アレンジ ねこ☆まんじゅう
作詞 Stack
原曲 東方地霊殿より ラストリモート
Vo.Stack
ねえ、どうして人の心はこんなにも私を痛めつけるの?
そう感じた私は第3の目の瞼を下ろした。
私は覚妖怪であり、心を読む事を得意とする妖怪だ。
ただ、私は人間の心を読む事に酷く疲れた。
そのため、私は人間から遠ざかるために眼を閉じたのだ。
「こいし、その目はどうしたの?」
「ちょっと目が疲れちゃったから。休めてるだけだよ」
姉である、古明地さとりは不思議そうに首を傾げた。
まるで、私の心を読む事が出来ないように。
その後、ずっと何もなく、相手の心も読むことも読まれることもなく、私にとっての平和な日常が訪れた。
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その日は突然やってきた。
私は何も変わらない。至って普通の1日の始まり。
ただ、ひとつだけ変わっていた。
お燐が走り回っていたのだ。
「ねえ、お燐。どうしたの?」
割と大きめの声でお燐に呼びかけた。
お燐の耳なら確実に聞こえる声量だ。
けれども、お燐は私の声に反応することはなかった。
お燐のいたずらなのだろう。
そう判断した私は、姉の元へと向かった。
「お姉ちゃんまで……」
路傍の石ころを探すように、姉は私を探していた。
何を思ったのか、私は地霊殿から飛び出した。
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もう私は、誰にも見えることはない。
子供以外には見えることはない。
久しぶりに地霊殿に戻ると、滅多に大きく感情を表に出さない姉が泣いていた。
「私の目がちゃんと、あなたを見ていれば良かったのに……」
違うんだ。お姉ちゃんが悪いわけじゃない。
この言葉も今の私の状態では、彼女には届かない。
私は背後からそっと姉を抱き締めた。
『もう何もかもが遅かったんだね。もう、何もお姉ちゃんに届かない』
こんな時にさえ、私の瞳からは涙は流れない。
私は感情を露わにしている姉と対称的に、感情が段々と消え始めている。
もう、姉やお燐に会うことは無いだろう。
だから、言っておきたい。
『ずっと言えなかったけど。
お姉ちゃん、大好き』
きっと、私の感情はどんどん消えていく。
その時にお姉ちゃんやお燐、お空たちに会っても、私は傷つけることしか出来ない。
お願いだから、早く時間が経って私のことを忘れて。
私が傷つける前に。
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あの時から何年経ったのだろう。
私は感情をとっくに失くした。あの時に感じていた寂しさなんてものは感じなくなっている。
まるで、自分が自分でないようだ。
どうせ、誰も私を見つけられない。
お姉ちゃんも、私を忘れたらもっと楽になる。
人混みの多い人里の大きい道を歩いていても、風が通り過ぎるように人は通り過ぎていった。
これだけの人の心を読まなくなった。これは喜ばしいことなのだろうか。
私のしたことは正しいと信じている。
涙を流す姉の姿はもう見たくない。
だから、私はあそこを離れた。
感情は失くなった。
けれども、私があそこに置き去りにした涙。私が目を閉じていてもいなくてもずっと聞こえてきた声を思い出す。
すると、ぎゅっと胸が締まるような感覚がある。
彼女達は今も私を探しているのだろうか。
姉はこう言っていた。
私たちが読むのは無意識や意識して起きたもの。
悪いことだけじゃない。
だから、眼を閉じないで。
今でもこの言葉の意味はよく分からない。
あれほどまでに、人間の無意識の行動に私たちは痛い目を見せられたのに。
だから第3の目を閉じたのだ。
『もし、もう一回会えたら、真面目に話を聞いてみよっかな〜』
そのもう一回が無いということを、承知していながらも、そう呟いた。
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私は無意識の中で、あることを意識を持って決めた。
このまま、無意識に身を委ねれば私を知る人たちの記憶からどんどん消えていく。
探されないために、私は意識的に無意識の行動をとる事にした。
人の心を読むことはもう嫌だ。ただただ、哀しくなるだけだから。
贅沢を言っているのはわかっている。
覚妖怪でありながら、何も考えずに意識のない無意識に行動をする事は矛盾していることというのは、わかっている。
大人になった子どもたちが幻想を信じることが無くなってもいい。
大人になるということは、何かを捨てる事になる。
その捨てるものの中に、私が含まれているというだけの話。
今はきっともう、お姉ちゃんもお燐もお空も、私と一緒にいてくれたペットも、みんな私を忘れているだろう。
それほどまでの時間が経っているのだから。
感情が消え失せた今、だからこそ、思う。
願いが一つだけある。
あの時のように、また遊びたい。
何も知らず、姉やペットたちと一緒に。
地面には、何かによって濡れた跡が出来ている。
私は袖で拭った。
そして、無意識の趣くままに、無意識の影はどこかへと消えていった。