僕と猫   作:逸般ピーポー

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僕と猫

真夜中の真っ暗な中で、眼下を川が流れている。昨日の雨の影響か、普段の透き通るような美しさはどこにも見当たらず、ただ茶色い濁流が荒々しく暴力的に飛沫を散らしていた。

まあ、僕が現世とさよならをするような日にはちょうどいいのかも知れない。

別に、会社でいじめられているとか、親や同僚との関係が悪い訳じゃない。特に生活に不自由している訳でもないし、何か理不尽な事に遭遇した訳でもない。

ただなんとなく。本当になんとなく、生きていても仕方ないというか、何もかもがなげやりな気分になったんだ。

別に死にたいというほど死にたい訳じゃあないけれど、特に生きていたいとも思わない。普段ならまあ、頭の中で実際にはどこで死ぬといいだろうか、なんて考えて終わるのだけれど、今日はなんとなく実際に死ぬ一歩手前まで来てみたくなったのだ。

今いる小さな橋の真ん中から、ふっと身体を柵の上に乗り越える。ただそれだけで、きっと痛い思いや苦しい思いを水の中でできるだろう。そしてきっと思うのだ。

ああ、なんでこんな馬鹿なことをしたんだろうって。死ぬならもっと、楽な方法があっただろうに。なんて。

ああ、でも今持ってそれもいいかも、なんてことをふと思う。それもそれでなかなか味わえない体験には違いない。まあ、味わってしまったら最期、まさに最期になりそうだけど。

そんな益体もないことをつらつらと考えていると、ふと後ろから小さな鳴き声が聴こえた気がした。気のせいだろうか?

そう思って耳を澄ますと、空耳でも聞き間違いでもなくどこからか鳴き声が聴こえる。猫だろうか。

小さく。とても小さく、にぃ…。にぃ…。と、生きているのか死んでいるのかというくらいにか細い鳴き声がする。

死のうとしている僕に、死にそうな猫の鳴き声とは。運命の皮肉なのか、なんなのか。なんだか死にに行く気分じゃなくなった僕は、鳴き声を発している猫を探してみることにした。橋の真ん中から鳴き声の方へと足を向け、橋の下に回り込む。いた。小さく丸まっている、真っ黒な毛玉。ぼろぼろの小さな毛玉は汚くて、目も閉じられていた。もうこいつはお迎えが来ているんじゃないかとすら思える。鳴き声は止んでいた。

気が付けば僕は、そのぼろぼろの汚い毛玉に手を伸ばし、自分の身体に抱き寄せていた。こんなのを拾ったところで、どれくらい長生きできるのかすらわからないけど。

ただ、なんとなく。

気が付けば、僕はこの汚くて泥も付いていた毛玉の看病をする気になっていた。

 

とりあえず、自分の借りているワンルームのアパートに毛玉を持ち帰ることにする。あまりにも毛玉が汚いので、床に普段はあまり使わないバスタオルを適当に丸めて置く。その上に死にかけの毛玉を置いて、僕は手を洗ってポケットに手を伸ばした。

さて、困った時のGoogle先生。深夜12時だろうが真っ昼間だろうが地球の裏側だろうが、ネットさえ繋がればいつでも答えてくれる先生は僕の強い味方である。でも、上手に力を抜いて適当に生きる生き方を教えてくれたりはしなかったけれど。

さて、猫を拾った。どうすればいい?

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