DEVIL SURVIVOR 2  With you forever.   作:ルーチェ

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7th Day それぞれの土曜日 -1-

 

カナデは大阪本局で目を覚ました。

朝食を済ませると、高速鉄道の地下駅へと向かう。

ダイチたち東京陣営と戦う場所を新橋駅前広場と決めたためだ。

この作戦の要は結界である。

昨夜、カナデはヤマトに自分の考えた作戦を説明し、協力を得てあった。

 

 

 

「出でよ、スザク、ビャッコ、セイリュウ、ゲンブ!」

 

新橋駅前に到着したカナデは四神を召喚した。

ジプスで管理していたセイリュウとゲンブを貸してもらい、彼女の使役しているビャッコとスザクを合わせて四神を同時に顕現することで結界を張るためである。

結界の中では彼女よりも霊力の低い者は悪魔召喚ができず、魔法攻撃のできない民間人サマナーでは手も足も出ない状態となるのだ。

この作戦を思いついたのは、彼女自身が懲罰房で何もできなかったという経験があったからである。

 

用意ができると、カナデは携帯でダイチを呼び出した。

案の定、彼は機嫌が悪い。

 

「今、新橋駅前にいるからすぐ来てくれる?」

 

「話し合いなら応じるけど、戦うというのなら嫌だね」

 

「話し合いで終わるはずよ。わたしも不要な戦闘は避けたいと思っているもの。できればみんなで一緒に来て。その方が早く終わるから」

 

「わかった。あと15分待ってくれ」

 

そう言ってダイチは電話を切った。

 

 

 

 

ダイチたちはカナデにおびき出されたとも知らずに新橋駅前にやって来た。

彼らは周囲をキョロキョロ見回している。

カナデひとりの姿しかないから警戒しているのだろう。

 

「カナデちゃんだけやの? 局長さんや他の連中はどこかに隠れてん?」

 

ヒナコが訊く。

 

「わたしひとりです。ヤマトたちには大阪でセプテントリオンとの戦いに備えてもらっていますから」

 

そう答えると、彼女は不機嫌そうな顔をさらに顰めた。

 

「ウチらなんてあんたひとりで十分だと判断したわけやな。なめられたもんやで」

 

「そんなことありません。無駄な血が流れることを避けるために、あえてわたしひとりで来ただけです」

 

「それって俺たちを説得するということ? 話し合いで解決するなんて綺麗事には付き合えないと言ったのは君だぞ」

 

ダイチの問いにカナデは頷いた。

 

「ええ。わたしは説得する気なんてないわよ。ダイチが自ら降伏すればいいだけだもの」

 

「つまり無条件でゲームから降りろと言うんだな?」

 

「そのとおり。戦いたくないのなら、それしかないでしょ?」

 

ダイチとの会話にイオが割り込んできた。

 

「でもわたしたちは峰津院さんの考えも、栗木さんの考えも賛成できません。だから ──」

 

「ならばイオさんはこの状況をどう打破するつもりなんですか!?」

 

カナデはイオの言葉を遮って強く言った。

 

「それは…」

 

急に口を噤むイオ。

彼女には、いや他の誰にも根本的な解決策などないのだ。

単に仲間と戦いたくないというだけである。

それは正しいことだが、具体的な方針、つまり種の意思と呼ばれるものがなければ世界が消えてなくなってしまう。

東京陣営のメンバーは誰も反論できず、悔しくて携帯をぎゅっと握り締めている。

 

カナデは続けた。

 

「みなさんは戦いたくはないと言いながらも携帯を握り締めているじゃありませんか? それはわたしと戦って、倒してでも自分たちの意見を通そうとしているという意味ですよね? 言っていることとやっていることが矛盾していますよ」

 

「そやけど…ウチらは自分の信念を曲げたりせえへん」

 

「ならばわたしも容赦しません」

 

そう言ってカナデは携帯を握った左手を水平の高さまで上げた。

いかにも悪魔を召喚するといったポーズだ。

それを見たヒナコが真っ先に叫んだ。

 

「先手必勝! ペリ、出番や!」

 

これまでの戦闘経験によって、彼女もこれまでよりレベルの高い悪魔を召喚できるようになっていたようだ。

しかしカナデの張った結界の中にいるために、悪魔は呼び出せない。

 

「おかしい…どないなっとるんや!?」

 

