Re:ブラッキーが呼び出されしは本物の異世界!? 作:煌めきの風
無事何とか生きてました。そして、だいぶ遅くなってしまいましたが何とか書き上げたのでよかったら読んでください……
“ノーネーム”本拠地・貯水地広場。
噴水広場にはジンとジンよりも幼い子供達が清掃道具を持っており、水路を掃除していた。水路は元の世界の地元で見られるような畑の側を流れるようなものではなく、中世風のゲームなんかによく出る石で囲まれた立派な水路だ。
「あ、皆さん!水路と貯水地の準備は出来ていますよ!」
「ご苦労様ですジン坊っちゃん♪皆も掃除をきちんと手伝っていましたか?」
ジンが俺たちに気づくと、掃除していた手をいったん止めてこちらに駆け寄ってきた。ジンが手を止めたことによって、周りの子供達も手を止め始めて黒ウサギに駆け寄ってくる。
「黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「眠いけどしっかり手伝ったよ!」
「ねえねえ、新しい人たちって誰!?」
「強いの!?カッコいいの!?」
「YES!とても強くて可愛い方達ばっかりですよ!皆に紹介するから一列に並んでくださいね」
子供達に黒ウサギが一列に並ぶように言うと、子供達は一列に並ぶ。一列に並んだ子供達を見ると半分以上が猫耳や狐耳の子供達だったことが分かった。
その光景を見ていると、SAOでユイと会って間もない時の光景が思い浮かんだ。記憶がないユイを連れて、サーシャというプレイヤ-がゲームに適応できない子供達を保護しているアインクラッド第一層の教会に行ったことがある。そこにはデスゲームの中で子供達と必死に力を合わせて生きている姿があった。
この子供達もそうなのだろうか?コミュニティの名前と旗印を魔王によって奪われて、互いに寄り添い、協力し合って生きているんだろう。そんな現状から脱するために黒ウサギは俺たちを呼び出したんだ。子供達が気になるのも無理はないと思う。
………けど、これで六分の一?俺、話すのあんまり得意じゃないんだけどなー、と思いつつ紹介されるのを待つ。
コホン、と仰々しく咳き込んだ黒ウサギは十六夜から順番に紹介する。
「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、桐ケ谷和人さん、レイナ=ヴィエーチルさんです。皆も知っている通り、コミュニティの中核を担うのはギフトを持っているプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はプレイヤーの私生活を支え、励まし、時には身を粉にして尽くさなければなりません」
「あら、そんなのは必要ないわよ。もっとフランクにしてくれても」
「駄目です。それでは組織が成り立ちません」
黒ウサギは飛鳥の提案に対して厳しい声音で言った。
まあ、確かに上下関係がちゃんと出来てない組織は崩壊するのも早い。黒ウサギの言うことは最もなんだけど、こんな幼い頃から教え込まなくてもいい気がする、と思ったけど今は言わないでおこう。
「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加して、彼らの恩恵のおかげで初めて生活出来るのです。これは避けることの出来ない、箱庭の掟。子供のうちから甘やかせば子供のために成りません」
「……そう」
“ノーネーム”となってから三年間コミュニティを一人で支えてきた厳しさを知っている黒ウサギの雰囲気が飛鳥を黙らせた。
「ここにいる子供達は年長組です。ギフトゲームには出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っています。何かあるときはこの子らに言ってください。皆、いいですね?」
「「「「「「「「「「よろしくお願いします!!!!!」」」」」」」」」」
キーン、と耳がなる音量で挨拶をする子供達。思わず耳を塞ぐ。
「ハハ、元気がいいじゃねえか」
「……そ、そうね」
十六夜は子供達の元気の良すぎる挨拶を前にしても笑っていた。女性陣はこれからのことを心配しているのか複雑な顔をしていた。
「ねえねえ、黒ウサのねーちゃん」
「はい、何ですか?」
「あの黒い服を着ている人って男の人?」
「?そうですが…それがどうかしましたかか?」
「だって肌が色白でー」グサッ
「髪も長くてー」グサッ
「金髪の兄ちゃんより背が低くてー」グサッ
「女の人みたいなんだもん!」グサグサグサッ
グサグサと自分でも気にしているところを問答無用に攻撃を仕掛けてくる子供達。無邪気ゆえの子供たちからの予想外の精神攻撃に思わずよろめく。
確かに、今日初対面の時の十六夜達にも間違えられたけど、あのときは水に濡れていたからまだ、納得は出来た。うん。よく風呂に入って髪を乾かさない状態でアスナに会ったら、「なんだ和人君かー。知らない女の人かと思ったよー」と笑ってそう言っていた。それ以外にも外で急に雨が降ってきたときに、近くの店に避難したら外国人にナンパされるし。
だけど、今は髪も乾いているし、普通の状態なんですけど!?これで間違われたことは今まで一回もないんですけど!?
