第5話 なんだこいつら
なんか、こう……なんやかんやで飛龍さんと結婚の約束をしてしまったが、余り関係は変わらなかった。いつものように一緒に仕事して、MVP獲ったら頭撫でて、仕事終わったらお互いの部屋に帰るだけ。
ま、別に愛がないわけではないが、キッカケはヤッちまった責任から結婚したわけだから当然と言えば当然かもしれない。
「あー……仕事疲れた……,。ずっと座ってると肩凝るわ……」
現在、飛龍さんは挑まれた演習中。なので、俺は一人だった。ふーむ……少し息抜きでもするか。
懐から拳銃を抜いた。それで、引き出しから明石さん特製の的を取り出し、窓にぶら下げて、狙って撃ち抜いた。窓に的をぶら下げ……ぷっ。ちなみに、あの的はどんなに撃っても、多少傷付く程度で穴は空かない。
で、しばらく銃の練習をした。以前、銃の腕だけは負けないと思っていたのに、俺より上手い奴がいて、それ以来ずっと練習している。なんか最近、噂で戦艦大和と付き合ってるらしい。そこは、俺も飛龍さんと交際してるのでイーブンである。むしろ、こっちの方が上生である。ていうか、あのコミュ障が良く誰かと付き合えたな……。
そんな事を思いながら、パンッパンッと射撃してると、コンコンとノックの音が聞こえた。俺は拳銃を懐にしまい、「どーぞ」と返事した。
「失礼します」
入って来たのは、明石さんだった。
「………なんか、銃声みたいなの聞こえましたけど。何かありました?」
「あ、いや、ちょっとね。それより、どうかしました?」
「はい。提督に頼まれてたもの、出来ましたよ」
「マジか!」
明石さんは、俺に銃を渡した。ドミネーターみたいな形の拳銃で、音を消すためにお願いしたものである。
「でも、なんでこんなものを?飛龍さんにバレたら怒られますよ?」
「バレないために作っていただいたんです」
俺は気弱だ。だが、我慢が出来ない奴でもある。前に拳銃の練習を執務室でしていたら、「音がうるさい」「というか、外したら壁が傷付く」「危ない」と飛龍さんに怒られてしまった。やるなら演習場に来い、と。
だが、演習場だと艦娘達が文字通り軍艦の主砲をぶっ放しているのに、俺だけクラッカーみたいな音でパンパンやるのはなんか恥ずかしいし、何より行くのが面倒だ。
だから、バレないように練習する事にした。幸い、明石さんは「新しい発明ができる!」とのことで、鋼材900と引き換えにノリノリで的と銃を作ってくれた。
さっきまで使ってた銃は試作段階で、部屋の前まで音が響いてしまう。今回のはそれを元に作った、いわば第二形態だ。
「では、早速試し撃ちしましょう!」
「はい!」
二人してノリノリで、的に銃を構えた。その直後、的の後ろの窓から、プウウウンと艦載機が飛んで来た。操縦してる妖精さんはマイクに何か言った直後、何処かに飛んでってしまった。
「………提督」
「うん。今の」
「飛龍さんの」
「でしょうね」
顔を見合わせると、俺は拳銃を懐にしまい、的を引き出しにしまうと、明石さんと部屋を出て逃げようとした。
扉を開けると、飛龍さんが待っていた。
「二人とも?」
「「……………」」
「少し、お話良いですか?」
俺と明石さんは、その場……執務室前の廊下で正座させられた。
約一時間に渡る説教の後、飛龍さんは執務室の中に入って行った。その背中を見ながら、明石さんに耳打ちした。
「………次は窓にカーテン付けましょう」
「そうですね」
懲りなかった。
++++
明石さんが帰り、俺は飛龍さんと仕事再開。まぁ、もうほとんど終わってるんだけどね。
「提督」
「んっ?」
「その、先程の演習で私、MVPを獲りまして……」
「ああ、お疲れ様です」
「…………」
無言で頭を差し出して来る飛龍さん。俺はその頭を撫でた。「んふっ……」と、声を必死に押し殺す声を漏らしながら、飛龍さんは俺に段々と寄りかかって来る。
「…………」
「………あの、飛龍さん」
「なにー?」
我慢してる割にリラックスしてんなこの人……。まぁ、良いけど。
「そんなに気持ち良いですか?」
「もう最高よ……」
「そ、そうすか……」
「なんていうか……人に甘えるってこんな感じなんだなぁって、お父さんがいたらこんな感じなのかなぁって、そんな感じです」
「…………ふぅーん」
俺には、お父さんがいるからその気持ちは理解できない。理解できないはずなのに、何となく頷けてしまった。特に、飛龍さんは最初に来た空母だから、尚更甘える事は出来なかったんだろう。
「………ま、そういう事なら俺を枕にするなり好きに使ってください」
「…………提督、その言い方は少し卑猥です」
「そういう風に受け取るからだろムッツリ」
「んなっ……!ち、違います!」
うおっ、やべっ。怒った。沈静化しないと。
「はいはい。ムッツリな飛龍ちゃんは大人しくしててくださいねー」
「ち、違うってば……!」
ナデナデ。
「このっ……!提督……!」
ナデナデ。
「んぐっ……ふにゅうっ………」
ナデナデ。
「ふにゃあぁあぁぁぁ〜………」
俺のナデナデ怖い。飛龍さんはその場から崩れ落ちて、俺の膝の上に頭を置いた。
ていうか、その体勢太ももにおっぱいが少し当たるんだけど。天然痴女にも程があるでしょこの人。しかも可愛いし。残りわずかとはいえ、仕事になんねーよこれじゃ。
「あの、飛龍さん」
「なんですかぁー?」
「………………」
蕩けた声でそう言われてしまった。
…………ま、いっか。もう少しこのままでも。
俺は引き続き、飛龍さんの頭を撫でた。しばらく撫でながら仕事をしてると、紙を落としてしまった。ヒラリヒラリと不規則な動きで落ちると、紙は足の横に来た。
俺はそれを拾おうと少し屈んだ。すると、飛龍さんの真っ赤になった顔が見えた。
「…………恥ずかしがるならやらなきゃ良いのに」
「ーっ⁉︎」
小声で呟くと、聞こえてたのか飛龍さんがこっちをキッと睨んだ。さっきと違って顔が真っ赤なので、まるで怖くない。
「は、恥ずかしがってなんかいません!」
「はいはい。良い子だからもう少し待っててねー」
「ちょっと!子供扱いしないでよ!」
「パパの仕事が終わるまでもう少し待っててねー」
「誰がパパよ⁉︎」
ギュウウウッと太ももを抓られた。
「いだだだっ⁉︎おまっ、何すんだよ!」
「ど、どうせなら……!旦那って、言ってよ……」
顔を赤らめながら、目をそらす飛龍さん。こ、この人はよくそういう事言えるなぁ………。恥ずかしくないのかな。まぁ、恥ずかしさってのは共有すれば恥ずかしくなくなるものだ。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というのは車に轢かれる外壁的な意味ではなく、みんなやってるから怖くない的な意味だ。それと同じ原理だ。
「はいはい。甘えん坊な奥さんですね」
「うるさい、バカ」
俺は飛龍さんの頭を撫でながら、仕事を終わらせた。