DEVIL SURVIVOR 2  With you forever.   作:ルーチェ

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5th Day 驚愕の木曜日 -2-

 

シヴァの召喚は首尾よく成功した。

さすがは日舞の名門九条流次期家元候補の舞、シヴァも大満足のようだった。

しかしカーマ召喚についてはいろいろと問題があり、少々手間取ることとなった。

 

カーマを召喚するための方陣や機材はフミたちが準備をする。

場所は新宿・チネシティ広場だ。ここの地下にカーマが封印されているからである。

 

そしてマコトはオトメと一緒にどこかへ出かけて行き、2時間ほどして戻って来た。

なぜかマコトは憔悴しきった顔をしていたのだが、彼女に何があったのかはその直後にわかった。

 

カナデはその間にイオとアイリを説得して回り、なんとか作戦に参画してもらえることとなったのだった。

 

 

 

 

「なんであたしがこんな格好しなきゃならないのよ!?」

 

着替えを終えても、まだアイリは納得できないとばかりに不満を言い続けていた。

それをマコトが宥めようとする。

 

「我慢しろ、伴。不満なのは君だけではないのだ」

 

そう言うマコトの顔も沈んでいる。

 

「それに用意した衣装の中で、君に合うサイズがそれしかなかったのだからな」

 

衣装というのはマコトとオトメがアキバで仕入れてきたもので、カナデたちカーマ召喚チームはそれに着替えさせられている。

マコトはミニスカポリス、オトメはキャビンアテンダント、イオはバニーガール、アイリは体操着&ブルマ、そしてカナデは猫耳カチューシャ付きメイドである。

アリオト対策についてヤマトがサマナーたちに説明した時、ダイチが名案を思いついたとかで、マコトに何か耳打ちしていたのをカナデは知っている。

ダイチがアキバのコスプレショップのことをマコトに教えたのだ。

たしかにジプスの制服や学生服では色気が足りない。

 

(でもだからといってこれはないわよ…。スカートの丈、短すぎる。角度によっては見えちゃうかも)

 

カナデはレースの付いたミニスカートの裾を引っ張りながら思った。

 

「じゃあ、何でフミはいつもと同じなのよ!?」

 

アイリが怒っている理由はもうひとつあった。

フミはコスプレせず、いつもと同じ服装でいるから余計に腹が立つのだ。

 

「フミは普段からコスプレに近い格好をしているだろ? それに本人にやる気がないのだから何を着せても意味がない」

 

カナデにはマコトの苦労がとてもよくわかった。

まあ、フミのチャイナドレスなら彼女の色気は十分に伝わるだろうから問題はないはずだ。

 

「あたしもカナデやイオちゃんみたいな可愛いのがよかった…」

 

「我慢してくれ。どうしても体操着が嫌だというのなら、スクール水着もあるが、どうだ?」

 

「この寒いのに水着なんて絶対に嫌!」

 

アイリは全力で拒否るが、寒くなかったらスク水の方がいいと言っているように聞こえる。

 

(わたしだったらスク水より体操着の方がマシなんだけど)

 

カナデは心の中で言った。

 

「あの…あそこにいる人たちなんですけど…」

 

イオが遠慮がちにマコトに言う。

あそこにいる人たちとはジプスの男性局員とダイチのことである。

男性局員はフミの手伝いを終えてしまうと、手持ち無沙汰といった感じで広場の一角に陣取っている。

その局員たちに紛れるようにダイチがいるのだ。

 

「すまないな、新田。不測の事態に備えて、念のため彼らには待機してもらっているのだ」

 

不測の事態とは悪魔の出現のことである。

それなら仕方がないという顔のイオだが、騙されてはいけない。

男性集団の真の目的は女性陣のコスプレ姿を見物すること。

特にダイチの目的がイオのバニー姿であることは疑いようがない。

携帯を握りしめているのも悪魔の出現にすぐ対応できるようにというのではなく、隙を見ては女性陣の姿の写真を撮ろうという魂胆だ。

 

「サコっち~、最終チェック終了! こっちはいつでもOKだよ」

 

フミがマコトに呼びかける。

そしてマコトの合図でスイッチが入れられ、広場の中央に青白い方陣が浮き上がった。

この後はカーマのご機嫌取りをして呼び出し、契約をすることになる。

 

方陣のそばに仮設の舞台が設えられ、そこにカーマ召喚チームのメンバーがひとりずつ上がって”色気”をアピールする。

順番については大人組からということで、まずはマコトが舞台に上がった。

しかし恥ずかしいのか、ただ立ったままだ。

 

