夜中。眠れない。なんでだ?すごく眠れない。なんか、こう………眠れない。なんでだろ。なんかあったっけか。紅茶飲み過ぎたかな。
「………おしっこしたい」
でも、外出るのダルい。寒いし。面倒臭い。何より、こんな夜中に外出たらお化け出そうじゃん。深海棲艦に艦娘が存在するなら、お化けがいてもおかしくない。
あー、ダメだ。考えるな。小心者は、いつどこにお化けが出て来るかを考えるプロだ。それで自分でビビってるんだから世話ないわ。
ダァーくそっ!良い歳して一人で夜中にトイレにも行かねーのか俺は!しっかりしろ!お化けなんていてもスマホのライトで倒せんだよ!
「………行くか」
俺は布団から出て、スマホと懐中電灯とレーザーポインターと閃光弾と光るライトセーバーのオモチャと発光塗料入り水鉄砲を持って部屋を出た。
そーっと、足を忍ばせて男子トイレに向かう。つーか、そもそもなんで男子トイレが俺の部屋にねーんだよ。男子俺しかいねーだろうが。
ライトセーバーを腰に、その他のものはポケットやウエストポーチに突っ込み、懐中電灯だけ手に持って歩いた。
窓からは満月が光を照らしていた。月光、という言葉は厨二心をすごく擽ぐるが、実際の所明かりが月光のみだと非常に怖い。俺もう泣きそうだし。
「…………もう立ちションで良いかな」
うん、そうしよ。どうせみんな寝てるし。窓から外に出て、壁に立ちションしよう。
俺はそう決めて、窓を開けて出ると、ライトセーバーを置いてパジャマとパンツを少し下ろした。念の為、発光塗料入り水鉄砲と閃光弾以外のライトというライトを全て照らし、俺の場所だけめっちゃ輝いてて、それで立ちションしてんだから、もうほとんど露出魔だが、命には変えられない。お化けに呪われるよりマシだ。
それに、この時間帯に艦娘なんて通らないだろうし……。
「悪霊たいさーん‼︎」
「ふぬおおおおおおおおおおおおお⁉︎⁉︎⁉︎」
突然、目の前の窓が割れて、拳が飛んで来て、俺は首だけ曲げてギリギリ回避した。今避けれたのはほぼほぼ偶然だった。
「へ………?て、提督………?」
「は、榛名さん……?」
パンチをかまして来たのは榛名さんだった。
「も、申し訳ありません‼︎すごく光ってたから、お化けかと思って……!」
「う、うん。それは良いんだけどね」
「ガラスとか刺さってませんか⁉︎お怪我は……」
「あの、榛名さん」
改めて、という感じで名前を呼ぶと、榛名さんはとりあえず静かになった。
「あまり、見ないでくれません?」
俺、立ちションなう。
榛名さんもようやく気付いたのか、顔を真っ赤に染めて手で覆った。
「いっ……いっ………」
あ、これはダメだ。口が悲鳴の形になってる。
「いぃぃやあぁぁぁああああああ‼︎」
2発目は避けられなかった。顔面に戦艦のパンチが直撃し、空中で1回転半して落下した。
逃げ出す榛名さんと、今の悲鳴で明かりがついて行く鎮守府。薄れゆく意識の中、間違いなく俺は気絶すると悟ったので、とりあえずズポンとパンツを履いてから気絶した。ぐふっ。
++++
目を覚ますと、俺の部屋の天井だった。
「んっ………」
「あ、目が覚めた?」
聞き覚えのあるフランクな声。飛龍さんの声だ。
「ひ、飛龍さん………?」
「榛名の悲鳴で目が覚めて、やけに明るい所あったから行ったら、提督が倒れてたのよ。だから、とりあえず私達の部屋に運んで来たの」
「そうですか……。面倒かけてすいません………」
「いいのよ、別に」
俺は謝りながら、窓の外を見た。まだ夜中だ。俺が倒れてからそんなに時間経ってないのか………。
すると、「さて、」と仕切り直すような声と共に、飛龍さんが布団の中に手を入れて、俺の股間をズボン越しに握った。何してんだよコイツ、と思った直後、その手にすごい力が入れられた。
「いだだだだだ‼︎捥げる!魔羅捥げる‼︎」
「なーんで、夜中にライトまみれで榛名に悲鳴上げられるような事になったのかしら?」
「せ、説明する!するから、捥ごうとするな‼︎」
すると、飛龍さんは手の力を抜いた。だが、股間の上から手を動かさない。
「…………あの、手……」
「離さないわよ。話すまで離さない」
「スケベ」
「何か言った?」
「すいませんでしたああああああ‼︎」
ていうか、少しこの人酔ってね?ほんのりと顔赤いし、今夜も飲んでたのかよ……。
とりあえず、説明しようと口を開きかけた所で、俺の身体は止まった。ど、どうしよう……夜中に一人でトイレにも行けなくて立ちションしてた、とは言えねーよ。
「あー……トイレに行って、念のためライト持ってったんです。そしたら、榛名さんとすれ違ったから、少し悪戯したら、高速戦艦パンチ喰らった」
立ちションの事は伏せて伝えた。
「…………なんであんなライト持ってってたのよ。ていうか、レーザーポインターって持って行く意味あったの?」
「………まぁ、色々あったんですよ」
「あ、もしかして、怖かったんでしょ」
「……………」
