早朝から活気のあるロキ・ファミリアのホーム。
廊下を元気良く駆け抜けていく褐色の少女は、まだ寝ているであろう青年の部屋を目指していた。
通りがかったリヴェリアは聞いていないだろうし、言っても意味はないと分かってはいたが注意した。
それを彼女の予想通りに聞き流し、謝罪の言葉のみをそこに残してどこかへ消えていく。
走りながらも笑みを浮かべ、周りの視線も微笑ましいものを見たようだ。
「まーだ寝てるかなー?」
さすがに恩恵の力を全開で走るようなことはしていないが、元の身体能力が高いため充分な速度が出る。
それを維持したまま移動していたティオナは、目的地であるトーヤの部屋に着いた。
ノックもせずにドアを開け、寝ていることを疑っていない彼女は口を開き、声を出そうとし──
「おーは──」
「起きてるから起こさなくて良いぞ。それと大声は響くからやめてくれ」
「──よぉ?あれ?起きてたの?」
──起こそうと思っていた当人から止められた。
まだ日が出てから一時間経っていないのに、起きていた彼に不思議そうなティオナ。
とっくに着替えていたらしい彼は、部屋に備え付けられた椅子に座っていた。
窓の外へ視線を向けていたらしく、扉が開いた瞬間こちらへ振り向いたようだ。
「あのなぁ。俺だって毎度寝坊してるわけじゃないぞ?この前のは……まあ、ちょっと遅くまで起きてただけだ」
「ふぅーん?そうなんだ。てことはいつもはこのくらいから起きてるんだ?」
「いや?今日は外が騒がしかったからな。いつもはもう一時間位後だな」
「そんなに騒がしかったかなぁ?」
「二日酔いで潰れてた時が静かすぎただけかもしれないな」
「あはは。そうかもね」
自身の印象が丸分かりな反応を呆れながら否定し、理由を言ったが、やや口ごもったように感じた。
それを気付いていない振りをしつつ、世間話を始める。
外が騒がしいのには理由があり、彼女がトーヤの部屋に押し掛けたのもそれが原因だった。
「……、ところでさ!今日時間ある?」
「うん?特にすることはないが……なんでだ?」
喋りながらもタイミングを見計らっていたティオナは、話題が途切れたことを利用し本題に入った。
意を決したように聞く彼女は、顔が赤くなっているがトーヤは気付かない。
熱いのかとしか思っておらず、微塵も彼女の勇気に気がつかない。
一日暇だということが分かった彼女は、花が咲いたように顔を明るくさせ、ずっといたドアの前から一瞬で間を詰めていた。
一気に近付いた彼女のとの距離に驚きつつ、理由を聞く。
「今日は
「あぁー、そんな時期か」
迫力のあるモンスターと調教師との掛け合いを、観客たちが飲み食いしながら見るのが受けが良いらしく、始まってからは毎年行われている。
【ガネーシャ・ファミリア】が主導で行われており、ギルドもそれを手伝っている。
祭りに合わせ出店なども各所に出され、この日はどこも騒がしくなるのが常だった。
そんな祭りがあれば、冒険者たちもダンジョンに潜らず町をふらつくのも仕方のないことだ。
「ちょうど行きたかったし、助かるわ。一人で回るのは味気ないと思ってたところだ」
「あれ?誰も誘ってなかったんだ。てっきりミスカとリン辺りに聞いてるかと思ってたんだけど」
「誰が好んでイチャつくカップルと回らなきゃいけないんだ。食ったもんが片っ端から甘くなるわ」
「あ、あはは。そうだねー」
快諾し、むしろ有り難がる彼は、ティオナの言葉に半目になりながら答えた。
想像したのか「辛いもんたべてぇ」と呟いている姿に苦笑いしてしまう。
表面的には残念そうな素振り見せたが、内心とても喜んでいた。
仲が良いとはいえ、こういうチャンスを二人でいれないよりかは良かった。
とは言っても彼女らのことだから、彼女のことを考え断るような気もしていた。
(まあ、どっちにしても私には問題ない!)
