無/霊タイプの厨ポケが現れたようです   作:テテフてふてふ

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ダメージ計算の連続で心折れてたわ(遅くなってごめんなさい。リアルが多忙でなかなか小説書けませんでした)


16:VANILLUXE is GOD

「ま、マキナ……絶対にこっち向かないでねっ!!」

 

「……わかっている」

 

 

現在シロナは、とあるラブホテルの一室にて、恋仲でもない男と同じベッドを共にしていた。

 

ゆうべはおたのしみでしたねと言われても致し方ない状況ではあるものの、やましい事は何も起きていないし、起きる予定もない。しかしながら、男女が愛を育む場において、知らない仲ではない男と共に居るという事実は、シロナを赤面させるに易かった。もっとも、知らない仲の男と共にこんな所にいたら、それはそれで大問題ではあるが。

 

シロナの強い要望により、お互いに背を向けた状態で最大限に距離を置いて、二人はベッドに潜り込んだ。だが、薄暗い部屋に妖艶な空気を漂わせる薄桃色の電飾、ベッドにあしらわれたメルヘンチックな天蓋カーテン、仄かに香るマキナの香水の匂い……シロナに必要以上の情報が押し寄せ、彼女が冷静を装う為の余裕を奪い去る。

 

(……あたしだけがこんなに気にしてるのも、なんだか面白くないわ)

 

シロナはマキナに背を向けたまま、わずかに首を動かし、それとなく様子を窺うが、見えるのは彼の背中だけだ。そもそも、あっちを向けと言ったのは他でもない、シロナ自身だ。

 

「ねえ……マキナはその……こういう所に来た事はあるのかしら………?」

 

「……あるように見えるか?」

 

彼から返ってきた言葉に、未経験である事の羞恥の色はなく、どことなく諦観…あるいは達観が見え隠れしている。

 

 

愚問だった。

 

 

かけがえのない存在を失い、独りであり続ける事を選んだ男が、誰かを愛し、誰かと体を重ねるなど……邪推ですらない。

 

「ごめんなさい。変な事を訊いて……」

 

「謝らないでくれ。傷口に塩を塗るつもりか?」

 

デリカシーの欠片もない言動に及んでしまった事を、シロナは悔いた。しかし、腹を割って彼に踏み込みたいと思う自分がいる事に、シロナは気づいてしまう。

 

……完全に、修学旅行の夜にテンション上がってしまい、クラスの誰それが好きだとか、そんな感じの会話で盛り上がる女子のソレだが、本人はまるで自覚をしていない。

 

「マキナが初めてポケモンを手にしたのは、いつからなの?資格を取る前からポケモンを持っていたようだけど……」

 

「……どうだろうな。5歳かそこらになるんじゃないか?」

 

「へぇ……随分小さい時からなのね。じゃあ、最初に触れたポケモンはココドラとかなの?」

 

「いや、最初のポケモンはおそらくヒトカゲだ」

 

おそらく……などと、曖昧な返事を寄越す時点で、彼がいかに数多くのポケモンと関わって来たかが窺える。

 

「……マキナという名前は、本当の名前なの?」

 

礼儀を欠いた質問だとシロナは心得ていたが、機械(マキナ)などという名を、親が子に付けるとは思えなかったのだ。

 

「……本当の名前ではないが、それが今の俺の名前だ」

 

「なぜ、そんな名前を名乗っているの?」

 

「俺も知らない。()()()()()()()()

 

……意味深長な匂いを醸し出す言葉を残したマキナだったが、その真相はトレーナー登録の際に『マキオ』と記入したところ、字が汚かったせいで受付嬢が間違えて『マキナ』と登録してしまっただけである。要するに、恥ずかしくて本当の事が言えないだけだ。

 

 

(…あなたは世の人々に、『機械』などと心ない名前を付けられ、蔑ろにされたと言うの?そんな……あなたは、こんなにも必死に、力強く生きているというのに……)

 

 

言うまでもないが、そのような事実はまるで存在していない。

 

 

「……マキナは、この世界を恨んでいるのかしら」

 

「……いや、誰が悪いなどという話ではない。悪いのは俺だ。俺がしっかりしていなかっただけの事だ」

 

 

(マキナ……あなたは自分だけを責め続けるのね。何もかも、自分の未熟さが招いた事だと、自己完結するつもりなのね)

 

 

言うまでもないが以下略。

 

 

「……そろそろ終わりにしないか?明日はそれなりに早く起きないといけないんだ」

 

「……そうね。不躾に色々と訊いてしまってごめんさい。おやすみなさい」

 

未だ燻る形容し難い感情を抑制しつつも、シロナは瞼を閉じた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

スマホのアラーム音が安眠の終わりを告げ、急速に俺を覚醒へと引きずり出す。いつもと違う環境の中での目覚めは、あらゆる何かが異なっていた。

 

 

首元に、自分以外の何者かの息遣いを強く感じる。

 

俺の背中には、自分より少し高めの体温が押し当てられている。

 

依然として、思考能力が緩慢としている俺は、考え無しに背後に纏わりつくナニカを鷲掴みにする。

 

俺の手中に、女性特有の絶妙な弾力を内包した柔肌………

 

 

ではなく、どこか硬質でザラザラとした感触が広がっていた。

 

 

素で混乱した俺は慌てて振り返る。

 

 

スヤァ…という擬音が聞こえてきそうなほど、気持ち良さそうな顔で熟睡するガブリアスがいた。

 

 

「ファッ!?」

 

 

おったまげた俺は、仰向けの状態からバク転へ移行するという、超アクロバティック起床法を以ってしてベッドから脱出する。オメガ11、イジェークト。

 

「ふぇっ!?」

 

俺の絶叫に驚いたシロナも、口元から涎を垂らしながら飛び起きる。嗚呼……チャンピオンの威厳が……

 

