Fate/GrandOrder GhostFriends (beta) 作:影色の烏
「……ありがとう」
「良かったのですか?このような時間に」
「ああ。今なら皆寝てるだろう。わざわざ俺の為に起こす必要もない」
「皆様起きるのは小詠様の為だからですよ」
「……そうか。では、俺はもう行こう」
「はい、いってらっしゃ──」
「ちょっと待ってぇぇぇぇ!!!!」
「…ん?」
「はぁはぁ、ま、間に合った……。…ふふ、どうやら、私が、一番、ね」
「ま、待ってくださ~い…」
「お前達…どうして」
「どうしたこうしたもないwa…ありませんよ。せっかくの門出くらい見送らせてくださいよ。小詠様」
「そうだよコーちゃん。みんなに黙って行くなんて、コーちゃんらしいけど、それは駄目だよ!!」
「ていうかアンタはもうちょっと小詠様を敬いなさいよ!」
「別に当主様から許可されてるもんねー」
「くぅっ!これが親公認とそうでないかの違いか!!今に見てなさい!コウ君の隣には私が居るんだから!!…って、あ」
「別に構わん。明日からは、月宮小詠というそこいらにでも居るような人間なるからな」
「そうです、それにそれ位の非礼、この村には気にする者は居ません」
「……そ、う。……分かった。それじゃあ、頑張って、コウ君」
「コーちゃん、ファイトォ!」
「……ああ」
「どうかお気をつけて、小詠様」
「…分かった。では土産の一つでも期待していろ」
「コーちゃんそれフラグ」
「それも言っちゃ駄目でしょ!?」
「…ではな。妹を、頼んだぞ」
車に揺られながら窓の外を見る。そこにはずっと雪景色が見える。
何時間前からだろうか。この風景を眺め続けるのは。こんなことなら請け負うんじゃなかった。
だが悔いても仕方がない。ならば。この変わらない、非常につまらない風景でも眺めることにしよう。
などと、まるで神にでも決められたかの様な情景を肴にして、俺はデジャヴュに酔っていた。
「貴方はそれで良いの?」
少女が話しかけてくる。
「それで構わない。俺がそう望んだのだから」
「貴方は私を否定するの?」
否定?違うな。俺はお前をスパイスとしてでしか見ていない。
お前もまた酔っている。
「…違う」
「怯えて欲しかったか?」
「…違う」
「世界はお前の望みを絶対に叶えないようにできている」
「お前は違う。誰だ?お前は…誰なのだ?」
俺か?勿論。お前が知っている月宮小詠だ。
「待て、我が知っているのは…」
ベッドの中で小さく小動物のように蹲っている俺か?
たかだか夢に恐怖を抱く俺か?
「そうだ。お前は小さく弱いはずだ」
何、それはあの部屋での話だ。
あの部屋にいるとまるで自分が小さくなり、だれかに責め立てていられるかのような、そのような感情に苛まれる。
あのように弱い部分にしか付け込まないんだろう?お前は。
「違う。違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。わた、私しししししししは。わたしししししししししししししししししししししははははははははははははは」
「エラーを起こしたか。雑魚め」
「調子に乗るなよ、人間。お前など――」
「すまん。そのセリフは少々聞き飽きた。お前のことを他人に伝えたりできないという正直辛い。だが、お前が雑魚に相違ないというのは、俺でも分かる」
「………私は、ただ。お前を、私の野望のために利用するだけだ」
「ふむ、逃げたか。それに俺を利用する。なるほど。実に面白そうだ。できるものならしてみせろ」
「……後悔するなよ」
ああ、勿論。
そしてそこで俺の意識は途絶えた。
次に目覚めたのはどこかで見たような、知っている気のする白い天井だった。
そして、はたまたどこかで見たような気のする、信用なら無さそうな男の顔であった。
「お、目が覚めたみたいだね。それじゃあ自分が誰か」
「月宮小詠だ」
「……記憶の方には問題なし、っと」
名前を言っただけなのに問題なしと。この医者、どうかしてるんじゃないのか?
