こんなシチュエーションあったらいいなと思って軽く書くつもりが、話が膨らみ続けて連載になってしまいました。
趣味の自己満なので、生暖かい目で見てやってくださいまし。
JS事件から1年。世間がようやく落ち着きを取り戻し始めた。先の事件で多大な功績を残した機動6課も、1年の試用期間が過ぎ、それぞれが新たな地で平和の為に日々活躍していた。
そんな頃、執務官の制服を身に纏い、1人の局員が目的地に向かって通路を歩いていた。
「一体何の用事で呼ばれたんだろうな、ブリューナク。」
『さぁ?どうせマスターがまた捕獲対象をボコボコにしたから、ありがたいご高説でも賜るんじゃないですか。』
「いやー、あれはなんというか…まぁ生きてたからダイジョブダイジョブ。」
『顔が原形を留めてませんでしたが。』
そんな話を自身の持つインテリデバイスのブリューナクとしながら辿り着いたのは、次元航行艦クラウディアの一室。
その扉の前でノックをしてから、
「早坂佑樹執務官であります。」
自身の名前を告げて間もなくして「入ってください」と返事が返ってきた。
部屋に入ると、4人がけのテーブルの椅子に座り、他の局員とは違う黒いジャケットを身に着けた男性が待っていた。
「お疲れ様です、クロノ·ハラオウン提督。本日はどういったご用件で?」
「いや、今日は仕事の話ではなくて、なんというか相談というか…。あと今は二人だけなので、堅苦しい言葉使いはしなくていいですよ、佑樹さん。」
黒いジャケット姿の男性、クロノがそう促すと、「それじゃ、遠慮なく」と佑樹は向かいのイスに腕を組みながら腰掛けた。
本来であれば上官であるクロノに対して、佑樹の態度は非常に問題がある。だが、クロノがまだ執務官資格を取る前、年上で既に執務官だった佑樹に指導を受ける機会があり
、クロノにとっては嘗ての上司・先輩であり、ある意味兄のような存在だった。
その流れから、執務官を目指していた新人時代のフェイトの教育係や嘗ての機動6課への協力等々クロノの身内とは面識があった。
「で、クロノが俺に相談してくる位だ。あまり周りに聞ける内容じゃないんだろう。さては仕事のしすぎで子供に顔でも忘れられたか?」
「…今回は僕の件ではなくてですね。」
「なんだよ、今の間は。」
クロノは目を泳がせながらも、今回は別件だと告げた。
「実はフェイト、妹についてなんですが…。」
(「出たよ、シスコンが…。」)
(『マスターの世話焼きと似たようなものです。』)
(「俺がいつ誰の世話焼いたんだよ。」)
「佑樹さん?聞いてますか?」
「あぁ、聞いているとも。自分の子供に顔を忘れられたんだろ?」
「違いますから!」
見当違いな発言をする佑樹に思わず叫ぶクロノ。昔からイジられキャラは変わらないなと佑樹は勝手に思いながらも、話を進めることにした。
「それで、フェイトがどうした?ケンカでもしたのか。」
「いえ、別に仲が悪いとかそういうんじゃなくてですね。最近フェイトの様子がおかしい気がするんです。」
「様子がおかしいか…例えば?」
「最近突然機嫌が良くなったり、落ち込んだりすることが時々あるんですよ。」
「そんなの誰だってあるだろ。」
「差が極端なんですよ。」
「時々フェイトと話すけど、そんなの感じたことないけどな。」
「そうですか。佑樹さんなら何か知ってるんじゃないかと思ったんですが…。昔から佑樹さんには懐いていたので。」
「そういうのはエイミィとか、なのはとかに聞いた方がいいんじゃないか?女の事は女の方がよくわかるだろうしな。」
クロノは難しい顔をしながら佑樹に言葉を返した。
「聞いてはみたんですよ。でも女性陣は心配するな、何もするなの一点張りで僕には何がどうなっているのか。」
なるほどねぇ。
「その感じだと、女性陣はある程度フェイトがそうなっている原因は予想がついている、もしくは知っている可能性があるな。その上でクロノには伏せているところをみると、あまりネガティブなことが根底にあるわけではないだろう。」
クロノは佑樹の発言を聞いて少し考える仕草をしながら、それでも気になるのか、また佑樹に質問してみた。
