ユーキ執務官のとある日常   作:寛ずぃ

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悶々とストーリーを考え続けて丸一年。長かった…。
矛盾が無いかとか、人物像がブレてないかとか、今後の展開で行き詰まらないように書かなきゃとか色々考えてたらまとまらないんですよねー。そして溜めに溜めて最終的に結局勢いで書くっていう…。
まぁ、生暖かい目で見ていただければ幸いです。


第二話 懐かしい思い出

行き掛けに二人は飲み物を買ってから、適当なベンチに腰掛け、フェイトは当時の事を話し始めた。

 

「えっと、佑樹さんが私の教育係になった時の話だっけ?」

 

「そうですね。佑樹さんのことだから、なんとなく予想はつきますけど…。」

 

「あはは…ティアナにも同じ様な感じで接したと思うし、多分合ってると思うよ。」

 

「それで、フェイトさんの時はどんな感じだったんですか?」

 

「そうだったね。あれはもう8年以上前の話になるかな?私が執務官候補生として、クロノとアースラで勤務してたんだ。その時に教育係としてやってきたのが佑樹さんだったんだ。」

 

空を遠い目で眺めながら、徐々に当時の記憶が鮮明になっていく。

 

 

 

9年程前

 

「フェイト、少し話があるんだがいいかな。」

 

「どうしたのクロノ。新しい仕事?」

 

「いや、君が執務官を目指すにあたって、指導してくれる人を1人呼んであるから、そのつもりでいてくれ。」

 

「え、クロノが教えてくれるんじゃないの?」

 

「すまない。僕は僕で割りと忙しくてね。あまり指導してやれる時間が取れないんだ。」

 

「そうなんだ・・・。」

 

てっきりクロノが教えてくれるものだと思っていたフェイトは、恐らく初対面であろう人が指導者としてやってくることにあまり気乗りがしなかった。

 

「心配ないさ。以前は僕も指導を受けたことのある人だし、最初は少し戸惑うこともあるかもしれないが、とても頼りになる人だから大丈夫だ。」

 

「それなら良いんだけど・・・。」

 

不安そうな顔をするフェイトに、安心させるようにクロノはフォローを入れたが、先の事件での風当たりが未だ少なく無いフェイトは不安を消すことはできなかった。

 

「そろそろ約束の時間だから、来るはずなんだけどな・・・。」

 

クロノは時計で時刻を確認してから、通路から繋がる司令室の扉へ目を向けた。すると、時間丁度に扉から執務官の制服に身を包んだ男性が入ってきた。

 

「失礼します。早坂祐樹執務官であります。本日付で期限付きですが、次元航行艦アースラの任務に同行することになりました。よろしくお願いいたします。」

 

男性は背筋を伸ばし、ビシッと音がするような敬礼をした。身長は170cm半ばはあるだろうか。短く切りそろえられた黒髪に、整った顔立ち。筋骨隆々というわけではないが、鍛え上げられた肉体が制服に隠れているような印象を受ける。

 

「お疲れ様です、祐樹さん。突然無理なお願いをしてしまってすいませんでした。」

 

「気にするな。クロノが俺にお願いなんて滅多にないことだからな。断るわけにはいかないだろ。」

 

祐樹は頭を掻きながら、ほかの局員と挨拶を交わしていく。

フェイトはそんな彼の様子を観察していた。

 

局員たちは初対面ではないのか、比較的祐樹には慣れた様子だった。彼らの表情を見ていると、彼が少なからず慕われていることが窺える。でもその中で女性局員が顔を赤らめているのは気のせいなのだろうか・・・。

 

「クロノ、この子が例の?」

 

「はい。任務に協力していただく間、この子の面倒を見ていただきたくて。」

 

すると祐樹はフェイトの方に体を向き直した。

 

「自己紹介がまだだったな。名前は早坂祐樹、本局執務官をやっている。任務の傍ら君の指導を請け負うことになった。」

 

「フェイト・T・ハラオウンです。執務官候補生としてアースラに乗艦しています。よろしくお願いします。」

 

互いに自己紹介が終わると、祐樹は今後の予定をクロノに確認した。

 

「当面の予定はどうなっているんだ?直近で大きな現地捜査が必要なら、必要な部隊に打診しておくが。」

 

「今のところ、近々で大掛かりに動いてもらう案件はありません。とりあえず今のところは各管理世界をパトロールして、何か異変や要請があれば動いてもらう形です。直近の航行期間は1ヶ月を予定しています。」

 

「了解。とりあえず急ぎの用事が無いときは、指導を中心に動いておく。時々捜査部の方に戻ることもあると思うから、その時はなにかあればすぐ連絡よこしな。」

 

