コラプスィング・ワールド   作:初霧零音Mk-Ⅱ

4 / 9
ども、初霧零音MarkーⅡです。
さて、早速主人公くんが進化していきます。
不自然でしょうが、2話目がスタートしますよ。
戦闘描写はあまり自信がないので、ご了承ください・・・
後半はちょいとオリ主とキリトがトラブります!?


#2 世界の「守り人」に

 ……もっと、もっと強く。

 そう思ったら、立ち上がらずにはいられない。意識も、足元も、しっかりとはしなくとも。

「う……。まだ……、あきらめは……しないわ……!」

 痛い頭と重い足を叱咤する。まだ、戦う力は……ある。アスナの力だって、まだ、使ってない。

「うあーーっ!!」

 ……純の悲痛な叫び。……そうだ、僕は絶対に誰にも、悲しい思いはさせたくないんだ。そのために僕はこの姿になっているんだ!

 

 一歩を確実に踏み出す。

 

 僕の足音に気付いたキリトが振り返る。

「よせ!! また………また、お前が攻撃されるだけだ!!」

 ……ふん、キリト、君は……馬鹿だね。

 はっきりしない視界にキリトを捉え、僕は正直な気持ちを言い放った。

「キリト君……あなたは……アスナが…ずーっと私の中にいたまま……、消えても、いいって言うの……?」

「!!」

 僕の負傷より大事なことにキリトは気付いてくれた。

「……確かに、それも、そうだな。………お前の言う通りだよ。」

「あり…が……とう……。……それじゃあ……サポート、お願いね………キリト君。」

 キリトが無言でうなづいたのをしっかりと見届けてから、僕はレイピアを持ち直し、怪物に向かって走り出した。

 後ろからキリトの足音。

 ……純や祐太郎が傷ついているのが肌で感じ取れる。怪物になんか、負けないよ、君たちも。

 それより、今は、ぼやけた視界にいる、あの怪物に集中、しないと。

 ……何でだろう。今度はわずかな風圧でも相手の攻撃の軌道がわかる。

 それに頭から出血しているとは思えないスピードで右へ左へとかわしていく。

「くっ……。」

 痛みが遅れて伝わってきた。……負けるか、こんな痛みになんか。

 僕は直感で怪物の頭上に飛び上がった。

「……シューティング・スターッッ!!!」

 ザクリ、と切り裂いた音が耳に響く。……やっと、一撃入れた。

 けれども、怪我のせいか、着地と同時によろけてしまい、倒れそうになった。

「グワッ!」

 怪物の痛みの声。そんなものより仲間の方がもっと心が痛む。

「もらった~っ!!」

 キリトが甲高い金属音を鳴らして、怪物を切った。

 後ろを振り返ると、怪物が『コア』と思える球体のものを真っ二つにされていた。

 体に亀裂が入ったと思ったら、一瞬で崩れ去った。

「やったな!! ……って、おい、大丈夫か?」

 キリトは多分、僕の足元に滴った血を見たんだろう。

 意識が朦朧としながら、僕は声を振り絞る。

「…何……とか……げ、現状維持は……。」

 

「……もう、消えて! ……『超電磁砲』ッッ!!!」

「ギィエエエエエエエエエ~~~ッ!!!」

 

 激しいスパーク音に怪物の、悲鳴。

 一歩歩こうとしたら、フラーッと体が傾きだした。

 そこですかさず、キリトが僕を支えてくれた。頭の痛みも急に加速する。……痛くてたまらない。

「……ごめんね、キリト君。」

「いや、いいんだ。光汰はオレのパートナーだし、な。肩貸して歩かせるのくらい、黙ってしてやるさ。」

「……みんなのところまで、お願いするね。」

「……ああ。」

 

 