「ちなみに佑樹さんは何が原因だと思いますか?この間まで密輸捜査で佑樹さんと一緒に仕事したってフェイトが言ってましたよ。その時に何かおかしな点はありませんでしたか?」
「特には感じなかったな。仕事はきっちりこなしてたし、さっきも言ったが、特におかしな点は見受けられなかったな。」
「そうですか…。」
クロノは有益な情報を得られなかった為に、ひどく残念な様子だった。
(「過保護過ぎる気がしないでもないが、クロノの気持ちもわからんでもないな。」)
(『出た。マスターのお節介。』)
(「うるせっ。」)
フェイトは佑樹にとっての教え子でもある為、佑樹本人も少し気ががりではあった。
「俺もそういう話を聞いて、少し心配ではある。今度適当に連絡とって探りでもいれてみるよ。」
「そうですか。宜しくお願いします。」
そう言ってクロノは頭を下げた。それを見て「気にするな」と手をヒラヒラさせながら、佑樹は部屋を出た。
「はぁ…。」
フェイトは最近何度目かわからないため息をついた。
思い出すのは1ヶ月程前に広報から発行された非公式の情報であった。
「わかってはいたけど、そんなに人気があったんだ…。」
目の前にパネルを表示し、ある記事を見ながら、己の認識の甘さを痛感していた。
その記事のタイトルは、【今年の彼氏にしたい管理局員ランキング!】
堂々の一位に輝いていたのは、フェイトの恩師であり想い人でもある早坂佑樹であった。
アイドル顔負けのルックスと面倒見の良さ、任務になれば自ら先頭に立ち、卓越したリーダーシップを発揮するその姿に男女問わず憧れを持つ者も多い。
上層部とも良い関係を築けているようで、本局の帰属でありながら、今は亡きレジアス・ゲイズ中将からも一目置かれる存在であった。
この危機的状況をどうしようかと考えなから通路を歩いていると、見覚えのある局員が歩いてきた。
「お疲れ様です、フェイトさん。」
「あ、ティアナお疲れ様。仕事はどう。」
「わからないことも多いんですが、なんとか慣れてきた感じです。フェイトさんはどうしたんですか?ため息ついていたような気がしたんですけど。」
ティアナはフェイトの様子が気になり、聞いてみた。
「大丈夫、なんでもないよ。ティアナも何かわからないことがあれば聞いてね。少しは力になれると思うから。」
「ありがとうございます。佑樹さんにも時々手伝ってもらってるので、今のところは大丈夫です。」
ティアナはその時のことを思い出しているのか、とても嬉しそうに答えた。
…まさか…ティアナも…
「…そうなんだ。私も執務官になる前は、よく佑樹さんにお世話になったからね。でもすごく変わった人だから、結構戸惑うことも多いんじゃない?」
フェイトは動揺を隠しながら、無意識に探る様な聞き方をした。
「なのはさんに執務官について相談した時に紹介されたんですけど、確かに最初はなんでこんな人がって思いましたね。でも今になってみれば、紹介される理由がわかる気がします。」
「私も今は佑樹さんと仲の良い関係を築けていると自分では思っているかな。私も当時はお兄ちゃん…あ、クロノに執務官試験についてはこの人に聞けって言われたんだけどね。ただ第一印象は、あんまり良くはなかったかな。」
フェイトは当時、佑樹に出会った当時を思い出しながら、少し首を傾け苦笑した。
「へぇ、フェイトさんがそういう風に思うのって結構意外です。」
ティアナのフェイトに対する印象は、誰にも物腰の柔らかい対応で友好的な対応をしているというものだった。
「まだ管理局に入局してから日が浅かったし、私が起こした事件のせいもあって周りと打ち解けられなくて…。なのに佑樹さんのせいで、リズム狂わされっぱなしで。」
「その割には今のフェイトさん、嬉しそうな顔してますよ。」
「えっ?そうかな?」
フェイトは慌てた様子で自分の顔を両手で覆った。
「はい、顔真っ赤ですし…。初めて会った時、どんな感じだったんですか?」
「うーん…話すと長くなりそうだから、立ち話もなんだし、外のベンチで話そうか?」
「あっ…そうですね。」
そういえば結構な時間、通路で立ち話をしていることにティアナは今更気が付いた。
「じゃあ、行こうか。」
二人は施設の屋外に移動すべく、通路をあとにした。