死神より哀を込めて ~英雄達を裁くは少女~   作:ウージの使い

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こんにちは、ウージの使いと申します。

ネギまの小説を書きたくなって、今回投稿いたしました。
あらすじやタグの通り、原作からはかなりぶれます。
基本的な大筋には沿いますが……。
それでもいいという方のみ、どうぞ。

1話1話が短くなりそうなうえ、更新もそこまで早くはできませんが
楽しんでもらえれば幸いです。


Ⅰ アカネ
第1話 某月某日、アカネ村


Side ??

 

「嫌です! 私も、私も一緒に……!」

「駄目だ。○○は皆と一緒に安全なところに」

 

お父様は私の肩に手を置いて私を止めます。

一体、なぜこうなったのだろう。

私の故郷は、村は……火に包まれていた。

戦争中だから? それとも……この村が、戦争から逃げてきた人々を受け入れる村だったから?

 

どちらにせよ、今は危険だということはわかっています。

しかし、私はお父様やお母様と離れたくない……怖い……。

 

死ぬことより、大切な人と別れるのが。

 

「心配するな、きっと帰ってくる」

「だから、待っててちょうだい○○」

 

お父様だけでなく、お母様までそういうなら、私にはもう止めることができません。

二人の意見が一致しているときは、いつだってそれが覆ることは無かった。

二人は一部の大人と共に、防衛線へと行こうとしています。

実際、私の両親はとても戦力になるでしょうし。

 

「じゃあ、行ってくるわね」

「フリック君、○○をよろしく頼む」

「はい」

 

フリック……私の幼馴染はお父様にしっかりと頷き返しました。

幼少の頃、ここへ来たばかりのときは泣いてばかりだったというのに……。

いつの間にこんな、頼れそうな青年になったのでしょうね?

そして、彼は私の手をそっと握りました。

 

「行こう、○○」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

私は、ヘラス帝国とメガロメセンブリア連合との境界に位置するここ、アカネ村で育ちました。

戦争中ではありましたが、ここには戦争を憂いて逃れてくる人々が集まり、またそのため戦闘が起こらない辺境に位置しているので私が幼少期を過ごしたしばらくは平和でした。

しかし、帝国と連合との戦争は終わることなくだんだんと苛烈を極めていき、ついには……ここまで、戦火が及んでしまったのです。

 

のちに、この戦争は“大分烈戦争”と呼ばれることになります。

 

 

 

 

 

 

 

「○○、大丈夫? 顔が青白いけど……」

「大丈夫ですよ、フリック。ただ……不安なだけ」

 

今、フリックや他の子供達と、万が一の時のため用意された地下シェルターに避難するため、シェルターの入り口がある時計台に向かっています。

シェルターには防護決壊が幾重にも張り巡らされているので、少なくとも今回の戦火はしのげるでしょう。

……何らかのイレギュラーが現れない限りは。

 

「お父様、お母様……」

 

今頃、お父様は村の入り口に張られた防衛線で攻めてきたメガロメセンブリア軍を村に入れまいと奮闘している頃でしょう。

お母様も村の防衛に回ったのは、魔法が使えるということでお父様のサポートをするためです。

 

「そんなに心配かい?」

「え……」

 

考えにふけっているところを不意に話しかけられ、驚いてフリックの方を見ると彼は苦笑して続けました。

 

「顔に出てるもん。それにさっき、『お父様、お母様』って呟いてたし」

「それは、そうですが……」

 

心配なのです。

今まで村に敵が攻めてきたことなどありませんでしたから。

ましてや、メガロメセンブリア軍という強大な敵が……。

 

 

 

 

 

 

 

Side チャールズ・フィルデオーレ(○○の父)

 

敵はメガロメセンブリア軍。

戦闘のプロに対し、我々は戦争から逃げてきた者たちだ。

娘の前では虚勢を張って見せたが、かつて兵士として戦っていた私としても、

 

「あなた……」

「ん、あぁ……」

 

いかんいかん……。

弱気になっていたのを妻、リザに見透かされていたらしい。

さあ、私もやるべきことをやらないとな。

愛する家族と、村の皆の為に。

 

