俺は飛龍さんに甘えられたい。   作:LinoKa

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第10話 過労って怖いよね(小並感)。

ゴールデンウィークが過ぎ去り、これ真夏の日差しじゃね?と思う季節になった。そんな季節でも、仕事はある。俺は今日も今日とて、執務室でパソコンをいじっていた。

カタカタと文字を打ってると、飛龍さんが横から画面を覗き込んだ。

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

隣の飛龍さんが声をかけて来た。

 

「あ?何が?」

「いや、なんかボーッとした表情で仕事してるし、最近は後段作戦終わらせて仕事も増えてたし、平気?」

「平気ですよ。何とかなる」

「………あ。誤字」

「え、どこ?」

「そこ。制空権が制空拳になってる」

「あ、ホントだ。どんな拳法だよ」

「………大丈夫?」

「ダイジョウブダイジョウブ」

「…………手伝おうか?」

「平気。それより、蒼龍さんとかと遊んで来て良いですよ。春イベ、たくさん頑張ってくれましたし。はい、これ間宮アイス券」

「あ、ありがと………。ねぇ、手伝おうか?」

「いらないって」

 

命張って戦ってくれてたんだ。せめて事務仕事くらい俺がやらないでどうするよ。特に、飛龍さんはうちのエースだから、艦隊から外せなかったし。

 

「むぅ………キツかったらいつでも言ってね」

「おう」

「じゃあ、私蒼龍とアイス食べに行って来るから」

「おう」

「………あ、コーヒーだけでも淹れておいてあげようか?」

「おう」

「…………ロナウジーニョ」

「おう」

 

なんかさっきから話しかけて来るが、とりあえず俺は目の前の仕事から片付けていた。

………あー、頭がボーッとする。疲れて来たな……眠いし、なんか体の節々痛い。軽く伸びをして、首をコキコキと鳴らしてると、飛龍さんがジト目で俺を睨んでいるのに気付いた。

 

「え、何?」

「ねぇ、本当に大丈夫なのよね?」

「だから大丈夫だって」

「…………心配なんだけど」

「いや、しつけぇ。いいから休んでろよ」

 

自分でも驚く程、冷たい言葉が出た。当然、飛龍さんはキッとした表情になって、俺を睨んだ。

 

「なっ……何よその言い方!」

「…………や、悪い。ちょっと、仕事に集中してたから」

「心配してあげてるのに、なんでそんな言い方されなきゃいけないの⁉︎」

 

いや、だってこの仕事さっさと終わらせないと、後で上司に怒られるの俺だし。いや、提出期限まで二週間以上はあるけど、それでも早めに終わらせるに越したことはない。

 

「悪かったですって。でも、本当大丈夫ですから。休んでて下さい」

「………な、なんでよ。なんでそんなに私を追い出したがるの?」

「え?や、違っ」

「もういいよ。間宮アイス券ありがと。じゃ」

 

飛龍さんは執務室を出て行ってしまった。

 

「………やっちまったなぁ」

 

怒らせるつもりなんてなかったんだけど……。でも、これは俺の仕事だしなぁ。

まぁ、夜には部屋に帰って来て許可出してないのに膝の上に頭乗せて来るだろうし、大丈夫でしょ。

 

 

++++

 

 

だが、翌日になっても飛龍さんは帰ってこなかった。これはマズイな。本格的にピンチだ。飛龍さん、相当キレてるよこれ。

まぁ、明日にでも謝りに行くか。今日はもう無理。仕事に追われて死にそう。しかもまだ終わってないとか笑えない。

ていうか、この報告書って意味あんのか。何に使うってんだよ、この作戦のデータ。どうせ、形だけ報告受け取って中身は読まないんだろ?その癖、出さなかったら「早く出せ」「資源の配布打ち切るぞ」とか脅迫だけして来やがって。

 

「あーダメだ。やる気なくなって来た」

 

つーか、昨日の朝からずっと頭と体の節々が痛いし。それに加えて、今日は喉が痛い。

 

「………あークソ。でももう少しだ」

 

そうだ、もう少しで仕事は終わる。ゴールは近づいて来てるんだ。

唸らながらキーボードを叩いてると、コンコンとノックの音が聞こえた。

 

「あい……」

「失礼しま……ど、どうしたの提督?なんか体調悪そうだけど」

 

入って来たのは蒼龍さんだった。

 

「いえ、大丈夫です。なんかありました?」

「いや、なんか飛龍と喧嘩したって聞いたから来たんだけど。………ほんとに平気?」

「大丈夫だって。あと、喧嘩してない。こっちが一方的に怒られただけですよ」

「………何したのよ」

「いや、今仕事してるんで後でいいですか」

「うん、大体今ので分かったわ」

「は?」

「飛龍にも同じこと言ったでしょ」

「あー、いやまぁ」

「こっち見て」

「えっ?」

 

仕事しながら返事をしてると、蒼龍さんから思いの外怖い声が飛んで来た。

 

「あのね、飛龍と付き合ってるんでしょ?」

「はい。ケッコンを前提に」

「う、うん……。って、そうならいくら仕事が忙しくても、ちゃんと嫁の話は聞いてあげないと」

「あー……そういうもん?」

「逆に提督だったらどう思うか考えてみなよ。飛龍が仕事してるからって自分に生返事ばかりされたら?」

「いや、仕事忙しいんだなってなりますけど」

「…………と、とにかく女の子は無視されるのは嫌なの!」

「別に、無理してるつもりなんてないんですけどね……。なんていうか、昨日からボーッとすることが多くて」

「ボーッと……?」

「はい。なんか………」

 

頭痛が痛い、と、テンプレのボケをかまそうとした所で、俺の口は止まった。

こいつらすぐに人の心配しやがるから、頭痛い事を知られたら「大変!仕事しばらく休んでください!私達が代わりにやりますから!」ってなるのは、カブトムシにスイカをあげちゃいけないって答えを出すより簡単に出る。今の例え、我ながらわけがわからないわ。

そうなると、作戦中一番頑張ってくれてた奴らにさらに自分の仕事を押し付ける事になっちまう。

 

「ね、寝不足なんすよね。夜遅くまでゲームやってて」

「自業自得じゃないですか……。とにかく、飛龍にもちゃんとかまってあげてください。仕事の提出期限だってまだまだあるんでしょう?海域突破、最速で終わらせたんですから」

「………了解しました」

 

そういうことなら、仕事はとりあえず中断するか。俺は席から立ち上がり、部屋の出口のドアノブに手を掛けた。

 

「…………」

「どうしました?」

「………一人で謝るの怖いから一緒に来てくれませんか」

「ヘタレ」

 

うるせぇ。

 

「飛龍さんどこにいます?」

「私の部屋で不貞寝してます」

「じゃ、行きますか」

 

そう言って、歩き始めようとした直後、体から力が抜け落ちた。自分の体が斜めって、地面が近づいて来る。

あれ?これ、俺倒れてる?

手を地面に着く暇もなく、地面に顔面から倒れた。

 

「………提督⁉︎」

 

蒼龍さんに呼ばれるのを最後に、俺の意識は途絶えた。

 

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