あ~、入りたくない。
絶対弄ってくるのが分かってるから入りたくないよ~。
でも、入らないと寝れないし。
ぐぅぅ~、どうしたら弄られる展開を回避できるかな?考えろ私。頭を使って考えるんだ。苦手なのは百も承知だけど考えろー。
頭の横を指でぐりぐり押してみるけど、残念ながら案は出てこない。
考えるのは止めて溜息をついてみる。
特に意味がないのは分かってるけど、少しくらいは気分が晴れないかな~って思ったんだけど、効果はないみたい。
「うぁ~、寝ててくれたらいいんだけどな~。でもそんなわけないよねー」
トーヤと別れてから、かれこれ五分くらいは部屋の前で突っ立ってる気がする。
ドアの前で腕組んであーでもないこーでもないってうろちょろしてるから、すっごい怪しいの自分でも分かる。
他のみんなはもう寝てるみたいだから、誰にも見られそうにないからいいけど、絶対ティオネは起きてるよね。
今日の出来事ぜ~んぶ聞いてくるよね~。
「誰か他の人のところ……でも変わらないよね~」
何度もドアノブを手にしては離してを繰り返してるけど、一向に決心できない。
他の人のところに行ってもたぶん聞かれるんだろうなぁ。
ミスカなら分かってくれそうだけど、「またダメだったんですね」とか言ってきそうだしなぁ。
うぅ~、入りたくないよぉ~。
ずーっと思考が迷走してたせいで、ドアが開いたのにも気付けなかった。
「あんたはさっきから何を呻いてるのよ。端から見たら変人よ?」
ドアを開けたティオネが私を変な目で見てる……って、嘘!?扉越しでも聞こえてたの!?そんなに声大きかった私!?
驚きで飛び退いちゃったし、反射的に手が出るかと思ったんだけど!
「うぇっ!?き、聞こえてたの!?」
思わず変な声出ちゃったし!これ絶対弄られる!うわーん!今日も絞られるぅ~!
てか、もしかして、周りにも聞こえてたり!?
焦りながら周りを見渡したけど、誰かが出てきそうな様子はなかった。
「ほとんどね。周りには聞こえてないでしょうけど」
良かったけど、良かったんだけど!すっごい嫌な笑顔なんだけど!フィンが見たら思わず引きそうな顔してるんだけど!
フィンですら引く気がするから私はもちろん引いてる。少し熱が引いた気もしたんだけど……やめて!?そんな哀れな者を見る目で私を見ないで!?
うぅ……。私が決めきれなかったのが悪いのかなぁ。だけど、決めたところでティオネには弄られるだろうし、どっちにしても変わんないか。
そしたらなんかもうどうでもよくなってきちゃった。
とりあえず早く中入って喋って寝たい……。今日のことが頭を過ぎる度に顔が熱くなるし……。
「はぁ~。もういいや。とりあえず中入らせてー」
「あらあら。ようやく観念したのね。それじゃあ今夜もたっぷり吐いてもらいましょうか」
諦めたように取られたみたいだけど、こんな状況で諦めない以外の方法が私には分かんないよー。
ティオネを丸め込むなんて出来ないし、かといって喧嘩したら明日怒られるし。
どうしようもないよねっ!
とりあえず自分のベッドに座ってっと。ついでにお気に入りのクッション抱いてー、あぁ~落ち着くぅ。
「で?トーヤと二人きりでいたみたいだけど、関係は進んだのかしら?」
「ぶっ!」
すごい語弊ある言い方してきたね!?
なにその二人でいることが目的みたいなの!
べ、別に今回は二人でいたくて行動してたわけじゃないしぃ~……。
トーヤの力になりたかっただけだしぃ……。
それ以外に他意は、他意は……うん、ない。絶対ない。断じてなにかあるかなーなんて思ってない。
ううん。落ち着け私。ここは冷静に返さないと。
「本題から間違ってるからね?トーヤが視た未来を調べるためにいたんだからね?」
よし、落ち着いて返せたはず。
抱いてたクッションに力が入ってる気がするけど、気にしなーい気にしなーい。
今の返答なら下手に弄られることはないよね?
