IS ~義肢義眼の喪失者~   作:たぴぃ

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第8章 未来へ繋ぐ為に
別離


 「..........」

 「どうかしましたか?響介くん」

 「....来る。3個の反応が、この島に近付いてくる」

 「3個?1つは学園だとして、残りの2つは...」

 「――下がれ!!」

 

 無人島での暮らしに多少は慣れたと思った矢先の朝、島には3つの勢力が集った。IS学園、亡国機業(ファントム・タスク)御伽の国の破壊者(ワンダーランド・カード)。全て響介が1度は所属した事のある勢力だが、本当に【仲間】と呼べる程の関係を築けたのは少なくとも2つだけで、1つの勢力は完全な営利目的の様なものだ。だが、ISの絶対防御を貫通してISを墜とせる戦力を手放したくはないのだろう。

 

 『響介、迎えに来たわよ』

 「母さん....」

 「あら、響介くんは私と帰るのよ。そうでしょ?」

 「....スコール」

 「響介くん、此方に来て!....戻って来てよ!」

 「.......楯、無」

 

 雪菜から写真で見せて貰った外見そのままの彼女が叫ぶ。だが、本当に楯無なんて名前だったか?そんな思いが響介の中で広がる。だが思い出せない。記憶が灼けてしまっているのだから。それでも響介は思い出そうとした。灼けた記憶を掘り起こし、頭がどれだけ痛んでも。

 

 「.....かた、な、なのか?」

 「ッ!!そうだよ、私は刀奈だよ!」

 『....響介、此方に来なさい。貴方は自分に課した誓いを破るの?』

 「誓いなんて課した覚えは無い!俺は勝手にアインの遺志を継ぐと言っただけだ!アイツは、アイツの遺志は決して俺が人を殺す事じゃないって事を思い出したんだよ!!」

 『そんなの、貴方の思い込みかも知れないじゃない。ねぇ、そうは思わない?夏蓮』

 「...それは...」

 『戻って来なさい、響介、夏蓮。ラビットもクイーンもハンプティも待ってるわ。アリスを連れて戻らなきゃ、私が殺されるわ』

 「随分と楽しそうな話をしてるねぇ。束さんも入れて貰って良いかな?」

 

 突然空から降ってきたのは巨大な人参。マイクから聞こえた声は自分を篠ノ之束と言っていた。扉が開くと見えたのは1人ヘンゼルとグレーテルの様な格好に、妙にメカメカしい兎の耳。こんな格好を日常的にしているのは全世界を見てもこの天災だけだろう。

 

 「響くんが組織に戻らないなら、束さんがその組織に入っても良いかな?」

 『...何のつもりで?』

 「束さんもさ、こんな世界嫌なんだよね。ISは元々兵器じゃなくて大空を翔ぶ為に創ったのに、それを兵器に転用してさ...馬鹿で愚かなヤツが世界を治めてるからそうなるんでしょ?なら、皆束さん基準にしちゃえば良いじゃん。そういう事だよ」

 「狂ってます、そんなの」

 「狂ってる、かぁ...でもね、束さんからすればこの思想を理解してくれない君達の方が狂ってるんだよ。...結局は雪ちゃんもISを兵器と捉えてる奴等と同類って事か。残念だよ、雪ちゃん」

 「そんなヤツが敵に回る前に殺す...!!」

 

 響介は自己再生である程度の機動力が戻った絶月を纏い、束の身体に贄姫を突き立てるつもりで突進する。全力での機動は無理とは言え、生身の人間1人殺す為なら充分過ぎる程の速度と威力を内包した突きだ。しかし――

 

 「その程度じゃあ束さんは殺せないなぁ、響くん。...お前の潜在能力は一番危険だ。死んで貰う」

 「ゴァッ....浸透勁だと..!?」

 

 腹部に打ち込まれた拳は内臓に直接衝撃を与える拳。最近はやっと眠れる様になり、蓄積された肉体的な損傷が回復し始めてきた響介だがそれは微々たるものだ。回復分を上回る衝撃に加えて搭乗者の致命的なダメージを感知し、ISの展開は解除された。

 

 『止めなさい、篠ノ之束。無理にでも連れて帰れとは言われてないわ。殺すなんて論外よ。無理矢理にでも連れて帰るのはアリスと夏蓮だけ』

 「...分かったよ」

 

 艦の中からアリスと夏蓮が現れる。だが、アリスは意識を失い、そのアリスを夏蓮が抱えている形だ。しかし、夏蓮の表情にはいつもの笑顔は無い。

 

 「か、れん...!」

 「....お兄ちゃん」

 「アリスは、渡さねぇ...」

 「離してよ」

 「アリスだけじゃねぇ、お前もだ....渡して堪るかよ、夏蓮!」

 「.....無理だよ」

 

 細い足首を掴み、足止めを試みるが蹴られてまた転がされる。雪菜が受け止め、ダメージは最低限に抑えられたが身体は一向に動かない。

 

 『響介』

 「母さん!」

 『あなたがそっち(IS学園側)に行くのなら止めはしないわ。でも、手加減などしないわ。私達の始まりの地で、待ってるわ。其処で、他の陣営にも教えてあげる。私達の最後の任務、やるべき事を』

 「そのやるべき事に、アリスは――」

 『必要よ。そして貴方は休みなさい。その身体では、組織の誰も倒せはしないわよ』

 

 空気を伝わってきた衝撃に頭を打たれ、響介は気絶した。だがその眼差しは最後まで夏蓮を見詰めていた。彼女の表情、暗い眼、少なくとも楽しそうではなかった、その眼を。

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