死神より哀を込めて ~英雄達を裁くは少女~   作:ウージの使い

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いよいよ修学旅行編です。
前半は前の話の後始末、のようなものですね。

なお、章の名前を「青山詠春」としていますが、これは紅き翼として活動していた際はまだ近衛姓ではなかったので、あえてこうしています。


Ⅴ 青山詠春
第22話 魔法世界育ち in京都


Side 学園長

 

エヴァンジェリンの呪いが、解かれた。

それが判明した時、魔法先生達はたいそう頭を抱える羽目になってしもうた。

なにせ「桜通りの吸血鬼」の噂で不審感を持たれていたときにこれじゃ。

ワシが批判を抑えつけておったが、その根拠の一つであった呪いがまさか解かれてしまうとは……。

 

そもそも、十五年近くも解けなかった呪いがなぜ急に解けたのか。

ネギ君に危害が加えられた様子はない。それは良いのじゃが、だからこそ余計呪いを解いた方法に疑問が出てくる。

他のも魔法先生達の声をむげにもできず、とりあえず彼女を呼び出すことにした。

 

「……用件は、わかっておるの?」

「あぁ、どうせ、呪いのことだろう?」

 

魔法関係者が集められた学園長室に入ってきたエヴァンジェリン。

入った瞬間周りは警戒心を強めたが、ワシや高畑君は思わず驚愕を顔に出してしまった。

呪いが解けたのじゃ、てっきり彼女は得意満面な笑みや威圧的な表情を浮かべていると思ったのじゃ。

しかし、実際入ってきた彼女の表情はどこか憮然とした、納得が言っていないような表情じゃった。

彼女との付き合いが長いワシらから見れば驚愕するのも当然と思う。

 

せっかく得た自由がまるで――望んでいなかったもののようじゃった。

 

「そうじゃ。呪いがなぜ解けたのか……訳をきかせてくれるかのう?」

「……断る」

 

彼女の返答は、案の定拒否。

正義感の強い周りからは次々に避難の言葉が出てくるが、手を挙げて黙らせる。

まぁ、あのナギの呪いを解くほどじゃ。断られたからはいそうですかというわけにもいかん。

 

「じゃがのう……」

「その前に一つ聞かせろ。ジジイ、私と同じ制服を着た、犬を連れた女子に心当たりはあるか?」

「ホ?」

 

エヴァンジェリンと同じ……というと、女子中等部かの?

そう言えば、エヴァンジェリンを遠見で監視しとった時、確か桜通りでそんな女子と接触しとったのう。3年A組の子ではないようじゃったが。

あの時はネギ君が来て、結局そのまま立ち去ったようじゃった。

 

「呪いを解いたのは、そいつだ……。私に言えるのはそれだけだ。心配せんでも私は卒業するまではここにいてやるさ。ぼーやにも手を出さん。……意味が、なくなってしまったからな」

「ムゥ……」

 

本当はもう少し情報が欲しかったんじゃが……まぁこんなもんかのう。

しかし、それだけしか「言えない」というエヴァンジェリンの言葉が少々引っ掛かる。

とりあえず、全体で話すことは他にないのう。

 

「今回はひとまずこれで解散とする。高畑君とエヴァンジェリンは残っておいてくれ」

 

まだ聞きたいこともあるようじゃったが、ネギ君に手出しは無いとの言葉を受けてとりあえずは納得したことにしたらしい面々は立ち去る。

後にはワシと高畑君、エヴァンジェリンの三人が残された。

 

「それから。修学旅行じゃが……お主はどうするのじゃ?」

「そうだな、呪いも解けたから行こうとは思っているが……」

 

やはりそうか。

しかし、関西呪術教会はただでさえネギ君の関西入りに難色を示しておる。

瀬流彦先生には行ってもらうつもりじゃが、魔力の高いエヴァンジェリンが行くのはちょっとまずい。

 

「すまんがのう、今回修学旅行は欠席してほしいのじゃ」

「なぜだ!?」

「お主も知っておろう、現在関西と関東とはあまり関係がよくない。今回ネギ君に親書を持っていてもらおうと思っておるが、それ以上あちらを刺激させたくはないのじゃ」

 

瀬流彦君のことは、黙っておく。

しかし、エヴァンジェリンはもとより京都に興味があったからのう……。

 

 

「修学旅行が終わった後でよければ、京都旅行の準備をこちらがしよう。多少なら、平日にまで日がまたいでも公欠扱いにできるぞい」

 

少々職権乱用ではあるが。

何か考えていたようであったエヴァンジェリンは顔をあげるとワシに一つ条件を突き付けてきた。

 

