DEVIL SURVIVOR 2  With you forever.   作:ルーチェ

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1st Day 憂鬱の日曜日 -1-

 

(いったい何があったの…?)

 

カナデは記憶の糸を手繰り寄せた。

 

(そうだ…わたしはバイト帰りに偶然出会ったダイチと一緒に渋谷駅の地下ホームで列車を待っていた。そしてわたしと彼の携帯に同時に死に顔動画が届いて、その直後にわたしたちは大地震の発生による列車の転覆事故に巻き込まれたんだった)

 

カナデは瓦礫と列車の車体の間に挟まれていてまったく身動きができないことに気がついた。

身体中が痛み、血も流れているが意識ははっきりとしている。

照明が落ちた非常灯のみの暗い構内で、左手に握ったままの携帯の画面の明かりが刺激になって彼女は目覚めたらしい。

 

「やほほ~、ティコりんだよ☆ 起きてる?」

 

彼女の携帯の画面には、身体の痛みを忘れるくらいにイタいバニーガール風のコスチューム姿の女性 ── ティコがいる。

 

「ねぇねぇカナデっち、このままだと死んじゃうね。だけどさ、もし…まだ生きたいって思うなら、あなたの『悪魔召喚アプリ』が役に立つとおもうけどな~。ねぇ、どうする? 生きること諦めちゃう~?」

 

携帯の画面には『Nicaea』の文字と、「死ぬ」と「生きる」の文字が並んで表示された。

 

(もちろん生きたいに決まっているわよ。こんな場所で死ぬなんて絶対に嫌だもの。…でも怪しい。怪しすぎる。これって今流行りのフィッシング詐欺かも? 下手にクリックすると有料のエロサイトとかに繋がって、途方もない料金を請求されるというヤツ。そもそもニカイアなんて胡散臭いサイトに心当たりはないし…)

 

彼女は思い出した。

 

(あ、そういえばダイチが得体の知れないのサイトに登録していたっけ。それで死に顔動画とかいうモザイクかけなきゃ放送禁止になるようなグロい画像が届いたんだった。たしかアレがニカイアとか…)

 

「ねぇ、どうする? 生きること諦めちゃう~?」

 

携帯の画面の中では選択を求めるメッセージが表示されたままだ。

 

(本当に助かるというのなら、利用しない手はないけど。う~ん…)

 

カナデは冷静に考えてみた。

 

(わたしは17歳、未成年だ。民法第5条に未成年者の法律行為についての規定があって、その第1項には『未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない』とある。つまり、親の許可がない契約は無効だということ。もし料金を請求されたとしても『わたし、未成年ですから』という理由で解約できるじゃないの。だったら迷うことはないわ!)

 

カナデは「生きる」を選んだ。

 

「はいはーい、あなたの強ーい生きる意思、私が確認したよ~。それじゃあ、頑張ってね~」

 

ティコはそう言うと画面から消え、その代わりに見たことのないアプリのアイコンが表示された。

そして次の瞬間、カナデは何事もなかったかのように瓦礫の横で立っていた。

服は汚れているが、身体にはかすり傷ひとつない。

 

「カナデ…君も、か…?」

 

ダイチが茫然として立っているカナデに声をかけてきた。

 

「悪魔召喚アプリって何? ダイチ、知ってる?」

 

カナデが訊くと、ダイチは横に首を振った。

それとほぼ同時に女性の悲鳴が辺りに響いた。

 

「きゃああっ!!」

 

それはひとつではない。

暗闇の中であちこちから同様の悲鳴が上がる。

そしていくつもの黒い塊のようなものが視界に入ってきた。

それは怪物としか言い表せない異形のものだ。

 

「に、逃げよう!」

 

ダイチはそう言ってカナデの手を握るが、彼自身の手はカナデ以上に震えていて足も動かない。

そんな彼女たちに怪物が襲いかかってきた。

怪物といっても怖ろしい姿ではなく、青緑色でどことなく滑稽な人形のような姿形をしている。

 

「ニガサナイヨ」

 

それはダイチをターゲットにし、彼の腹に頭突きを喰らわせた。

 

