W&ARTHUR スピンオフ大戦ブレイク 作:名もなきA・弐
風都には不可思議な都市伝説が数多く存在するがその中でも、実在する話がある。
段ボールの小屋と銀色の風車で作った十字架で懺悔をすると、心のスキマを持ったその人間は救われると……。
これは、そこの主『シスター雷華』…。
「うがあああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
地の文さえも遮るように懺悔室で暴れているのは、色々と大変なシスター雷華。
今までのクールなキャラは何処へやら、彼女らしからぬ叫び声と共に日本刀を振り回している。
そして数時間後、幾分か暴れて落ち着いたのか日本刀を鞘で納めた彼女はゆっくり深呼吸をした後、倒したパイプ椅子と衝立を直して定位置に座る。
忘れよう…公式は公式、うちはうちだ。
一々気にしていたら今度こそストレスで胃に穴が空くかもしれない。
心を落ち着けた雷華は最初の迷える子羊を出迎えるべく、「どうぞ」と外にいる人物に声をかけた。
「やぁ、雷華ちゃん。暴れているのが聞こえていたよ?」
知人のような口ぶりと共に入ってきたのは最初の迷える子羊『P』だ。
一応設定上はシスターをやっているので彼女は彼の言葉に対して、極力優しげな声色で語り掛ける。
「そんなことありません、ちょっと虫がいたので」
「言い訳が上手じゃないね。まぁ、前回と前々回の人たちに倣って本題に入ろうか」
分厚い本を持ちながら席に座ったPは懺悔へと入る。
「シスター、実はぼくたちの新たな活躍を描いた作品があるんだが新たに登場した新キャラを悪女認定してしまった。そんなぼくの偏見は許され…」
「むがあああああああああああああああああああああああっっ!!!」
風都探偵の話題を口にした途端、雷華が絶叫して暴れ出す。
どうやらスイッチにでもなっているのか先ほどの態度とは正反対の様子で暴れ始めており、Pは黙って興味深そうに観察している。
「ふむ。どうやらこの話題を君の前でしない方が良さそうだ、下手をしたら翔太郎にも被害が出そうだ」
「うがああああああああああああああああああああああっっ!!ときめええええええええええええええええええええええええええええっっっ!!!」
雷華が暴れているのを横目にPはマイペースに結論づけるとそのまま懺悔室から出て行ってしまった。
「はぁっ!はぁっ!…いけない私、クールにクールに…」
「シスター。あの、入っても大丈夫か?」
一しきり暴れた雷華は何度も頭の中で自己暗示をしている中、次の迷える子羊が困惑したようにドアから顔を覗かせる。
それに気づいた彼女は、先ほどの怒りをまるでなかったかのように笑顔を向ける。
「はい、どうぞ」
そう言われた二番目の人物は遠慮しながらも、部屋に入って椅子に座った彼女『H』はしばらく間を置いた後、口を開く。
「実は、私は仲間たちと共に家族同然の暮らしをしているんだ」
「はぁ」
「バイトもしているし、食料がないことを除けばまぁ暮らしていける状況なのだが……最近仲間たちの反応が冷たいんだ」
「何か心当たりはありませんか?」
その内容を聞いた雷華は「まともな内容だ」と安堵すると、原因を探るべく質問をする。
懺悔の内容とは程遠いが、それでも優しい彼女は放っておくことが出来ないのだ。
「うーん…そういえば、私が生み出したギャグを見せた辺りからだな」
「ギャグ?」
「そうだ、私特性の抱腹絶倒ギャグだ。ジャンルとしては形態模写に入るな、シスターにも見せてやろう」
得意げになったHは椅子から立ち上がると、深呼吸をした後にギャグを繰り出した。
「カニッ!!」
そう言った彼女はカニのポーズらしき姿勢を取る。
……確かにカニに見えなくもないが「それがどうした」と声を大にして言いたい衝動を堪える雷華。
しかし当の本人は自身に満ち溢れた言動を取っている。
「ふふ、やはり私のギャグセンスが高すぎてぐうの音も出ないか。大サービスに出来立てほやほやのギャグを見せてやる」
「いやっ、あの、ちょ…」
彼女が止めるよりも先に、Hは何処かともなく布団を取り出して身体を包んだ後日本刀を少しだけ見せる。
「ヤドカ…」
「あなたのギャグセンスに未来があることを、アーメン」
これ以上は「不毛だ」と判断した雷華は例の言葉を口にした途端、現れたスタッフたちが布団に包んでいるHを荷物のように運び出したのであった。
何とも言えないギャグに幾分か冷静になれた雷華がパイプ椅子に座っていると、次の来訪者が現れた。
「すいません、シスター。懺悔とは違うんですけど……ちょっと相談しても良いですか?」
「あぁ、はい。どう…」
現れたのは髪型は龍を模ったような形をした茶髪の少年、一瞬で目星がついた彼女は咳ばらいをした後、椅子に座るように促す。
少年が椅子に座ったのを確認した雷華は口を開いた。
「自分の作品の宣伝をしに来たんですか?」
「いや、はは。何かすいません」
困ったように笑って謝る彼『I・T』にため息を吐いて呆れる彼女だったが、仕事を終わらせるべく話すように促す。
「えっと…実は最近下宿してる二人が女子で…どう接して良いか困っているんですよ」
「あなた、ハーレムが夢でしょ?良かったじゃないですか」
「一体いくつの時の話してるんですか。適当に流さないでくださいよ」
普段は軽い口調だがシスター設定を意識しているのか一応敬語を使っている彼に対して、雷華は「仕方がない」と口を開いた。
「普段通りに接しなさい。態度を変えたところで変わるわけではありませんし、愛奈姉さんを頼りなさい。あなたのお母さんは天然ですから」
「答えになってないような気もするけど、ありがとうございます」
このコーナー始まって以来、短時間でまともな解決をしたことで一先ずI・Tは椅子から立ち上がって部屋から出ようとする。
その時、左腕に丸い宝玉のような模様が浮かび上がるとそこから声が発せられた。
『仮面ライダーDARGOON、絶賛連載中!』
「「別作品で宣伝するなっ!!」」
渋い声で宣伝行為をしたマダオ(まるで駄目なオスドラゴン)に、二人は声を揃えてツッコミを入れるのであった。
ここは、色々と大変な女性が懺悔や悩みを聞くシスター雷華の懺悔室……。
癖の強い来訪者がこの世にいる限り、シスター雷華の戦いは終わらない!
風都探偵面白いです。早く単行本が出てほしいです。
今回の相談者はこちら。
P→フィリップ(PHILIP)
H→焔(HOMURA)
I・T→辰巳一誠(ISSEI TATSUMI)