「えっ、マキナ……?…………っ!!ご、ごめんなさい!!あたし、多分寝ぼけてて……」

 

よくわからぬ弁明をしながらも、シロナはガブリアスをモンスターボールに戻す。

 

「……冗談にしては悪ふざけが過ぎるぞ。どういうつもりだ?」

 

「あたし、いつもガブリアスと寝ているから……癖で出しちゃったのかもしれないわ」

 

ジーザス。あんな見た目が凶暴かつ肌触りが最悪な抱き枕があってたまるか。あられもない二次元美少女の絵が描かれた抱き枕と共に眠るオタクの方がよっぽど正常だよコレ。

 

どうやら昨夜は『シロナ、ガブリアス、俺』という、混沌とした川の字を描いて夜を越したらしい。珍しくアロフォーネが静かだなぁと思っていたのだが、そう言う事だったのか……

 

『ますた………わたしは、しろなとますたを、あなどっていました。まさか、らぐなろくとともに、いちやをすごすとは……しろなとますただけは、おこらせてはいけませんね。せかいがしゅうえんをむかえます』

 

アロフォーネの入ったゴージャスボールがプルプルと震えている。申し訳ないが厨ポケ様に人外扱いされるのはNG。

 

 

人類史に前例を見ない、全く新しい朝チュンを経験した俺はシロナに別れを告げ、ラブホを後にした。なんなんだこの童貞に厳しすぎる世界は。

 

なんとも言えない気分のまま、俺はデボンコーポレーションの所在地であるカナズミシティへと向かう。一際目立つ、大きな建物が聳え立っている。あれがデボンコーポレーションだろう。

 

デボンの受付嬢は俺を見るなり驚いた表情を浮かべたが、顔パスで中へと通してくれ、ご丁寧に社長室まで案内をしてくれた。

 

「ツワブキはこちらにおります。どうぞ、お入りくださいませ」

 

雰囲気に呑まれそうになりつつも、社長室へと足を踏み入れる。社長室には、いかにも珍しそうな石や宝石、水晶などがディスプレーされれおり、ダイゴさんの石に対する執着心が親譲りであるのが見て取れる。

 

「挨拶が遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした。いつもお世話になっております、ツワブキさん」

 

見るからに高級そうなデスクで書類に目を通していた初老の男……ツワブキムクゲに頭を下げると、ホスピタリティー溢れる笑顔で迎えてくれた。

 

「おお、マキナくんではないか!!わしの方こそ君にはお世話になっているよ。どうだね、我が社の製品は役に立っているかね?」

 

「ええ。いつも有難く使わせて頂いております」

 

「それは重畳。我が社の製品……特に特製のモンスターボールたちは、マキナくんの試合が実況放送されるようになってから、飛ぶように売れているんだ。モンスターボールの開発事業はあまり業績が芳しくなく、既製品にシェアを潰されていた負け犬事業だったが、マキナくんのおかげで一躍花形事業だ!!」

 

……性能云々ではなく、純粋に見た目が良いからと言う理由で使っているだなんて、口が裂けても言えねぇなコレ。でも、ゴージャスボールとプレミアボールは、オシャボ勢にとって非常に汎用性が高いボールなので、大変重宝している。原作だとプレミアボール一個買うと、モンスターボールが十個オマケでついてくるような状態だったしな。完全にびっくりマンチョコのそれである。

 

「ツワブキさん、既にご存知かとは思いますが、御社の従業員の方より大事な書類を預かっております。ご査収ください」

 

俺はマグマ団員から奪還した書類を取り出し、ムクゲへと渡す。

 

「おお、そうだった!!その節は本当に助かったよ。お礼の代わりと言っては何だが、困った事があったら何でも言って欲しい。その時はいつでもマキナくんの力になろう」

 

 

ん?今何でもって……

 

 

「ありがとうございます。早速切り出すのはアレかもしれませんが、実はムクゲさんにご助力を賜わりたい事が、いくつかありまして……」

 

「いくつでも構わないから、遠慮なく言って欲しい」

 

「ありがとうございます。まず一つ目のお願いです」

 

俺はアタッシュケースから一本の試験管を取り出す。

 

「むっ、これは……?」

 

「取り扱いに気をつけてください。それはとあるポケモンから分泌される、非常に毒性の強いヘドロです」

 

「な、なんだって!?こんな物をわしに渡してどうしろと言うんだね!!」

 

「その毒を御社の技術部の方々に分析、そして血清の精製を試みて頂きたいのです。できれば、極秘で」

 

「け、血清か……わかった。デボンは医薬品事業にも参入しているから、不可能ではないはずだ。極秘でプロジェクトを立ち上げよう」

 

「ご厚情痛み入ります。二つ目は、こちらをご覧ください」

 

俺はアタッシュケースから、更に別の物を取り出す。

 

「それは……モンスターボール、なのか?」

 

「はい」

 

「我が社が開発しているボールではないね」

 

「詳しくお伝えする事が出来ませんが、特定のポケモンを捕獲する事に特化したボールであるとだけ。このボールを解析して、同じ性能を持ったボールを全く別のデザインで十個ほど作って頂きたいのです」

 

「ほう……特定のポケモンを捕獲する事に特化したボールか。これも極秘かね?」

 

「内密にお願いします」

 

「分かった。……だが、特定のポケモンを捕まえ易いという技術は、我が社の開発事業にも流用したいほど興味深いものだ」

 

……ムクゲは皆まで言わないが、チラチラとこちらに視線を投げかけ『この技術、パクっちゃってもいいよね?』とでも言いたげな顔をしている。さすがはホウエンきっての大企業……商魂が逞しすぎます。

 

「……商用目的で作られたボールではないので、問題はないかと」

 

「うむ、マキナくんは実に賢く察しの良い男だ。ぜひうちの会社に来て欲しいものだよ。わっはっは!!」

 

