Re:ブラッキーが呼び出されしは本物の異世界!? 作:煌めきの風
……
…………サッ(しれっと
昨日の夜は仮眠のつもりだったのだが、目が覚めたら窓の外は既に明るくなっていた。どうやらあのまま朝までぐっすり寝ていたらしい。黒ウサギが風呂が空いたと言いに来てくれたらしいが、ぐっすり寝ていたのでそのままにしていたとのこと。起こしてくれよ…。まあ目が覚めてから、風呂に入ったんだけどさ。
本当なら、少し仮眠をとった後にギフトの確認をする予定だった。理由はどうあれ、戦う力を手に入れることが出来たからな。今日のガルド?とかいう奴とやるギフトゲームに備えようと思ったんだが、結局準備も出来ないままに当日を迎えてしまった。
本拠地を出発した俺たちは、今日ギフトゲームを行う場所――――ジャングルのような居住区に着いた。
「……ジャングル?」
「虎なんだから、おかしくはない…よな?」
「いえ、おかしいです。“フォレス・ガロ”のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず……それにこの木々はまさか」
想像していた居住区とは全く違っていたが、それでも虎が率いるコミュニティなのだから問題は無いと納得しようとすると、ジンが否定する。
ジンは居住区を覆っている木々に手を伸ばす。すると、木々はまるで生きているかのように動き始めた。
「やっぱり……“鬼化”している。まさか、彼女が……?」
「ジン、あれが“契約書類”か?」
ジンが周りの木々に気をとられている中、周りを見渡すと木に貼り付けられた一枚の紙、いや羊皮紙を見つけた。ジンがうなずくのを確認してから“契約書類”を手に取り、文面を確認する。
『ギフトゲーム名:ハンティング
・プレイヤー一覧 ジン=ラッセル
久遠飛鳥
春日部耀
桐ケ谷和人
レイナ=ヴィエーチル
・クリア条件 ホストの本拠地内に潜むガルド=ガスパーの討伐。
・クリア方法 ホスト側が指定した武具にのみ討伐可能。指定武具以外の攻撃は“
・敗北条件 敗北、またはプレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリー内にて配置。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します
“フォレス・ガロ”印』
「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」
「こ、これはまずいです!」
“契約書類”に書いてあることを読み終わると、ジンと黒ウサギが焦ったような声を出した。
俺たちはジン達の言っている意味が分からず、疑問符を浮かべる。そうした中、久遠さんがジンに質問した。
「このゲームはそんなに危険なの?」
「いえ、ゲーム自体はそんなに危険ではありません。しかし、ルールが問題です。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操ったり、耀さんのギフトやレイナさんの持っている刀で傷つけたりできなくなります」
ジンの答えを聞いても久遠さんはまだ解らないという表情で今度は黒ウサギに問う。
「……?どういうこと?」
「“恩恵”ではなく“契約”で守られているということです。これでは神格保持者でも全く歯が立ちません!ガルドは自身を勝利条件にする代わりに勝負を互角にまで持ち込んだのです」
「すいません。僕の落ち度でした。始めに“契約書類”を作った時にルール決めていれば良かったのに」
なるほど。ということはガルドが指定した指定武具以外の攻撃は、破壊不能の【Immortal Object】を攻撃しているみたいな感じか。それで、ガルドを指定武具で倒さなきゃならなくなった、ということか。
俺たちはガルドにゲームをしようということしか決めていなかった。それは主催者である“フォレス・ガロ”が“契約書類”を自由に作成できるということになり、参加者である“ノーネーム”は何も言うことが出来ない。
今までの流れを静かに見ていた十六夜が、少しばかり楽しそうに呟いた。
「敵は命がけで勝負を五分五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白い展開だけどな」
「お前は参加しないから良いけど、ちょっとはこっちの身にもなれよな」
「その通りよ。これじゃあ指定武具が何かも分からないわ。このまま戦ったら厳しいでしょうね」
「だ、大丈夫ですよ!“契約書類”にはしっかりと『指定』武具と書いてあります!つまり何らかのヒントがあるはずです!もしヒントが提示されなければ、ルール違反となって“フォレス・ガロ”の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、ルール違反はさせませんとも!」
ルール違反があった方が問答無用でこっちが勝てるから有利なのでは?と思ったが口には出さないでおく。もし、言ったとすれば主に十六夜あたりが何か言ってきそうだし。
