俺は飛龍さんに甘えられたい。   作:LinoKa

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第11話 性欲と性格は関係ない。

 

 

目を覚ますと、医務室の天井だった。なんでこんなとこにいんだ俺。確か、執務室で蒼龍さんと話してて、飛龍さんに謝るためについて来てもらおうと思って………床が俺に近づいてきたのか。

 

「そうだ!ポルターガイストだ!みんなに知らせないと!」

「なわけないでしょ。アホか」

 

冷静な声が聞こえた。隣を見ると、飛龍さんが座っていた。

 

「倒れたのよ。廊下で」

「え?違いますよ?床の方から俺に迫ってきて……」

 

続けようとしたところで、声が止まった。飛龍さんは泣くのを必死に堪えてる表情だった。ギョッとして、「どうしたの?」と聞こうとした時には、飛龍さんは俺に抱き付いていた。

 

「っ⁉︎ひ、飛龍さん⁉︎」

「良かったぁ……!無事で、良かったよぅ………‼︎」

「無事でって……そんな大袈裟な………」

「大袈裟じゃない!」

 

1オクターブ高くなった飛龍さんの声に、俺は思わずビビってしまった。

 

「アレだけ言ったじゃん!大丈夫なの?って!それなのに結局、倒れるなんて………!ほんと、バカなんだから……‼︎」

「………悪かったよ」

「ホント、よ………!」

 

膝の上で泣いてる飛龍さんの頭を撫でた。まぁ、今回は俺が悪いな。まさか倒れると思ってなかったし。

 

「いやーでも、まさか倒れるなんて思わなかったなー。健康管理はしっかりしてたし」

「あんた殺すよホント。どの口が言ってんの?」

「え、こ、殺す……?」

 

マジかよこの人。普通に上司に殺害宣言とか怖過ぎる。

 

「あんなに無理して棒読みの返事してて健康管理はしっかりしてた?本気で言ってるなら本気で怒るよ」

「いや、俺あんま病気とかしたことないから」

「だまらっしゃい」

 

ひ、ひどい………。これは下手に口答えしない方が良いな。

 

「ま、まぁ、本当にその、悪かった」

「しっかり反省してよね」

「へいへい。……じゃあ、書類持って来てくれません?あと少しで終わるんだよね」

「…………あ?」

「冗談だから弓出さないで」

「………私、しばらくここに泊まるから。何か行動を起こす際には私に言うこと。さもないと、爆撃するから」

「瑞鶴かよお前は……」

「彼女と二人きりの時にほかの女の子の名前出さないで‼︎」

「はい、ごめんなさい」

 

あれ?この子、まだ怒ってんの?許してくれたんじゃないの?

 

「…………それって、看病してくれるって事?」

「た、端的に言えば」

「……………」

「何よその真顔」

「料理だけはしないでね」

「むかっ」

 

口で言ったよ。

 

「アレから間宮さんに教わって、すごい上手くなったんだからね⁉︎」

「美味くなってなかったらダメだよね」

「見てなさいよ!すっごい美味しいの作って来てあげるんだから!」

「え?作る気?」

 

そうこうしてるうちに、飛龍さんは病室から出て行ってしまった。ああ、俺は今日死ぬのか………。今までありがとう、この世の何かよ……。

大体、ここに泊まるって………医務室で泊まる気?あの人、本当たまによく分かんねぇな。しばらく布団の中に潜ってると、飛龍さんがトレーの上に皿を乗せて戻って来た。

 

「ただいま」

「………おかえり」

「よし、ご飯の時間よ」

「その前にペンと紙くれる?」

「? 何に使うの?」

「遺書」

「どういう意味ですか!」

 

だよね、そうなるよね。飛龍さんは俺のベッドの隣に椅子を設置すると、座って皿の中の料理をスプーンで掬った。

 

「…………はい」

「? え、何?」

「………あっ、あーん………」

「……………はっ?」

 

何をし出すんだこの人は。

 

「………何してんすか?」

「………た、食べさせてあげてるのっ」

「いや、それは分かるんだけどさ」

 

なんでそんなバカップルみたいな事を………。少し呆れてると、飛龍さんは涙目になって俺に聞いた。

 

「………私のご飯、食べれないの?」

「…………いただきます」

 