「げほっ!」

 

いきなりの攻撃に、ダイチは腹を押さえてその場に蹲る。

カナデは後退りするが、すぐそばに誰かの持ち物であろう傘が落ちていた。

咄嗟にそれを掴むと、彼女は傘の先を怪物目がけて力いっぱい突いた。

 

「とぉりゃーっ!」

 

「ギャッ!」

 

怪物の腹に傘の先が突き刺さったと同時に、怪物は悲鳴を上げて霧散した。

しかしそれだけでおしまいではなかった。新たな怪物が襲ってきたのだ。

 

「ボクの名はオバリヨンだよ」

 

オバリヨンと名乗る怪物はおかっぱ頭の小鬼のような姿をしている。

今度はカナデに狙いを定めて飛びかかってきたので、彼女は傘をテニスラケットのように振った。

 

「あっちへ、行っけーっ!」

 

すると上手い具合にヒットし、吹っ飛んだオバリヨンは瓦礫に思い切り叩きつけられて霧散した。

 

「カナデ、すげえ…」

 

ダイチが感心したといった目でカナデを見ている。

 

「感心している場合じゃないわよ。このままじゃどんどん怪物が襲ってくるわ。早く逃げなきゃ」

 

カナデがダイチの腕を掴んで引っ張り上げようとした時、数メートル離れた場所に制服を着た女子高生が蹲っているのを見つけた。

彼女の前には羽根のある妖精のような怪物がいる。

これまでのものよりずっと愛らしい姿をしているが、これも怪物の仲間に違いない。

 

「ほらニンゲン、早く戦おうよ~。戦わないと殺しちゃうよ」

 

声は可愛いが、言っていることはエグい。

 

「待ちなさい! わたしが相手よ!」

 

カナデは傘を振り回して、怪物の注意をこちらに向けた。

 

「あんたが相手? いいわよ」

 

怪物はカナデを目指して飛んで来た。

 

「ジオ!」

 

それはこれまでの怪物とは違って肉弾戦ではなく、呪文を唱えての攻撃だった。

電撃を受け、カナデは床に身体を打ちつけられた。

 

「なんだニンゲン、もう終わり?」

 

カナデを見下ろしながら怪物はつまらなそうに言う。

 

(見た目が可愛いだけにマジムカツク)

 

カナデは上半身を起こしながら怪物を睨みつけた。

 

「それじゃトドメさしちゃうよ~」

 

その時だった。

カナデが左手に握ったままの携帯が突然光を放ち、彼女の左腕をその光で包み込んだのだ。

すると彼女の前方の床に青白い魔方陣が浮かび上がり、その中に大きな白い虎が姿を現して、彼女に視線を向けてきた。

これまでの怪物と違い、傘程度では絶対に倒せるようなものではない。

 

(こんなの絶対に倒せるわけないじゃないの! いいえ、倒すなんてとんでもない。大きいけどあんなに可愛らしいネコ科の動物に危害を加えるなんて、神が許してもわたしの正義が許さないわ。あの白くてフワフワの毛並みをモフモフしてみたい。それに身体が大きいのだから肉球もさぞかし大きいだろう。う~、その肉球を思い切りプニプニしてみたいよ~)

 

カナデは傘を捨てると、カバンの中からねこじゃらしを取り出して装備した。

 

「じゃーん! 全国猫愛好家協会推奨ねこじゃらし、その名も『ネコ夢中』!」

 

彼女はそう叫ぶと、目の前で唸り声を上げている白い虎に向かってねこじゃらしを振り始めた。

 

「ほ~ら、ほら…おいでおいで…」

 

初めは興味がないというふりをしていた白い虎だが、次第にねこじゃらしの魔力に逆らえなくなっていった。

そしてゆっくりと近づいて来ると、喉をごろごろと鳴らし始める。

 

(猫はよく喉を鳴らすものだけど、虎は喉を鳴らすことができないというのが定説。でもこれで虎も喉鳴らしができるということが判明したわけね。素晴らしい発見よ!…なんて暢気なことは言っていられない状況なのよね)

 