増える受注……減らない残業……迫る納期……休日出勤……うっ頭が…………

 

「別のデザインにするという事だが、具体的にマキナくんはどんなデザインを所望しているのかね?」

 

「そうですね……下半分は白色、上半分は半透明の白色、上下の境界線は水色でお願いします。上半分に白色で(アスタリスク)のような白い模様が描かれていると最高ですね」

 

クソ細かい注文をしているという自覚はあるが、オシャボ勢としてデザインの妥協は許せない。ダークボールは猛省しろ。

 

「うむ、ボールの開発事業には潤沢に予算を回せる。必ずや成功させてみせよう!!」

 

「ありがとうございます。次で最後になりますが、一から開発して頂きたい物があります。それは……」

 

一番重要かつ慎重に事を進めるべき依頼なので、俺は可能な限り詳細に要件を伝える。

 

「………なるほど。一体何に使うかとても気になるが、これも極秘なのだろう?」

 

「はい」

 

「こちらは少々難航しそうだが、尽力してみよう」

 

「ありがとうございます。私からのお願いは以上です。もちろん、タダでやれとは申し上げません。現在、私のスポンサーとして支援を賜わっている御社からは、身の丈に合わぬ程の投資をして頂いております。今後、その支出は全て、此度に依頼した三つの研究開発に回して頂けないでしょうか?」

 

「……本当にそれで良いのかね?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

正直、ポケリゾートのローン返済に追われている今、デボンからの支援金が完全になくなるのは、全くと言っていいほどよろしくない。が、背に腹は代えられない。

 

なにより今の俺なら、金なんぞその気になればいくらでも工面できる。ただ、あまり闇っぽい事をすると社会的にポアされてしまうし、ただでさえ世間からの印象は芳しくないので、後ろめたい事はするべきではない。人間というものは汚れた金で食っていこうとすると、根っこから腐っていくものである。悪い事をした分、ぜーんぶ自分に返ってくるのだ。(カルマ)、嘘つかない。

 

「マキナくん、三つ目に依頼してきた物だが……何か名前を考えているかね?」

 

「名前ですか。そうですね……『sleeping beauty』が良いでしょう」

 

 

 

賽は投げられた。あとは川を渡り切れるよう、全力を挙げて全てを導くのみだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

いわタイプのポケモンをこよなく愛し、彼らの使い手である猛者たちが集うカナズミジムは、騒然としていた。

 

公式戦で連戦連勝を築きあげているあの男……『機械仕掛けの新種使い』が、その考えを悟らせぬ硬い表情と共に、カナズミジムに現れたのだ。

 

機械仕掛けの新種使い……マキナは、ジムの一番奥にて門下生たちを一望するジムリーダー・ツツジだけを見据え、彼女の元へと一直線へと向かっていく。

 

当然、いくらあのシンオウチャンピオンを打ち破った男といえども、黙って素通りさせる事など、鍛錬に勤しんでいたトレーナーたちが許さない。

 

いきなりジムリーダーに挑めると思うな……そう意気込むトレーナーたちは、次々とマキナに勝負を仕掛ける。

 

 

そして、その全員が例外なく瞬殺された。

 

 

まさに一瞬だった。マキナの実力とやらを見定めんと高みの見物を決め込んでいたツツジの顔に、焦燥の色が広がっていく。あまりにも一瞬の出来事で、どんなバトルだったのかすら分からなかったのだ。

 

一人、また一人とトレーナーたちをあしらうマキナが、確実にツツジの元へと近づいてくる。どこまでも無表情な男が、獲物を捕捉した野獣の眼光の如く、ツツジただひとりを視線で射抜く。蛇に睨まれた蛙のように、ツツジはすくみあがってしまう。

 

 

(……冗談を。わたくしは蛙などではありませんわ。ジムリーダーとしての全力を尽くし、この男に打ち勝つ……いくら『機械仕掛けの新種使い』であろうとも、簡単にジムバッヂが得られると思ったら大間違いですわ)

 

 

ツツジは、未だトレーナーズスクールに在学中の、年端のいかぬ少女だ。さりとて、彼女は実力の伴った、立派なジムリーダーでもある。このジムを統べる者として、門下生がやられた程度で狼狽するほどお粗末な胆力など見せられるわけもなかった。

 

 

全てのトレーナーがマキナに敗れ、残るはツツジ一人となる。マキナはツツジのジムリーダーとしての風格、貫禄、覇気を見定めんと、表情一つ変えず舐め回すように観察している。

 

 

「……ようこそカナズミジムへ。わたくし、ジムリーダーのツツジと言います。トレーナーズスクールで培ってきた知識と経験……惜しむことなく貴方にお見せしますわ。貴方の全力、わたくしに見せてくださるかしら?」

 

年の離れた相手であろうと、ツツジが下手に出る事はない。それは、ジムリーダーとしての自信と誇りの表れであり、ツツジという少女を体現したものであった。

 

ツツジは一匹目のポケモンを繰り出す。いわ/はがねタイプのコンパスポケモン、ダイノーズだ。ダイノーズはあらかじめ持たせておいた「ふうせん」によって、宙へと浮かび上がる。これで、ダイノーズの苦手とするじめん技は当たらなくなっただろう。

 

対するマキナが繰り出したポケモンはくさ/かくとうタイプのきのこポケモン、キノガッサ。

 

(相性は最悪ですわね)

 

ダイノーズはかくとうタイプに滅法弱い。しかしポケモンを出した今、臍を噛んでも仕方がない。

 

(わたくしのダイノーズは頑丈ですもの。どんな強力な一撃だろうとも、必ずや耐えてみせますわ)

 

いわタイプで統一されたツツジのパーティにとって、キノガッサは非常に重い相手だ。何かしらの足枷を押し付けたい所だ。ツツジは迷いなく指示を出す。

 

 

「ダイノーズ、でんじは!!」

 

