その瞳に映る未来を   作:キイカ

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乙女の買い物、二人の後輩

 

 

 

 

 

 宴会の次の日。二日酔いで撃沈している団員が半数を占める中、早朝から中庭を見渡すことが出来る場所、塔と塔を繋ぐ空中回廊に三人の姿があった。

 ベンチに座りなにかを思い悩んでいるような金髪の少女を、心配そうに見つめるリヴェリア。

 珍しい姿にやや困惑した様子のロキと、大方の事情を察し、その上で無言を貫いているトーヤ。

 二人が話しているのを聞き流しつつ、頭の中では昨日ぶつかった少年を思いだしていた。

 

(あの子は多分、成り立ての冒険者だ。力の差があるのが分かっていながらあーも言われるのは、応えてるだろうなぁ)

 

 昨夜の件を事細かにロキに言われたベートは意気消沈としており、相当に落ち込んでいるのが分かった。

 彼の中には大方アイズへの謝意がいっぱいなのだろうが、少しくらいは少年にも向けられていたらなぁとも思っていた。

 確かに聞いていてあまり気持ちの良い話でなかった。その時に素面であったトーヤも止めにいけば良かったのだろう。

 しかし、当人がいるとは思っていなかったので、後で伝えれば良いかと考えていた。

 その結果がこれだ。

 

(ったく、なにが【未来予知】だ。これから起きることも分かんないんじゃあ、お株も下がるわ)

 

 オンオフを切り替えるのは自分なので、その責任があるのは分かっていた。

 ファミリアの幹部である以上、発現した【未来視】のスキルがある以上、想定外で終わらせるには些か立場も力も悪すぎた。

 

(やれやれ。今度会ったときに謝罪しないとなぁ)

 

 彼らのファミリアが頭を下げるなどいろいろと言われそうだが、そもそも団員である前に一人の人間であるのだ。

 身内が失態を犯したなら、誰かが謝べきだろう。

 例えそれが格下と思われる者だろうが、誠意は大切だ。

 大真面目にはならないが、最低限の礼節は持っていたいと思うのが、彼の思考だ。

 そんなことを考えている内に、ロキはどこかに消え、リヴェリアは中庭に降りてアイズと話していた。

 

「おっと。完全に空気だったな。まあ、男の俺が詮索するのは無用だろう。久しぶりに趣味でも──!?」

 

「待とうかトーヤ。これからどこに行くつもりだい?」

 

 取り残されたことにようやく気付き、まあ仕方ないと思いつつ場を後にしようとした。

 しかし、その後ろから発せられた声に、影を縫いつけられたかのように動けなくなった。

 口調は穏やかで、別段おかしなところなど無いのに、その雰囲気が怒りを感じさせる。

 振り返りたくないと叫ぶ本能に反して、理性が振り向かなければヤバい、と首を強制的に後ろに回させる。

 錆びた扉を開けるような音が聞こえそうな彼の視界に入ったのは、小柄な男。

 

「だ、団長……」

 

「やぁ。どこかに行くみたいだけど、その前にちょーっと、お話しようか」

 

 笑顔を浮かべているのに笑っていない瞳に射抜かれ、やっとの思いで言葉を吐き出した。

 待っていたのは、逃がさないという意志の下、これから行われるであろう説教。

 是非とも逃げたいところなのだが、残念ながら既にフィンはトーヤを担ぎ上げており、逃走することなど不可能だった。

 

「ああああぁぁぁぁーーーー…………」

 

 塔の中に消えていく悲鳴と二人の姿。

 それを通りがかった同期の少年が、引きつった笑みを浮かべて合掌していた。

 一方元気が無かったアイズをティオナが誘い、姉とレフィーヤを連れて買い物に出掛けていた。

 

「たまには服も買わないとねー」

 

「……私、あんまり興味ない」

 

「そ、そんなこと言わないでくださいよ! ほら、これとか似合うと思いますよ! 」

 

「こういうときって私確実に引率役な気がするわ。はぁ……」

 

 最初に行った店がティオナとティオネのお勧め──つまり、肌の露出が凄まじい所だったため、レフィーヤの力説でヒューマンなどの衣服を売る店に来ていた。

 脳天気な妹と、衣服に興味を示さない人形のような少女、そんな彼女をなにやら妄想をしているのか顔が赤いエルフ。

 言葉の通り引率としか思えない状況に、溜息も漏れてしまう。

 

「こういう服って暑そうだから私苦手なのよね。もっと布面積少なくていいのに」

 

「いやそれはアマゾネスだからですよ!?私とかアイズさんはこういうので十分ですから!ね!?アイズさん!?」

 