二人でいれれば楽しいし、四人でいても楽しいだろうから関係ないと区切りをつけた。
実に楽観的な思考だが、彼女らしい考え方でもあった。
楽しそうな笑顔を浮かべている彼女の顔を見ているトーヤは、なぜか険しい表情になっていた。
思考から帰ってきて気付いたティオナは、もちろんその理由を尋ねた。
「あー、なんだ。あんまり言いたくはないんだが、未来がなぁ……」
「えっ。もしかして……?」
「面倒事に巻き込まれるのが視えた。といってもまあ、そこまで酷くはないから大丈夫だとは思うが」
返ってきた不穏な答えに押し黙る姿を見て、問題ないと手を振るが、彼のスキルは精度が高いため難しい顔のままだった。
基本的に彼が視るのは可能性が高いものであり、別の未来も十分にありえる。
さらに、誰かの動き一つで変わることも多々あり、可能性が高いからと言ってその未来になるわけではない。
どんな未来でも行動次第で変えれる。
それが彼の思考であり、先の言葉の裏付けでもある。
が、それを説明しても簡単には納得されないのは分かっているため仕方がないと切ることも多い。
「適度に視ながら変える努力はするさ。だからお前さんは祭りを楽しめばいい」
「………………たいなぁ」
「ん?」
あまり良くない未来を視たときは、基本彼は一人で変えようと行動している。
下手に巻き込むのは相手に悪いというのもあるし、彼が巻き込みたくないというのもある。
今回もそれで行こうと彼女を宥めようとしたのだが、小声でなにかを呟くだけであまり変化がなかった。
聞き返してもなんでもないと言われ、平常通りに戻ってしまった。
疑問が残るがあまり深追いもしたくはなかったので、諦めることにした。
(私も手伝いたいのになぁ。そんなに私って頼りないかな)
元気良く振る舞う反面、内心では少し寂しそうな気持ちが芽生える。
彼を好いているからこそ、頼って欲しいとも思っているのだが、彼はこういうときは一人で抱え込んでしまうことが多いのは分かっていた。
自分から積極的にいかなきゃいけないかなと思い、ぐっと拳を握り締める。
「……よし。それでさ、今から行く?それとももう少し後にする?」
「どうせ暇なんだし、もう行っちゃおうか。出店を回っていれば時間も潰せるだろ」
「そうだね!それじゃ行こ!」
実は前日から姉にどやされていた今日のお誘いを、無事達成出来たことを喜び笑顔を浮かべる。
ここからまた一歩近付くために頑張らなければ、と乙女の心を燃やしながらも彼の先の言葉を忘れないようにする。
どのタイミングで彼が視た未来が来るのか知らないが、今の彼女は「今日の私の邪魔をするなら全部ぶっ飛ばしちゃうから!」、という心意気で部屋を出た。
彼女が何かに燃えているように幻視していたトーヤは、首を傾げるしかなかった。
部屋を出ていく二人の姿を、廊下の奥から見ている者がいた。
「あ。ティオナさん、誘えたのね。私たちが押しつけることにならなくて良かったわ」
「さすがに今日は来ないでしょトーヤさん」
無事誘うことが出来たらしい先輩の横顔を眺めるミスカ。
いつもは一つ結びにしている、肩甲骨の肩程まで伸びた紫紺の髪を、くるくると弄りながら呟く。
基本的に薄紅色の
隣にはリンがおり、彼も普段来ている鉄色の防具と灰色の戦闘衣ではなく、白シャツに黒のズボン、灰色の上着という格好だった。
二人とも祭りということで多少なり衣服を変えていたようだ。
「いやあの人のことだから世話焼きたがる気もするんだけど」
「ないない。絶対、「辛いもん食いたくなる」とか言ってるよ」
彼女がありそうだと言うのを真っ向から否定し、トーヤの物真似までして来るわけないと言い張った。
思いの外それが似ていたことがツボに入ったらしく、ミスカはお腹を抱えて笑い出した。