「キノガッサ、キノコのほうし」

 

 

ツツジの相手は、どこまでも堅実だった。ダイノーズに大打撃を与えられるかくとう技を、キノガッサが持っている事は明確。だが、ツツジの目の前にいる男は、石橋を叩くかのようにしてダイノーズを眠らせる事を選んだのだ。

 

(なんなんですの?この男……まるで次の一手が見えませんわ)

 

ツツジは考える。ダイノーズ次第では、次のターンに起きてくれるかもしれない。しかし、もしもダイノーズが起きなかった場合、ダイノーズは何をする事も出来ずに瀕死へと追い込まれてしまう可能性が非常に高い。

 

「ダイノーズ、戻りなさい!!」

 

ツツジはダイノーズを引っ込めつつ、マキナの顔をさりげなく窺うが、特に表情を変える様子はない。

 

(ポケモンを変えるのは想定の範囲内と言う事ですの?)

 

結局、相手の思惑を図り損ねたツツジだったが、十中八九かくとう技を指示しているだろうとアタリをつけ、次のポケモンを繰り出す。

 

「頑張って、アーマルド!!」

 

むし/いわタイプのアーマルドならば、キノガッサが得意とするくさ技もかくとう技も、さほど痛手とならない。加えて、ツツジのアーマルドは『つばめがえし』を覚えている。キノガッサを一撃で倒す事も不可能ではないはずだ。

 

ボールから出てきたアーマルドに、キノガッサの素早い一撃が叩き込まれる。マキナはキノガッサに『マッハパンチ』を指示していたようだ。

 

(アーマルドはラムのみを持っていますから、キノコのほうしは通用しませんわ。アーマルド、なんとかキノガッサの攻撃を凌ぐのよ)

 

キノガッサにとってアーマルドは得意な相手ではないが、苦手な相手でもないはずだ。既に手負いのアーマルドを倒さんと、ダメ押しをしてくるに違いない……そんな思考を巡らすツツジは、声高々とアーマルドに命じた。

 

「アーマルド、つばめがえし!!」

 

「キノガッサ、戻れ」

 

ツツジの読みは外れた。マキナはキノガッサを居座らせる事なく引っ込めてきたのだ。

 

 

 

マキナが新たに繰り出したのはこおりタイプのブリザードポケモン、バイバニラだった。

 

 

 

アーマルドのつばめがえしがバイバニラに直撃し、バイバニラを()のごとく纏っていた硬質な氷膜が()()()

 

(どういうつもりですの……?いわタイプのポケモンにこおりタイプのポケモンを出してくるだなんて……)

 

ツツジは拍子抜けしていた。ジムのトレーナーたちを一掃するほどの実力を持ったトレーナーが、相性の悪いポケモンを繰り出してくるなど、予想だにしていなかったのだ。

 

(彼が何をしたいのか分かりませんが、こおりタイプなどわたくしのアーマルドの敵ではありませんわ)

 

ツツジは深く考えず、素直に目の前のバイバニラを倒す事だけを考えた。

 

「アーマルド、いわなだれ!!」

 

「バイバニラ、とける」

 

先手を取ったのはバイバニラだった。バイバニラはアーマルドの攻撃を受けるより先に、ドロドロと氷の体を溶かし始める。軟体化したバイバニラに対して、アーマルドのいわなだれは本来の威力を発揮できず、おおよそ半分ほどのダメージに軽減されてしまう。

 

それだけにとどまらず、弱点を突かれたバイバニラは、突如として強力な冷気を放ち始めたのだ。

 

「あれは……『じゃくてんほけん』ですわね!!」

 

じゃくてんほけんとは、持たせたポケモンが苦手としているタイプの攻撃を受けた時、攻撃と特攻をぐーんと上昇させる持ち物だ。

 

つまるところ、マキナは最初からアーマルドのいわ技を待っていたのであり、ツツジはそれにまんまと釣られてしまったという事だ。

 

(わたくしが……手玉に取られているという事ですの?)

 

おそらく目の前の男は、ツツジの一手一手が、手に取るようにして見えているのであろう。しかしながら、当のツツジには試合の展開が全く読めないでいた。

 

(まずいですわね……既にキノガッサのマッハパンチを受けているアーマルドでは、今のバイバニラの攻撃は受け切れませんわ)

 

勝算のない撃ち合いをするべきではない……ジムリーダーとしての実力と経験が備わったツツジはアーマルドを引っ込めた。

 

 

ツツジは知らない。

 

 

今の自分が戦っている相手は、交代戦でこそ百戦錬磨の立ち回りをするトレーナーだと言う事を。

 

「バイバニラを止めるのよ、アバゴーラ!!」

 

バイバニラが得意とするこおり技、乃至はアーマルドが苦手とするラスターカノンを受けるべく繰り出されたみず/いわタイプのこだいがめポケモン、アバゴーラ。

 

しかし、ツツジが託した役割を、アバゴーラが果たす事は無かった。

 

「バイバニラ、フリーズドライ」

 

みずタイプをも凍結させるほどの凄まじい冷気が、アバゴーラを襲う。ツツジのアバゴーラは少々弱点を突かれた程度では倒れない、ハードロックな個体だ。だが、そんなものは誤差の範囲内だと一蹴するかの如く、アバゴーラはバイバニラの一撃に倒れる。

 

「そんな……アバゴーラが一撃で……」

 

ツツジはただひたすらに戦慄する。

 

いつもならば何の苦労もなく倒せるはずのこおりタイプのポケモンだ。それなのに、ボロボロに砕かれ、ドロドロに融解しているこのバイバニラが、まるで止められる気がしないのだ。

 

(できれば温存しておきたかったのに……でも、出し惜しみをしていられる状況ではありませんわ)

 

ツツジは断腸の思いで切り札を切る。

 

 

「あなたに任せたわ、ボスゴドラ!!」

 

 

ツツジが繰り出したいわ/はがねタイプのてつヨロイポケモン・ボスゴドラは、『きあいのたすき』を掛けている。一撃耐えて、強力ないわ技の『もろはのずつき』を当てれば、バイバニラを倒す事ができる。

 

「バイバニラ、めざめるパワー」

 

滅多に聞く事のない技の名前が聞こえ、ツツジは眉を顰める。めざめるパワーは使うポケモンによってタイプが変わると言う、まさしく個々のポケモンに秘められた力を発揮する技だ。

 

バイバニラのめざめるパワーがボスゴドラに直撃する。ボスゴドラが甚大なダメージを受けているのは火を見るより明らかだった。

 

(彼のバイバニラのめざめるパワーは、じめんタイプ……それとも、かくとうタイプなのかしら?)