「それだけじゃ話にのってやる必要もない。ジジイ、もし修学旅行中何かあったら私を京都に転移魔法で飛ばせ。そして私の好きに行動させろ。それを認めないならこの話は無しだ」

「いいんじゃないでしょうか学園長、ネギ君達に何かあっても、エヴァなら安心です」

 

高畑君の言うことも確かにそうじゃ。

それに、条件としても決して無理なものではない。

 

「よし、ではそういうことで頼むぞい」

「あぁ……。関西だからな、何もなければいいが……」

 

エヴァンジェリンがいったい何を心配しておるのかは分からなかったが……。無事に修学旅行が終わることを祈るしかない。

このかに魔法を知らせることができればなおいい。

 

そして時間はゆっくりと、しかし確実に過ぎていき、あっという間に時は修学旅行のさなかとなっておった。

近づいておった危機にも気付けぬまま。

 

 

 

 

 

 

 

Side 刹那

 

シネマ村でお嬢様を狙ってきた月詠達から何とか逃れることができた。

お嬢様が無事で何よりだ。

シネマ村では私が傷を負ったがために、お嬢様の力、その一端を解放してしまうことになってしまったのは痛かったが……。

あの時、お嬢様をかばうことができたのだからよしとしよう。万が一あの時矢がお嬢様にあたっていたなら、私は……

 

「せっちゃーん、深刻な顔してどしたん?」

「ひゃいっ!? あ、いえ、何でもありません」

 

い、いきなり顔をのぞきこまないでくださいお嬢様……。

びっくりしたけど、お嬢様の顔をあんな近くで見たのも久しぶり。いや私は何を考えているのだつまりえっとこれは

 

「大丈夫? 桜咲さん、頭から煙が出てるよ」

「も、申し訳ありません」

「それにしても、のどかはどこに……」

 

いかん、頭をすっきりさせなくては。

それにしても、どうして彼女たちは逃げても逃げても私たちの居場所が分かるんだ……?

結局ついて来てしまった朝倉さん(はまだ魔法を知っているからいいのだが)、早乙女さん、綾瀬さんを見て私はもう一度ため息をついた。

明日菜さん達と合流したら、どう説明したものか……。

 

「あれ? あの人、巫女さん?」

「本当や、おーい、そこの巫女はーん」

 

もう少しで協会の本部へと続く石段というところで、困ったようにおろおろした女性……というか、少女がいた。お嬢様が声をかけたが、協会のものだろうか?

迎え……ではないか。

もし迎えなら、もっと大人数でしかも最低一人は顔なじみが来るはずだ。

 

「あ、な、何でしょう?」

「ひょっとして協会の人なん? ウチも行くところやったんや」

「……実は何分新入りなものでして。ここの地理にも疎く、道に迷っていたところだったのです」

 

あいかわらず困った様子の巫女にお嬢様は微笑んで見せた。

あぁ、その笑顔が実に眩しい。

 

「ほな、ウチらと一緒に行こ。ええよな、せっちゃん?」

「お嬢様がおっしゃるなら、私に異論など……」

 

異論など、あるわけもない。

そう考えてすぐに肯定したのだが、お嬢様はなぜか不満げだった。

え、何かそそうでも……

 

「もー、せっちゃん。そんな卑屈にならんといてや」

「し、しかし……」

 

そ、そんな目で見んでこのちゃん。

 

しばらく歩いたのち、ネギ先生を担いだ明日菜さん、そしてなぜか一緒にいた宮崎さんと合流した。

やはり早乙女さん達がついてきたのはまずかったらしい。

それにまさか朝倉さんが私の荷物にGPSを仕込んでいたとは……不覚。

結局全員でしゃべりながら石で舗装された道を進む。

やがて、見慣れた大きな門が見えて来て、それをくぐると……

 

「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」

 

関西呪術協会総本山。

そこで私達を出迎えたのは、たくさんの巫女の方々だった。

 

「そうだ、巫女といえば……」

 

聞けば新入りらしいし、このなかに入っていなくていいのだろうか。

今まで忘れていたが、私達と一緒にいた巫女さんもここの人間のはずだ。

そう思って振り返ったのだが……

 

「あれ?」

 

いつの間にか、その姿は忽然と消えていた。

私達が気づかないうちにもう戻ったのかもしれない。

私達と一緒に進んでいるうちに見慣れた道を見つけて、会話している私たちの邪魔にならないようそっと離れて戻ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

Side アカネ

 

ネギ・スプリングフィールドとエヴァンジェリンの戦いを見届けた後、私はまたマケイヌが作り出した門をくぐりました。

くぐった先は山のふもとでしょうか。といっても森とかではなく、穏やかな町のはずれのようです。

そして。

 

「えーっと、これは?」

 

門をくぐる前は学校の制服を着ていた私でしたが、今回の服装は見たことのない服装です。

上は真っ白なゆとりのある服で、下は赤い、スカート? にしてはやけにゆったりしていますし、折り目がたくさんついています。何ですか、これ?