 あまり目移りしない衣服の数々に思わず愚痴も零れる。

 その発言に全力で反対し、同意を得ようと真っ赤になるレフィーヤに、思わず引いてしまうアイズ。

 もっと攻めなさいよーと肌色多めの衣服を取っては二人に押しつける。

 それを二人して顔を赤くしながら全力で首を横に振る。

 もはやギャグのようにも見える光景を気にすることなく悩む少女が一人。

 

「うーん。もう少し落ち着いたのもあってもいいかなぁ。でもあんまり地味すぎてもなぁ」

 

 ザ・普通の服、というものがあまり分からないティオナは、適当に見繕っては鏡の前で合わせるを繰り返していた。

 似合ってるかも分からないそれに、正直意味があるかと思うのだが、「トーヤ(あいつ)を振り向かせるならこれくらいはしないと!」と姉に押されたのを思い返しては、いつもは使わない頭を回して似合いそうなのを探す。

 アイズもさることながらティオナもこういうことには疎かったため、彼を好くまでは気にしたこともなかった。

 基本的にどんなときでもアマゾネスの服──肌の露出が多く、むしろ隠している布の方が少ない蠱惑的なもの──ばかりを着ていたので、今探している服はどれも彼女の性格的にも、種族的にも合わなかった。

 

「はぁ~。やっぱり普通が一番な気がするなぁ」

 

「何言ってんの!あんたの奥手な性格じゃ伝わらないでしょ!ほらもっと真剣に探しなさい!」

 

「そんなこと言われてもさ~、変に着飾っても私すぐに地が出そうだし~」

 

「んなこと言ってたらいつまで経っても想いは告げられないわよ?」

 

 んぐっ!?と息を詰まらせたような音が聞こえたが、ティオネは知らんぷりをかまし穏やかな雰囲気になっていたアイズとレフィーヤに突撃していった。

 図星を疲れて何も言えなかったティオナも、もう少し探してみようと思い立ったが、どうにも頭が痛くなってきたので一度店を出た。

 

「すぅ~はぁ~。服選ぶだけで頭が痛くなるなんてね。どれだけ考えてなかったか分かって、我ながら悲しくなるな」

 

 外の空気を吸ったことで少し気分は晴れたが、すぐには戻らずぼーっとしながら通りを眺めていた。

 ふと、見覚えのある集団を見かけ、声をかける。

 視線の先には、絶賛片思い中の彼と、彼を慕う後輩たちの姿が。

 

「おーい!トーヤー!ミスカー!リーン!」

 

「あ、ティオナさん!どうしたんですかこんなところで」

 

 大きな声で名前を呼ばれた三人はすぐに気付き、彼女のところへ歩いてきた。

 元気よく反応したエルフの少女──ミスカ・ヘルベスは不思議そうな顔をしている。

 隣では大剣を担いだヒューマン──リン・コーウィンが何も言わずにジッと見てくる。

 そして、ダンジョンに行く前だろうにどうしてか疲れた様子が伺えるトーヤ。搾り取られたかのように元気のない彼に、どうしても聞かずにはいられなかった。

 

「ちょっと買い物してるの。ところで、なんでトーヤは疲れた顔してるの?」

 

「それはですね、さっきのことらしいんですが──」

 

 質問に答えたのはリン。

 その内容は、昨日の寝坊をこってりとフィンに小一時間ほど説教されたとのこと。

 説教は一時間程度で終わったのだが、なぜかリヴェリアまで現れ、追加で説教を食らったらしいのだ。

 彼女のも合わせると計三時間。しかも正座でずっと。

 それはここまで生気が抜けるわけだ。

 そもそもフィンとリヴェリアの説教は冗談抜きでキツい。

 入団したての頃に何度も叱られているティオナには彼の気持ちが痛いほど良く分かった。

 

「あ、あはは……。それはお気の毒に……。でも、起きなかったトーヤが悪いから、自業自得だよねー」

 

「……分かってるさ。それでもクるんだよなぁ、団長とリヴェリアのは。こう、ヤスリでじわじわ削られる感じ」

 

『あぁ……』

 

 思わず共感の声が出るほど彼らはフィンらの説教が記憶に残っていた。

 燃えつき欠けているトーヤを見て、少し戸惑ったような様子を見せるティオナ。

 それに目ざとく気付いたミスカが、リンの腕を引っ張り服屋に消えていく。

 すれ違い際、「ちゃんと聞くんですよ? 」と言われ、思わず目を見張ったがさすがはその道の先輩。彼女が戸惑っていた理由を見抜いたようだ。

 気を利かせた後輩二人のおかげで二人きりになった。

 しかし、片や燃えつき片や切り出すのに困っている二人の空気は、周りからすれば非常にもどかしいものだった。

 偶然この場を見かけた彼らの知り合いは内心頑張れとエールを送りながら通っていく。

 

