飛龍さんが全裸で隣で寝ている。
えーっと、なんだこれ……どういうことだこれ………。何が起こったんだこれ…………。
待て、昨日寝る前のことを思い出せ。………だめだ、飲んでたことしか覚えてない。飛龍さんに日本酒を飲まされてから記憶が飛んでる。
畜生、落ち着けよ俺。冷静になれ。チキンハートの俺が他人に、それも部下の女の子に手を出せるわけねーだろ。
これは夢だよ、夢。俺は自分の頬を引っ叩いた。
「………すごく痛い」
頬がヒリヒリする……夢じゃないっぽい………。
いや、待て。夢じゃなかった、なら次はどうする?考えろ。まずは着替えろ。
俺は飛龍さんを起こさないように立ち上がり、とりあえずいつものジーパンとシャツに着替えた。
恐らく、というか希望的観測だが、俺が酒を飲んで全部覚えてないということは、飛龍さんが覚えてない可能性も無いことは無いわけだ。つまり、運が良ければ、ワンチャン、万に一つの確率で無かったことにする事は可能だ。
とりあえず、飛龍さんに服を着せようと思い、その辺に落ちてる着物を拾った。下着は……うん、諦めよう。今は隠して、あとで燃やせば良いか。
「んっ………」
後ろから飛龍さんの吐息が聞こえて、俺はビクッと背筋を伸ばした。
おそるおそる後ろを見ると、飛龍さんが起き上がっていた。おっぱい丸見えだったので、俺は慌てて顔を背けて、手に持ってる着物を投げ捨てた。
「あっ、おっ、おはようございますっ……提督………」
俺は後ろを向いているので、飛龍さんがどんな顔をしてるのか分からないが、おそらく顔を赤くして、布団で自分の胸を隠しているんだろう。
クソッ……起きてしまったか………。だが、とりあえず記憶が飛んでてくれれば或いは……!
有罪か、無罪か。最低でも、酒に酔っていたという情状酌量の余地で執行猶予くらいくれても良いのではないだろうか。
俺は顔を背けたまま、飛龍さんの二言目を待った。
「………き、昨日はっ、そのっ……は、激しかった、ですね………」
終わった。俺はその場で膝から崩れ落ちた。
++++
ここはどこだろうか、辺りは真っ暗だが、スポットライトのように俺の頭上のライトが俺を照らしている。目の前の木製の柵は……よくドラマに出る裁判所で見たことある奴だ。両手には手錠……そうか、俺は、捕まったのか……。
おそらく、飛龍さんに手を出したのがバレ、憲兵に捕まったのだろう。
すると、俺の5メートルほど前も、パッとライトが点いた。なんかディメンターみたいな格好をした人達が、九人座っていた。
「………これより、異端審問会を始める」
おい、これどっかで見たことあるぞ。日本海軍大丈夫か。
「罪状、嫌がる二航戦飛龍型航空母艦一番艦飛龍改二に、エロ同人の如く酒に酔ってレイプしたものとする……以上の内容に相違ないか?」
俺はレイプをしたのか………。酔っててよく覚えていないが、裁判において嘘を言うのは自分を不利にするだけだ。潔く認めて、少しでも軽い罪にしてもらおう。
「………ありません」
「ギルティ!エクスキューション!」
ちっとも軽くなってなかった。その判決に、最早反論すらする気も起きずに、ただボンヤリとしてると、目の前の柵が俺の足を包み込むように伸びて、拘束すると後ろに無理矢理薙ぎ倒された。
俺の両手の手錠が左右に引き裂け、十字架に磔られた様に寝転がった。その引き裂けた手錠から、ガコンガコンガコンと柱が伸びて、俺の首の上に来ると、ギロチンが天井からセットされた。トニー・ス○ークもビックリの仕掛けだなオイ。
「何か、言い残す言葉はあるか?」
裁判長らしい男に言われ、いや男かどうかは分からないけど、とにかく言われた俺は、涙を流して言った。
「…………すみませんでした、飛龍さん」
直後、ハンマーで叩く音が聞こえて、ギロチンが降ってきた。それが、俺の首に向かって振って来た。
「本当に!すいませんでした‼︎」
そこで、俺はガバッと起き上がった。
「……………?」
「め、目が覚めた?」
俺は布団の中にいたようだ。夢、か………。隣には飛龍さんが座って、おしぼりを持っている。
「すごいうなされてましたよ。怖い夢でも見てたんで……なんでそっち向いてるの?」
俺は飛龍さんと反対側を見ていた。
「………飛龍さんに、顔向け出来なくて……」
「……あー、昨日の事?大丈夫よ、別に」
「大丈夫じゃないです‼︎」
俺が声を張り上げると、飛龍さんは少しビクッと震え上がった。
「俺の罪状は、嫌がる二航戦飛龍型航空母艦一番艦飛龍改二に、エロ同人の如く酒に酔ってレイプした事なんです‼︎こんな事……!軍人として、いや人として許されるものではない‼︎俺は……俺は!」
懐から拳銃を抜いて、自分の首に銃口を当てた。ぶふっと吹き出す飛龍さんを無視して、俺は引き金に指をかけた。
「ちょっ、待った待ったタンマー!」
慌ててる割に、正確に掌底を俺の溝に叩き込んだ飛龍さんは、俺がむせてる間に拳銃を奪い取った。
「な、何やってんのよ⁉︎バカなの⁉︎死ぬの⁉︎」
「ああ死ぬさ!死なせろおおおおおお‼︎」
俺はこう見えて実験の訓練は得意だった。飛龍さんの手首に手刀を打ち込むと、拳銃を奪い返し、自分の眉間に当てた。
その俺の手首を飛龍さんは掴んだが、俺はそれを回避した。
「っ!チキンのくせに意外な武力を……!」
「俺は、生きるべき人間じゃないんだああああああ‼︎」
「落ち着かないと昨日の事、憲兵に言うわよ」
言われて俺は拳銃を窓から投げ捨てて、正座して待機した。
………あれっ?ていうか、憲兵に言ってなかったの?