 

何にせよ、弱点を痛烈に突かれた事には間違いない。それでも、ボスゴドラは『きあいのたすき』によって引き出された底力を見せ、バイバニラの攻撃を耐えきった。

 

「この一撃を外すわけにはいきませんわ!!ボスゴドラ、もろはのずつき!!」

 

少々大振りな技ではあるが、ボスゴドラの放った『もろはのずつき』は外れることなく、しっかりとバイバニラを仕留めてみせた。

 

だが、これで終わった訳ではない。ようやくバイバニラを処理できたところで、再びキノガッサが繰り出されるのだ。

 

(…ボスゴドラはここまでね)

 

瀕死寸前のボスゴドラに、キノガッサのマッハパンチを耐える術はない。バイバニラを見事止めてみせたボスゴドラを讃えるかのように、ツツジはボスゴドラに最後の命令を下す。

 

「ボスゴドラ、ゆきなだれ!!」

 

 

「キノガッサ、キノコのほうし」

 

 

マキナはキノガッサに攻撃を指示しなかった。此の期に及んで、ボスゴドラを眠らせにきたのだ。

 

(なるほど……『機械仕掛け』とは言ったものですわね)

 

いつの間に握りしめていたツツジの拳に、力が入る。手負いのボスゴドラを一思いに倒さず眠らせるとは、なんと非情な男なのだ……そう思わずにはいられなかった。

 

「ボスゴドラ、起きて!!」

 

「キノガッサ、ビルドアップ」

 

ボスゴドラが眠りこけているのを尻目に、マキナのキノガッサが攻撃力と防御力に磨きをかける。

 

ボスゴドラがようやく目を覚ました時には、キノガッサは二度目の『ビルドアップ』を成功させ、ボスゴドラの『ゆきなだれ』をいともたやすく耐えてしまう。そして、十分に強化されたマッハパンチが、既に虫の息であるボスゴドラに突き刺さる。

 

「………っ!!」

 

瀕死寸前のボスゴドラにここまでする必要があったのか……溢れ出しそうになる罵声を、ツツジは必死に堪える。相手を侮辱した時点で、自分はそれ以下のトレーナーに成り下がるのだ……ツツジはそう自分に言い聞かせる。

 

ツツジは瀕死となったボスゴドラを引っ込め、いわ/じめんタイプのメガトンポケモン、ゴローニャを繰り出す。

 

(持前の頑丈さで耐えて、だいばくはつ……ごめんなさい、ゴローニャ。キノガッサを止めるには、あなたの捨て身の一撃が必要ですの)

 

『だいばくはつ』を使うと、ゴローニャ自身が瀕死状態となってしまう。だが、その分『だいばくはつ』の威力は生半可なものではない。キノガッサは既にボスゴドラの『ゆきなだれ』を受けている。ゴローニャの『だいばくはつ』を食らえば、ひとたまりもないだろう。

 

「ゴローニャ、だいばくはつ!!」

 

「キノガッサ、タネマシンガン」

 

先手を取ったのはキノガッサだ。弾丸の如く射出された硬質な種子は、二発しかゴローニャに命中しなかったが、くさ技に全く耐性のないゴローニャは『だいばくはつ』を起こす前に倒されてしまった。

 

後続のアーマルド、ユレイドル、ダイノーズも、キノガッサに手も足も出なかった。ツツジの完敗である。

 

「……とてもお強いのですね。どうぞ、ホウエンリーグ公認のストーンバッジを受け取ってください」

 

ツツジは浮かない表情のまま、マキナにジムバッジを渡す。

 

「対戦、ありがとうございました」

 

端的な挨拶だけを述べるマキナは、ツツジに顔を合わせようともしない。見損なったと言わんばかりに目を細め、視線を下へと落としている。

 

「……そんな目で見ないでください。わたくしには不相応なのかもしれませんわね」

 

 

手持ちのポケモンのタイプを統一してバトルを行うのは、決して楽な道のりではない。それでもタイプを統一したジムが世界中にこれだけ多いのは、ジムリーダーと呼ばれる者たちは皆、自分がこよなく愛するタイプのポケモンを使い続けるという信念、そしてそれ実現させられるだけの実力があるからだ。

 

ツツジは、自分にもその素養があるという自信を完全に失ってしまっていた。マキナのキノガッサだけでパーティを半壊状態に持ち込まれたのはおろか、いわタイプを苦手とするバイバニラにさえアドバンテージを取られていたのだ。

 

「あなたも、所詮は子供なのだな……と、失望したでしょう……?」

 

自嘲的な呟きと共に、ツツジは上目遣いでマキナの顔色を窺う。

 

 

彼は無表情を脱ぎ捨て、感情を露わにしていた。

 

 

「冗談はよしてくれ」

 

 

「………えっ?」

 

「それは貴女のアイデンティティーのはずだ。それは貴女が大切にしてきた物のはずだ。それこそが貴女の美しさだと私が確信しているからこそ……私は貴女と戦えた事に感謝しているのです」

 

「マキナ……さん……?」

 