「……あ、あのさ。トーヤ?」

 

「……なんだ?」

 

「えっとね、その、トーヤは、どんな子が好き?」

 

 彼らの応援が届いたのか。

 はたまた彼女が勇気を振り絞ったのか。

 どちらかは定かではないが、ようやく距離を縮めれるであろう質問を彼女はすることができた。

 その答えを考えている彼は、ようやく生気が戻ってきたらしく、顔色が良くなっていた。

 ……先ほどは白かったわけだが。

 

「そうだなぁ、基本的に俺を想ってくれるやつなら大体好きだぞ」

 

「ち、違うの!そうじゃない!私が聞きたいのは──」

 

 知りたかった答えじゃないものが返ってきて、それを否定し再度意味を伝えようとした。

 その時。

 

「──ティオナ?」

 

 店から一人で出てきたアイズが話しかけてきた。

 先程一緒にいたレフィーヤは、ティオネとミスカにからかわれて真っ赤になっていた。

 その様子をリンと見ていたようだが、彼女の声が聞こえたため、出てきたようだ。

 タイミングは悪く、続けようにも途切れてしまったなけなしの勇気は、再度集めるには時間がかかりそうだった。

 アイズに悪意などなかったのだろう。

 それでも、彼女は叫んでしまった。

 

「……ッ!アイズのばかぁぁぁぁ!!」

 

 顔を真っ赤にしてそう言い放つと、ぷいと振り返りどこかへ走っていってしまった。

 呆然としている天然少女と、なにを聞こうとしたのか皆目検討のついていない鈍感青年は、互いに顔を合わせ小首を傾げるのだった。

 その光景を店内から見ていたリンは、走り去った純情な先輩団員になんとも言えない気持ちになっていた。

 

「はぁ……。先は長そうだ……」

 

「そうだね……。今のはティオナさんは悪くないと思うけどね」

 

「強いて言うならトーヤが鈍感なのが悪い」

 

『そうですね』

 

 見事にハモる辺り、やっぱり彼女らはティオナの味方なのだ。

 知らず知らず言われているトーヤはくしゃみをしていた。

 

 

 

 

 ちょっとした騒動があってから一時間。

 買い物をしていたティオネたちと分かれたトーヤたち三人は、ダンジョンに潜っていた。

 現在五階層。敵はそこまで強くない。『恩恵』を預かっていればそれなりに余裕があるところだろう。

 むしろLv.4であるトーヤにとっては肩慣らしにもならない。

 ミスカとリンもすでにLv.3であり、彼らがここらで止まる理由は特にはないはずだった、

 

「さーて。そろそろ適当に()()()()()

 

「どうぞ。私たちは周りで待機してます」

 

「おう、任せた」

 

 五階層の出口、つまり六階層への入り口から外れ、そこいらがよく見える位置で立ち止まった三人。

 物陰ではないが、横道に逸れており、ちゃんと見なければ三人がいることには気付けない。

 もちろん、第一級冒険者やそれに準じたレベルの者たちであれば、強化された五感で気付く者もいるだろう。

 だが別に、気付かれようが気付かれまいが彼らには関係なかった。

 彼らの、いや彼の目的は探索ではない。

 言うなれば趣味なのだが──。

 

「んー、お。早速か。そうだな、リン。今通った四人組の後をついてけ」

 

「分かりました」

 

 何の変哲のない冒険者パーティーが間の前を通ったとき、トーヤが指示を出しそれを受けたリンがバレないように気配を消して移動した。

 闇討ちがしたいわけではない。

 そもそも彼らの強さで闇討ちなどする必要もない。もちろん彼らより上位は存在するが、そんなことをする利益など無かった。

 彼らが上層であるここらで止まり、時折トーヤが二人に指示を出している理由。

 それは──

 

「とりあえず難は凌いできました。後はどうにか出来るでしょう」

 

「出来なかったら自分の実力不足だって気付いて欲しいがな」

 

 ──トーヤが視た未来、または、()()()()()()()()を覆すため。

 ダンジョンではなにが起きるか分からず、万全の準備をしたも全滅する可能性が多分にある。

 それこそ、トーヤたちでさえもっと深くに行けばありえる話だ。

 今彼らが行っているのは、言うなれば手助けだ。

 目の間を通り過ぎた冒険者の未来を視て、もし危険に陥るのならば二人を派遣してそれとなく助ける。

 そんなことをしていたのだ。

 もちろん、手助け程度なので、全てを片付けるわけではない。

 ()()()()()()()()()()()()()

