死神より哀を込めて ~英雄達を裁くは少女~   作:ウージの使い

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お久しぶりです……。
9月になって忙しくなったうえに、空白期間のプロットが定まらない。
結果、更新が遅くなりました……。

実際、今回の話は特に進歩があるわけでもありませんが、
こういう回も必要かなと思い入れました。



Ⅲ クルト・ゲーデル
第8話 敵を知るということ


Side アカネ

 

一人目の復讐を終え、私は新たな場所へと足を踏み出しました。

扉をくぐり、訪れたそこ。

その大きな町は、活気に満ちあふれ大勢の人々が行きかっていました。

いえ、普通の人間ではなく、亜人も所々混じっています。

 

「…………」

 

私のおぼろげな記憶の中に、亜人がいた記憶はありません。

もっとも、私がここに住んでいたのは本当に幼い頃……うろ覚えなのも当然でしょう。

育ったのはアカネ村ですが、実は生まれはここなのですよ。

 

――メガロメセンブリア。

それが、この都市の名前であり、私の仇を送り出した街。

もちろん、街を行き交う大勢に罪があるとまでは思っていませんけど……ね。

 

さて。

これから私は、何をすればいいのか……。

まぁ確かに私の仇は連合側でしたから、ここに仇の一人がいると考えても何ら不自然なことはありません。

 

『嬢ちゃん、まずは図書館に行くぜ』

「図書館……?」

 

はて、図書館とはこれいかに。

一体図書館に何があるのですかねぇ……? 仇がいる、とか?

しかし、あまり人が大勢いるところで復讐はちょっと……。

 

『いやいや、今回は少し違うぜ。復讐相手がいるわけじゃない』

「では?」

『嬢ちゃんもしっかり知っておきたいだろ? 相手のことを……さ』

 

……!

そう、ですね。

そういえば前回、ガトウと会った時もマケイヌに教えられて初めて彼が紅き翼の一人、

私の仇だと知りました。

 

私自身が、自分の仇について知っておくべきでしょう。

マケイヌの提案は確かにもっともです。

 

「そうですね。では、案内をお願いします」

 

私、この辺の地理知りませんから。

生まれはここだからと言って、道を知っているはずがないでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

さて、図書館に着きました。

建物が並ぶ通りの中で、その建物はひときわ大きく存在感を放っていました。

横には塔とかありますしね。本当に大きいです。

これなら、紅き翼についても資料があることでしょう。

 

「そういえば、あなたはどうするのですか? まさかその状態で入るんですか?」

『あぁ~、ちょっと無理があるかな? んじゃ』

 

さすがに子犬の姿で入るのは……

そう思っていたら、前方のネコ耳の女性がひらひらと手を振ってこっちに向かってきました。

あれ、私知り合いいましたっけ?

 

『これならどうよ?』

「あ、マケイヌですか……」

 

イヌなのにネコ耳の女性とは。

言いたかったですが、ぐっとこらえて我慢です。

 

『まさか犬なのに猫族に憑くとはなぁ。一番暇そうだったのがこの女性だったからよ』

 

あ、読まれてましたか。

どこぞの方かは知りませんが、すみません。

ちょっとお時間と体お借りします。

 

まぁそういうわけで、私たちは巨大な図書館の中へと足をすすめます。

そして。

中に入った私は、思わず感嘆の声をあげてしまいました。

一面本がぎっしり詰まった本棚の群れ。

 

「す、すごいですよマケイヌ! こんなたくさんの本初めて見ました!」

 

村には本なんて全然ありませんでしたからね。

読み聞かせされたのが手書きの絵本とか、いい思い出です。

 

『じゃあ嬢ちゃん、俺が資料探してくるから、嬢ちゃんは席をとっておいてくれ。

もちろん、二人分な。椅子だけより机がある方にしてくれ』

「はい、わかりました」

 

マケイヌに資料を任せ、私は席を探します。

幸い、今日はあまり人が多くないようで、少し探していれば席はすぐに見つかりました。

席に座り、マケイヌを待つ。

最初こそマケイヌがここわかるかなーと思っていましたが、どうやら杞憂だったようでしばらく待っているとマケイヌ(が憑依している女性)が何冊かの本を抱えてこちらへとやってきました。

あ、本だけじゃなく新聞もあるようです。

 

『お待たせ、っと。結構持って来たぜ』

「“大分烈戦争記”に“戦争の英雄達”……それに“紅き翼列伝”なんてあるんですね」

 

正直、すっきりしないものもあります。

“英雄”という二文字……確かに、彼らは戦争で活躍したのでしょう。

しかし、彼らは私の村を殲滅しているのですよ?

あの少年に至っては、一般人であった私を殺しています。

ガトウの言葉からして、一般人を彼ら自身直接は殺さないようにしていたようですが。

 

『…………』

「あ……すいません。ではまずどれから読みましょうか……」

『まずはこの記事を見てほしいな。つい最近の新聞だ』

 

本と共に持ってきた新聞を広げると、マケイヌ(が以下略)は新聞を広げ、記事の一つを指さしました。

その記事は……最近の情勢に疎い、というか全然知らない私でもわかることでした。

 

 

 

“ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ氏死亡!?”