俺は顔を逸らした。まぁ、立ちションがバレるよりマシだ。
「ふぅーん?提督も可愛いところあるじゃん?」
ニヤニヤしながら、俺の頭を撫でる飛龍さん。まぁ良いや、この人は酔ってる時の記憶残るタイプだから、今の態度を明日になって全力で後悔する未来が見える。
「で、大丈夫なの?」
「何が」
「さっきトイレに行こうとして倒れたって言ってたじゃない。一緒に行ってあげようか?」
「あー………」
ここで行かなきゃ怪しまれるな。飛龍さんは多分、お化けとか信じてないし、怖がる必要もないだろう。
「………誰にも言うなよ」
「分かってますって!」
俺は飛龍さんと二人で部屋を出て、トイレに向かった。
さっきまでおぞましく感じた月光も、二人で歩くだけなら良い感じの月明かりに感じた。念の為、スタングレネードと発光塗料入り水鉄砲だけポケットに入ってるし、いざという時は問題ないだろう。
「………………」
ふと飛龍さんを見ると、不機嫌そうな顔をしていた。なんで怒ってるんだろうか、俺なんかしたかな。
「………なんで、私の腕に抱きつかないの」
「は?」
「なんでよ!お化けが怖いのになんで私の腕に引っ付きながら屁っ放り腰になって涙目でついて来ないの⁉︎」
「いや、だって二人いれば怖くねーし」
「怖がってよ!もっと怖がってよ!」
こいつ酔うとめんどくせーな。なんなんだよマジで。
俺は無視して飛龍さんと歩いた。で、トイレに到着。
「待っててよ。絶対先に戻んないでよ」
「分かってますよーだ」
あっかんべーってやるな、可愛いだろうが。
トイレに入って、さっさと用を足した。まぁ、立ちションしたばかりで出ないから、発光塗料入り水鉄砲で音だけ誤魔化してるけど。
流して、手を洗ってトイレを出ると目の前に貞子がいた。
「」
「う、うらめしy……」
直後、俺はポケットのスタングレネードを叩きつけ、発光塗料入り水鉄砲を貞子に乱射した。
「ギャッ……⁉︎ちょっ……なっ⁉︎」
「で、出たあああああああああああああ‼︎」
「まっ!ていと……!ま、前が見えない………⁉︎」
++++
俺は部屋の中に駆け込んだ。左胸を抑えて、息を整える。で、出やがった……!マジで、出やがった。まさか、スタングレネードが有効とは思わなかったけど。………ふぅ、よし落ち着いたぞ。寝よう。明日になったら、陰陽師を呼ぼう。
「…………あり?飛龍さん?」
やばい……!置いて来てしまった。このままじゃ飛龍さんが危ない。でもまたお化けのいる所に戻るのか……?
いや、ダメだ。飛龍さんを助けに行かないと!俺は発光塗料入り水鉄砲を持って、部屋を飛び出した。
トイレの前まで大慌てで駆け付けると、発光塗料塗れの飛龍さんが超泣いてた。近くに、カツラが落ちている。
「ううっ……ぐすっ……ひぐっ………」
「…………」
なんで飛龍さんに発光塗料が?俺はさっきお化けに撃ったはずだ。
………はっ、もしかして!
「飛龍さんって、お化けだったんですか?」
「なんでそうなるのよ‼︎」
すっかり酔いが覚めた状態の飛龍さんが俺に怒鳴った。
「何するんですかいきなり‼︎グレネードで目は見えなくなるし、変な液体掛けられるし最悪よ‼︎」
「…………? 俺は貞子に撃ったんですよ?」
「それ私よ‼︎」
「貞子の正体って飛龍さんだったんですか⁉︎」
「貞子のカツラを被ってたのが私なだけよ‼︎てか、いい加減察しなさいよバカ‼︎」
…………ああ、そういうこと。つまり、俺を脅かそうとしたわけだ。
「す、すいません」
「もう……最悪よ………」
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよ……。まだ視界戻らないんだもん……」
「……………」
実際、お互い様な気もするけど、俺が泣かしたのは事実だ。
俺は飛龍さんに肩を貸した。
「と、とりあえず部屋に戻りましょう」
「…………おんぶ」
「はいはい」
「……………お風呂」
「はっ?」
「………こんな変な液体塗れは気持ち悪いから、お風呂」
「え、でも目ぇ見えないんですよね?」
「…………………」
「飛龍さん?」
「……………………一緒に入って」
「…………マジ?」
「入ってくれないと、提督に汚されたって明日大声で叫ぶから」
「わ、分かったよ……。何処の?」
「提督の部屋のに決まってんじゃん」
飛龍さんをおんぶして、部屋に戻った。そのまま、風呂場に直行した。
「……………せて」
「はっ?」
「………脱がせて」
「いや、目見えなくても脱ぐくらいできるでしょ」
「いいから。叫ぶよ」
「わ、わかりましたよ………!」
いや、わかるなよ。良いのか、俺。確かに飛龍さんとは結婚するが、そんな立場を利用して脱がすなんてこと。でも向こうから脱がせてと言って来たし。しかしそれでは言質を取って服を剥ごうとしてる最低な奴に……いや、でも、しかし。
「早く!」
「はい」
怒られたので、飛龍さんの服に手を掛けた。まずは袴を脱がせると、続いて上半身に手を掛けた。