 それが彼らのルールである。

 あまりやりすぎては育たないし、かといって放り投げて覆すことなど出来ない。

 視えているならば安全──といっても気休めだが──だが、視えない場合は厄介である。

 途中がなければなにが起こるか分からず、下手すれば派遣した二人を危機にさらすかもしれないのだ。

 それを承知した上で二人も手伝っているのだが、トーヤからすれば非常に助かるが、反面心配もしていた。

 いつ起きるか分からない不慮の事故に、わざわざ巻き込ませるなど本当はしたくない。

 それなのに今こうして彼らが手助けをしているのは、単に彼らが心優しいのもあるが、簡単に言えば今助けておけば後々得するかも知れないからだ。用は未来の投資のようなものである。

 とはいっても、トーヤの本音は未来を変えるための手掛かり探しである。

 いつまで経っても変わらない未来を、ただ時の流れで受け入れるなんてまっぴらごめんな彼は、自身から動き未来を変える可能性を探していた。

 大いに自分勝手な理由だが、後輩二人はなにも聞かずに手伝ってくれている。

 それは彼に教えてもらった恩義もあり、二人からすれば彼は憧れでもあるのだ。

 

「毎度ながら付き合ってもらって悪いな。これは俺一人でもいいんだが、助けれる可能性が減っちまう」

 

「気にしないでくださいよトーヤさん。私たちは分かった上で着いてきてますから。ね? リン?」

 

「もちろん。嫌だったり時間がなければ断りますよ」

 

 扱いではトーヤは魔導士だが、彼は小太刀を持っており、前線でも戦える。

 あまり出来る者のいない『並行詠唱』も出来る上に、魔力もある。

 一人で戦線を維持することも不可能ではない彼に憧れてはいるが、それとは別に彼からの頼みを断らないのにも理由がある。

 

「それに、あの時トーヤさんが助けてくれなかったら私たち死んでましたし」

 

「あと、僕たちの間も取り持ってくれましたしね」

 

「別に俺はここまでして欲しくて助けたわけじゃないんだがなぁ」

 

 彼女らが言うあの時とは数年前、ミスカとリンがファミリアに入り、ダンジョンを探索していたときのこと。

 数人で組んだパーティーで今ほどの階層で戦っていたら、他の冒険者たちから怪物進呈(パス・パレード)を押しつけられてしまったのだ。

 ここらの階層ではそこまで強くはないのだが、数が余りにも多く、しかも下がることを考えなかったため全滅しかけたのだ。

 そこを助けたのがたまたま通りがかったトーヤなのだった。

 それから今にいたるまで、師事したり日常生活でも世話をしてもらっている二人は感謝してもしきれないのだ。

 

「あの時は死ぬかと思いましたよほんとに」

 

「ほんとね。さすがにあの数はぞっとしたわ」

 

「嘘つけ。お前らわりとピンピンしてたじゃねぇか」

 

「あれは空元気に決まってるじゃないですか。あの後部屋でぶっ倒れましたもん」

 

「私もしばらく精神疲弊(マインドダウン)で参ってましたよ」

 

 当時を振り返り笑い事のように語り合う三人。あの時は今のように仲良くなるなど思ってもいなかったトーヤだが、こうして私情は隠しているものの助力してもらえるのは嬉しかった。

 何より話し相手がいるのは非常に精神的に楽である。

 

「今はこんなに強くなって……。おっちゃん涙出てきたよ」

 

「はいはい全然お若いでしょう。まだまだ私たちの前を走ってくれなきゃ困りますよ」

 

「まだ追いつかせないでくださいよ?」

 

「素直なんだか生意気なんだか分からんやつらだな。似たもの同士とはこのことか」

 

『否定しません』

 

「仲良いなほんとに」

 

 下手くそすぎる演技は軽く流され、逆に煽ってくる後輩二人。

 頼もしさを感じたのを隠しつつ、なんとなく茶々を入れようとしたが、全く効果がなくて逆にうなだれる羽目になった。

 二人が息が合っているのはそれなりに長く共に戦ってきたのもあるが、互いに相思相愛だからというのが一番だろう。

 これがトーヤがしたことの二つ目である。

 助けてから数日して吊り橋効果とやらかは分からないが、二人から恋愛相談を受けた彼は、なんとかして二人をくっつけたのだ。

 これに関しては他の者が聞けば「嘘でしょ!?」と思いそうだが、事実である。

 とはいっても、トーヤも二人から相談されてようやく気付いたのだ。

 