 

 

 

だってその事件は、私自身が関わったものだったから。

 

『ずいぶんとまぁ大きく取り上げられてるなぁ……紅き翼の一員だもんな、当然か』

「“犯人は不明、現在捜査中……”ですか。そういえば、あとの二人はどうなったんですか?」

 

確か、タカミチとアスナ……でしたっけ。

あの時マケイヌはアスナに憑いたということだったので、私は最初に会ったっきり彼らのことがさっぱり分からないのです。

 

『あぁ、あいつらはその後、旧世界のある場所に行ったよ。そこは魔法使いが作った学園都市なんだけどな、あいつらを追っていた他の魔法使い達はそこには手出しができないようだ。バックの管轄が違うとか何とか……。いやぁ、お役所仕事ってたまには役に立つな』

 

とりあえず、無事ではあるということですね。

彼の最後の願いが二人が助かることでしたから、安心は、しました……。

仇の願い、ですけど。

誰かが助かってほしいと思うのは、そう簡単に否定できることでも無くて……。

 

『嬢ちゃん?』

「はっ!? あ、すみません。それじゃあ紅き翼について調べますか……」

 

再びマケイヌにぼんやりしていたところを指摘され、さすがにこれじゃいかんと私は本に手を伸ばしました。

少し流して読んでみますが……何というか、美化されてる傾向が強いです。

“大分烈戦争記”は歴史書という傾向が大きいのでそんなに美化はされていませんでしたが……。

 

さて、読書タイムも進み、だんだんと紅き翼についてわかってきました。

 

まずは“青山詠春”。

旧世界の人間だそうで、人呼んでサムライマスター。

人を守り魔を滅するという“神鳴流”の剣士だそうです。

写真を見るとずいぶん生真面目そうな印象を受けます。

現在は旧世界にいるとあり、紅き翼の中で唯一居場所がわかりました。

 

“アルビレオ・イマ”

どちらかと言えば、後衛タイプの魔法使い。

しかしながら、重力魔法を操る彼は優男に見えてある程度の体術も心得ているそうです。

実際、おとなしそうな印象を受けます。

 

“フィリウス・ゼクト”

彼についてはあまり詳しい情報がありません。

写真で見る限りただの子供に見えますが……“ただの”というわけではないのでしょうね。

散々調べて魔法に優れているとはわかったのですが、詳細は不明のままです。

 

“ジャック・ラカン”

連合側の紅き翼ですが、彼はヘラス族の人間だそうです。

元は傭兵として雇われ、彼らと戦ったのが紅き翼との出会いだとか。

彼は完全に前衛タイプ。武器も使いますが「素手の方が強え」とのこと。

拳闘界では「死なない男」「不死身バカ」「つかあのオッサン剣が刺さんねーんだけどマジで」などの異名があるそうです。

確かに、筋肉がすごいです……でも写真でポーズをとっているのは、ちょっと。

 

“ガトウ・カグラ・ヴァンデンバーグ”

……彼については、詳しく描写することもないでしょう。

私が殺した、眼鏡でスーツ姿の男性。元捜査官だったそうです。

居合い拳なる技を使い、また高等技法と言われる咸卦法を使いこなしたそうです。

もう、その力を見ることは叶いませんが。

 

そして、最後の彼。

私を殺した、赤い髪の少年。

 

 

 

――“ナギ・スプリングフィールド”。

 

 

 

正直、この名を知った時私はたいそう驚いたものです。

運命というのは何と皮肉なものなのだろうと。

いえ、今言ったところで分からないでしょう、誰かが気にすることでもありませんね。

 

連合側からは“千の呪文の男(サウザンドマスター)”と呼ばれ、帝国側からは“連合の赤毛の悪魔”と呼ばれたそうです。

その魔力は相当なもので、放たれる魔法もかなりの規模だったとか。

ええ、知っていますとも。私は両親を殺したその魔法を見た。

そして、私も彼の魔法で殺された。

 

「……ん?」

 

今までは彼らの情報だけを重点的に読んでいましたが、歴史的なものを読んで行くとどうやら彼らは戦争のさなか「完全なる世界」とかいう、戦争を引き起こした秘密組織を倒し、世界を救ったとのこと。

なるほど。戦争で活躍した人間が英雄と呼ばれたのは、このような側面もあったということですか。

 

「……でも」

 

でも、だからどうしたというのです?

私の故郷は彼らによって破壊された、そして連合軍が村の人たちをみんな殺したのも彼らが避難所の結界を壊したからに他ならない。

そう、彼らは英雄と呼ばれても人殺し。

私自身、紅き翼に殺された一人。

 

それは、後にどんなことをしたとしても避けられない事実。

 

私が復讐する理由が、なくなるわけじゃない。

 




実は、紅き翼についての情報は本当はエヴァから聞く予定でした。
しかし、空白期間の話を書くにあたって、やはりこういうこともしただろうなぁ、と書いてみた次第です。



そして一つ、皆様に質問というか、アンケートというか。

実は、原作に入ったあたりで、アカネに協力者をつけたいと思っています。
表立っての協力というよりは、サポートのような役回りですが。
そのキャラを、原作キャラにするかオリキャラにするか迷っているのです。
もし意見があれば、ぜひ聞かせてください。

なお、申し訳ありませんが原作キャラとなった場合誰にするかはもうこちらである程度考えをまとめています。
それはご了承ください。

アンケートの回答も含め、
感想、ご指摘、ご意見お待ちしております。

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