「マコトさん、何かアピールしないとダメですよ!」

 

カナデが声をかけると、マコトは何を思ったのか、腰に下げたモデルガンを握ると方陣に銃口を向けて叫んだ。

 

「無駄な抵抗はせずに出て来い!」

 

ミニスカポリスのコスなのだから、彼女の行動は至極当然である。

でもそれでは現れるどころか、怖がって出て来てくれないだろう。

 

「そうじゃなくって、色気ですよ! 色気のあるポーズです!」

 

「い、色気と言われても、どうすれば…?」

 

「とりあえずシャツの第2ボタンまで外して、甘い声で呼びかけたらどうですか?」

 

カナデが離れた場所からアドバイスするが、マコトは少し迷っていた。

しかし意を決したとばかりにボタンを外した。

さらに彼女にとってできる精一杯の”色気”でカーマを誘うがナシのつぶてであった。

 

続いてフミの番だが、彼女は元々やる気まったくなしで、当然のように成果はなかった。

 

さらにオトメがノリノリでアピールをする。

これは男性陣にはとても好評であったのだが、カーマの反応はゼロ。

ここで大人組は全滅した。

 

続いて女子高生組の番となり、バニー姿のイオが舞台に上がる。

すると男性陣から歓声が上がり、その中でもダイチの声ははっきりと聞こえた。

 

「新田しゃーん、超イケてる~ぅ!」

 

イオ本人は恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だ。

だからダイチの声援は逆効果である。

見てみないふりをする方が彼女の好感度は上がったに違いないが、それがわからないダイチは遠慮なく声援を送る。

 

舞台上ではイオがオロオロしていた。

 

(そもそも女子高生がバニーガールの格好をして、どうやって色気をアピールすればいいのかわかるはずがないわよね。わかればわかったでそれこそ問題だし)

 

これ以上は可哀想で見ていられないカナデ。

 

「イオさん、わたしが代わるわ」

 

そう言ってカナデは安堵の表情を浮かべるイオと選手交代した。

 

(こうなったらやるしかない。もう恥ずかしいなんて言っていられない状況なんだから)

 

カナデは舞台中央でこれ以上ないという作り笑顔で叫んだ。

 

「カーマさまぁ~! 早く出て来てくださいなぁ~! 来てくださらないと、カナデは拗ねちゃいますよぉ~!」

 

満面の笑みを浮かべてカーマを誘うカナデ。

ギャラリーの男性陣は彼女の愛らしい様子に大興奮だが、本人はそれどころではない。

 

(くっ…こんな姿、ヤマトにだけは絶対に見られたくない。わたしがこんなおバカキャラだとは思われたくないもの!)

 

カナデは歯を食いしばりながら、耐えに耐えた。

しかし人類の未来が自分の双肩にかかっていると思えば何だってやる。彼女はそういう人間だ。

 

それから数十秒経って、方陣にまったく変化がないことが確認された。

つまりカーマの召喚は失敗したということだ。

こうなると最後のアイリが頼みの綱となる。

しかしギャラリーの男性陣はすでに諦めており、それぞれが不安を口にし始めた。

それを見ていたアイリが口を尖らせて言う。

 

「失礼ね! このあたしがカーマを呼び出してみせるわ!」

 

そう言って自信満々で舞台に上がった。

ついさっきまで不満げな顔でいた彼女だが、自分にすべてがかかっているとわかると、俄然やる気になったようだ。

まあ、開き直ったというのが正しい言い方だろうが。

 

お手なみ拝見と言ったところなのだが、彼女以外の人間はかなり不安でいる。

これまで5人が玉砕しているというのに、一番色気に程多い彼女が召喚に成功するとは思えないのだ。

期待半分、不安半分で彼女の行動を見守っていると、これまで何の反応もなかった方陣が強い光を放ち始めた。

 

「アイリちゃん、いい感じよ! ここで積極的にアピールすればイケるかも!」

 

カナデが声をかけると、アイリは舞台の端へ行った。

 

「あたしの見事な床運動を見せてあげるわ」

 

そして両腕を上げ、なんと側転を始めたのだ。

それも美しい形の側転で、体操選手と見間違うほど見事なものだ。

 

「小学生の時に少しだけやってたのよ。すごいでしょ?」

 

体操着であることと自分の得意技ということでやったのだろうが、はたしてこれがカーマのご機嫌取りになるのだろうか。

 