様子がおかしいことで動揺するヒナコ。

それを見ていたダイチ、イオ、ジュンゴも慌てて悪魔を召喚しようと叫んだ。

 

「出て来い、ハヌマーン!」

 

「ハトホル、お願い!」

 

「アラハバキ!」

 

それぞれが自分の使役する悪魔の中でもっとも強いものを召喚しようとしたが、もちろん呼び出すことはできない。

 

「どういうことなんだ?どうして悪魔が召喚できないんだ?」

 

ダイチがエラーメッセージの表示されている携帯を睨みつけながら言う。

それに対してカナデは答えた。

 

「それはこの場所に結界が張ってあり、悪魔を召喚できないようにしているからよ」

 

「なんだって!?」

 

ダイチの驚きの声に合わせて、全員がカナデに視線を向けた。

 

「わたしよりも霊力の強い者でなければ、ここでは悪魔を召喚したり、魔法を使うことはできません。この中で一番霊力の高いヒナコさんですらレベル38のペリ止まりですから、このわたしに敵うはずがないんです。…出でよ、ルーグ!」

 

カナデの手にある携帯から青白い光が発せられ、ルーグが召喚された。

それを見ていた4人は後退りする。

 

「生身のみなさんに魔法や悪魔による攻撃を防ぐ手段はありません。死にたくなければ降参してください」

 

ダイチたちに選択肢はひとつしかない。

彼らはカナデが本気であり、彼女の強さをよく知っているのだから。

声もなくうなだれているダイチたちにカナデは言った。

 

「結果は出ましたね。勝者であるわたしの陣営に加わることができないというのであれば、みなさんにはゲームを降りてもらいます。そういうルールですから」

 

そしてつけ足した。

 

「昨夜、わたしはヤマトと一緒に世界を破滅から救う道を進むと宣言しましたが、彼の実力主義を支持したわけではありません」

 

その言葉に、ダイチたちは顔を上げた。

 

「つまりわたしはヤマトに従う気はなく、彼を従わせる側になるってことです」

 

「はあっ!?」

 

ダイチの間抜けな声が上がる。

 

「わたしは実力主義という考え方に賛同する部分はあるものの、彼の考え方や手段には納得できないんです。ならば彼を改心させてしまえばいいと思いつきました」

 

「改心させるって、どうやるんですか?」

 

イオが訊く。

 

「彼は実力主義を唱えています。彼は弱者が強者に従うことを当然と考えていて、自らが強者だという自負があるからあのように傲慢に振舞っていられるわけです。ならば彼より強い者が現れれば、それに従わざるをえなくなります」

 

「つまりカナデちゃんが局長さんより強いってとこを見せるんやな?」

 

「そうです。とはいっても彼の強さは半端じゃありません。ですからわたしひとりでは勝てるとは思いません。だから一緒に戦ってくれる仲間が必要です」

 

「要するにウチらに仲間になってほしいって言うんやね? ええで、全力で戦ってやろうやないの」

 

「いいえ。今のみなさんでは戦力になりません」

 

「なんやて!?」

 

ヒナコが腹を立てるのも無理もない。

これまで一緒に戦ってきた仲間に対して「役立たず」だと言ったようなものだから。

 

「4人集まっても、わたしひとりにまったく手が出せなかったじゃありませんか。みなさんの敗因は霊力の強さだけでなく、覚悟の強さがわたしに負けているからです。わたしは自分の信念のためなら、どんなに卑怯な手段を講じても、また仲間を失おうとも、最後まで戦うという強い意思で行動しています。仲間同士だから戦いたくないという甘い考えしか持たないみなさんでは、何十人集まったってヤマトの足元にも及びません。なにしろ彼は目的のためなら手段を選ばず、自分ひとりだけになっても成し遂げるという強い信念の持ち主ですから」

 

「……」

 

「死にたくなかったら、これ以上この戦いに関わらないようにすることです。中途半端な気持ちでは絶対に死にます。…それでもわたしと一緒に戦ってくれるという気持ちがあるのなら、どうかもっと強くなってください」

 

「どうすれば強くなれるんだ?」

 

ダイチの問いかけに、カナデは微笑みながら答えた。

 

「すべてを投げ打ってでも守りたいもの、成し遂げたいものがあるのか? そしてそのために自分は何ができるのか、何をしてきたのか、何をすべきなのか?…それらを考え、答えが出た時に強くなれるはず。わたしがそうだったから」

 

