妖の総統、毒の指揮官   作:粟楠 春夜

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1話です。ほんと初心者なんで変な文章ですし、悪いとこも多いと思います。読んでいただけるととても嬉しいです!
ダメなとこの指摘もお願いします。


第1話 グスタフ・ハイドリヒ編

ここはドイツ軍の本拠地。現在他国と戦争中のドイツは、幹部を集め、本部で会議を開いていた。

「敵は化学兵器を使用している。このまま行けば確実にまけるぞ」

眼鏡を掛けた男は焦りを含んだ顔でそう言った。

その表情を見た他の幹部も、事態の深刻さを再確認し考え込んだ。

「確かにこのままでは危険だ。こちらとしても負けるわけにはいかないからな」

太った男も眼鏡の男に同意した。そして、また考え込む。

話し合う。改善策を思いつかない幹部達は困り果てていた。そんな中黙っていた痩せこけた幹部は諦めた様子で発言した。

「では、奴を使いましょう」

「奴?」

幹部達は痩せこけた幹部に聞き返した。

「ええ。奴。あの実験の被験者にして、現在の軍の指揮官。グスタフ・ハイドリヒ。奴に前線で暴れてもらいましょう。」

その名前を聞いて、会議にはどよめきが広がる。

期待する声、呆れた声、不安そうな声。様々な声が響く。

「しかし!そんな事をしたら、例え敵を殲滅できたとしてもこちらにも大きな被害がでるぞ!」

1人の幹部が興奮した様子でそう言うと、多くの幹部もそれに同調した。

「そうだ!リスクが大きすぎる!」

「危険だ!」

だが、それでも痩せこけた幹部はひかなかった。

「では、このまま負けるのですか?例えこちらに小さくはない被害が出たとしても、今の状況を考えれば勝つことが最優先なのではないでしょうか?」

その言葉を聴き、彼等はまた考え込んだ。

どのくらい時間がたっただろうか。

1人の男が立ち上がり、

「私も彼に賛成だ。このまま負けるよりかは遥かにマシだ!」

そうはっきり言い放った。

みなも同じように考えたのか、頷き合い結論を出した。

「では、指揮官グスタフ・ハイドリヒ。奴を前線に駆り出す。決まりだな」

彼等は一斉に立ち上がるとバタバタと慌ただしく駆け出した。

 

 

 

「...というわけで、これから君には指揮官としてではなく前線で戦う兵士として戦争に参加してもらう」

グスタフは会議の直後に、幹部達に呼び出され、そう命令を受けた。

「了解だ」

(クソ!こいつらなんかに命令を受け続けるのはウンザリだ!)

そう思っていたグスタフだったが、立場の問題からその気持ちは声には出さなかった。

そのまま無言で立ち去ったグスタフは本拠地の廊下を歩き続ける。彼は突き当たりの部屋の前で止まると、

手早くロックを解除して、中に入った。

ここは基本的にグスタフと一部の研究者しか立ち入りを許されていない部屋だ。

中央に白いベッドが配置され、その周りを沢山のパイプがついている大きな機械が囲っていた。

さらに今はその近くに研究者と思わしき人間が立っていた。

「やぁ、グスタフ。さて、今日も始めようか。」

若い研究者の彼はグスタフの専門研究者だ。医者としても優秀で、その秀でた才能で、戦争で負傷した兵士の治療までも行っている

研究者の声には答えず、グスタフはそのままベッドに横たわった。長いパイプの先についているチューブのようなものを身体に貼り付けられ、さらに口にはガスマスクのようなものを付けられた。

「じゃあグスタフ。始めるよ?いつも通り長い時間がかかるから、睡眠でもしていてくれ」

彼は少し笑みを浮かべて、そう言った。

(毒を吸うのがどれだけ苦しいかわかっている癖によ...!)