子供達が純粋に聞いてくる分、怒れない。なんか、純粋なところがユイにそっくりだな。と思ってると黒ウサギがフォローしてくれた。
「な、なんてことを言っているのですか!?和人さんも立派な男性です!例え色白で背が低くて非力に見えて女性と間違うかもしれませんが、立派な男性なのですヨ!!」
が、子供達よりもはるかに強く攻撃されたのを感じた。これも、当人はフォローしているように感じても、実際には心を抉りに来ていることを知らないからタチが悪い。
「……黒ウサギ、それフォローじゃない…」
その後、黒ウサギやレイナが必死に励ましてくれる中、水樹を貯水地に植えたら勢いよく水が飛び出して十六夜がまたずぶ濡れになったりと色々なことがあった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
水樹の一件の後、俺は自室に選んだ屋敷の一室の椅子に座っていた。部屋には机と椅子、クローゼットにベッド、収納、そして、ちゃぶ台ぐらいの大きさのテーブルという簡易的なものしかなかった。黒ウサギは自分の部屋は自分好みに模様替えしてもいいと言っていた。
とりあえず、テーブルのところにある座布団に座って、今日のことを振り返る。
今日は色々なことがあった。珍しい紙媒体の手紙から始まり、異世界への呼び出し、パラシュートなしのスカイダイビング、そこで告げられた自分がギフトという特別な力を持った普通の人間ではないことなど現実にはあり得ないようなことばかりを体験した。いっそ、新しいVRMMOといわれた方が納得がいくようなことばかりだった。だけど、仮想世界では説明仕切れない技術力の問題が多すぎた。だから、ここは現実なのだと自分自身を納得させた。
ただ、それでも頭の片隅でずっと引っかかっていることがある。
「……………」
服の内側のポケットから一枚のカードを取り出して机の上に置く。それは数時間ほど前に白夜叉に渡された一枚のカード。名前はギフトカード――正式名称はラプラスの紙片と言うらしいが――は部屋の照明に照らされて暗い青色に輝いていた。そこに書いてある文字は、俺の名前と俺の
ギフトカードは所有者の名前とその人物の恩恵か書いてあるのだ。
俺は当初、恩恵に心当たりが無かった。無くて当たり前だ。現実の俺は、ゲーム好きなただの男子大学生なのだから。しかし、このギフトカードには恩恵の名前が書いてあった。それも一つではなく二つ書いてあった。
“黒の剣士”と“スプリガン”だ。
「……………黒の剣士、か」
黒の剣士――――この名前は、SAO時代の俺の二つ名だった。気づいたら、こんな二つ名がついていた。エギルに聞いたところ、黒い髪、黒い瞳、黒の服、そして、黒い片手剣という上から下まで黒ずくめなことから付いたらしい。他にも
スプリガン―――――これはALOでプレイするために選ぶ種族の一つの名前だ。影妖精とも書く。トレジャーハント関連と幻惑魔法が得意な種族で、どちらかというと戦闘には不向きで不人気ナンバーワンの種族だったらしい。これも黒を基調としている。
箱庭の世界に呼び出されたときに黒ウサギは『その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます』と言っていた。さらにギフトカードを白夜叉から渡されたとき、『そのギフトカードは、正式名称を“ラプラスの紙片”即ち全知の一端だ。そこに刻まれているギフトネームとはおんしらの魂と繋る“恩恵”の名称』とも言っていた。
この二人の言葉から考えると、
なら俺のギフトは?
“黒の剣士”と“スプリガン”。この二つは仮想世界での名前や種族であって、修羅神仏や悪魔、精霊、星から与えられたものでもなく、生まれる前から決められているものでもない。他人に付けられた名前や、人の手で作られたゲームの中での設定であり、ゲームに関わる以前は普通の子供だったのだ。自分に特別な力があることを感じることも実感することも出来ないただの子供だった
それなのにこの二つが俺のギフト?
百歩譲ってスプリガンはまだ良いとしよう。シルフもいるしな。黒ウサギにさっき確認したら、シルフやスプリガン以外にも
問題はもう一つの方、黒の剣士だ。
「なんで…これが俺のギフトなんだ……?」
これは確実に十六夜や春日部さん達のギフトとは違う。服装や見た目からそう付けられた名前。黒い服装をして剣で戦う人物が居ればそいつも黒の剣士である。
そう。“黒の剣士”という言葉はSAO事件を知っている人が聞けば、俺のことを指しているということが分かるはずだ。直接的にSAO事件を知らなくてもSAO事件が解決した後に発行された『SAO事件記録全集』を読んでいれば、黒の剣士がある一人のプレイヤーを指していることが分かる。
だが、この箱庭の世界は俺が元いた世界とは違う時間軸の人もいる。その中で『黒の剣士=俺』とはならないはずだ。
そもそもとして、仮想世界の設定された力が現実で使えるということが本当に出来るのだろうか?
ゲームにフルダイブしているときは現実の体を動かしたり出来ない。SAOのハードであるナーヴギアが延髄部で肉体への命令信号を回収し、アバターを動かすためのデジタル信号に変えているために仮想世界にフルダイブしている間は何があっても現実の体を動かすことは出来ない。
「だあーッ!分からん!!白夜叉も剣を使うギフトということしか分からないらし……使い方も漠然としないし」
一応、白夜叉に使い方を聞いてみたけど、帰ってきた言葉は余り納得できないものだった。曰く、「恐らく、その“黒の剣士”が意味することを想像すれば良いのではないか?最も、私にはこの言葉が指す意味があまり分からないがの。それよりも私としては“スプリガン”の方が興味深いの。人でありながら妖精のギフトを持つ奴なんぞ初めてじゃ」ということらしい。
「あー、風呂に入って汗を流したい…けど、今は女性陣が使ってるから入れないしな…。とりあえずベッドで横になるか……」
ギフトカードを服の内側のポケットにしまって、ベッドにダイブする。長年使ってないということだったが、臭いにおいはせずむしろ新品といわれてもなっとく出来るくらいにベッドは気持ちよかった。そういえば、この屋敷はほとんどが使ってないと言っていたが、その割にはカビくさい臭いやほこりなどは全くと言っていいほどになかった。
「少しだけ寝るか…」
ベッドの気持ちいい触り心地に誘われたのか急に睡魔が襲ってきた。三十分ぐらい仮眠をとれば女性陣も風呂から上がってるだろう。
俺は体勢を横向けに変えて目を瞑った。
はい、ということで次回からギフトゲームに入れたらと思います。
GWまでに書き上げられたらいいなぁ……
感想待ってまーすノシ