「よし、私も出よう。援護を頼む」

「任せてください」

 

力強い妻の声。本当に私はリザに支えられてばかりだ。

町からこの村へ逃げようか悩んでいた私に勇気をくれたのも、彼女だった。

 

現在、門のところで他の村人が相手を押しとどめている。

私のように元兵士という者もいるし、魔法が使えるものもいる。

さらに、ここでは帝国からの亜人も受け入れているから……彼らの活躍もある。

私の戦闘力と妻の魔法で戦局が変わればいいのだが。

 

「おおおおおおおっ!!」

「うわあ!?」

「な、なんだこいつ、むちゃくちゃ強いぞ!」

 

とにかく、近くにいる敵から次々に剣で斬り伏せていく。

気を扱えない者は、私の気がこもった剣を受け止めることはできない。

 

「紅き炎!」

「ぐわあ!」

 

後ろでは、妻が魔法で私の死角にいる敵を倒している。

頼りになることこの上ない。

 

「さ、さすがフェルディオーレ夫妻……」

「俺達も、フェルディオーレ様に続け!」

 

村の皆も士気が上がる一方、逆に相手には動揺が走っている。

……いける、この調子なら……!

 

 

 

 

 

 

「紅き翼が出るぞ! 総員退避!」

 

 

 

 

 

 

 

何、だと……?

紅き翼の名なら、私も聞いたことがある。

千の呪文の男(サウザンドマスター)”をはじめとする、猛者たちの集まり。

連合軍の最終兵器ともいえる彼らが、まさかこんな辺境にまで投入されているとは……。

 

「フェルディオーレ様! あれを!」

 

誰かが指さした先には、一人の杖を持った少年が浮かんでいた。

赤毛の髪の、まだ若い少年。手に何か持っているようだが……あれは、手帳?

 

「えーと……契約に従い、我に従え高殿の王!」

 

マズイ……あれは「千の雷」!

雷系の上級魔法ではないか! まさか、一気に我々を片付けるつもりか!

ここで食い止められなければ、村の中にいる子供や、娘が……!

 

「百重千重と重なりて、走れよ稲妻! 『千の雷』!!」

 

カッ、と天が光る。

光が雷となって振ってくるその一瞬、私の頭の中に浮かんだのは愛する娘の顔だった。

すまない、約束は守れそうに

 

 

 

 

 

 

 

Side ??

 

「百重千重と重なりて、走れよ稲妻! 『千の雷』!」

 

私は、見てしまいました。

お父様とお母様がいるであろう村の門の方に巨大な雷魔法が落ちるのを。

 

「お……お父様! お母様!」

「○○! 待て、戻ってこい!」

 

フリックの手を振りほどき、気がつけば私は門へと走っていました。

 

そんなことはない、そんなことはない、きっと二人は無事だ……。

 

必死で自分に言い聞かせながら走っていました。

冷静に考えれば、今でこそ私は時計台へと急ぐべきだったのに。

でも、私はそんなことを考える余裕がなかった。

ただ走る、走る。

 

だいぶ門に近づいた時、

 

「……お嬢ちゃん!」

「サイモンさん! そ、その腕……!?」

 

お父様と親しかったサイモンさんが右手をなくし、よろよろとこちらへ近づいてくるのが見えました。

 

「あ、あ……」

「来ちゃいかん! ここはもう……」

「逃がすかあ!」

 

え? 誰ですか?

声のした方……空を見ると、一人の少年が浮かんでいました。

赤毛の、なんかバカっぽい少年です。

いや、浮かんでいるということは……魔法使い!?

 

「早く逃げ」

「来たれ、虚空の雷、薙ぎ払え! 『雷の斧』!」

 

少年が手を振りおろした瞬間、私は一瞬ながら、しかし確かにこの目で見ました。

……なぜ? 問わずにはいられません。

 

なぜ、そんなにも楽しそうな笑顔で人に魔法を放てるのですか……?

 




いかがだったでしょうか?
これからどんどん続けていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。

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