してやったり顔のリンも、一通り笑い終えるまで待ち、先に行った先輩二人の後を追うように手を取り外へ向かった。
普段以上に人が集まり、出店で賑わう通りをトーヤとティオナは歩いていた。
祭りの日だからかいつも以上に活気のある町人と商人を横目に、何を買おうか悩んでいた。
色々と食べたいものがあるらしいティオナは、目移りしながらお財布と相談していた。
「うぅ、もう少しお金あったら気にせず買えたのに……」
「俺が買ってやろうか?」
「うっ……、すっごい嬉しいけど、私いっぱい食べるよ?お金なくなっちゃうかもよ?」
いくつか切り捨てているのか悲しげな声で言った彼女に、救いの手が差し伸べられる。
その言葉は非常に魅力的で嬉しいものなのだが、自身が食べる量を考えてしまうと、彼の財布を素寒貧にしてしまいそうで素直に受け取れなくなる。
「いいさいいさ。日頃のお礼ってことだ」
そんな彼女を気にした様子もなく笑いかけ、食べたいものを言ってみろと聞いてくる。
その優しさはきっと、自分じゃなくても振りまかれるんだろうと思ってしまい悲しくなる。
たいしたことをしてもいないのにこうも感謝されるのも、なんとなく申し訳なく感じていた。
彼女が考えている以上に彼が日頃の世話を頼もしく思っていることなど、伝わるはずがない。
互いに言葉にしないから伝わらないのだが、彼からこうして優しくしてもらえるのが心地良いと思っている自分がいることに心底嫌悪感を感じていた。
(私はもっとちゃんと伝えたいけど、やっぱり恥ずかしいんだよね)
周りからも背中を押されることは、散り散りになっている勇気を集めるのに助かっていた。
それでもその勇気を使って踏み出すには、自分の心が決断しないといけなかった。
ほとんど毎回心が恥ずかしさで振り切れるから、どうにも一歩踏み出せない。
未だ遠い彼の心の隣は、後何回一歩踏み出せば届くのだろうか。
そんなことを想い、溜息をつく。
「なにを食べるんだ?さっきから悩んでるが、そんなにあるのか?」
少し思考の海に浸っていたら、なぜか勘違いされてしまった。
まるで大食漢みたいな言い草に、少しむっとしてしまうティオナだったが、彼の優しさに甘えることにした。
たまにはいいよね、と思い食べたいものが売られている出店を指差して歩き始めた。
一件目で大きな肉塊の串焼きを買い、二件目でじゃが丸君というじゃがいもを潰し油で揚げたものを買った。
味も色々あり、人気があるらしくそこかしこで同じような出店が出ている。
「これだけか?もっと買うと思ってたんだが」
「今はこれでいいの!お腹減ったし食べよ!」
いっぱい食べると言った割に二個しか買わなかった事を聞けば、後で買うような感じで返された。
串焼きにかぶりつき、美味しそうに食べている彼女はとても幸せそうだ。
見ているだけでなんとなく満足してしまったトーヤだが、彼女が不思議そうに見てきたため、一緒に買ったじゃが丸君を食べ始めた。
トーヤは普通の塩味を選び、ティオナはバター醤油味にした。
肉にかじりつきつつ、彼の食べていたそれを見て自分も食べたくなったティオナ。
そのまま頭を動かす前に口が動いた。
「ねぇねぇ、一口ちょーだい!」
「ん?こっちも食べてみたいのか?」
「うん!トーヤが美味しそうに食べてたら気になっちゃった!」
どちらも気付いていないが、中々大胆なことを言っているのだが、一方は食欲、もう一方は相変わらずの鈍感でそのまんまに受け取った。
進んでないのは勇気だけではないような気もする彼女の発言だが、ほいと差し出されたじゃが丸君を見てようやく自身の発言に気付いた。
(あ、れ?ちょっと待って?普通に聞いちゃったし、差し出されてるけどこれ、間接キスだよね。ん?間接、キ……ス……!!??)