“契約書類”をのぞき込んだ久遠さんの顔つきが厳しくなったことに気づいた黒ウサギは、彼女の手を握って励ます。黒ウサギに続いて春日部さんやレイナも励ます。
「大丈夫。黒ウサギもこう言っているし、私も頑張る」
「私も微力ながら頑張ります!」
“フォレス・ガロ”と“ノーネーム”でギフトゲームをしようと言い出したのは久遠さんだ。彼女とは少しの時間しかいないが、プライドが高いということだけは明らかだ。そんな彼女が挑んだゲームで、彼女が負ければ恐らくプライドがズタズタになり、どうなるか分からない。
だけど、久遠さんには仲間がいる。だから、彼女のことを支えなければならない。
「俺も頑張るよ」
「.......ええ、そうね。むしろ、このくらいのハンデがなければあの外道のプライドを粉砕出来ないわ」
黒ウサギ達の励ましのおかげか、久遠さんも奮起した。ルール上で勝機があるならば――――ルール上で勝機がなくても――――諦めてはいけない。
そして、ギフトゲームを始めるため俺たちは門をくぐった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
門をくぐったことが合図となったのか、俺たちの手によって開かれた門が閉ざされて樹木によって覆われた。
門を超えた先は普通ならレンガで舗装されているはずの道が樹木の根によってバラバラに砕かれていた。道から外れた森も暗く闇に包まれていて、森の中から奇襲されたらひとたまりもない。
「大丈夫。近くには誰もいない。匂いで分かる」
「あら、犬にもお友達が?」
「うん。20匹ぐらい」
「20匹ってすごい多いですね…」
予想よりも多い犬の友達の数にレイナが驚きの声をあげる。
おそらく、グリフォンからもらったギフトと同じような感じで犬の友達からも嗅覚に関するギフトをもらったのだろう。そういえばグリフォンのギフトはあのグリフォンからしかもらえなかったけど、普通の接する機会が多い動物の場合はどうなるのだろうか?単純に考えればもらえないか、武器を強化するみたいに性能が良くなっていくのだろうか?まあ、今ここで聞くような内容じゃないし、帰ってから聞こう。
「詳しい位置は分かりますか?」
「そこまでは分からない。けど、どこかの家の中にいる可能性が高いと思う」
「それじゃあ、外から探しましょうか」
久遠さんがまず敷地の中を探索しようと提案し、その提案にジン達が首を縦に振った。
だが、探索を始めようとする彼女らを俺は止めた。
「なあ」
「?どうしたんですか」
「ジン。このギフトゲームは時間制限とかってあるのか?」
「いえ、“契約書類”にはそのようなことは書いてありませんでしたので、ないと思われますが……それがどうかしましたか?」
ジンが体の向きを変えて、こっちを向いてそう言った。他の三人も似たように疑問があるような顔をしていた。
「いやー、その、少し俺に時間がほしいなーって」
「どうして?」
制限時間が設定されているのか、とか時間をくれって言った俺に対して、久遠さんが訝し気にその理由を尋ねてきた。
そんなにたいそうな理由じゃないし、むしろすごい個人的なことなんだけどな…。でも、理由を言わないと納得しないだろうから言うしかないか。
「俺は久遠さんや春日部さんと違って自分のギフトの能力を把握していないんだ。この世界に来て、ギフトカードを手にするまで自分にそんな能力が存在しているなんて思わなかったからなんだ。だから、俺のギフトを確認する時間が欲しいんだ」
「そう、なら確認してもらわないと大変なことになるわね。春日部さん達もそれでいいかしら?」
久遠さんに聞かれた春日部さん達は全員首を縦に振った。
脇で俺の用事が終わるのを待っている久遠さん達を脇目に、俺は内ポケットから自分のギフトカードを取り出す。そこに書かれているのは、昨日の夜確認したとおり“黒の剣士”と“スプリガン”の二つだ。
この二つを使うには、この言葉が意味する姿を想像すれば良いのではないのか、と白夜叉が言っていた。
ならば、想像するのはあの世界で戦っていた、黒衣に包まれ黒白の二本の剣を手にした剣士の姿。両の手に握った剣で数多の敵を葬った強い剣士であり、魔王を倒した英雄の姿。
――もう一度なるんだ、剣士に。
――想像しろ。
俺はゲーム好きのただの男子大学生。だけど、今の俺の中には間違いなく剣士としての俺が存在している。結局のところ、俺はどこまで行っても剣士というものから離れられないのだ。
「あ…」
誰が呟いたのかは分からない。けど、そのつぶやきを境にして俺の服装が変化した。
俺が確認できる範囲では今まで身に付けていた服が、黒い指貫きのグローブと黒いロングコートと黒いブーツに変化していた。そして背中に感じるずっしりとした重み。それの正体は、俺が最後に使用していた二本の愛剣。
そして、視界の左上には緑色の細長いゲージみたいのがあった。これは、HPゲージなのだろうか?
