『リオレウスに転生したらモンハン世界ではなくなろうファンタジー世界だった件』   作:ましろうどん

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転生

どんな人間にも平等に訪れるモノは何か、それは「死」だ。ご多分に漏れず、今まさに俺にもそれが訪れようとしていた。横断歩道を道路交通法に則って真面目に歩いていると、真面目ではない運転手の運転するトラックが突っ込んで来たのだ。

 

死にかけの人間は走馬灯を見ると聞くが、特にそんなモノを見ることもなく俺は死んだ。つまらない人生だった、来世があるならもっと面白い人生がイイなあ、なんてくだらないことを思いながら。

 

突然だがお気付きだろうか、文体がこれまでのことを振り返る形を取っていることを。それが意味することはただ1つ、俺という存在が生きているということだ。ここまで冗長に説明してきたが、もっと核心に迫ることを言うと、俺はどうやら転生したらしい。しかしその体は人間のソレではない。

 

 

そう、俺は火竜リオレウスに転生していた。

 

 

思わず使い古されたジョジョのテンプレセリフを叫びたくなる位には理解出来ないことだ。だがしかし、俺は持ち前の精神力でこの訳の分からない状況を適切に理解した。前世ではネット小説をよく見ていたのが効いたのだろう、ネット小説様々である。

 

転生というジャンル、もっと言えば人外転生には親が居るパターンと居ないパターンがある。俺は前者だった。今も父親が俺の為に持ってきてくれた野生動物の生肉を食べている。生肉もこの体には案外美味しいものだ。

 

俺はこのモンスターハンターの世界で雨ニモマケズ風ニモマケズハンターニモマケズ成長して、タグに「俺TUEEE!」が付くようなドラゴンになってやる、そう決意した。

 

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持ち前の精神力もどうやら勘違いをしていたらしい。というのもこの世界はモンスターハンターの世界ではない。私がそう考えた理由として、自分の能力値が分かるいわゆるステータスの存在が挙げられる。

 

転生から1年ほど、順当に成長していた(といってもまだ幼体だが)俺は火竜の巣で寛いでいると、忘れてたといった具合に親がステータスの存在を教えてくれたのだ。件のステータスがコレだ

 

□□□

 

名前:フォティア 種族:火竜 格:1

体力:1000 持久力:500

スキル:【火息】

固有スキル:【鑑定】

 

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ステータスはまだ幼体ということもあり大したことはない。ちなみにその基準は周りの大人達なのでこの世界一般から見たら高いのかはわからないが。よくある転生特典といったモノを、神を名乗る爺から貰えるわけもなく、【鑑定】というありふれた能力を貰った程度だ。

 

だがちょっと待て、ステータスに【鑑定】スキルにはネット小説マスターとして心当たりがあるぞ。俺は1つの結論に至った。

 

 

この世界ってなろうファンタジーの世界だわ。

 

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火竜の中には半ば掟と化した慣習がある。それは幼体を卒業すると同時に親元からも卒業しなければならない、ということだ。何が言いたいかというと、転生から5年が過ぎた。そう、もう直ぐ親元から離れて自立しないといけない。

 

なろうファンタジーには大まかに分けて二種類ある。よく魔物という名称で呼ばれるモンスター達には知性があるパターンと知性がないパターンがある。俺が転生した世界では、魔物には知性がある。それは俺に人間のような名前があることからも明らかだろう。

 

そんな俺は今父親に呼び出されている。

 

「お前ももう5歳か、体も成体と遜色ないほどにまで成長したな」

「ありがとう父上、ただこれから自立しないといけないというのは、俺にとっては憂鬱だけれどね」

「そういえば、もう直ぐ自立するというのに今までこの世界というモノについて解説していなかったな。今からこの世界について教えるから真面目に聞くんだぞ」

 

その後延々と続く父親の解説は、あまりにも長く冗長になりそうなので割愛するが、要点だけをまとめるとこうだ。

 

□□□

 

Ⅰ:この世界は「ジアース」という世界で、前世の地球の数倍の大きさはあるだろう惑星である。

Ⅱ:人間・亜人間・魔族の三種族が主に存在している。

Ⅲ:私達ドラゴンや定番のスライム・ゴブリンなどは人間によってまとめて魔族と呼ばれており、他の二種族とはて狩ったり狩られたりの関係である。

Ⅳ:魔族には私達のように知能を有するモノと有さないモノがある。

Ⅴ:地理は地球に酷似している。

 

□□□

 

ちなみに俺が今居るのは主に人間が住んでいる大陸(地球でいうところのヨーロッパ大陸)の奥地にある、人間に「火竜の巣」と呼ばれている場所に居る。私は元来ただの小市民だったので「主人公はこの世界で何を考えて何を成すのか」といった煽り文句をあらすじのシメに書けるような主人公ではない。

せっかくの竜生なんだから、平和に過ごせればいいなあなどと漠然と思いながら独り立ちの時を待った。独り立ちは不安だが、なるようになるだろう。

 

 

そう思っていた。「あの日」までは

 

 

よく晴れた春の日、いつもの日課として付近の森を散歩して戻って来ると、巣に近づくにつれて異臭が漂ってくる。何だろうと思いながらも大して気にすることもなく巣に着くと私はド肝を抜かれた。

 

「悪逆非道」「残酷無比」……その様を形容出来そうな言葉は沢山あるが、まず間違いなくその様はそれらの形容の言葉を上回っていた。俺の両親が無残な姿で殺されているのを見つけてしまったのだ。両親の近くには下卑た笑みを浮かべた1人の人間。

 

両親はといえば、皮は剥ぎ取られ血は抜かれ、目玉は取られ尻尾は切られている。その酷い光景に目を背けたくなるが、何とか耐えて人間を木陰に隠れながら観察する。

 

「いやー!火竜といっても転生勇者のチートにかかれば大したことなかったな!マジ弱すぎWWW」

 

そういって笑いながら戦利品だとばかりに皮や目玉を何も無い空間に収納してその場を後にする人間の男。しばらく放心していたが、状況を完全に理解すると前世でも今世でも未だに抱いたことのない感情が俺を支配するのを感じる。

 

(人間が憎い人間が憎い人間が憎い人間が憎い人間が憎い)

 

今すぐにあの人間の男に戦って復讐してやろうと思ったが、自分の冷静な部分がその行動にストップをかける。私よりも断然強かった両親が無残に殺されたのだ。今の状態ではまだ相手には敵わない。そう思った私はただ復讐という目的に駆られて行動するようになった。

 

まずは強くなるためにどんな奴らも殺し尽くしてやる。人間が主なヨーロッパ大陸にこれ以上居るのは危険だろうと思った私は、成体となった体に付いている1対の羽を羽ばたかせて、魔族が主な地球でいうところの北アメリカ大陸に飛んだ。

 

ここから復讐という目的を持った1匹の竜の冒険譚が始まる。果たして彼はどうなるのか、答えは神ですら知りえないかもしれない。




今回の小説家になろうあるある「光の速さで死を受け入れる主人公」「前世?何それ美味しいの?」「なぜか存在するステータス」

例のごとく続くかどうかは作者のやる気と皆様の評価次第です。

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