「手離さないでください。ありのままでいて下さい。私は貴女のこれからが……楽しみで仕方がない」

 

マキナは呆然とするツツジに不器用な微笑みを見せたと思いきや、そのままジムを後にしてしまう。

 

 

人知れず、ツツジから柔らかな笑みが溢れる。

 

 

「……ふふ、わたくしとした事が自分を見失ってしまうだなんて、らしくありませんわ。そう……わたくしはカナズミジムのジムリーダーにして、いわタイプの使い手。たかだか一度コテンパンにされた程度で、今までのわたくしとパートナーたちを否定して良いはずがありませんわ」

 

 

いわタイプは弱点となるタイプが非常に多く、いわタイプのみで強者たちと肩を並べるのは茨の道だ。それでも、一度弱点を突かれた程度ではくたばらないタフネスこそが、いわタイプの真髄というものだ。

 

「わたくしがへこたれていては示しがつきません。……マキナさん、またいつかわたくしと手合わせをしていただけますかしら?あなたのバイバニラにできて、わたくしのポケモンたちができない道理などありませんわ。わたくしのポケモンたちは、くさタイプにも、みずタイプにも、かくとうタイプにも、じめんタイプにも、はがねタイプにも負けません。ふふ……わたくしをその気にさせた代償は高くつきますわよ?」

 

 

ツツジは既に姿の見えぬ彼に、雪辱を宣誓する。

 

 

 

ツツジはジムリーダーでありながらも、未だトレーナーズスクールに通っている発展途上の少女だ。現時点で不足ない実力を誇ってはいるものの、伸び代は十分に残っている。

 

 

機械仕掛けと呼ばれる男は、意図せずして少女の運命(これから)を変えてしまったのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

デボンを出た俺は、ホウエンのジムバッジの制覇に着手していた。理由は他でもない、リーグを制覇してマスター資格を取得する為である。

 

今後、デボンからの支援金が、依頼した研究開発の資金に充てられてしまうので、俺の収入がガッツリ減る事になる。ポケリゾートのローン、住民税、生活費、ポケモンたちの維持費等々、生きているだけで訳わかんないくらい金が吹っ飛んでいく俺は、少しでも収入を増やして置かないと、冗談抜きで破産する。殿堂入りという目に見える形で実績を残して、協会からの評価を爆上げさせる必要があるのだ。

 

 

そんなこんなで、やっぱり最初のジムリーダーはツツジちゃんだよね、って事でカナズミジムに来た。

 

「おーっす!!未来のチャンピオン!!ここはいわタイプのポケモンを使うハードロックなトレーナーが集うカナズミジム。いわタイプをこよなく愛するむさ苦しい山男がひしめいているが、ここのジムリーダーは現役トレーナーズスクールの生徒、ツツジちゃん!!まさしく紅一点だが侮ってはいけない。彼女の手持ちはどれも屈強なポケモンばかり。くさタイプやかくとうタイプなどのポケモンで一撃粉砕を狙うんだ!!」

 

お、どのジムにも現れて主人公にアドバイスをくれるぐう聖おじさんやんけ。

 

おっさんの言うとおり、いかにも登山家ですと言った格好をした大柄な男たちが、いわタイプのポケモンたちとイチャコラしている。そんな中、ジムの最深部に設えられたステージ上に、ジムリーダーのツツジと思われる少女が、遠目から俺を見下ろしている。

 

 

ツツジちゃんが狂おしいほど可愛い。

 

 

ツツジちゃんと言えばカラータイツ。カラータイツと言えばツツジちゃんである。ツツジちゃんこそがカラータイツの根源と言っても良いだろう。彼女がカラータイツを穿く事により、穢れを知らぬ子供のあどけなさを遺憾なく発揮すると共に、開花し始めた大人の妖艶さを微かに匂わせる。

 

 

いわば、女子中学生である。

 

 

女子中学生とは、未だ色濃く残る子供の純真さと、背伸びにも似た大人の羞恥が入り混じった、生命の神秘とも呼べる存在である。女性たちの長い人生の中で刹那的に観測されるそれは、もはや奇跡と呼んでも良いだろう。つまり、女子中学生とは奇跡である。

 

 

以上の事から『ツツジちゃん=奇跡』である事が証明される。Q.E.D.(証明完了)

 

 

色気のないジャガイモ畑に実った、未熟なる果実を目指し、ジムを突き進む。勝負を仕掛けてくる山男など眼中に無い。砂いじりでもしてなさい。

 

『ますた……わたしこそが、からーたいつがもっともにあう、ぽけもんだとおもいませんか?』

 

うん、アマージョの足元にも及ばないと思う。

 

 

早くツツジちゃんとバトルしたいのに、やたら山男たちに勝負を挑まれる。目が合ったらバトルサインっていうけど、全く目合わせてないんですけど。今の俺、ツツジちゃんのカラータイツしか見えてないから。

 

所詮は門下生なので、ルカリオのしんくうはだけで事は済む。完全なる作業ゲーである。そんなんじゃ虫ポケモンも倒せねぇぞお前ら!!

 

山男たちを一掃した俺は、ようやくツツジちゃんが待ち受けるステージへと登る。

 

「……ようこそカナズミジムへ。わたくし、ジムリーダーのツツジと言います。トレーナーズスクールで培ってきた知識と経験……惜しむことなく貴方にお見せしますわ。貴方の全力、わたくしに見せてくださるかしら?」

 

 

……これわざと負けたらカラータイツのツツジちゃんに踏んでもらえるのかな?