「トーヤさんも早く春がくるといいですねぇ」

 

「良い年してるんですから、そろそろ考えたらどうです? 」

 

 二人のキューピッドである彼を、茶化すよう言葉をかけるが、彼からの反応がない。

 不審に思った二人が顔を覗き込めば、すぐになにもなかったかのように笑みを浮かべた。

 

「あぁ、すまんすまん。ちょいと考えごとしてた」

 

「すごいタイミングですね」

 

「ここまでくるといっそ怪しいです」

 

 清々しいほどに信じていないミスカとリンの言葉に、溜め息をついて肩を竦める。

 それからは何も言わず、その日は計四団体ほど手助けしてホームへ帰った。

 

 

 

 

「やっぱりトーヤさん、なにか隠してますよ」

 

「そっかぁ。まあそんな気はしてたんだけどね」

 

 夕食も終わり各自の自由時間。

 ティオナとミスカはリンの部屋で集まっていた。

 集合場所にされたリンは特に気にした様子はないが、話しには参加する様子がない。

 そんな彼は放って女子トーク、トーヤのことを話し合う。

 

「どうも恋愛関係は明言するのを避けてるような……」

 

「私も頑張って聞いたけど、的外れなこと言われたなー。いや、全然違うわけじゃないんだけどね」

 

「過去になにかあったんですかね?」

 

「どうだろう。むしろ、あの感じだとなにもなさそう」

 

「確かにそんな気がします」

 

 鈍感の烙印は深く根付いているらしく、それだけで一つの可能性を切り捨てられてしまった。

 ちなみに、彼女らの話し合いも今に始まったわけではなく、ミスカがティオナの恋心に気付いてから、ミスカから声をかけて始まったのだ。

 普通に雑談するときもあれば、恋バナに花を咲かせるときもある。

 今回はどちらかといえば恋バナ寄りだった。

 

「聞いてはみたいんだけど、勇気が出ないよぉー!」

 

「そこは頑張ってくださいよティオナさん……」

 

「だってぇー!私そんな経験一度もないんだもん!すぐに出せる方がおかしいでしょ!」

 

「いやまぁそうですけど……」

 

 なんだか大きくなった子供みたいだ──年齢的にはまだ子供だが──と、失礼なことを考えたミスカだが、人のことは言えないと口を噤む。

 時間も時間だということでティオナは部屋から出て行き、ミスカは今まで話しに参加せず窓から外を見ていたリンに話しかける。

 

「リンはどう思う?」

 

「トーヤさん?」

 

「うん」

 

「なにかはありそうだよね。でも、教えてもらうにはたぶんもっと頑張らなきゃダメだと思う」

 

「理由は?」

 

「単純。僕らが今は弱いから。もっと強くならないと、トーヤさんに負担をかけちゃう。それに──」

 

「それに?」

 

「──勘だけど、トーヤさんはなにか問題を抱えてる」

 

「それは私たちじゃ解決できないのかしら」

 

「出来たら言ってくれるでしょ。たぶん、どうにも出来ないから、言わないんだと思う」

 

 ここまで話してようやくリンはミスカと顔を合わせる。

 普段からやや大人しめな彼は、トーヤやミスカなど仲の良い人にのみよく喋る。

 二人で推測を話し、なんとか慕っている人の助けになろうと思考する。

 二人とも良い線にいっているのは分かっていた。

 しかし、どうにも決定的な情報がない。

 

「もっとトーヤさんのことを知らなきゃいけなそうね」

 

「あんまり雑だとバレるよ?」

 

「ちゃんと注意するわ。それじゃあ私も戻るね。おやすみ」

 

「うん。おやすみ」

 

 当人にバレないように悩みの解決を目指す二人。

 今日は解散とミスカは部屋を去っていった。

 リンも、彼女が去ってからすぐにベッドに入り寝始めた。

 外で、聞き耳を立てている者がいたことなど気付かずに。

 

「これは気をつけないとバレそうだな。二人にも言っておこう」




予定より早いですが投稿しました。
後からですが、前話の後書きに更新頻度の目安を書きました。
ここでも書きますが、学校との都合にもよりますが基本土日に一話です。
元気だったら二話書くかも知れませんけどね。
平日はダウンしているので、早く終わらない限りはないと思います。

今話から新たなオリキャラを登場させました。
出番はなんともいえませんが、それなりに大切な役はあるかも?
にしてもティオナは可愛い(真顔)
可愛く書けてたらいいなぁ。
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