しかしネコ科大好き人間のカナデにとって虎と遊ぶなんてことは一生に一度あるかないかのビッグチャンスである。

この期を逃してなるものかと、彼女はねこじゃらしにじゃれつく白い虎を蕩けそうな顔で見つめていた。

 

「はっ!?」

 

突然、白い虎が我に返ったようにぴょんと後ろに跳ねた。

 

「人の子よ…この神獣ビャッコをねこじゃらしごときで手玉に取るとは見事だ。我と契約して、魔法少女…いや悪魔使いになってくれ」

 

(白い動物と契約する…。どこかで聞いたことがあるような話だわ。でも、たしかアレはもっと小さな動物で、耳長の赤い目をした…とか、この際そんなことはどうでもいい!)

 

「ええ、こっちからお願いするわ」

 

「では、お前を主と認めよう」

 

彼女がそう答えると、ビャッコは猫座りをして頭を下げた。

 

「我は主の願い事を何でもひとつ叶えよう。何か望みはあるか?」

 

「それじゃモフモフさせて!」

 

「よかろう。好きなだけモフるがよい」

 

カナデはその大きな身体に抱きついた。

想像以上に柔らかい毛並み。手入れが行き届いているようで、ツヤツヤでフカフカだ。

 

(う~ん、フカフカ、モフモフ…。このままずっとこうしていられたらいいのに…)

 

…などと、カナデがビャッコと戯れている間に、周囲は次々と現れる怪物によって阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

こっちの世界に戻って来た彼女はやっと現状を把握し、冷静に対処すべくビャッコに訊いた。

 

「ビャッコ、あなたならあの怪物を倒せる?」

 

「当然だ。我に任せよ」

 

そう言ってビャッコは怪物の群れの中に飛び込んで行き、様々な姿の怪物を喰いちぎり、また電撃を喰らわせて、あっという間に全滅させてしまった。

 

「すごい…」

 

驚いているカナデのもとへビャッコが戻って来た。

どうだと言わんばかりのドヤ顔のビャッコの耳の後ろを彼女は撫でてやる。

 

「よくやったわ、ビャッコ。いいコ、いいコ」

 

褒めてやるとますます気をよくするビャッコ。

身体は大きいが、所詮はネコ科の動物である。

 

「カ~ナ~デ~」

 

ダイチが数メートル離れた瓦礫の陰から顔を出した。

どうやら怪物の襲撃から無事に逃れることができたらしい。

しかしビャッコが怖いのか、近づいて来る様子はない。

 

「それ、大丈夫?」

 

“それ”とはビャッコのことだ。

 

「大丈夫よ。おとなしくていいコだから」

 

カナデがそう言うと、ダイチは恐る恐る近づいて来た。

 

「ダイチこそ大丈夫だった?」

 

「ま、まあ…」

 

ビャッコに警戒しながら答えるダイチ。

 

「主、その情けない臆病者と主はどのような関係にあるのだ?」

 

ビャッコがカナデに訊く。

 

「友人よ」

 

「そうか…ならば喰わずにいてやろう」

 

「ひぇーーっ!」

 

ビャッコの言葉にダイチは飛び上がる。

 

「冗談だ。我は人間など喰わぬ。肝の小さい奴だな」

 

「……」

 

ビャッコにからかわれて、ダイチはしょんぼりとしてしまう。

 

「そんなことよりも早くここを出ましょう。余震がきたらかなりヤバそうだもの」

 

カナデはそう言って周囲を見渡した。

 

瓦礫の中に倒れている人の殆どは列車の転覆に巻き込まれたか、怪物にやられたために息はない。

生き残ったのはカナデとダイチのふたりだけかと思っていると、羽根のある妖精のような怪物に狙われていた女子高生が震えながら柱の陰に蹲っていた。

 

「あなた、立てる?」

 

カナデが声をかけると、後ろにいたダイチが驚いたように叫んだ。

 

「新田さん!?」

 

「志島君?」

 

どうやらふたりは顔見知りのようだ。

 

「ダイチ、この人は?」

 

「ああ、彼女は俺の友 ──」

 