気をよくした彼女は2回目、3回目と続けた。

しかし3回目の回転の際に体操着が捲れ上がってしまい、しっかりとおへそが出てしまったのだ。

もちろん本人もそれに気づき、慌てて側転を中止した。

不幸中の幸いというか、観衆は興味ないといった感じで彼女の妙技を見ていなかったため、彼女のおへそは誰にも見られることはなかった。

 

「アレ、見て!」

 

体操着の乱れを直していたアイリが方陣を指差して叫んだ。

方陣はさっきよりも激しく光を放ち、周囲の空気を一変させた。

強烈な霊気を発しながら、方陣の中央に色鮮やかなオウムに乗ったハンサムな青年の姿が現れた。

カーマである。

 

「やったぁ!!」

 

アイリは嬉しそうにピョンピョン飛び跳ね、そのたびに体操着の裾が捲れて肌が露出する。

するとカーマは神としての威厳とか風格といったものをかなぐり捨てて、彼女に飛びつかんばかりに接近した。

そして狼狽する彼女の体操着の裾を両手で掴むと一気に捲くり上げた。

 

「可愛いおヘソなのネ~!」

 

「なっ、何すんのよ、このヘンタイ!!」

 

「げふっ!!」

 

アイリはカーマの顔面をグーで殴りつけ、その勢いでカーマは数メートル後ろにふっ飛んだ。

人間相手ならとんでもないダメージになるだろうが、相手は悪魔だから心配なさそうだ。

とにかく召喚に成功したのだから、あとは契約を成立させるだけである。

 

「アイリちゃん、腹が立ってもここは我慢よ。契約を済ませてしまえば、こっちのものなんだから」

 

「わかってるわよ。でもムカつくぅ…」

 

アイリの気持ちはカナデにもよくわかる。

しかしいきなり顔面をグーで殴りつけるのはあきらかにマズイ。

 

「いきなり殴るなんてひどいのネ~」

 

カーマが再びアイリに近寄って来た。

 

「服を捲くり上げたそっちが悪いんでしょ?」

 

「でも可愛いおヘソがもっと見たいのネ~」

 

カーマは「おへそ」に対して何らかの執着があるようだ。

彼女のおへそが見えた瞬間に現れ、体操着を捲くり上げ、さらにもっと見たいと訴えている。

アイリもそれに気づいたらしい。

 

「何でおへそなのよ? 他にもっと魅力的な部分はあるでしょ?」

 

「ない。というかおヘソこそすべて。おヘソは永遠の輝きなのネ~」

 

カーマの発言に、その場に居合わせた人間は全員ドン引きした。

そしてアイリは激怒した。

 

「何よ! あたしの容姿とか色気に魅力を感じたんじゃないのぉ!?」

 

「いや、カーマは若い娘しか好まぬ。ここにいる女の中で貴様が一番若いから気に入った。というか、他は守備範囲外なのネ~」

 

その言葉にカナデを含め舞台下で待機していた女性陣全員がマジギレした。

アイリは15歳で、この中では一番若い。

しかし次に若いのは17歳のカナデで、その彼女でさえ”若くない認定”されてしまったのだ。

これが激高せずにいられようか。

否。

カナデは対カーマ用の武器を用意しておいた紙袋に手をかけた。

しかし彼女の行動開始よりも先に、マコトとオトメが舞台に飛び上がったのだった。

ふたりは鎖のようなものを手にして、カーマの両サイドから近づいて行った。

 

「何の用だ? 年増に興味はない」

 

バカなカーマは火に油を注いでしまった。

26歳と24歳の独身女性に対して「年増」は、本人の前で絶対に言ってはいけない最大のNGワードである。

カナデには彼女たちのキレる「ブチっ」という音が聞こえた気がしたくらいだ。

 

「オトメ、いくぞ。準備はどうだ?」

 

「OK。いつでもいいわ、マコトさん」

 

ふたりはアイコンタクトをしながらカーマを挟んで対峙し、マコトの合図で一気にカーマを縛り上げたのだった。

 

「な、何をするのネ~!? こんなものカーマなら…アレ? 切れない…!?」

 

カーマは渾身の力を込めて鎖を切ろうとするが、鎖は切れる様子はない。

 

「フッ、これは局長が龍脈の力を込めて作った対悪魔捕獲用の鎖だ。貴様程度の悪魔では切ることは不可能。おとなしくしろ」

 

(マコトさん…すごい。あれだけ憤慨していても、冷静に任務を遂行できるんだもの)

 

カナデは改めてマコトの凄さに感心した。

 

舞台上のカーマの身体は鎖でグルグル巻にされていて、その周りを女性陣で囲んだ。

それぞれカーマに対して文句を言いたいのだが、アリオト戦のこともあるので後回しだ。

 