冷静に考え逆に思考がと顔が熱くなってしまい、日差しを鬱陶しく思ってしまった。
思い切り八つ当たりしつつ、今更先ほどの発言を取り消そうと思ったが、怪しすぎるし恥ずかしすぎた。
言った手前もう戻れないので、思い切って一息にじゃが丸君をかじった。
「どうだ?ん?ティオナ?顔が赤いけど大丈夫か?なんか飲み物買ってくるか?」
(間接キスしちゃった間接キスしちゃった間接キスしちゃった間接キスしちゃったああああああぁぁぁぁぁあぁ)
感想を聞いてきた彼の声さえ聞こえていない今の彼女は、事情を知る者から見れば羞恥に染まっているのが分かるほどだった。
完全にショートしてしまっている思考に、顔が発熱してて真っ赤になっていた。
それを暑さのせいだと思いこんだトーヤが、食べかけのじゃが丸君を口に放り込むと、どこかへ飲み物を探しに行ってしまった。
「あああああぁぁぁぁぁ…………」
顔の熱さと羞恥心と謎の嬉しさ。
現在それらが彼女の中で渦巻いており、もう一歩なにか起きればどうにかなってしまいそうなほど、ギリギリのラインを保っていた。
気を紛らわすために残っていた串焼きを食べきり、自分用に買ったじゃが丸君バター醤油味を、先ほどの出来事をフラッシュバックさせてさらに発熱しつつ食べていた。
「買ってきたぞー。とりあえず酒じゃなくジュースにしたけど良かったか?」
「あー、うん。今はジュースがちょうどいいかなー」
帰ってきたトーヤをあまり見ないようにしつつジュースを受け取る。
目を逸らされていることに疑問を覚えるトーヤだが、どれだけ聞いても頑なに拒まれてしまったので諦めた。
そして、ジュースを飲んでようやく熱が収まってきた頃。
「なぁティオナ」
「なにー?」
「俺も気になるからそのじゃが丸君一口くれ」
「……!?」
やっとのことで収めた熱が再発した。
完全に無自覚で言っている彼は自身の言葉になんの疑問も抱いていない。
しかし、今の彼女にとってそれは爆弾発言であり、しかもすでに少しかじってしまっていた。
石のように固まってしまうティオナ。
視線は手に持ったじゃが丸君──の自身がかじったところ──に釘付けで、少しも手が動かなかった。
「おーい、ティオナさんやー。どうしたんだー」
目の前で手を振られていることにすら気付かず、というより気にしていられなかった。
固まっていながらも思考は働いており、なんとか落ち着こうと努力していた。
不自然すぎる間が空いたが功を奏して、無理矢理いたも通りに振る舞うまでに戻れた。
やや震えながらもその手のものを差し出す。
やっとかと言った顔のトーヤは、全く意に介せずそれをかじった。
しかも、見事にティオナが食べた近くを。
「おぉ、こっちも美味いな。今度買うときはこれにしよ、って、ティオナ?ティオナー?おーい?」
「あ、あぅぅ」
「ちょ、おいティオナ!?」
なにかを言っているのと名前を呼んでいるのは聞こえたが、残念ながら容量不足でパンクしてしまった彼女には届かなかった。
見事に無自覚間接キス二連発で彼女は撃沈した。
しかし彼女も可愛そうである。
相手はまったく分かっていないのだから、実に不憫であった。
「あちゃー。気絶しちゃったよ」
「あれは仕方ないでしょ。あんなの好きな人にやられたらたまんないと思うよ?しかもティオナさん一途だし」
遠くでその様子をたまたま見ていた後輩二人組は、撃沈させられてしまった純情な先輩団員にお疲れさまでしたと内心呟いた。
相変わらず鈍感を発揮しまくっている恩師に、頭痛を感じてしまった二人。
同じようにじゃが丸君を買っていた二人も、お互いを見やる。
「私たちもやってみる?」
「ミスカがいいなら。まあ、あそこまで恥じらうとは思ってないよ?」
「うん」
(いやまぁ、私にもそれなりにはあるんけど……)
普通に出来るでしょと暗に言っているようなリンの口振りに、少し冷や汗かいてしまったがバレてはいないようだった。
その後ミスカがどんな反応をしたのかは二人の秘密である。
後輩たちに見られていることなど露知らず、気絶してしまったティオナを背負って移動しているトーヤ。
名物の開始時間も迫り、会場へと向かっているのだが、やけに周りが騒がしい。
出店で感じた騒がしさとはまた違った、言うなれば活気ではなく恐怖によるものだと思った。
辺りを見回し事情を聞こうとしていると、見覚えのある二人組を見つけた。
ギルドの受付嬢らしき人物と話していた二人に、後ろから近寄り声をかける。
「ロキ、アイズ。いったいなにがあったんだ?」
「おぉ、トーヤ。って後ろにいるのはティオナか。なにがあったかすごーく気になるが、とりあえず簡単に説明してまうで」
主神と仲間が振り向く。一瞬二人の視線が背中の少女に言ったが、相当に切迫した状況なのかなにも聞かずに事を説明し始めた。