「わたしは新田維緒。志島君とは同じ学校だけど、クラスは違うし口を利いたこともない単なる同級生です。さっきはありがとうございました」

 

「お礼なんていいんです。わたしは久世奏。ダイチの幼馴染です」

 

カナデとイオが話をしている横でダイチがしゅんとしょげている。

友人と言おうとして、それをイオに否定されたことでいじけているのだ。

「口を利いたこともない単なる同級生」では他人と言われたのと大差ない。

 

「ダイチの同級生ってことだと、やっぱり模試の帰りですか?」

 

「はい。電車を待っていたらニカイアの死に顔動画が届いて…。それでいきなり地震が起きて ──」

 

「ニカイアのナビゲーターが生きるか死ぬか選べって言ったんですよね?」

 

カナデが言うと、イオは驚いた。

 

「そうです。だから生きたいって思って…」

 

「俺も、俺も!」

 

カヤの外状態のダイチが慌てて会話に加わってきた。

 

3人がニカイアに登録していたのは偶然のことだが、特に不思議はない。

ニカイアは中高生から20代の若者に人気のあるサイトで、登録している人は他にも大勢いるはずなのだから。

たぶんこの地下ホームにも同様にニカイアに登録していた人は何人かいただろう。

もしかしたら彼女たちと同じように九死に一生を得た人がどこかにいるかもしれない。

カナデは握りしめていた携帯を見た。

『悪魔召喚アプリ』…それはティコが「まだ生きたいって思うなら、あなたの『悪魔召喚アプリ』が役に立つとおもうけどな~」と言っていたヤツだ。

カナデは操作をしてその胡散臭いアプリを起動させた。

すると画面にビャッコのステイタスが表示される。

 

「神獣ビャッコ…レベル53、耐性物理、無効電撃、弱点衝撃…か」

 

カナデはそう呟いてビャッコを見た。

ビャッコは彼女のそばでおとなしく猫座りをしている。

 

「つまりこの悪魔召喚アプリを起動させると、神話とか伝説などに登場するキャラクターを呼び出すことができるってことらしいわね。なんかア○ラスのゲーム世界の話みたい」

 

カナデがそう言うと、ダイチとイオはそれぞれ自分の携帯で悪魔召喚アプリを起動させた。

するとさっきカナデやビャッコが倒した悪魔がふたりの携帯に入っていた。

 

「おおっ、ポルターガイストだって。他にオバリヨンってのもいる」

 

「わたしのはピクシィとオーガですって」

 

何が嬉しいのかわからないが、ふたりは携帯の画面を見ながら喜んでいる。

そんなふたりを放っておいて、カナデはこれからのことを考えることにした。

 

(ニカイアや悪魔召喚アプリが誰によって制作され、どのような意思によってばらまかれたのかは不明。得体の知れないものを使うというのは極力避けるべきだわ。現行法規に悪魔の使役に関する項目はないと思うけど、故意ではないにしろ悪魔を呼び出してしまったのだから、なんらかの面倒事に巻き込まれるに決まっている。いくら未成年だといっても、このアプリを使用したことでビャッコが誰かを傷つけることにでもなればタダでは済まないはず。過失によるものであっても、刑事責任年齢に達しているので、法的責任が発生するのは避けられないもの)

 

ひとまずビャッコに携帯に戻ってもらおうと考えたタイミングで、それまでおとなしくしていたビャッコが何らかの気配を感じて唸り声を上げた。

 

「ビャッコ、どうしたの?」

 

カナデはビャッコの視線の先を凝視した。

暗くてよくわからないが、地上と地下ホームを繋ぐ階段があり、そこに人影が見える。

コツコツという靴音が複数あることから、ひとりではなく複数いるようだ。

こちらに近づいて来たその人影は20代半ばくらいの女性のもので、その後ろに同じくらいの年齢の3人の男性がいた。

 

「君たちは生存者の確認を。わたしは彼女たちの聴取をする」

 

黒い制服のようなものを着た女性が男性に指示を出し、ひとりでカナデたちの前に立った。

 