そう言って、カナデは悪魔たちを全部携帯に戻した。

さすがに霊力の高い彼女であっても一度に5体の悪魔召喚は体力・霊力共に消耗する。

そのせいもあって名古屋陣営との戦いではこの方法は使えないだろうと彼女は判断した。

 

(それにロナウドさんとジョーさんにこの方法を使ったら、素手でも戦いを挑んで玉砕してしまうでしょうね。ベネトナシュ戦もあるから、多少乱暴でも一気に片付けてしまうしかなさそう…)

 

 

 

 

カナデが東京陣営の無力化終了を報告しようとした矢先、第7のセプテントリオン・ベネトナシュの顕現反応を探知した。

場所は宮下公園。それは大阪本局でも察知したようで、マコト、フミ、ケイタの3人がすぐに東京へ駆けつけて来た。

 

ベネトナシュは白い円錐の角を取って逆さにした、という他のセプテントリオンに比べて至ってシンプルな姿をしていた。

しかし見た目で判断できるものではない。これが最後のセプテントリオンなのだから。

それに十数体の悪魔を従えており、カナデを含めた精鋭メンバーとはいえ4人では苦戦するだろう。

 

「さあ、戦闘開始です!」

 

カナデはスザクとビャッコを召喚し、臨戦態勢となった。

しかし携帯の画面を見て困惑する。

 

「…人間不可侵? 何や、それ?」

 

ベネトナシュのスキルを見てケイタが首を傾げた。

それは悪魔の攻撃なら効果はあるが、悪魔使い自身の魔法はまったく効かないということを意味している。

こうなれば召喚できる悪魔を全部投入して戦うしかない。

 

ビャッコの電撃がベネトナシュを直撃したその直後、バチッと音がしてベネトナシュが召喚していた悪魔が消えていく。

しかしそれだけではなかった。

カナデたちが召喚していた悪魔たちも全部携帯に戻ってしまったのだ。

 

「な、何だ!? 何が起きたんだ!?」

 

マコトが慌てて携帯を見る。

カナデも同様に見ると「error」の文字が画面に出ていた。

どうやらこのベネトナシュは悪魔を強制帰還させることや、新たな悪魔の召喚を封じることができるらしい。

さすがのカナデもこの状況を打破する手段が見つからず、マコトに撤退の提案を出した。

 

「ひとまず撤退しましょう!」

 

しかしベネトナシュは妨害しようと、メグレズの〈芽〉を撃ち出した。

〈芽〉が起こす地震に耐えつつ、カナデたちは撤退する。

人間の攻撃が効かない上に、悪魔は強制的に帰還させられてしまう。

さらにこれまでのセプテントリオンと同じ方法で攻撃をしきた。

こうなるとメラクの〈周極の巨砲〉やアリオトの〈毒素の塊〉といった攻撃の可能性も捨てきれない。

ただ幸運なことに、なぜかベネトナシュはそれ以上の侵攻をせずに姿を消した。

おかげで対策を練る時間は得られたようだった。

 

 

 

 

大阪に戻ったカナデはベネトナシュの件でフミに相談していた。

 

「ベネトナシュのあの攻撃、どう思いますか?」

 

「ん~、簡単に言うとジャミング、かなぁ」

 

フミはPCをいじりながら彼女の質問に答える。

 

「ジャミング…通信妨害ということですね?」

 

「そう。多分ベネトナシュは何らかの手段をで召喚アプリとの繋がりを妨害したんだと思う。だから今は悪魔使えるようになってるでしょ?」

 

「はい」

 

カナデの携帯はいつの間にか悪魔召喚が可能な状態に戻っていた。

それはベネトナシュの力が及ぶのはある程度の範囲までだということを意味している。

ベネトナシュに近づかなければ悪魔が強制的に帰還させられるということはないのだろうが、それではこちらの攻撃も届かない。

つまり打つ手なしということだ。

 

「対策はこっちでも探すから、カナデも何か考えてよ。アリオトの時みたいにさ」

 

「了解です。それにしてもとんでもない敵が現れましたね」

 

「まあ、局長の説明によるとセプテントリオンは北斗七星になぞらえているらしいから、ベネトナシュが最後ってことでしょ? これがポラリスの本気ってことじゃないのかな」

 

「そうですね。敵が段々凶悪になってくるのは想定内のことでしたけど、さすがにこれは厄介です。でもベネトナシュを倒さなければ、これまでの苦労も意味のないものになってしまいますから、どんな強敵であっても倒すしかありません。知恵を絞って倒す方法を考えてみます」