なんでも、ガネーシャ・ファミリアが捕らえていたモンスターが数匹逃げたらしく、周りを彷徨いているとのこと。
犯人は行方不明で、モンスターの見張り役たちはなにかに取り付かれたかのように譫言を繰り返すだけらしい。
周りの安全確保をガネーシャ・ファミリアがやっているらしいが、人手が足りないとのこと。
ここまで聞いて、見事に未来が当たってしまった、とトーヤは悔しそうに呟いた。
それを聞いたロキとアイズはすぐに察し、彼から詳しいことの次第を求める。
「朝にな、ティオナに今日の祭りを誘われて、承諾してからちょっとスキルを使って視てたんだ。そしたら、モンスターが暴れているのが視えてな。一応回避は試みたんだが、ダメだったらしいな」
「知ってたんかいな。それを誰かに言ったりは?」
「いや、してない。巻き込むのはごめんだからな」
朝方に彼が言っていた面倒事、それは今のことだった。
視界に映った
そこまで視てスキルを止めたのだが、どうにも気にかかることがあった。
「逃げた数は二桁にはいかないんだろ?それじゃあなんで俺が視た未来には十二体もいたんだ?」
「うちに聞かれても分からん。分かることは、さっさと片付けないと住人が危ないっつーことや」
なぜか異なる未来との差に、疑問が残るがやや変わったのだろうと自己完結させて頭の隅に追いやった。
「……ロキ」
「今回はしゃーない。ガネーシャんところに恩を売っとくのも悪くないしな。アイズたん、行ってもええで」
今まで沈黙していたアイズが話しに入ってくる。
一言で意図を察したロキは、薄く目を開きつつGOサインを出した。
すぐさまアイズはどこかへ消え去り、場に残ったのはトーヤとまだ気絶しているティオナ。
そして──
「あ、ロキ。なにがあったのよ」
「あれ、トーヤさんに、……ティオナさん?はっ!もしや」
──会場の方角からティオネとレフィーヤが現れる。
慌ただしい状況の説明を求めるティオネにたいして、なにかに気付き楽しそうな笑顔を浮かべているレフィーヤ。
明らかに話しを聞く気がないのが分かる彼女にチョップを入れ、はっとした彼女も先ほどの話しを聞く。
「人手が足りないのね。じゃあ私たちも手伝った方がいいわよね?」
「そうやな。アイズたんが先行しとるから、追いかけて倒しきれなかった奴を狩ってくれ。トーヤも一緒にな」
「あいよ。ティオナー! そろそろ起きろー!」
すぐに状況を理解し手伝いを申し出たティオネに指示を出し、トーヤもそれに含めた。
さすがに非常事態なので、気絶中の彼女にも起きてもらわないといけなくなった。
背中を揺すりながら声をかけ、三度目にしてようやく目を覚ました。
「うにゃ?あ。えっと、ごめん。寝てたのかな?えーっと、それでどういう状況かな」
半ば寝ぼけていたが、周りの雰囲気にすぐに覚醒し、状況把握に努める。
省略したトーヤの説明で理解し、移動を開始する四人。
「あー、一人でほとんど倒してってるわね」
「これは私たちの出る幕ないかもね」
「餌の前で待たされてる気分だわ」
「それ分かる!」
追従するために屋根に登った四人だが、猛スピードで蹴散らしていく頼もしい仲間の姿に、手伝う必要もないのではと思い始めた。
なぜか戦う気満々だったアマゾネス姉妹の言葉に、身震いをしているエルフがいたが、見なかったことにした。
「んん?あそこにいるの八体じゃないか?」
「一匹足りないわね。どこか別の所へ行ったのかしら」
アイズがたむろしていた八体を瞬殺し、その後ろに追いついた四人。
数が合わないことを告げたトーヤに、辺りを見回しているが見つからない。
そもそもトーヤは未来との差に違和感を感じていた。
それはまるで、
再度スキルを使おうと周りを見渡したときだった。
「ねぇ……なにかくるっ!」
「……下からっ」
直感でなにかに気付いたティオナが警告し、その具体的な場所をアイズが示した。
咄嗟にその場を離れた五人は、揺れ始めた地面と、轟音が聞こえてくる正面を見つめた。
そして、地面を突き破って出てきたもの、それは、
「なに、これ」
「……蛇?」
「……違う。こいつは──」
──花だ。
トーヤが苦々しそうに呟き、自身の視た未来は間違っていなかったと再確認した。
そこに現れた花のようなモンスターの数は
計十二体となり、彼が視た未来と一致した。
というわけで次回は初の戦闘です。
正体バレちゃったモンスターですが、スキル故致し方なし。
まあ、まだでてないのもいますし。
大半はほのぼの(いちゃついてるかもしれない)、終盤のみ真面目回ですね。
次回は頑張ります。
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