「我々は政府の特務機構、気象庁指定地磁気調査部…ジプスの人間だ。わたしは行動部隊長、迫真琴。君たちに訊きたいことがある」

 

さっそく面倒事に巻き込まれてしまったカナデたち。

彼女には”訊きたいこと”の内容に大方想像がついた。

 

「ジプス…聞いたことのない組織ですね」

 

カナデが警戒心丸出しで言うと、マコトは表情を緩めて答えた。

 

「我々は国家を陰で支える組織だからな、一般的には認知されていない。国家の緊急事態が起きた時のみ、表立って活動しているのだから知らなくても当然だ」

 

続いてイオが真剣な眼差しでマコトを見つめて言う。

 

「ジプス…J、P、S…つまりあなたたちは…」

 

そして続けた。

 

「…ウ○トラマンタロウのZATとか、ウル○ラマンAのTACとか、ウルト○マンレオのMACと同じようなものなんですね? それっぽい制服も着てるし」

 

イオのトンデモ発言にマコトの顔が強張った。

 

「…き、君は若いのにずいぶんと昔の特撮ものに詳しいようだな?」

 

マコトが訊くと、イオはあっけらかんと答える。

 

「はい。父が子供の頃に見た特撮ものの大ファンで、家には○ルトラシリーズのDVDがたくさんあるんです。わたしも小さい時によく見せられました」

 

「そ、そうか…。しかしジプスとはそういう怪獣と戦う組織ではない。あ…いや、まったく違うとも言い切れないのだが。それはともかく君たちには訊きたいことがある。正直に答えてくれ」

 

マコトはそう言ってカナデを見た。

 

「君がそのビャッコのサマナーか?」

 

「サマナーって何ですか?」

 

「サマナーとは悪魔を召喚し、その悪魔と契約して使役できる人間のことだ」

 

「よくわからないですけど、ビャッコはわたしを主だと言いました」

 

カナデはビャッコの頭を撫でながら言った。

 

「そうか…。しかしビャッコほどの神獣を民間人が召喚するとはただごとではないな。ところで君の名は?」

 

「久世奏です」

 

「カナデ、ここで見たことを話してはもらえないか?」

 

カナデは正直にここでの出来事を要点だけかいつまんで話した。

下手に隠し事をすれば立場が悪くなると考えたからだ。

そしてひと通り話した後で、自分の携帯をマコトに手渡した。

 

「悪魔召喚アプリ…か。このようなものが民間人に広まっているとは知らなかった。そうなると君たち以外にもこれを使ってサマナーとなった者がいるのだろうな?」

 

「ええ、たぶん。それよりもこの地震と悪魔の出現に関係はあるんでしょうか?」

 

「わからない。ともかく君たちに協力を願いたい。特に君の力が我々には必要だ、カナデ」

 

「はあ…」

 

カナデがどう返事をしようか考えていると、そこに3人の男性が別々の方向から戻って来た。

 

「隊長、生体反応確認をしましたが、生存者はここにいる3人だけのようです。悪魔の反応もありません」

 

「そうか…」

 

マコトは哀しげにそう呟くと、次の瞬間にはきりりとした表情に戻って言った。

 

「では一度帰還する。…ここに長居するのは危険だ。君たちには近くにある我々の活動拠点まで来てもらおう」

 

彼女が「活動拠点」と言ったとたん、イオの目が輝き出した。

もしかしたらZATとかTACとかMACの秘密基地のようなものを想像しているのかもしれない。

まあ、そんなものがあるのならわたしも見てみたいとカナデは思った。

しかしこのままついて行って大丈夫なのかとも考えていた。

政府の関係組織であるということだが、にわかに信じられるものではない。

とはいえマコトが言うようにここに長居するのは危険である。

そして逆らって逃げようとしても、彼女の他に男性隊員が3人もいる。無事に逃げられるとは思えない。

カナデはダイチとイオに目で確認をすると、ふたりとも彼女に判断を任せるといった表情で頷いた。

 

「わかりました。同行します」

 

カナデはビャッコを携帯の中に戻し、マコトたちの後について地上へと出たのだった。

 

 

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