死神より哀を込めて ~英雄達を裁くは少女~   作:ウージの使い

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side形式についてですが……考えた結果。やはりこのままでいくことにしました。

理由は、今までの形を崩したくないのとやはり描写がしやすいことです。

ご指摘はもっともだと思いますし、side形式ではなく地の文で、という意見も間違っていないと思います。

ですが、この話は当初のままで行かせてもらいたいと思います。
一応、新たに「side形式」のタグを追加しておきます。

前置きが長くなりましたが、では、どうぞ。


第6話 朝日の中の別れ

Side ガトウ

 

あっふ……ねむ……。

わりと早くに目が覚めたが、かわりに大きな欠伸が出た。

朝はやっぱり一服しねえと……目が覚めないな。

タカミチやアスナは、タバコが嫌いみたいだがこればっかりはな。

 

「あ、おはようございます師匠」

「……おはよう」

「おはよう、二人とも」

 

煙草を2本ほど吸った頃、ようやくタカミチとアスナが起きだしてきた。

こいつら、ずいぶんとぐっすり寝てたな……。俺は遅くまで起きてて番をしてたのに。

というのも、離れたところで少し魔力みたいなものを感じたからだ。

途中倒した魔法使いか……? いや、それだけじゃなかった感じもするが。

 

「師匠、どうかしましたか?」

「あ、あぁ、何でもない」

 

あまり魔力の察知とか得意じゃないからな……。

かといって、タカミチやアスナにも番をしろというわけにもいかない。

子供に遅くまで起きてろっていうのも酷なもんだし。

 

「師匠、僕もうそんな子供じゃありませんよ?」

「……ガトウ、怒っていい?」

 

ばれてやがる。子供扱いしたことが、なぜか。

心を読まれた? いや、まさかね……。

 

何事もなく、また出発しようかとも思った時だった。

アスナが突然、俺の袖を引っ張ってきたのは。

 

「……ガトウ。ここに、昨日見た犬がいる」

「え?」

「アン、アン」

 

ほんとだ。

アスナの指さす先には、確かに昨日見た犬がしっぽを振っていた。

こいつ、アカネが連れていた……確か、マケイヌだっけか?

こいつがいるってことは側にアカネもいるってことか。

 

「あれ、どうしたんでしょう……?」

「はぐれたのかもしれねえな」

 

なら、アカネを探してこいつを連れて行ってやった方がいいかもしれない。そう考えていた俺は……気が抜けていたのかもしれない。

油断など、しているつもりはなかったのに。

 

ヒュオッ

 

「離れろぉぉ!!」

 

気付かなかった。

犬に気を取られていた、それでも警戒はしていたからぎりぎりで気付けたが……。

ギリギリになるまで気付けなかった。

 

俺の後ろには、いつの間にか、黒い影がいて……。

巨大な鎌を、俺達めがけて振りおろしていた。

 

「くっそ!」

 

タカミチ達を背に隠すと、すぐに咸卦法で戦闘態勢に入る。

俺が全然気づけないほど気配を隠せる実力者なら……下手に様子を見るのは、無意味!!

 

「七条大槍無音拳!!」

 

巨大な拳圧の塊が、影めがけて飛ぶ。

これならたとえ障壁を張っていようが、気で防御をしようがダメージを与えられるだろう。

俺はそう思っていた……だが、その予測は外れていた。

 

「なっ……すりぬけた!?」

 

手ごたえもない。

なぜか、俺の攻撃は影にダメージを与えることもなくすり抜けたようだった。

まるで影が“この世に存在しないもの”であるかのように……。

 

「おおおおっ!!」

「なっ、バカ!」

 

タカミチのバカが影に向かって突っ込んだ。

勢いに任せたからだろう、影はあっさりとよけて袖口を鎌で切りつけた。

そこまで深くはないようだが……それでも、タカミチの動きは鈍ってしまう。

そして、影は再び鎌を振り上げ……。

 

「ち、っくしょう!」

 

俺は、タカミチを力を抜いた居合い拳で飛ばす。

だが、それがあだとなり、隙を作ることになってしまった。

やっちまった……。

気づけば、影は鎌を振り上げたまま飛び上がり……

 

 

 

 

 

 

 

俺の体に、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

Side タカミチ

 

「師匠!」

 

軽率だった。

突然現れた、黒い影……僕はガトウさんすら気付かなかったその存在に思わず恐怖と勢いから殴りかかってしまった。

師匠に弾き飛ばされなければ、危なかったのは僕だっただろう。

だけど、そのせいで……

 

「な!?」

 

僕から狙いを変え、隙が出来た師匠に向かったその影は師匠へと鎌を振りおろしていた。

飛び散る血。

そのとき、僕は初めて影の姿をしっかりと見ることができた。

黒い衣をまとい、人の形をしているその影は、仮面をしているので素顔はわからない。

だけど、その姿と手にする巨大な鎌は……まるで、死神を連想させる。

 

「くそ、まずったな……」

「無理しないでください!」

 

手を傷にあてたまま、瞬動で僕の方に来た師匠はアスナちゃんをもう片方の手で抱えていた。そのまま、懐から緊急用の転移符を取り出す。

1枚がかなり高価ではあるが、保険として師匠が準備していたものだ。

 