性格の悪い野郎だ、と思いながら目を閉じる。

グスタフは毎週この機械から毒を吸入し、生きている。

と言っても何年も続けてきているため、苦しいには苦しいがある程度軽減できるような抗体が出来たらしい。

彼はそのまま夢の中に落ちていった。

 

 

 

 

嘲笑されている。馬鹿にされている。貶められている。

グスタフ・ハイドリヒが幼いころに経験した多くがこういった悪意や嫌悪だった。

彼は親に捨てられ、スラム街で孤児として過ごした。

学校はもちろん、食事さえ満足にできない。

泥の混じった川で体を洗い、ごみ捨て場に落ちているごみから食べ物を漁った。それでも足りない、生活するために必要な金を得るために街へでて、靴磨きを仕事とした。

まだ彼が6歳の頃だった。だが、その靴磨きでさえも満足にすることが出来なかった。

「汚い」

「触るな」

「スラムの餓鬼が!」

そんな暴言を吐かれた。それでも彼は反抗しなかった。いつも、「ごめんなさい!ごめんなさい!」と謝り続け、必死に仕事を探し続けた。

街からスラム街へ帰る途中も、同じくらいの歳の平民から

罵られつづける。

「うわ!アイツ汚ねぇ!近づくなよ!」

「無駄だって!学校すら言ってない馬鹿な奴は言葉理解できないって!」

嫌な笑いと共に指をさされる。こんな生活がずっと続いた。

(悔しい...!俺が馬鹿にされんのは、頭が悪いからだ!絶対にあいつらを見返してやる...!)

顔には出さない彼も心の中でそんな考えを抱いていた。

次の日からグスタフは勉強を始めた。今まで稼いで来たお金を食費ではなく、勉強するために使った。もちろん学校にはいけない。独学で勉強し続けた。

それを何年も続けていたら、彼と同じように勉強を始める者も現れた。最初は数人だったが、いつの間にか

スラム街の子供のほとんどが勉強を始めた。

そのうち彼等は同じ年齢の平民よりも知能が高くなっていた。けれども、

「クソが!調子に乗りやがって!少し頭がいいからってデカイ態度とってんじゃねえぞ」

「お前らはずっとスラム街で俺たちに怯えながら過ごしてろよ!」

勢いは増す一方だった。悪意はどんどん大きくなっていく。

(クソ!もっとだ!もっと...!)

グスタフ達は相手を子供ではなく、大人にした。

皆で知恵を出し合い論文を作った。それを街の研究所に持ち込んだ。

しかし、大人でさえも否定した。

「君達スラム街の子供だろ?じゃあ駄目だなぁ」

そんな理不尽な理由で彼等を追い返した。さらにその論文を自分達のものとして世間に発表した。

グスタフ達は絶望した。この世に救いなんかない。大人も子供も、関係ないんだ。俺達の努力は報われない...!

もう立ち直る気力すら生まれなかった。グスタフ達はもう12歳になっていたが、絶望した彼等は勉強を放棄し、仕事にもほとんど手をつけなかった。

でも、グスタフだけは必死になってお金を稼いだ。それを働かない自分の仲間達に分け与えた。それに勇気づけられた仲間達は、また希望を持ち、立ち直ろうとした、その矢先だった。

グスタフは1日の仕事を終えスラム街へと足を向けていた。

しかし、スラム街に近づくにつれ様子がおかしい事に気がついた。もう、夜のはずなのに、明るいのだ。

そして、スラム街に近づくにつれ、だんだんと明るくなって行く。いつの間にか彼は走り出していた。

ようやくスラム街の入口についた頃にはもう...遅かった。

地面はえぐれ、木造の建物には炎が燃え盛っていた。

「おい...!ふざけんなよ!」

怒りで拳を震わせながら、叫び、俯いた彼はもっと重大なことに気がついた。

「あいつらは!?あいつらは何処に行ったんだ!?」

炎すら気にせずスラム街を走り出した彼は見つけた。

いや見つけてしまった。もう顔すらわからない程、焼け焦げた死体を...。それでも彼はその死体に手をかけ揺すった。

「おい!おい!返事しろよ!生きてんだろ?悪ふざけは寄せよ...!また明日から頑張るんだろ?いつかあのクソ野郎共を見返すんだろ!起きろよ!起きろって!」

彼は涙で顔をグチャグチャにしながら叫んだ。

「なぁ...頼むよ...お願いだから...嘘だって言ってくれよ。

冗談だって、いつもみたいに笑ってくれよ...頼むから...」

どれだけ揺すっても、声をかけても、彼の涙が零れ落ちても、仲間達が目を覚ますことは無かった...。

 

