楚が頬を染めながら、海斗の腕をとりそう宣言する。
「演技かと思ってたけど……、どうやらそっちも本気みたいだねん。あーあ、
また海斗クンの倍率あがっちゃうなー。」
そう言う燕はどこか嬉しそうで、燃え上がっているようだった。
結局、その日のデートは大波乱のままに終了し……
後日あんだけの修羅場騒ぎを人の行きかう街のど真ん中で起こせば当然なのだ
ろうが、幸か不幸か清楚と一緒にデートしていたという噂は類を見ない広がり
を見せた。
その後、清楚へのラブレターはぱったり止んだのだが……。
代わりに海斗への罵詈雑言が綴られた手紙が、一部の男子からひっきりなしに
届くようになったのはまた別のお話。
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「はぁ……」
自室で一人ため息をつくのは百代。
おおよそ武神には似合わぬ元気のなさだった。
「お姉さま、どうしたの?」
「いやな、最近ずっともやもやがたまっているんだ。海斗との試合は楽しかっ
た。戦闘欲も満たされた。だからこのもやもやは戦闘欲求がまた溜まったもの
だと思ったんだが、その後いくら戦おうとも晴れないんだ。」
「それって……」
「くそ、やはり海斗ほどの実力者との戦闘じゃないと収まらないのか。よし、
それなら明日九鬼にでも殴り込みにいくか。」
「お姉さまは一つ勘違いしてるわ。」
一子は口を開く。
今の百代の気持ちを理解できるから。
「確かにお姉さまが海斗と戦えば、もやもやは晴れるわ。」
「ああ……、そう言ってるじゃないか。」
「でもそれは戦闘欲求が満たされるからじゃない。」
「どういうことだ、ワン子。」
「お姉さまが海斗との試合の後、強くなるために闘ってきた人たちは今までに
比べても強い人たちだったと思うわ。今までのお姉さまより戦闘欲求は満たさ
れてるはず。」
「何が言いたい?」
「…………」
一子にとっては言うか迷うべきことだった。
ここでヒントを出せば、自分にとってはある意味不利益しかない。
それでも……
「お姉さまが海斗と戦いたいのは本当だと思うわ。でも、その本当の目的が何
かまで見えてない。」
「ワン子が私の気持ちを分かるっていうのか?」
「分かるわ、他でもないアタシだからこそ。」
「ほう……、ならこの原因を言ってくれ。」
「それは、それだけはお姉さま自身が気づかないといけないことだから。」
感想見てます、ありがとうございます。
しかし返す時間があるなら本編書けって感じなのは分かってるんで
必死に頑張っておりますがどうも取れる時間が少ないです。
読者様をお待たせするのは非常に心苦しいのですが、広い心で
仕方ないなと許してくださると助かります、すみません。
李さんのタペストリー美味しいです