「了解です。基本行動は祐樹さんに任せますので、指示があれば随時伝えます。」

 

「わかった。そしたらまずは妹君の実力テストだな。ある程度実力を把握しておかないと、教えるものも教えられないしな。」

 

そう言って祐樹はフェイトを連れ、一旦本局の訓練スペースに移動することになった。

 

 

 

 

 

本局のとある訓練スペースで、バリアジャケットに身を包んだフェイトと、訓練着姿の祐樹が向かい合っていた。

 

「君の実力は経歴書である程度把握はしているが、百聞は一見にしかず。この目で確認しておきたい。」

 

「わかりました。」

 

「まずはターゲットトレーニングからだな。」

 

………

……

 

一通りのデータを回収した佑樹は、わかっていたこととはいえ、フェイトの能力の高さに驚いていた。

 

(「経歴書を見たときはにわかに信じ難かったが、実際目にすると納得せざるを得ないな。飛び抜けた格闘センスと相当な努力の賜物だろう。」)

 

「よし、テストは終了だ。今日のデータをもとにトレーニングメニューを組む。執務官試験はもちろん筆記もあるから並行して行なう。君の場合は学生が本業であるから、タイムスケジュールはそれに合わせて設定する。以上だ。質問は?」

 

「今のところはありません。」

 

「よし、明日は学校が終わり次第アースラへ集合だ。解散。」

 

 

佑樹のテストが終わり、フェイトは地球にある自宅へ帰る最中にクロノから通信が入った。

 

「どうだ、佑樹さんとうまくやっていけそうか?」

 

「なんかクロノから聞いてた印象よりも、口数が少なかった。うまくやっていけるかと言われると…ちょっと心配。」

 

フェイトの第一印象としては、無口で無表情、距離感を感じて話しかけづらい雰囲気。正直言うとちょっと怖い。

 

「そうか。もしかしたら佑樹さんも、教える相手が年の離れた女性だから案外緊張してるのかもしれないぞ。」

 

「そんな風には感じなかったけど…。とりあえず頑張ってみる。」

 

「そうしろ。そのうち佑樹さんの良さに気付くさ。今日はもうゆっくり休め。」

 

「うん、じゃあまたね。仕事頑張って。…はぁ…。」

 

通信を切って、改めて今後のことを考えて溜め息をつくフェイトだった。

 

 

 

 

 

翌日アースラの司令室へ向かうと、早坂執務官はおらず、クロノ曰くどうやら充てがわれた部屋にいるらしい。フェイトは少し緊張した面持ちで部屋に向かい、扉の前で一度深呼吸してから、軽く2回ノックした。

 

「フェイト・T・ハラオウンです。」

 

「入れ。」

 

入室の許可が出たので、「失礼します」と一言告げてから部屋に入った。少し見渡してみると、部屋の中はほとんどものが置かれておらず、扉に向かい合うように机とイスと本棚があり、右端に簡易ベッドと人ひとり分のシャワールームがあるだけであった。強いてあげるなら書類が机に山積みになってるくらい。

 

「とりあえずそこに座れ。」

 

フェイト早坂執務官に言われるがまま、机の向かいに用意された簡易パイプの椅子に腰掛けた。

 

「さて、本日の訓練及び筆記対策だが、急ぎ偵察任務が入った為にそれに同行してもらう。」

 

「…っ!了解しました。作戦内容はブリーフィングで確認すればよろしいでしょうか。」

 

「いや、偵察が主になる為にメンバーはこの2人だけで行なう。時間も限られているから内容は移動しながら話す。」

 

「了解しました!」

 

 

 

 

 

 

 

「あの…早坂執務官、1つ聞いてもよろしいでしょうか」

 

「なんだ。」

 

「ここ…喫茶店ですよね?」

 

「その通りだ。」

 

佑樹に言われるがままに連れてこられたのは、ミッドチルダ東部パークロードにある極々普通の喫茶店。2人はその店内のテーブル席に向かい合って座っていた。

 

 

「あの…偵察対象がここに来るんですか?特徴を教えて頂かないと私が対象に気が付けないのですが。」

 

「何を言ってるんだ。偵察対象は目の前にあるじゃないか。」

 

佑樹はフェイトの発言を受けて、よくわからないといった顔をした。

 

目の前にある??目の前にいるのは早坂執務官だけで、あるのはテーブルの上に早坂執務官が先程頼んだ2人分のパンケーキと紅茶だけ。

 

 

「…失礼ですが、おっしゃっていることがよくわかりませんが。」

 

フェイトはいつまで経っても任務の内容を話し始めない佑樹に若干苛立ちながらそう言った。

すると佑樹は目の前にあるものを指差した。

 

「あるだろうがパンケーキが。」

 

は?パンケーキ??

