作曲 笥箪 雨天決行
原曲 東方萃夢想 砕月
Vo.魂音泉 ランコ 雨天決行
一度だけ、他の妖怪から聞いたことがある。
外の世界は、とても忙しいけれど、全てがカッパの機械みたいにしか動かないらしい。それほどにもつまらないことはあるだろうか。
私は彼と一緒にいることができるだけで、幸せだ。
その幸せなことを教えてくれた彼には感謝の気持ちでいっぱいだ。しかし、照れくさくてありがとうと言うのはまだ先になると思う。
「ま、明日もあるし」
「ん?萃香何か言った?」
「いや、何も言っていないよ。早く飲も!」
彼と一緒にいることができるのは、今日のような月の出る夜のみ。人里に昼の時に下りると大騒ぎになる。そういうのを回避するためだ。
本当は、一日中一緒にいたいと思うほどに彼のことは大好きだ。だけれど、彼は人間。そして、私は鬼。一緒にいるには時間の差がある。その時間の差で彼を傷つけたくない。だから、私は彼に片思いで居続けることにした。
「萃香は永いこと生き…」
彼の言葉はそこで止まる。
なぜなら彼は年齢の話をしようとした。だからそれを睨んで黙らせた。たったそれだけのことだ。
「す、萃香は最近の幻想郷をどう思う?」
おっと。少し怯えさせてしまった。
仕方ない。彼が悪いのだ。女性に対して年齢の話はタブーだと何回か言ったこともある。それを何回目だというぐらいに繰り返すもんだから、そろそろ手が出そうだ。
「んー。最近の幻想郷かぁ。楽しいとは思うよ」
君といれるから。
「強いて言うなら、いつもの幻想郷って感じがするね」
彼は深く悩んだような素振りを見せた。
私に対して、何か言おうとしたが、居酒屋の店主から、閉店時間だから。と言われ、店を追い出された。
「なあ、何か言おうとしてなかったか?」
「いや…別にどうでもいいことだから」
そう。と私は頷いて、彼と別れた。
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その彼とはいうと、萃香と別れたあと、盛大なため息をついた。
なぜ、いつも好きだと言えないのか。
たった3文字の言葉だ。
それを言うのに、もう1、2年かかっている。
明日、絶対に言うぞ。と意気込みながら、酔いを少しでも醒まそうと、とても冷たい水を勢いよく飲み込んだ。
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久しぶりに人里の昼を見た。
私が思ったのは、昼の人里の活気を見るためではなく、彼がどのようなことを昼にしているか。それが気になったのだ。
テクテクと歩みを進めていくと、すんなり、彼を見つけることができた。
大声で、彼を呼ぼうとしたけれど、周りには他の人間の女性がいた。ここで彼を呼ぶと迷惑になるかもしれない。
そう察すると、彼から背を向けて走り出した。
どこまで走ったのかは知らない。
もう周りは夜だ。
明るいと思われる月は雲に隠れて、周りを照らさない。
そのせいで、私が孤りでいることをいやがうえにも知らされる。今日、昼の人里になんか、行かなかった方が良かった。
そう思い始めた時、私の双眸から冷たい水が流れそうになった。
涙だ。
認識するのにはそんなに時間はかからなかった。
私が泣くのは何年ぶりだろうか。少なくとも、ここ数百年は泣いていない。
膝がガクガクと震えている。弱ったのか?
いや、弱っているのは、私の心だ。
何故、心が弱くなったのか?
そんな疑問が私の頭の中で、堂々巡りとなる。
その時、後ろから足音が聞こえてくる。今の状態でも、生半可な中級妖怪なら倒すことはできる。
後ろを向いて、足音の主を見ると、彼だった。
「ハァ…ハァ……やっと追いついた」
何故私のことを追いかけてきたのか、今の私は分からない。
顔に疑問符が出ていたらしく、彼はニッと笑って説明し始めた。
彼曰く、人里で囲まれていたのは言い寄られていただけで、他の人が好きだから。という理由で断っていたらしい。
そんな中、遠目に私のことを見つけたが、私が逃げ出したのを見て追いかけてきた。そうだ。
「なんだ。そんなことだったのか」
けれど、他の好きな人というのが一番引っかかる。
人里にいる誰かかもしれない。それでも、期待は捨てられなかった。
「そんなことって……。まぁいいか。萃香、言いたいことがあるんだ」
「な、なんだ?」
「俺はお前のことが好きだ。付き合ってくれないか?」
「………やっと言ってくれたか。いいぞ!私で良かったらな!」
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いずれは彼とは別れてしまうだろう。
それは正直辛い。けれども、涙で別れるのはさらに嫌だ。
それなら、私はその時、笑って別れよう。
そう決意すると、自然と涙が零れそうになる。
それを彼に気付かれないように、腕でこっそり拭った。
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彼は、もうこの世にはいない。
けれども、彼から教えてもらった大切なことはまだ、この小さな胸に仕舞われている。
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次回、goodbye friend。