「いったん逃げるぞ!」

 

犬を抱えたままのアスナちゃんと僕、そして傷を負った師匠。

死神の姿をした相手がこっちに向かってきたが、それより転移魔法が発動するのが早かった。

 

 

 

 

 

 

 

転移先はさっきいた場所からは離れたようだが、やはり森の中だった。

ちょうどいい大きさの岩があったので、その岩に師匠が身を預ける。

 

「ここまでくれば……師匠、しっかり……」

 

治療のための符は、この前使いきったばかりだった。

前は大勢の召喚魔を使われたため、アスナちゃんを守るため僕や師匠は傷を負い、治療符を使わざるを得なかった。

もっとも、治療符があっても、はたしてこの傷をどこまで治せるか……。

 

「よぉタカミチ。火ィくれないか……? 最後の一服……って奴だぜ」

 

震える手でタバコを取り出すと、口にくわえる師匠。

僕は……ただ、ライターを師匠のポケットから出して火をつけることしかできなかった。

タバコに火がつくと、師匠は満足そうにフーッと煙を吐き出した。

 

「あー、うめぇ」

 

口からは血が流れている。

まさか、内臓にまで傷が達している……?

タバコについたその血が、タバコの白と不釣り合いで目立っていた。

 

「さぁ、行けや。ここは俺が何とかしておく」

「む、無茶言わないでください! それに、転移したんだから追ってくるなんて……」

 

言いかけて、気づく。

転移したとはいえ、ここはまだ森の中だ。ならば、師匠の気配を追ってここまで来るかもしれない……。

 

「何だよ、嬢ちゃん。泣いてんのかい? 涙見せるのは……初めてだな」

 

嬉しいねえ……と笑う師匠の手を、アスナちゃんが小さな手でぎゅっと握っていた。

そして師匠は、僕にアスナちゃんの記憶を、自分に関する記憶は特に念入りに消すよう頼んできた。

これからの彼女には、必要のないものだから……と。

 

「やだ……ナギもいなくなって……おじさんまで……」

 

やだ……とアスナちゃんが握る手の力が強くなる。

ボロボロと涙を流す彼女の頭を、師匠は優しくなでてあげた。

 

 

 

「幸せになりな嬢ちゃん。あんたにはその権利がある」

「ダメ、ガトーさん! いなくなっちゃやだ……!!」

 

 

 

わずかに微笑んで見せた師匠は、続いて僕の方を見る。

僕は……その時、いったいどんな表情をしていたのだろう。

 

「嬢ちゃんのことを頼んだぜ、タカミチ」

「……ハイ」

 

泣きじゃくるアスナちゃんを抱き上げ、頭を下げる。

……僕だって、泣きたい。

頭のどこかで分かっていた。師匠とは、ここでお別れなのだと。

 

「……今まで、お世話になりました」

「あぁ、達者でな……行け」

 

師匠の言葉を受け僕は……何かを振り切るように、瞬動で駆けだした。

まだ未熟だけど、師匠について行く程度はできるようになった、その瞬動で……。

 

「ガトーさん! ガトーさぁぁぁぁぁぁん!!」

 

僕の腕から逃れようと、手を伸ばしてもがくアスナちゃん。

泣きじゃくる彼女の声が、耳に痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

Side ガトウ

 

あいつらは……行ったか。

 

「もう、姿を見せていいんじゃないか?」

「……よく、わかりましたね」

 

木々の陰から姿を見せたのはさっきの影……いや、姿からいえば死神だな。

しかし。初めて声を聞いたが、この声どこかで聞いたような……?

 

「転移魔法符を使ってもあっさり追いつかれるとはな……。だが、タカミチ達が行くまで待ってくれて……助かった」

「…………」

 

返事は、なかった。

痛みにこらえながら、目の前のその姿を見る。

黒い衣に、顔にはドクロを模した仮面。手には巨大な鎌を持っている。

等身大はある、紅い柄に黒い刃の鎌。まさに、死神の姿だな。

 

「あんたは、何者だ? メガロメセンブリアの奴か? それとも“完全なる世界”か?」

 

後者なら厄介だ。まだ残党が活動しているということだからな。

だが、アスナを狙っていたと思ったが……彼女を連れていったタカミチを見逃したから、どうやら狙いは彼女ではないらしい。となると……やはり、俺か。

 

「……いえ、どちらでもありません」

 

……どちらでも、ない?

となると、帝国側? いや、なにか違う気がする。

 

「最初の傷ですぐ死ななくてよかった。最期に少し……話を聞いてもらえませんか?」

 

死神は、ドクロの仮面にあいた手を伸ばす。

そして、素顔を俺に見せた。

 

「ある戦争の中で家族を失い、故郷を失い、命を失って……地上に取り残された、一人の少女の物語を」

 

昨日助けた少女……アカネが、まっすぐな目を俺に向けていた。

 




3話でマケイヌが説明したようにアカネは現在影を使った転移が可能です。
転移したガトウに追いつけたのは、そのためです。

個人的に、ガトウの最後のセリフが大好きです。
なので、あの場面を入れました。
予想していた方は多いと思います。

次回の話の題名は、すでに決まっています。
合宿があるので更新は少し先となりますが……ご了承ください。

次回、「一人目」。
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