Fate/GrandOrder GhostFriends (beta) 作:影色の烏
車に揺られながら窓の外を見る。そこにはずっと雪景色が見える。
何時間前からだろうか。この風景を眺め続けるのは。こんなことなら請け負うんじゃなかった。
だが悔いても仕方がない。ならば。この変わらない、非常につまらない風景でも眺めることにしよう。
「貴方はそれで良いの?」
どこからともなく、幼い少女の声が聞こえた気がした。
だが、自分にはよくあることなので、いつもどおり気にしないことにした。
「本当に退屈なままで良いの?」
正直、退屈で良い。というか放おって置いてくれ。
少女に心のなかで語りかけた。
届こうが、届かまいが関係ない。そもそもこの少女は絶対的に、死んでいるのだ。相手にする意味も、理由もない。
「貴方は私を否定するの?」
………今は相手にしたくないと思った。鬱陶しい限りだ。
「本当にそれだけ?」
…今気付いたが、これは対話が成立しているらしい。
ならば、言おう。静かにしてくれ。眠れない。
「……分かった。じゃあ、またね。お兄ちゃん」
………やっと消えたらしい。後で、塩でも頭から被らねば。
…お兄ちゃんはもう懲り懲りだ。
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「ようこそ『人理継続保証機関フィニス・カルデア』へ。貴方が一般募集枠の『月宮小詠』さんですね。まずはこちらで待機していてください。後ほどお伺いします」
などと言われ、もう幾分か時間が過ぎた。
いや、実際は何時間も経っているはずだ。ずっとぼうっ、としてるだけだ。
現実逃避を始めたのは二時間ほど前で、既に四時間経ったとか気のせいなのだ。きっと、そうだ。そうなのだ。
忘れ去られたかもとか、全く思ってない。寂しくなんかない。
これっぽっちも思ってないし、考えてすらいない。
と言えばまあ嘘にならなくもない。取り敢えず、今思っていることは、早く来ないか?暇だ。
あーあーあーあーあー。
…ん?人の気配か。
「お待たせしました!!」
……どうやら手遅れになる前に迎えに来てくれたらしい。
「それで、あのー、非常に言いにくいんですが…」
などと渋るスタッフ。特に何か言うことは無いが、まあ、なんでも良い。いいニュースにせよ悪いニュースにせよ。状況が変わってくれることに変わりはない。
「今日予定していた、シミュレーションが明日になりまして。それで今日はこのままお休みしていただくことに…」
……良かった。悪いニュースじゃないらしい。いや、悪いニュースではあるが、今日は少し疲れていたし、休息が挟まるのなら大歓迎だ。え?今の待ち時間?そんなもんは数えん。
「別に構わない」
「そうですか!それは良かった!それで、部屋なのですが…一応空いてるには空いているのですが…」
渋るスタッフに、思わず口を開きそうになったが、別に面倒なので、言ってくれるのを待つ。
「部屋がですね、急遽用意したので、少し他の部屋より狭くなってて…というか、荷物が少し置かれているのですが…。…何か、すみません」
「…要は、あれ?物置がそのまま部屋になってる感じ?」
「はい!そうなんです!」
などと元気良く喋るが、正直たまったもんじゃない。
が、広い部屋など、実家で飽きるほど堪能しているので、少しドキドキしている。
「…別に気にしませんけど」
「そうですか!荷物は明日移動させる予定ですので、今晩だけ我慢して下さいね」
「ああ…」
何だか少し残念だ。まあ、物置だというくらいなのだから、普通の部屋よりかは狭いんだろう。
「荷物は念のため、別のところで預かっていたんですが、それなら部屋の前に手配しときますね」
あまりの待遇の良さに、ここはホテルか?などと思い込まざるを得ないが、そんな気持ちで居るような場所ではないので、改めて、無駄に、気を少し引き詰める。
「取り敢えず先に案内しますね」
「お願いします」
新たな環境での暮らし。これ程胸が踊る事が他に有るだろうか。数えるだけでも指を超える程余裕で有る。
まあ、新しい環境が己に良い影響になる事を祈るまでだ。
……本当は今すぐにでも帰って寝たいという願望はある。頼むので、さっさと寝かせてくれ。体が怠いんだ。
……怠い?なぜ?………不安定なのか?
…まあ、新しい環境というのと、霊体が少ないというのもあるのか?
…まあ、自分の環境じゃないっていうのが、問題か。
所謂工房だとか、そういうの。それが必要なのかもしれない。
……こんな所にそもそも構築できるのだろうか。
…いや、今は聞くのはよしておこう。
明日にでも聞けばいい。
「ここになります。簡易的な寝床は一応準備してありますので、気軽にどうぞ…」
「…ありがとうございます」
寝床と言われると、あまり良い気はしないが、そこは文化の違いとかの話だろう。だから、気にしないべきだ。何なら寝床があるだけでも十分だと考えるべきだ。
「じゃあ、自分、寝てるんで」
「あ、はい。それでは…。今日は失礼しました」