 

 

しかし、ここでバッジを得られないと、地下強制労働施設でペリカを稼ぐ羽目になるので、ちゃんとツツジちゃんを倒す必要がある。

 

 

俺はキノガッサを繰り出し、対するツツジちゃんはダイノーズを繰り出した。ダイノーズは『ふうせん』で宙に浮いている。

 

ダイノーズかぁ……マッハパンチで確定一発を取れるが、ダイノーズの特性が『がんじょう』だとそうも行かなかくなる。すなあらしならまだ良いが、でんじはを撒かれると運ゲーになってしまうので、避けたい所ではある。一旦眠らせておけば、2/3の確率でノーダメ突破できるし、交代しても交代先がラムやカゴを持っていない限りはビルドアップの起点にできる。

 

「ダイノーズ、でんじは!!」

 

「キノガッサ、キノコのほうし」

 

当然、キノガッサはダイノーズの上を取れるので、でんじはを食らうより先にダイノーズを眠らせた。

 

次の一手はマッハパンチで良いだろう。交代先に負担をかけられる『きあいパンチ』が理想的ではあるが、ガッサの攻撃技はマッハパンチとタネマシンガンだけなので仕方がない。やはり交代戦において先制技と言うものは使い勝手が悪いな。

 

「頑張って、アーマルド!!」

 

ツツジちゃんはダイノーズを引っ込め、アーマルドを繰り出す。

 

微妙だな……俺のキノガッサは『くろおび』を巻いているが、アーマルドがHP極だと仮定すると、確定三発くらいだろう。アーマルドは確か『つばめがえし』を覚えられるはずなので、技スペの概念が無い相手のポケモンなら普通に撃ってきそうではある。覚えてないとしたら、のろい、ステルスロック、シザークロスあたりか。いくら一致技とは言え、いわ技が飛んでくる事はあるまい。

 

さあ、ご覧あそばせ。こおりタイプの、こおりタイプによる、こおりタイプの為のいわタイプ狩りをお見せしましょう。

 

 

俺はキノガッサを引っ込め、バイバニラを繰り出す。ツツジちゃんのアーマルドは『つばめがえし』を放ってきた。

 

バイバニラは『くだけるよろい』という、物理技を受ける度に、すばやさのランクを2段階上げると言う、一風変わった特性を持っている。

 

……ぶっちゃけ、もともと鈍足な岩タイプを相手にするなら、がんじょう対策になる『ゆきふらし』の方が使い勝手が良いのだが、まともな個体値のバイバニラはこいつしかいなかったので仕方がない。一応、ロックカットによる奇襲を許さないという強みもある。

 

バイバニラには『じゃくてんほけん』を持たせているので、アーマルドのいわ技を起爆剤にしたい所だ。当然、いくら物理耐久に努力値を振っているとは言え、一致弱点技をそのまま受けては瀕死不可避なので、防御のランクを二段階上げる『とける』を指示する。クソ急所を引いてしまった場合は、お悔やみ申し上げますとしか言えない。

 

「アーマルド、いわなだれ!!」

 

ツツジちゃんはこちらの思惑通りに、いわ技を撃ってきた。エッジだとかなり怪しかったが、なだれならば余程大丈夫であろう。

 

『とける』を積んだバイバニラはアーマルドの『いわなだれ』を受け、『くだけるよろいを発動させるだけにとどまらず『じゃくてんほけん』の恩恵を受ける。

 

「あれは……『じゃくてんほけん』ですわね!!」

 

どうやらツツジちゃんも『じゃくてんほけん』に気づいたらしいが、果たしてバイバニラにどう対抗してくるだろうか。

 

バイバニラはアーマルドに二倍で通るはがね技『ラスターカノン』を覚えているが、弱点を突いたところでオーバーキルだし、交代先に対してそれほど負担をかけられないので撃つべきではない。どのポケモンが出てきても及第点以上のダメージが見込める『フリーズドライ』が安定行動だろう。

 

ツツジちゃんはアーマルドをツッパさせず、ポケモンを変えてきた。

 

「バイバニラを止めるのよ、アバゴーラ!!」

 

アバゴーラか……こおり技でも受けに来たのだろうか?だが、もしバイバニラが『フリーズドライ』ではなく『れいとうビーム』を撃っていたとしても、アバゴーラの特殊耐久ならば二発で落ちているだろう。

 

フリーズドライは威力が控えめな分、みずタイプから抜群を取れる。ツツジちゃんのアバゴーラは『がんじょう』持ちではなかったのか、一撃で落とせた。

 

 

バイバニラは神である。

 

 

おいしそうな見た目と可愛いらしい笑みが特徴的な神。彼は、こおりタイプが苦手とするいわタイプを粉砕するため、この地に降り立った。バイバニラは救世主。

 

種族値合計が535と明らかに強者のソレであるにも関わらず、敢えて微妙な配分にする事で、グレイシアなどの先輩こおり単タイプ勢の顔もキチンと立てている。バイバニラは謙虚。

 

そして、微妙な火力をじゃくてんほけんで補い、くだけるよろいによって鈍足をカバーする事で、純真なツツジちゃんのポケモンたちを一方的に蹂躙するのである。バイバニラは屑。

 

 

バイバニラ is GOD.

 

 

「あなたに任せたわ、ボスゴドラ!!

 

 

アバゴーラを瀕死に追い込まれたツツジちゃんは、ボスゴドラを死に出しする。ボスゴドラはきあいのタスキを掛けている。

 

 

【悲報】バイバニラ、終了のお知らせ。

 

 

やっぱ特性は『ゆきふらし』じゃないとダメですわ。グッバイバッイ。

 

最後っ屁としてバイバニラにめざ地を撃たせるが、当然のごとくボスゴドラに耐えられ、もろはのずつきをぶち込まれる。安らかに眠りなさい、バイバニラ。

 

俺はいわタイプに大健闘したバイバニラを引っ込め、再びキノガッサを繰り出す。アーマルドが若干キツイが、仮に攻略されても後ろにルカリオとナットレイがいるので何の心配も要らない。

 

ビルドアップを2積めば、アーマルドもマッハパンチで落とせると思われるので、とりあえずボスゴドラを眠らせる。

 