「ふぅん?それで、なにか分かったの?」
「うぅん。たぶん今日じゃないんだろうってことになった。トーヤのスキルも万能じゃないしね」
ふとトーヤが言ってた理由を思い出した。
後悔したくないからってトーヤは言ってたけど、あの眼はそれだけじゃない気がする。
もっと、大切ななにかをそれでなくしたから、あんなに思い悩んでるんだと思う。
トーヤはそこまで言わなかったし、あそこで聞くのはなんとなくダメな気がした。
たぶんそれは、トーヤの深いところに踏み込んでいくようなものだと思う。
私はトーヤのこと、す、好きだけど、トーヤは私のことをどう思ってるか分かんないし……。
誰だって話したくないこととか、聞いてほしくないことはあるもんね。
でも、いつかは聞けるような関係になれたらなぁ……。
今度こそクッションがしわくちゃになる。
やばいやばい。これお気に入りだから気をつけないと。他のを抱いとこ。
「あら。随分と真剣な顔してるじゃない。もう少し聞いちゃってもいいかしら?」
え、そんなに顔に出てた私!?
ダメダメ。これは聞いてほしくない。というか私だけの問題じゃないし、トーヤにも関係してるから下手には話せない。
私が変に喋ってトーヤが誤解されるのは嫌だもん。
「やめてくれると嬉しいかなー、なんて」
うっわ、めっちゃジロジロ見てる。
本当かどうか探ってるよねあの眼は。
どうか引いてくださいっ。お願い引いて!じゃないとこのバナナみたいなクッション投げるよ!
「……仕方ないわね。やめといてあげるわ。代わりに他のことを聞こうかしら」
ほっ。とりあえずクッションを投げなくて済んだや。
これに関しては聞かれるのは本当に困るから良かったな。
けど他になにか聞かれるようなことあったっけなぁ?
今日は一日祭りで、祭りで……はっ!
「気付いたみたいね。祭りも一緒だったんでしょ? なにかしら進展はあった?」
あああぁぁぁ~、そうだったぁ~。
夜のことで完全に忘れてた……。
朝から二人で回ってたじゃん。しかも私から誘ったし。
なんで忘れてたんだろ。夜のことで頭使いすぎたかな?
でも今思い出したら間接キスのことが……うぁぁぁぁ~。
ふと頬に手を当てたら、もう隠しようのないくらいの熱を感じた。
これはダメなやつだぁ……。
「な、なにもなかったよ~。今回もダメだったー」
「のわりには顔赤いわよ。なにかあったんでしょ。さぁ吐きなさい。さっさと吐いて楽になりなさい」
誤魔化せないよねー。うん、知ってたよ。むしろこれで誤魔化せたら私ティオネのこと疑うもん。
少しクッションに八つ当たりして、凹んだけど戻るから大丈夫。
どーしよー、言いたくないんだけど。出来れば触れずにやり過ごしたいんだけど、無理だよねーこれー。
う、上手く言葉を濁さなければっ!
「え、えっとねー。いやぁ、そのぉ……うっ」
視線が痛い。すっごい見つめてくるんだけど。
嘘はつかせないし見抜くわよ、っていうのが伝わってくるんだけど。
クッションを盾にしても感じるとか眼力強すぎじゃないかな。フィンが苦笑いしちゃうよ。
どうして私の姉はこんなに眼光鋭いんでしょうか。正直怖いんだけど!
モンスターより怖い姉ってなんだろうね!
あ、でも時々暴走してるから普通か。
「今すっごいむかつくような何かを感じたんだけど」
「気のせいじゃないかなーアハハー」
なんでバレたしっ。
すぐに顔を逸らしたけど、視線が頬に刺さってる。
私の姉は心でも読めるのかな!怖いね!今までの思ってたことバレてたとか考えたくないね!
とりあえず話はそらせたから問題な──
「で、なにがあったのよ。忘れてないからね?」
──くなかったね。うん。
ダメだ。これは逃げられそうにない。
ていうか逃げ場所ないよね。この部屋内にいる時点でどうしようもないし。
部屋に入った時点でこうなるのはなんとなーく分かってたし、諦めるしかないかぁ。
「はぁ。一緒に回ってるときにじゃが丸君とか買ってもらったの。それを一緒に食べましたっ!はいっ、終わりっ!」
言ってる途中で恥ずかしくなって、クッションに顔埋めちゃった。
足もパタパタと動かしてないと落ち着かないし。
しかも頭の中であの時のことぐるぐる回ってるし! 思い出して顔熱くなってきちゃったしー!
「ってことは間接キスしたのね。あんたにしては頑張ったじゃない。それで?あいつの反応は?」
はへ?なんだか思ってたよりも反応薄いや。
もっとがっついてくると思ってたんだけど、なんでだろ。まあ、深く聞かれるよりかは良いけど。主に私の精神衛生上。
「特にはなかったなー。一人で舞い上がってただけな気がする。ていうかそうだった」
私のこと意識してない証拠だもんなー。
はぁ……、やっぱり私女として魅力ないのかなぁ。
確かに私リヴェリアみたいに頭良くないし、ティオネみたくむ、胸もないし……、いや胸はそのうち、きっと、うん、きっと大きくなる!