「えーと、ようこそ。人理継続保障機関カルデアへ。僕の名前はロマニ・アーキマン。カルデアの医療部門のトップを務めてる。もし、何か身体に不調をきたしたら、遠慮なく僕に言ってくれ。何か質問は?」
「……ないな」
「そう?じゃあ僕は少し作業をしているから、もう一眠りでもしといていいよ」
……別に眠気は感じないが、目を閉じる。
部屋には、恐らく二度目の静寂が訪れたのだろう。
そして、その静寂を破ったのは他でもない、ロマニ・アーキマンのパソコンのキーを叩く音だった。
カタカタと小刻みな音が部屋を埋め尽くしていく中、これからどうしたものか、どう切り出せば良いか。踏ん切りの着かない自分がいた。
このまま目を瞑っていても構わないだろう。しかし、ここに来た以上、ある程度の責任が発生する。俺はそれを義務として果たさなければならない。
「あれ?起きるの?まだ寝てても問題ないんだけどなぁ…」
「……別に起きてても、構わんのだろう?」
「え?あ、うん。そうだね」
妙に反応が冷たい。
流石に初対面のこの茶目っ気を出すのは間違っていたか。いや、初対面な気がしないというのが恐らくは問題だが……問題といえば、あの少女はどこだろうか。あの悪魔みたく俺に変な夢ばかりを見せ続けていたあの少女は。
部屋を見渡す限り見えない。
それに対しては安堵しよう。だが、見慣れない部屋のためか、中々落ち着けない。
「ま、まあ、えーと、と、とてもリラックスしてくれてるようだネっ」
無理しなくていいぞロマニ・アーキマン。
「フォローは要らん」
「え?あ、うん」
……寝よう。寝て忘れよう。
「あ、寝るのね。じゃあオリエンテーションの時にでも起こすから、それまでごゆっくりー」
俺は再び眠りについた。
…久々にゆったりと安心して眠りにつけることができた。
とはいっても、オリエンテーションまでだが。
「おーい、月宮くーん。もーすぐ始まるよー」
「…ああ」
「おっはよー」
………待て、誰だ今の。
「あ、ゴメン。びっくりしたよね。私橘人富。月宮くんでしょ?よろしくね」
「待て、一回整理させろ。…まずお前は、橘人富、だな?」
「うん」
「それで、俺と同じ、マスター候補とやらだな?」
「うん」
「でだ。……なんで居るんだ?」
「少し体調悪くなってさ。それでこうして医務室でロマンにお世話になってたの」
「……ロマン?」
誰だそれは。
「ああ、それは僕だよ。ロマニ・アーキマン。人呼んでDr.ロマン」
「…………そう、か」
「あれ?反応薄くない?なんかこう、バカらしいなーくらい有ってもいいよね?」
人の渾名にケチ付ける程小さくはないんだが。この言葉を心の隅に置いといてこう言った。
「興味ない」
「うっ!?」
まあ、これもまた本心であるから、いいだろう。
「あはは……月宮くんって、結構キツいねー」
「ふむ、そういうものか?俺は本心を言っただけだが……」
「あ、これ本気なやつだ」
「……いいもん。僕もうマギ☆マリ見てるもん!うわあああああああん」
そう言って、ノートパソコンを片手に医務室から出ていってしまった。
「……そ、それじゃあ、行く?」
「ああ、案内頼む」
「あ、うん。分かった」
「……あのさ」
「ん?」
突然橘が喋りだした。いや、この沈黙に耐えれなくなったのだろう。歩き始めて一分も経っていないというのに。全く……。まあ、俺の周りに居た人間も似たようなものだったが。
「私達、どっかで会ったことない?」
「それは…逆ナンか…?」
突然そういうことを言われても困るんだが。
「いや、そういうんじゃなくて……なんて言うかな…デジャヴュ?」
……なるほど。言われてみればそういうものを感じるかもしれない。
だが、俺はめったに村の外へ行かない。
だからどこかで会うようなことはないはずだが。
「……まあ、俺もなくはないな。それはそうとあの扉か?」
「あ、うん。そうそう」
「そうか」
「うん」
…やはり、俺にはコミュニケーション能力が欠けているな。
元々の性格からか知らんが、こいつは俺を気にしすぎている。だからさっきのような突拍子もない話題を思いついたのかもしれないな。
―――こういう形でしか己の不安を打ち消せない俺は、弱すぎるかもしれんな。
「じゃあ、私、こっちだから。月宮くんは一番前の席の真ん中の所みたいだから」
「ああ、ありがとう」
前の方に空いている席が二つあり、真ん中の方はど真ん中なので、正直違うと願いたかったが、指さしている方向を確認すると、やはりそのど真ん中だった。
何の嫌がらせだ?これ。
それからしばらく待っていると、偉く高飛車そうな銀髪の女性が出てきた。
が、そのまま、何かを始めるという訳でもなく、そのままあからさまにイライラしながら待っていた。
……そういえば、一つ空いている咳があったが、恐らくそれは遅刻している人間のものなのだろう。
それからしばらくして、ようやく来たらしい。
さて、始めようかと、始まりの挨拶を始めた。
「特務機関カルデアにようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです」
橘さんのアニメのモデルはぐだ子です。