「もうっ!そんな簡単に死のうとしちゃダメです!」
俺の疑問を説明する様子もなく、飛龍さんは「めっ」と俺のおでこを軽く叩いた。
「………あの、え?憲兵に言ってないんですか?」
「言いませんよ。………昨日は、私から誘ったんですから」
「……………はっ?」
こいつ今なんつった?
「もしかして、昨日のこと何も覚えてないんですか?」
「…………すみません」
「いえ、それなら説明しますね」
「お願いします」
「まず、先に酔ったのは提督です。で、私が部屋まで送ってあげたんですけど、その……私もかなり酔ってて、それで提督の酔ってた時の顔が、私の外見の男性のタイプにどストライクしてて……」
「で、誘った、と?」
聞くと、顔を赤くして頷いた。
「それでも、誘いに乗った俺が悪いです。死にます」
「お、落ち着きなさいだから!わ、私は気にしてませんし、むしろ、その……」
「? むしろ?」
「な、なんでもないです!と、とにかく今回のことはもう忘れましょう!それがお互いのためです!」
………でも、責任は取らなきゃダメだろ。俺は人として最低な事をしたんだぞ。何かしらの形で責任とらないと……。何かしらの、責任で………。
俺は覚悟を決めると、深呼吸をして言った。
「飛龍さん」
「な、なんですか?」
「結婚してください」
「はっ⁉︎」
顔を真っ赤にする飛龍さんに俺は続けた。
「あんな事した手前、何も責任とらないわけにはいきません。俺の自己責任かもしれませんが、必ず幸せにすると誓います」
正直、振られる予定だ。さっきのプロポーズは「提督にヤリ逃げされた」とか噂ばら撒かれないためのプロポーズだ。これはこれで「なんかいきなりプロポーズされたんだけどwww」とかなるかもしれないが、飛龍さんに限ってそれはない。人の悪口を言うような人じゃないし。伊達に、うちの最古参空母はやってない。
「…………あの、提督」
「な、なんでせう」
「プロポーズするなら、渡すものがあるんじゃありませんか?」
「………ファーストキス?」
「え、その発想はキモいです。ていうか、昨日の夜の時点で既にファーストじゃないし」
「……………」
キモいって、俺。
「指輪ですよ、指輪」
「あー……ありますよ」
「本当に⁉︎」
俺はゴソゴソと引き出しの中を引っ掻き回した。で、ガチャポンのカプセルを取り出して開けた。中にあるのは、ボンゴレリングのオモチャだ。
「…………なにこれ」
「知らない?リボーン」
「ふざけてんの?」
「………ごめんなさい」
やっぱダメか……。
「まぁ、今はアレで良いです、ケッコンカッコカリの指輪」
「そんなので良いんですか?ていうか、練度足ります?」
「知らないんですか?私、ここ最近撫でて欲しくてずっとMVP獲ってたんですよ?」
「………………」
ていうか何?この人、結婚したいの?
「………あの、嫌なら断ってくれて良いんですけど」
「嫌じゃありませんよ。そうすれば、提督は自殺をやめてくれるんでしょ?」
「いや、まぁそうだけど」
「じゃあ、よろしくお願いします」
と、いうわけで、俺は飛龍さんと結婚した。
結婚しましたが、全然ゴールじゃありません。ていうか、早くもゴールが見えなくなって来た。