それはさておき、レフィーヤみたいに可愛くもないし、ミスカみたいに落ち着いてもないし。
アキみたいに真面目じゃないし、リーネみたいに大人しくもない。
……あれ、もしかして私。周りのみんなに負けてない?
私が勝ってるところなにもない?
え、これやばいよね。まだ誰もトーヤを好きになったって人は知らないけど、もしかしたらこれから出てくるかもしれないし。
「うぐぐ……。私が勝ってるところっていったい……」
「なーに一人で落ち込んでんのよ。さっきまでは顔真っ赤だったのに、今度は真面目な顔しちゃって。かと思えば落ち込んでるし。百面相してるわよ」
うっ……。まあ私顔に出やすいみたいだし?
それでもそんなに出てるかぁ。
こういう時はアイズみたいにぽーかーふぇいす? を決められたらいいんだろうなぁ。
いやまあ意味はよく分かんないけど、ロキが何考えてるのか分かりにくいって言ってた気がするし、合ってるよね!
とりあえず私はもう少し落ち着くべきかなー。
もっと女の子らしくなってトーヤに意識してもらえるようにしないと。
「よしっ!私、もっと女の子らしく大人しくなる!」
「いや、無理でしょ。ちょっと昔のこと考え直しなさいよあんたは」
ぐさぁっ!
今すっごい心に刺さったんだけど!
ものすごくふかーく刺さったんだけどぉ!
確かに昔から私うるさかったし、落ち着きなかったけども!
それでも頑張ればいけるでしょ!
うん!たぶんいける!
「努力すればいけるって!」
「いやだから。あんたの性に合ってないでしょ。あんたはいつもバカ騒ぎしてるのがあんたなんだから、むしろ違和感ありありで酷くなるわよ」
ぐぅっ。確かにその通りな気がする。
ちょっと想像してみよう。
私が落ち着いて行動したり、喋ってる姿を──
『おはようレフィーヤ。今日も元気ね』
『えっ、ティオナさんが落ち着いてる……?もしや今日ダンジョンでなにか起きるんじゃ……』
レフィーヤがすっごく慌てる姿が目に見えるなぁ。
じゃあアイズだとどうかなぁ。
『おはようアイズ。今日も鍛錬してきたの?』
『……そうだけど、今日のティオナ、なんだか落ち着かない。なにかあった?』
絶対心配されそうだなー。一人で抱え込まれそうだし。
後はー、ミスカはどうかなぁ。
『おはようミスカ。今日は後ろをよろしくね』
『えっ……。ティオナさんどうしたんですか?もしかしてトーヤさんが知らない内になにか言いました?今から聞いてきましょうか?』
ミスカにも心配されそうだなぁ。アイズとは違った方向だけどね。
他にもいっぱいいるけど、誰で考えても絶対不思議な目で見られる気がする。
「うん。今考えてみたけどダメそう。周りの反応がなんとなく分かっちゃった」
「ほらね。あんたはあんたらしくいればいいのよ。それであの鈍感を射抜いてきなさい。無理に着飾った方が私たちはボロが出るんだから、そのままの方がいいのよ」
確かになぁ。私が騒いでないのとか自分でも違和感あるし。
やっぱり今まで通りでいいかなぁ。
変に変わろうとするよりもその方が私は楽だし、周りに影響もないし。
てか、今のティオネの言葉自分のこと忘れて言ってない?
たぶん聞いたらみんな自分のこと抜いて言ってるって答えるよね。
「なによ。文句あんの?」
「べーつにー?ただそのまま言葉を返せるなーって思っただけー」
またまたバレちゃったみたいだけど、これは問題ない。
事実だし、否定できないからね。
なんだかティオネが赤くなってる気がするけど、たぶん気のせいかな。
一段落したら眠くなってきちゃったな。
さーて、そろそろ寝よーっと。
「私寝るねー。おやすみー」
「おいこらちょっと待て。さっきのどういうことだ。おい、寝るな」
うっは、すっごい怒ってる。
でももう睡魔が来てる、し、寝ちゃおう……と。
ふぁぁ。おやすみぃ……。
「くぅおらぁぁぁぁぁぁ!」
うっさぁい……ぐぅ……。
前回書いたとおり一人称回でした。
どうでしたか?
Twitterにて一部の方にアドバイスもいただいて書いたのですが、上手く伝わったでしょうか。
これにてソードオラトリア一巻は終了です。
次回からは二巻に入ります。
これからもお付き合い頂けると嬉しいです。
感想指摘評価はお気軽にどうぞ。