 

 

グスタフは何日もスラム街の跡から動かなかった。ずっと考えていた。自分も今すぐ仲間のところへ行くべきなのではないかと。けれど。それでも、仲間達を裏切らないために、1人で頑張り続けようと、そう決めた。そうしなければ、仲間達に怒られると、そう思ったから...。

その日も靴磨きのため街へ向かった。細い路地を歩いていると、大通りから二人の男の話し声が聞こえた。

「なぁ、昨日のスラム街のヤツって、誰の仕業なんだろうな?」

一人の男が何気なく話し始めた。

「さあ?新聞にはスラム街のやつらの火の不始末とかいってたけど?まぁ、スラム街のやつらが死んだって誰も悲しまねえし、どうでもいいだろ?」

もう一人の男は馬鹿にしたようにそう言った。

「それもそうだな!どうでもいいか」

そんな会話をしながら、二人の男の声は遠ざかっていく。

「クソッ!」

グスタフは自分の拳を思いっきり壁にぶつけた。

火の不始末?そんなはずはない。あの木造の建物が多いスラム街で火に気をつけなければならないと1番分かっていたのはあいつらだった。なぜデマを流している...?

それから彼は街中を歩き回った。真実を見つけるために...。

 

 

 

辺りはすっかり暗くなっていた。大通りを行き交う人々も少なくなってきている。グスタフはまだ探し続けていた。

(何の成果も得られなかった...。いったい誰の仕業なんだ!)

彼はイラついた様子であてもなく歩いていた。

と、すぐ近くに人の気配がした。とっさに裏路地へ隠れ、声のする方へ目を向けた。

(あれは...軍の兵士か?)

「それにしても良くやったよな?スラム街の爆撃なんて」

(な...!?)

「ホントだよ。研究所にも手回してたって話だぜ?論文持ち込んだらしいけど、その成果潰してやれって上からのご命令らしい」

呆れたように兵士が呟いた。

「ほんと綺麗さっぱり消し飛んだよな。あの子供達もな!」

グスタフは唖然としていた。自然と目から涙がこぼれ落ちた。

「ん?そこに誰かいるのか!」

彼は走り出した。もう無くなってしまったあのスラムへと。

 

 

 

「はぁ...はぁ...」

何とか兵士を撒き、グスタフはスラム街跡の真ん中で倒れ込んだ。もう涙は止まっている。

(何なんだよ...!ふざけるなよ!全部、全部...軍が仕組んだ事だったのかよ!あいつ達はあんなやつらに殺されたのか...!)

そんな事を考えていたら、また涙が溢れ出した。

なんであいつらが。あいつらは頑張ってた。どれだけ悔しくても、心が折れても、また立ち上がっていた。なのに...。

「こんな...こんなのってねえよ!」

もう気持ちを抑えきれなかった。

「ああああああああああああ!」

殺す。復讐する。例え自分がボロボロになったとしても、軍は...!絶対に許さない!軍だけじゃない!あいつらが死んでも、平気で笑ったあの平民共も...!全員許さない!

彼は恨んだ。復讐すると誓った。

もう昔の悔しさとは違う。明確な殺意を持った。

悔しいのではない。言葉では表せないほどの憎しみが生まれた。

 

 

 

そうしてグスタフは実験を受けた。力を手にし、軍に潜り込んだ。地獄を見せるのだ。

軍にも、平民にも、仲間達の苦しみを超える地獄を。




矛盾している所などの指摘お願いします。読んでいただき本当にありがとうございました。次回も読んでもらえると嬉しいです。
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