「和人、君?」
「なんか、違う……?」
「雰囲気が変わった……」
自分の体に起きた様々な変化がひとまず落ち着くと、手を握ったり、開いたりして感触を確かめる。今確かめた感触は、仮想世界でポリゴンが生成したものではなく、しっかりとした生身の感覚。自分がいつも慣れているポリゴンの感覚とは差異を少々感じる。その感触に少し疑問を覚えながらも次の行動に移る。
そして、背中に背負っている剣を抜いて、それぞれ片手で握る。右手には、柄から刀身までもが黒い片手剣――“エリュシデータ”左手には、刀身は眩いほどの白で柄は青みを帯びた銀色のやや華奢な片手剣――“ダークリパルサー”両方の剣は手にずっしりと重みが伝わるほどに重い。軽すぎることもなく、かつ重すぎることもない、ちょうどいい重さだ。
手に感じた感触を確かめた後、数回左右の剣を振ってみる。前に使用していた時の感触がそのまま手に残っている感じだ。
問題はこの後だ。魔法という概念をなくし、剣の世界とも呼ばれたSAOでの唯一の必殺技と呼べるもの――“ソードスキル”
普段剣を扱うことがない現代人がいきなり自分よりも大きいモンスターを自分の力だけで倒せ、というのは到底無理な話だ。そこで、運営が用意したものが、ソードスキルだ。特定のモーションをとるとソードスキルが発動するのだが、その際に剣の刀身が光る“ライトエフェクト”、剣の動きを助けてくれる“システムアシスト”の二つが特徴といえる。
仮想世界でなくなったこの箱庭の世界でもソードスキルが使えるのか、確認しないといけない。普通の現実ならばもちろんだが使うことは不可能だ。しかし、この姿になることができたならば……と思い、数あるソードスキルのうちの一つの発動モーションを取る。
『二刀流スキル二連撃技・シグナスオンスロート』
敵に飛び込んで十字に激しい斬撃を繰り出すソードスキルで、奇襲の際によく使えるスキルである。しかし、敵のヘイト値を集めやすいので普通の戦闘の際は戦いに向いていないのだが、撤退する際の殿を務めるには便利なのだ。あんまり使う機会は少なかったけど。
「………ッ!」
ソードスキルによって繰り出された斬撃の風圧で、周囲の木々が揺れる。木々が揺れた影響か、数枚の葉っぱがひらひらと落ちてきた。
少しの静寂の後、俺は息を長めに漏らす。ソードスキルを放つために全身に力が入っていたので、力を抜く。
「ふぅー……ん?どうした?」
剣を背中の鞘にしまって、ジンたちの方を向くと四人は見るからに固まっていた。春日部さんはすこし分からないけど。
「…驚いたわ。ただの女顔の男性だと思っていたのだけれど、違ったみたいね」
「……何者?」
久遠さんは、先ほどのことに驚いていた。まあ、普通の人間にあんなことができるわけないんだから、俺はギフトを持っているということになるんだろうな。なんか、すごく癇に障るようなことも言われたけど。
「す、すごいです!まさか、和人さんがこれほどのギフトを持っているなんて!和人さんは箱庭に来る前の世界で先ほどのような剣技を扱うようなことをしていたのですか?」
ジンに言われてあの世界での出来事がフラッシュバックした。デスゲームと告げられたあの日、守ると誓った人を目の前で見殺しにしてしまったこと、最愛の人に出会えたこと。そして、
「…まあ、そうだな。さ、それよりも俺の用事は済んだから探索を再開しようぜ」
ジンの質問を曖昧に答え、俺が止めてしまった探索を行うように促した。俺の言葉に頷いた春日部さん達は、ガルドと指定武具の探索を再開した。
そんな彼女らの後ろ姿を見て、一つ疑問が出てきた。“契約書類”の勝利条件に書いてあったことだ。このギフトゲームの勝利条件は『ガルド=ガスパーの討伐』だ。つまり、ガルドを殺さなければならないということだ。いざ指定武具を見つけて、ガルドと対峙したときに俺はこのことに臆することなく剣を向けることができるだろうか。おそらく、俺の前を歩いている四人は殺しをしたことはないだろう。そんな彼女たちが躊躇いもなく指定武具をふるえることができるとは思えない。それならば、いざというときは俺が――――
「和人さーん!はぐれちゃいますよー!」
「あ、ああ!今行く!」
そこまで考えているうちに、だいぶ距離が開いていたのだろう。レイナが呼んでいたので先行している彼女たちに追いつくために、少し早めに歩き出した。
前回の投稿から一年もたってしまって申し訳ございません。大学の課題とバイトに追われる日々で執筆する時間を確保できませんでした。
これからは本当に不定期ですが少しずつでも続きを投稿したいと考えております。待って欲しいとは言いませんが、気が向いたら投稿されていないか見てほしいです、ハイ。
それでは次話でお会いしましょうノシ