 

『あー。それ、ハカマっていうんだわ』

「ハカマ? 何ですかそれ?」

 

服を見て首をかしげていると、マケイヌが教えてくれました。

聞いたことありませんね。どうやらここは旧世界のようですし、こちら独特の服なのでしょうか?

 

『それは装束って言えばいいのか? 説明に困るが、ここ日本のズボンやスカートにあたる装束だ。和装、っていうらしい』

「はぁ……」

『つまりだな、今回の嬢ちゃんの服装は……巫女さんの装束なんだよ。ここはどうやら旧世界の京都、って町みたいだからな、これから行く場所にぴったりだ』

 

そうですか、キョート。

……すみません、魔法世界育ちの私には全くピンときません。

 

 

 

 

 

慣れない服装について解説を受けてからしばらくして、ようやく目的地につきました。

何とか無事につきましたよ……ハプニング多かったですから。

 

最初、女の子に話しかけられた時にはどうしようかと思いました。

マケイヌが念話でこっそり「来たばかりの新人で道に迷った」という言い訳をするよう伝えてくれたので、ごまかすどころか道案内までしてもらいました。

協会とかはよく分からなかったのですが、道中マケイヌが念話で解説してくれました。

 

目的地は関西呪術協会というところの総本山で、そこの長が私の仇、紅き翼の一員なのだそうです。名前は近衛詠春。

そういえば魔法世界で調べた時、関西呪術協会の長になったとか書いてありましたね。あの本には「青山詠春」という名前だと書いてありましたが、どうやら婿養子になり名前が変わっているようです。

 

しばらく歩くとマケイヌは私に女の子達から離れるように伝えられ、再び姿を見せた犬の状態のマケイヌについて行って中へと入りました。

結界が張ってあったらしいのですが、女の子達が入るのとタイミングを合わせて入りこみました。幽霊である私にも効果がある結界だそうです。

 

入りこんだ後、今度はたまたま協会の巫女さんと遭遇してしまいました。

今度はごまかしきれないかと思いましたが、マケイヌが彼女に憑依することで難を逃れました。さすがマケイヌ。

そして現在、巫女さんに憑依したマケイヌに先導されて歩いているというわけです。

 

『オイ嬢ちゃん、キョロキョロするなよ。不審者みてぇじゃねえか』

「こっそり侵入している時点で不審者だと思うのですが」

『その辺気にしたら負けだ。そもそも、今はいかにも関係者、みたいに振る舞えよ。せっかく両方ともこんな姿なんだからな』

 

言われてみれば確かに、服装としてはすれ違う他の人とも大差ありません。

人も多いようですから、特に疑われるということもなさそうです。

 

「すみません、マケイヌ」

 

そう謝ったのですが、なぜかあのなぁとぼやき返されました。

あれ、私何かしましたか?

 

『この体はマケイヌじゃないだろ? 記憶を見るに浦川って名前らしいから、この姿でいる間は浦川さん、って呼べ』

「わかりました、浦川さん」

 

よぉし、それでええとマケイヌ……じゃなかった、浦川さんは前を見て歩きます。

しゃべり方、いつのまにか変わっていましたね。おそらくあれが“浦川さん”のしゃべり方なのでしょう。

私も真似した方がいいのでしょうか?

 

『いや、嬢ちゃんは別にええよ? 無理して喋ろうとして逆に怪しまれたら元も子もあらへんしな。出来る限り黙っとけばええ。あと、ここで嬢ちゃんやのうてアカネ、って呼ばせてもらうで?』

「構いません」

 

打ち合わせは完了。これより、敵の本拠地へ乗り込みます。

……いえ、“敵”という呼び方はいささか正確さにかける気がします。

 

――“英雄”であり“仇”。

かつて優れた剣士であったという「青山詠春」ですが、一体どのような人物でしょうか?

焦ってはいけない。私は復讐を必ず成し遂げる。

今は、落ち着いて策を練ればいい。

 




アカネが関西呪術教会の総本山に潜入しました。
修学旅行の途中からという時間軸ですが、他のところはぶっちゃけアカネがいたとしてもあまり介入しなかったと思うのでこのあたりからスタートです。

刹那視点の時点で、出会った巫女=アカネと気づいた方はどれくらいいるのでしょうか?
できるだけわからないようにはしたつもりですが、案外タイトルでばれたりしましたかね?

最近低評価を受けることが多いのですが、その際はなぜそのような評価になったのかを一言添えていただきますとこちらとしても改善に努めることができますので、5以下の評価をする際は一言お願いいたします。


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