 

「これのどこが偵察対象なんですか?ただのパンケーキですよ。」

 

「いいから食べてみろ。話はそれからでも遅くない。」

 

呆然とするフェイトを尻目に佑樹は目の前のパンケーキを食べだした。

フェイトも食べないと話が進まないと思い、とりあえず自分の分で頼まれたであろうパンケーキを一口大に切ってからフォークで差して口に運んだ。

 

…あ、美味しい。

 

フェイトは今までの件を一瞬忘れるほどの美味しさに驚いた。

 

「美味いだろ。」

 

佑樹はパンケーキをナイフで切りながら、フェイトに視線を向ける事なく一言そう言った。

 

「え?あ、はい。とても美味しいです。」

 

「ここは俺のお気に入りなんだ。以前オフの時にぶらぶらしてたら偶然見つけてな。何となく入って、何となくパンケーキ頼んだんだけど、食ってみたらあまりの美味さに驚いたよ。それ以来時々通ってるんだ。」

 

佑樹は僅かに笑みを浮かべてそう言いながら、パンケーキを食べ続ける。

 

早坂執務官て笑うとこんな顔するんだ…。

 

「そうなんですね。確かにこれは通うかもしれないです。」

 

「だろ。でも他のヤツに言うなよ。あまり有名になったら混んじゃうから。」

 

確かにこれは私でも通いたくなる。でも当初の偵察任務とはどうしても繋がらない。

 

「美味しいのはわかりました。でもこれと偵察任務と関係があるんですか?」

 

「あるさ。パンケーキの偵察に来たんだから。」

 

…なんか急に頭が痛くなってきた。つまり、ただパンケーキを食べに来ただけとういこと?

 

「任務じゃなくて、ただのサボりじゃないですか…。」

 

「何を言う。パンケーキの味がいつも通りか、常連として確認する義務がある。」

 

「執務官ではなく、常連て言ってる段階でもうただの私用ですよ…。」

 

「うっ…。細かいことはいいんだよ。さて、任務も完了したし、そろそろ戻るか。」

 

「まだその件続けるんですね。」

 

そんな言葉を無視して会計を済ませた早坂執務官と共に外へ出た。

 

帰り道、私の前を歩いていた早坂執務官は前を向いたまま、急に私にこんなことを聞いてきた。

 

「ちなみに最後に取った休暇はいつだ?」

 

「えっ?えっと、確か…。」

 

あれ、そういえば最近休暇と呼べる休暇が思い出せない。大抵の時間は学校か勤務かで、今日みたいに街に繰り出すことなんて無かったかもしれない。

 

「フェイト、俺達は管理局員で、世界の平穏を守るのが仕事だ。任務は昼夜を問わず、常に危険と隣り合わせ。長期の任務になれば1-2ヵ月は家に帰れないなんてこともザラだ。だけどな、俺達は管理局員である前に人間だ。ロボットじゃない。動き続ければ疲れるし、気分が落ち込むこともある。だから、たまにはしがらみやプレッシャーを忘れられる時間が必要なんだ。」

 

「でも、こうしている間にも、たくさんの人が助けを求めているんです。自分だけのんびり休むなんて…」

 

「自惚れるなよフェイト。どんなに強くたって人ひとりが両手で救える命なんてたかが知れてる。休暇も寝る暇も惜しんで救える命はあるだろう。けど、そんなことを続ければいつか自らを破滅に追い込む。その先救えるはずだった命を救えなくなるんだ。」

 

「…!」

 

「自分を救えない奴がどうやって他人を救えようか。自分自身の幸せを知らずにどうやって他人に幸せを説くことができようか。それが出来ずに本当の意味で守るべきものを守ることは出来ない。だからなフェイト、読書をするでもいい、運動するでもいい、家族や友達と過ごすでもいい。自分の為に時間を使うということも大事にしろよ。」

 

「はい。」

 

まさか、このことを伝えるために早坂執務官は私を連れ出したのかな。

自分の幸せということをあまり考えたことは無かったけど、言わんとしていることはなんとなく理解はできた。それと同時に前を歩く早坂執務官の背中がとても大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、その後クロノに見つかり説教を受けていた早坂執務官の背中はとても小さかった…。

 

 

 




こうなんか文字に起こすって難しいですね。
書いている本人の頭の中の描写が読んでいる方にも伝われば良いのですが…。
次の話の投稿いつになるのやらー。
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