そのセリフは卑怯だろ。俺は仕方なく口を開けた。ふーふーっと息を吹きかけて、飛龍さんは俺の口の中にカレーを運ぶ。つーか、病人にカレーかよ。別に良いけど。

口の中にカレーが入った直後だ。

 

「あっづぁっ‼︎」

「へっ⁉︎」

 

俺の反応に驚いたのか、飛龍さんは慌てて手を引っ込めた。

 

「だ、大丈夫⁉︎」

「や、火傷した………」

「ご、ごめんね?今、冷やすもの持って来るっ」

 

またまた忙しなく部屋を出て行く飛龍さん。あの人、看病とか向かないな。まぁ、気持ちは嬉しいんだけどね。その間、暇だったのでカレーを一口食べた。舌がヒリヒリするのを除けば、普通に美味い。少し料理が上手くなっていた。

嫁度が上がってきたなぁ、なんて少し感心しながら待ってると、飛龍さんが顔を赤くして戻ってきた。

 

「…………おっ、お待たせ提督」

「あ、うん。すみません、わざわざ」

「ううん………」

 

………なんで顔赤くしてんの?キョトンとしてると、飛龍さんは持ってきた水を口に含んだ。

 

「え、お前が飲んでどうす……んんっ!」

 

ツッコミを入れようとした直後、飛龍さんに口を押し付けられた。口の中から流れて来る水。

 

「…………」

 

な、なんで口移し………?「どういうつもり?」とか「何してんの?」とか「恥ずかしいんですけど」とか色んな感情が渦巻きながら飛龍さんを見てると、飛龍さんも恥ずかしそうにしていた。あ、これ誰かに唆されたパターンだ。

 

「…………誰に唆されたんですか?」

「………間宮さんと蒼龍」

 

こいつ………。恥ずかしがるくらいならやらなきゃ良いのに………。

まぁ、とりあえず、その、何?

 

「………口の中に含んじゃうと暖かくなるから舌を冷やせないんだけど………」

「……………」

 

なんだこれ。飛龍さん顔真っ赤にしちゃってるよ。で、こういう時って大体………あ、ほらやっぱり。入り口で蒼龍さん達覗いてる。多分、普段からかわれてるんだろうなぁ。

 

「まぁ、落ち着いて飛龍さん。とりあえず水もらうから」

「………う、うん」

 

水をもらい、舌を冷やすとカレーを食べた。

すると、恥ずかしがってたと思ったら今度は期待するような目で見だした。この人本当に忙しい人だな。

 

「………ああ、美味いですよ」

「! ほ、ほんとに⁉︎」

「うん。比叡さんのカレーの5倍は美味いです」

「いやアレと比べられても………」

 

この前はのど飴入ってたし。何のつもりだよ。

 

「………ただ、うん。病人にカレーは少し重いんで」

「あっ、ご、ごめんね。次から、気をつける……」

「いやそんな謝らなくても。作ってくれただけでありがたいですし」

 

昨日、喧嘩した相手なんだぜ?どこまで良い人なんだよ。

カレーを食べ終え、俺は目を閉じた。

 

「じゃあ、俺寝ますね」

「う、うん……。大丈夫?寒くない?」

「寒くはないけど」

「そ、そう………」

 

………なんでそんな残念そうな顔してんの?ていうか、なんでそんな表情読みやすいのこの人。

 

「………な、何?」

「あ、ううん。寒くないなら良いの」

「………やっぱ少し寒いかも」

「!ほ、本当に⁉︎じ、じゃあ……!」

 

嬉しそうな顔をすると、飛龍さんは俺の布団の中に入ってきた。

 

「ちょっ、何してんの⁉︎」

「暖めてあげようと思って……!」

「いやいや良いから!風邪うつるから!」

「大丈夫。じゃ、おやすみ」

「……………」

 

言いながら、俺の股間を握って来る飛龍さん。ああ、この人それが目的か………。蒼龍さん達見てるんだけど……まぁ、良いか。

 

「………飛龍さん」

「? なんですかー?」

「そういうことは風邪治ってからで」

「そんなこと言って。本当は我慢してるんじゃないの?」

「いやそういうんじゃなくて。蒼龍さん達見てるし」

「………ごめん」

 

いつからこんなエロい娘になったのかね……。そう思いながら、とりあえず寝ることにした。

 

 


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