おお…ツツジちゃんがイラついていらっしゃる……やはり催眠戦法は万国共通でイラつくらしい。レート民が顔真っ赤にしてきても、プギャーの一言に尽きるが、ツツジちゃんがご立腹だと、ただひたすらに可愛い。蹴られたい。

 

ボスゴドラは3ターン目に眠り状態が解消され、キノガッサに『ゆきなだれ』を撃ってきたが、防御ランクが2上がっている状態なので、大したダメージにならない。次のターンにマッハパンチで沈めた。

 

ボスゴドラを引っ込めたツツジちゃんが後続として繰り出してきたのはゴローニャだった。『がんじょう』で耐えてから『だいばくはつ』ですね。わかります。

 

だがしかし、悲しいかな……ゴローニャ通常種は草四倍な上に、キノガッサはビルドアップを2積みしている。タネマシンガンで確定一発だ。ゴローニャカワイソス…

 

しかも、仮にだいばくはつを決めたとしても、急所を引かない限りはビルドアップを2積みしているキノガッサを倒せない。ゴローニャカワイソス…

 

ゴローニャをタネマシンガンで屠った後は、脳死でマッハパンチを撃つ作業となる。最後に眠ったままのダイノーズをキッチリと落とし、ジムリーダーのツツジちゃんに勝利した。

 

「……とてもお強いのですね。どうぞ、ホウエンリーグ公認のストーンバッジを受け取ってください」

 

バッジはいらねーから脱ぎたてのカラータイツください……と言いたくなるだらしねぇ口を制御し、感謝の意を告げる。

 

 

いや……それにしても、良い。カラータイツは、良い。

 

 

「……そんな目で見ないでください」

 

 

アカン。ガン見し過ぎてバレた。

 

 

「……わたくしには不相応なのかもしれませんわね」

 

 

非難されるかと思いきや、ツツジちゃんはどこか自嘲気味にそう呟いた。不相応……?どう言う意味だ?

 

 

「あなたも、所詮は子供なのだな……と、失望したでしょう……?」

 

 

俺はツツジちゃんの言わんとする事を理解してしまう。

 

 

俺が、カラータイツを履くツツジちゃんを子供っぽいと思っているのだと、彼女は勘違いをしているのだ。

 

全力で否定する必要がある。ここで誤解を解消せねば、今後二度とツツジちゃんのカラータイツを拝められなくなってしまう可能性がある。

 

それは、ある種のディストピアを俺が引き起こしてしまったも同然であり、狂信的なツツジ教徒にぶち殺されても何の文句も言えない。

 

「冗談はよしてくれ」

 

「………えっ?」

 

「それは貴女のアイデンティティーのはずだ。それは貴女が大切にしてきた物のはずだ。それこそが貴女の美しさだと私が確信しているからこそ……私は貴女と戦えた事に感謝しているのです」

 

「マキナ……さん……?」

 

ツツジちゃんは戸惑いを隠せないでいる。当たり前だ。年端もいかぬ少女に、カラータイツの素晴らしさを力説している奴がいたら、そいつは間違いなく変質者である。

 

「手離さないでください。ありのままでいて下さい。私は貴女のこれからが……楽しみで仕方がない」

 

立派に成長したツツジちゃんも、きっとカラータイツが似合っているに違いない。カラータイツの似合わないツツジちゃんなどこの世に存在しないのだ。成長したツツジちゃんを想像した俺は、思わずニヤケてしまう。完全に事案である。

 

 

俺は通報される前にカナズミジムを後にした。可及的速やかに後にした。もう二度とカナズミシティに来れねぇわ、俺。

 

 

『ますた……からーたいつは、つつじにゆずるとして、くろたいつはわたしがいちばん、にあうとおもいませんか?』

 

 

 

エガちゃんに勝てると思うなよお前。

 

 

 




〜不定期☆第二回・無霊(略)おたよりコーナー〜

ア「てんぐになっているさくしゃが、ちょうしこいてどくしゃさまに、さらなるさしえをしょもうしたけっか、なんとにつう(二通)すてきえ(素敵絵)をたまわりました。はくしゅ」

マ「作者を甘やかしてはいけない(戒め) まずは『豆腐ジャム』さんから頂いた、アロフォーネの挿絵です」

ア「ぜんかい、わたしのえをかいてくださったかたですね。さっそくみていきましょう」


【挿絵表示】


マ「再現度高スギィ!!」

ア「ちゅうぽけのいげんに、みちあふれていますね。みてくださいますた、わたしのおきにいりの、みがわりにんぎょうもいますよ」

マ「周りに浮いてる小物まで忠実に描かれていますね。あとシロナさんの寝癖かわいい」

ア「わたしが、さいこきねしすをしゅうとくしたら、このぴあのとかいすで、あいてのぽけもんを、ぶんなぐることができますよ」

マ「なにそれ物理防御に依存しそう」

マ「続いて『水海セツさん』よりアロフォーネの挿絵を賜りました。見ていきましょう」


【挿絵表示】


ア「ますた、これはよめぽけ(嫁ポケ)のふうかくが、にじみでてますね。せいさい(正妻)るーとまったなしです」

マ「どことなくメランコリックな感じが実に素晴らしいです。あとこの女の子が書きそうな丸っこい字狂おしいほど好き」

ア「ますた、このみがわりにんぎょうは、おひさまのかおりがするんですよ」

マ「お日様の香りはダニの死臭らしいぞ」

ア「ひっ………」

マ「豆腐ジャムさん、水海セツさん、挿絵を賜わりありがとうございました。今後とも無霊(略)を応援していただけましたら幸いです。なお、今後挿絵を描いてくださる方は、直接メッセージで送っていただけますと、よりスムーズにお話をさせていただけるかと思います」

ア「それでは、じかいもここであいましょう」

マ「お待ちしてナス!!」
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