Fate/GrandOrder GhostFriends (beta) 作:影色の烏
一連の挨拶を終えようとしたその時、歓迎文句を謳っていた、彼女が、何を思ったか、突然右の方に行った。それを目で追うと、そこには何と明らかに寝ている男が。いやいや、俺でもそんな事はしないぞ?等とつまらない突っ込みを心の奥の方へ仕舞いながら、どうなるのかと見ていた。
最初は勿論声掛けをしていたが、よく分からない腕に着けているブレスレット(?)をかざしたかと思うと、もう一度名前を呼びながら声を掛け始めた。
そして次の時にはそいつはモロに平手打ちを喰らっていた。
その後は訳が分からないという風に、なすがままに部屋を出て行った。
そして軽い咳払いを終えた後、再び話し始めた。こちらの方が、自分には少し興味が湧いた。
内容は大体耳に入れなかったが、俺達を身分に関係なく扱うと言うものだった。
それに対して周りはざわつき始めていたが、鶴の一声でそれは止まった。この雪山を降りろだなんて、所長殿も鬼だな。
それからは非常につまらない説明を聞かされ、半ば真面目に聞きながら、ボケーッとしていた。
そして気がつくともうすでにそれは終わろうとしていた。
「ここまでが以上です。何か質問は?」
当然答えはなし。寧ろ、彼女に質問をしろという方がおかしいのだ。
「それでは班分けを言い渡します。1〜24まではAチーム。それ以降をBチームとします。それではこれよりグランドオーダー作戦を開始します!」
話の後、別室にて戦闘服なるものに着替えさせられた。今度は何をさせるつもりなのだろうか。
少し楽しみである。
「では着替えが済みましたら、あちらのコフィンにお入りください」
などと案内された先には、まさにその名を恥じぬ棺桶のような、所謂カプセルのようなものがあった。
正直、昨今のアメリカンSFに出るかどうかも怪しいものではある。
だが、もしかすればこれが本当に棺になってしまうのでは?などと、不意に考えてしまった。
少しネガティブに考えてしまうが、やはりそこは緊張からなるものだろう。
などと、冷静に自己分析している場合ではない。ここに入って『任務』とやらをこなさなければならないのだから。
「入ってまーす」
しかし、俺のそのような考えを否定するかのように、それは居た。
……なるほど。
『入るな。』
彼女はそう言いたい訳か。
……乗ってやるのもいいが、そう簡単に上手くいくだろうか?
「すみません…」
「はい?何か問題でも?」
「はい、実は体調が優れなくて…」
「はい…もしかして、月宮さん、ですか?」
「はい。そうですが?」
「あ、いえ。お話は伺っています。なんでも、来られる途中に気を失っていたとか。勿論、今回の任務には不参加でも構いません。医務室で診察を受けた後、自室にて待機しておいてください」
…正直驚いた。こんなにも上手く行くとは。
まあ、話を聞く限り妥当だろう。逆に足を引っ張られても困る。そういう判断をしたのかもしれない。
「分かりました。では医務室で診察を受けてまいります」
「ああ、うん。…報告、要らないから」
「…分かりました」
…さて、誰かの思い通りに成るのは、中々に癪だな。しかし、分かる警告を無視する通りもない。
「ま、待って!!」
入り口まで戻ったところで、後ろから声が聞こえた。その正体を探ろうと、後ろを振り返った時、
真後ろで衝撃的な音がした。
――――――――――――――――
「目が覚めた?お兄ちゃん。朝だよ、起きる時間だよ?起きて、生きなきゃ。お兄ちゃんは生き残らなきゃ。ほら、早く、立ち上がって、息を吸って――」
「鬱陶しいわっ!!!」
…恐らく生涯最悪な目覚めだろう。
………。
そうだ、確か爆発音が聞こえて。いや、その前に何か声が聞こえて…。
確か。そう。少女の。今日会った。そうだ。今日会ったばかりの。少女の声だ。
しかし、目の前には、瓦礫にその華奢な体を貫かれている、赤毛の少女の無惨な姿があった。
「…これは、お前の仕業か?」
「違うよ?」
「……そうか」
…犯人はこの
では、誰か。この目の前に憎たらしく、恐ろしいまでに中傷的な。糞ったれたオブジェクトを創った犯人は。
「お兄ちゃん。怒ってる?」
「ああ、非常に」
「ふーん?」
「…何だ?」
「別にー?」
…どうやら、ただ構って欲しいだけらしい。
全く…。
しかし、俺もこの状況で怪我の一つもしていないでは済まないだろう。昔から怪我が治るのは早かったが、今回ばかりは流石に未だ治ってないらしいな。なぜ分かるか?
体が軋むように痛いからだ。
「っ……」
…いかん。意識すれば、益々痛くなってきた。
まず、どうしたものか。
只々顔も知らぬ犯人に怒っていても時間の無駄だ。
「だ、大丈夫ですか!?」
「…ん?」
ふと声が聞こえた気がした。だが、今は思う様に声が出ないらしく、声は相手に伝わって無さそうだった。
その証拠に、男は奥の先程の部屋に行ってしまった。
……全く、俺は非力だな。こんな痛みも我慢できず、起き上がることもできないとは。
ははは。笑いが込み上げてくる。
そうだな、今はただ、
『俺はこれ以上の痛みを味わったぞ』という風に。
「それじゃあ起きてみようか、お兄ちゃん」
…一体、どうやって?足だって、瓦礫でも乗ってるのか、重いし。
「大丈夫だよ」
何故そう言い切れる。
「だって。お兄ちゃんはそれをどうにかする方法を知ってるもん」
「正気か?」
「ううん。狂気の沙汰だよ」
「はは、そうかそうか…」
だがな、少女よ。降霊術では幾ら頑張っても生身をどうにかすることはできんのよ。
「耳を澄ませて」
…駄目だ。爆発の衝撃で耳はあまり聞こえない。先ほどだって、男性らしい声だということ以外何も分からなかった。
「違うよ。死者の声を聞くの」
…ああ、なるほど。だがな。そんなもの、今は聞こえない。
「ううん。絶対聞こえるよ。諦めないで」
……残念だな。聞こえんよ。
だがな、俺は未だ諦めん。
すまんな、悪魔の様な少女よ。お前のお陰でほんの少し、抗ってやろうという気になった。
『該当マスターを検索中・・・・発見しました』
『適応番号 48 藤丸立花、49 月宮小詠 をマスターとして再設定します』
『アンサモンプログラム スタート。霊子変換スタート』
「今…のは?」
「貴方を呼ぶ声。世界、そして私が貴様を必要としている」
「…そう、か」
「誠にすまない」
『レイシフト開始まで あと3』
「…お前」
『2』
「何だ?」
『1』
「謝れたのか」
光に包まれて見たのは、少女のピエロのような悪魔的な笑顔であった。