 

そう言ってカナデはフミの部屋を出た。

カナデには解決しなければならない問題が他にもある。そう、名古屋陣営だ。

彼女は東京の時と同様に、名古屋に乗り込むためにひとりで出撃した。

 

 

 

 

名古屋のテレビ塔の下にロナウドとジョー、アイリとオトメ、そしてロナウドを支持するレジスタンスメンバー約20名が待ちかまえていた。

ここは30分ほど前に、ロナウドからの電話で指定された場所だ。

当然、カナデが新橋駅前に結界を張っていたように、彼らが何かの仕掛けや罠を用意してある可能性は高い。

それを承知でカナデは呼び出しに応じた。

ロナウドたちの罠くらいでたじろぐ彼女ではないのだ。

 

「来てくれたか」

 

ロナウドは開口一番に言った。

 

「俺たちに協力してくれ。そうすれば俺たちは君と戦わずに済む」

 

東京陣営がカナデに負けたことは彼らの耳にも届いていた。

戦闘に持ち込まれれば都合が悪い。よって無駄だとわかっていてもロナウドは説得を試みたのだ。

もちろんカナデがそれに応じるはずもない。

 

「戦わずに済むのならその方がいいですけど、ロナウドさんたちの考えに賛同できるものではありません。逆にあなたが降伏するというのなら、わたしはみなさんの身の安全を保証しますけど、いかがでしょうか?」

 

「馬鹿な。俺は降伏などしない。自分たちの願いや希望を俺に託してくれている人間がいるかぎり、俺は平等な社会を創るという意思を自ら折ることはありえないのだ」

 

「それはわたしも同じことです。自分の意思を曲げることは絶対にしません」

 

「ならば仕方がないな…」

 

そう言ってロナウドは携帯を構えた。

彼らもまた能力がアップし、さらに強い悪魔を召喚できるようになっていた。

ロナウドの魔神インティはレベル45、オトメの鬼女ハリティーは46。

ジョーの神獣カマプアアとアイリの妖獣カイチも侮れない。

また数では圧倒的に名古屋陣営の方が有利で、一斉に攻め込めば勝てるという可能性にロナウドは賭けてみたのだ。

 

しかしカナデのルーグの前に全員がひれ伏した。

ルーグの〈魔力開眼〉と〈デスバウンド〉のスキルは恐ろしいほど強力で、レベル50未満の悪魔ではいくら数がいても太刀打ちできるものではなかったのだ。

 

 

 

「あなたたちの負けです」

 

カナデは地面に膝をついたロナウドにわざと冷たく突き放した言い方をした。

 

「わたしひとりに勝てないみなさんではヤマトに勝てるはずがありません。ロナウドさんがポラリスと謁見するなんて端から無理なことだったんです」

 

「それでも俺は諦めないぞ。峰津院の野望を阻止するためになら、この命を捨ててもかまわないのだからな!」

 

ロナウドはインティとハゲネの両方を失いながらも、まだ生身で戦おうとしている。それだけ彼の意思は強いのだ。

しかしカナデは彼の行為を完全に否定した。

 

「命を捨ててもかまわないですって? あなたの掲げる平等主義は夢物語ですが、信念を曲げずに突き進む行動力は感心します。ですが命よりも大切なものなどどこにもありません。命よりも矜持を大切にするという人もいますが、わたしから見れば愚か者です。人は死ねば終わり。生きているからこそ希望が、そして未来があるんです。自らその希望を断とうとする者がいくら崇高な思想を掲げても、誰が従うというのでしょうか?」

 

「くっ…」

 

「あなたが無茶な特攻で死ぬのはかまいませんが、残された者たちはどうなるんですか? 弱者を助けたいと言って立ち上がったあなたが自己満足で何もかも放り出してしまうというなら、それこそ自ら愚か者であると証明したものではありませんか?」

 

「……」

 

カナデに負けて、もう自分には何もないと言わんばかりにうなだれているロナウド。

そんな彼をジョーたちは黙って見守るしかない。

 