「貴様には我々の作戦に協力してもらう」

 

マコトの言葉には「絶対にNOとは言わせない」という迫力があり、カーマはその勢いにたじろいだ。

ヤマトの部下をやっていると、同じようなオーラを発生させる能力が身につくのだろうかとカナデは思った。

 

「作戦とは何なのネ~?」

 

「シヴァに矢を射ってもらう。それだけだ」

 

「ヤ~ダ、なのネ~。シヴァなんか撃ったら、こっちが殺されちまうのネ~!」

 

当然のようにカーマは断る。

かつてシヴァにパスパタを撃たれたことが相当なトラウマになっているようだ。

 

「それに貴様の霊力では、カーマの主になるのはムリなのネ~。主以外の命令は聞かないのネ~」

 

それは仕方がない。

何しろマコトの使役する悪魔は天使パワーで、レベルは24だ。

カーマはレベル42だから、彼女の霊力レベルでは無理である。

そういった点で言うと、アイリも魔獣ケットシーのレベル35だからダメ。

しかし逆に霊力が高ければ、やり方次第でなんとかなる。

 

「だったらわたしと契約しなさい。わたしの霊力レベルなら問題はないはずよ」

 

カナデがカーマに言った。

するとカーマは彼女の霊力値を計測するかのようにじろりと見る。

 

「そうネ~、貴様ならカーマの主に相応しい力を持っているのネ~。でも…」

 

そこまで言って、カーマは彼女をもう一度値踏みするように見た。

 

「貴様のオヘソを見せるのネ~。オヘソが可愛かったら契約してやってもイイのネ~」

 

すると女性陣の視線がカナデに注がれた。

ここで彼女がおへそを見せてカーマが満足すればすべて丸く収まるなるのだから。

しかしカナデは別の手段を使うことにした。

 

(若くない認定をされて腹を立てているのに、ヤツを喜ばせるなんてまっぴらゴメンよ)

 

カナデは舞台下に置いてあった紙袋から対カーマ用武器を取り出した。

するとマコトたちの顔は少し青ざめて、カーマから数メートル離れた場所へ避難した。

 

「ソレは何なのネ~?」

 

「幻魔カーマの弱点は物理攻撃。となればこれが一番効果あるのよね」

 

カナデが手にしているのは木製の野球バットにたくさんの釘が打ち込まれたもの。いわゆる釘バットだ。

 

「これ、作るのにけっこう苦労したのよ。まさか本当に使うことになるとは思ってなかったわ」

 

舞台上に戻ったカナデはわざとバットを引きずりながら、笑顔で近づいて行く。

周囲に漂う空気から、カーマは彼女を危険な存在だと判断したらしい。

 

「ちょっ…待て! 待つのネ、人の子よ! 暴力反対なのネ~!」

 

「わたしだって乱暴なことはしたくないわよ。でも17歳の乙女の柔肌はそう簡単に見せられるものじゃない。だとしたらこういう手段を使うしかないでしょ?」

 

「貴様は悪魔なのネ~!」

 

「悪魔に悪魔って言われたくないわ。…さあ、選択肢はふたつよ。ひとつ目は抵抗せずに平和的に契約を結ぶこと。ふたつ目はこの釘バットでボコボコにされた後に仕方なく契約を結ぶこと。…どちらを選ぶ? どっちでもかまわないけど、時間があまりないから早く決めてね」

 

カナデは肩慣らしといった感じでバットを握ると2-3回フルスイングをする。

するとカーマは一気に恐怖心が湧き上がってきたようで、すぐに承諾した。

 

「わかったのネ~。わかったから、平和的に契約するのネ~」

 

意外とあっけなくカーマはカナデの下僕となった。

今は彼女の携帯の中でおとなしくしている。

彼女は作戦の終了をヤマトに報告し、単独で札幌へ入りした。

 

 

 

 

カーマ召喚現場にアルコルがいたことを知る者はいない。

彼は猫耳メイドのコスをしたカナデの写真を十数枚盗撮し、それをヤマトの携帯に送信した。

当然、ヤマトはいきなり送りつけられた写真に驚くが、カナデが自分には見せない恥ずかしそうな表情をしているのを見て満悦する。

特にスカートの裾を直している様子が彼のツボにはまったようだ。

 

(フッ…普段は私の邪魔ばかりするが、たまには気の利いたこともする。待受画面にしたいところだが、誰かに見られた時にマズイな。ひとまず間違って消してしまわないようにロックをかけておくか)

 

 

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