「争う、競う、戦う、闘う…これらは2つ以上の物や人が存在し、どちらが優位であるかを証明するための手段です。平等主義を掲げるあなたの考え方の中ではあってはならない言葉でしょう。ですがこれらは悪でしょうか? もちろん他人を殺めるといった不法行為によって他人を退けることは悪です。ならば運動会で定番の徒競走はどうでしょう? 文字通り走る速さを競うもので、3人で走れば1位から3位という順位がつきます。この順位をつけることは悪ですか? みんなで手を繋いで一緒に走り、3人が平等に1位になることが善ですか?」

 

「それは…」

 

「誰だって他人より自分の方が優位にありたいと思うものです。自分よりもお金を持っている、姿形が美しい、頭がいい、運動ができるといった他人を見てどう感じるか…それは人それぞれです。自分より優れている人を見て、自分もあのようになりたいと考えて努力する人もいれば、何もしないで他人の優位を恨んだり妬んだりするだけの人もいます。前者なら平等主義が理想の世界だなんて思わないでしょう。そして後者であったら平等主義を推し、他人を自分と同じ位置にまで引きずり下ろすことで安心する。ロナウドさんにとっての平等主義は優位にある者を引きずり下ろし、劣位にある者にとって都合のいい状態にするもの。例えば80持っている人と40しか持っていない人がいたら、80持っている人から20を奪って40しか持っていない人に与え、それぞれが60持つようにすることと同じです。優位にある者の犠牲によって劣位にある者を救済するという考えをわたしは否定します。そしてわたしは40しか持っていない人にチャンスを与え、その人の努力によって50でも60でも持てることができるようになる社会システムを創り上げたい」

 

「しかし峰津院大和のやり方ではチャンスなど与えられず、40しか持たない者はその場で切り捨てられる。君はそれに加担して、弱者が生き残れない世界を創ろうとしているのだぞ」

 

ロナウドが苦々しく言うが、それをカナデは笑顔で否定した。

 

「あら、それはあなたの大いなる勘違いですよ。だってわたしはヤマトの味方じゃないですもの」

 

「どういう意味だ? 君は奴と一緒に世界を破滅から救う道を進むと宣言したではないか?」

 

「そうですね。でもわたしは『ヤマトと一緒に』とは言いましたけど『ヤマトの考えに賛同して』とは言っていません」

 

「…?」

 

「つまりヤマトに従うのではなく、ヤマトを従わせるという形で世界を破滅から救う道を進むつもりです」

 

「あ…」

 

ロナウドだけでなく、オトメたちも彼女の言葉の意味に気がついた。

 

「ヤマトの考え方の基本は『弱者は強者に従う』というものですから、わたしが彼よりも強いということを示せば彼は従わざるをえません」

 

「そのとおりだが、奴は強い。奴に勝てる自信はあるのか?」

 

「ありません。わたし自身の力だけでは絶対に勝てないと思います。でもわたしはヤマトが持っていない力を使って戦うつもりです」

 

「奴が持っていない力?」

 

「はい。自分自身と仲間を信じる、そして仲間を守りたいと思う気持ち。このふたつの想いに形はありませんし、数値でも表すことはできません。でも間違いなく存在し、戦う力を何倍にもしてくれる。ヤマトは自分の力と信念だけで行動し、他人を頼るということを知りません。それが彼にとって唯一の弱点と言えましょう。わたしが彼に勝つためには彼の弱点を突くこと。それしかないでしょうね」

 

「じゃあ、あたしたちがカナデの味方になって戦えばいいのね?」

 

アイリの言葉にカナデは首を横に振る。

 

「できればそうお願いしたいですが、今のあなたたちではヤマトに瞬殺されておしまいです」

 

「……」

 

アイリだけでなく他のサマナーたちもそれ以上何も言えない。それが事実だからだ。

 

「ロナウドさん、わたしはこの世界に命の重さ以外に平等なものはないと思っていましたが、もうひとつありました」

 

「え?」

 

「博愛…すべての人を等しく愛することです。肉親、友人、仲間といった身近な者に対しては優しく寛大な態度をとることは容易ですが、自分とは無縁な人間や敵対する者に対して同じように接することは難しい。ですが自身の心ひとつでどうとでもなるものです。人を平等に愛することで、社会的な強者と弱者の格差をゼロにはできなくとも減らすことはできる。そうは思えませんか?」

 

「……」

 

「わたしを信じ、人類の未来をわたしに託してみようという気持ちになったら、わたしの味方になってください。たぶんその時には今よりも強い悪魔を召喚できるようになっているはずですから」

 

そう言い残し、カナデは大阪本局へと帰還したのだった。

 

 

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