 キリトのおかげでなんとか祐太郎たちのところまで歩いていけた。

 支えを外されるや否や、僕はぺたりと座り込んでしまった。

 フィオナさんは、まだ険しい顔をしている。

「……今回の時間封鎖を行った人物はまだこの近くにいますね。」

 まだ出血が止まない僕は、顔を上げずに聞いていた。

「……私は……左腕ヤバいってのに……」

 純がイヤそうなことを言った。

「わ、私は……う…着地を…ちゃんと…しなくて……頭が…うっ……」

 僕も状況報告をする。

 その時、フィオナさんがふう、とため息一つ。

「怪我の治療なら私が。」

 そう言って左手を純の左肩に、右手を僕の頭に乗せた。

「……はっ!」

「「!!」」

 ……またまた驚くべきことに。

「あれ……さっきのダメージが……き、消えた? そ、それに、意識もはっきりしてるわ。」

「私も脱臼してた感覚がなくなった。……フィオナさん、祐太郎も……お願いします……。」

 にこり、とフィオナさんは笑うと、すぐに祐太郎のヒーリングを始めた。

 ふと思って左の頬を触ってみた。……大半が乾いた血で覆われている。

 助かったという思いで、僕は安堵のため息をついた。

 その時、さっきより鋭敏になった感覚で、新手の気配を感じ取った。

 キッとその方向に顔を向ける。

 それにつられてみんなも見た。

 

 ……物陰から男の人が現れた。

「お前は誰だ!!」

 キリトが叫ぶ。

「私たちがこんなことになったのは、あんたのせいなの?!」

 続いて純が吼える。

 男は口を開いた。

「ふ……正確には私だけではない。私は、貴様らの『世界』の破壊を目論む組織の一員だ。」

 へえ、そうなんだ。……純の質問にしか答えてないのをもっと自覚すれば?

「そう……。というより、先にキリト君の質問に答えなさい!!」

 僕がそう言うと、わざとらしく男は大きく肩をすくめて、

「これは失礼なことをした。私はゲネオス。」

と謝罪と自己紹介を混ぜ返してきた。

 一旦きょろきょろと、辺りを見渡していたゲネオスだったが、何かが残念であるらしく、不機嫌な顔をしている。

「しかし………この辺りにいた戦闘タイプの奴を逃してしまったようだな……。1人目の標的め……小さな光球に変化させたと言うに……。」

 突然、フィオナさんが鼻をふふんと鳴らして言った。

「あら、それは『炎髪灼眼の討ち手』、なのでしょう?」

「!」

 さっきシャナを『回収』していた僕は、間髪入れずに反応した。

 ゲネオスもシャナを狙っていたようで、とても不機嫌な表情を浮かべた。

「ちっ、貴様も知っていたか。女神めが……。」

 フィオナさんに対して歯ぎしりをする敵の男。

 ふと、フィオナさんが目だけ、僕に向けた。………どうやら、当然、僕が動きを見せなきゃならないんだろう。

 小声で叫ぶ。

「……来て! 私の………『贄殿遮那』……!!」

 すると、ひとりでに『贄殿遮那』は飛んできて、腰のベルトに装着された。

 ……ゲネオスの顔が一変した。

「!! ……ただのガキのくせに!!何故だ!!」

 僕はゲネオスを一睨みし、器用に『贄殿遮那』を左手だけで抜いてみせた。

 半回転させて、ぐっと柄を持つ。

「だって、私が『回収』したんだもの。残念だけど。」

 前に進み出て宣言し、レイピアを容赦なくゲネオスに向ける。

「……光汰さん。」

 また、フィオナさんが手を僕の肩に乗せた。

 ……今度は無言のうちに力を使われた。

「うっ!!」

 口が僕の意志に反して開いていく。

「……フォーム……チェンジ……!!!」

 こう口が動き切ったら、再び体の感覚が変わり出した。

 ……さらに言うなら、背が縮んでいく。

 息が荒くなっていたのが納まってから、手の辺りを見てみた。

「!!」

 見事に服装までも、シャナの制服に変わった。……これが「フォーム・チェンジ」。

 フィオナさんのすごさに言葉が出ない。

「光になっている魂を『回収』すれば、そんなことが……。」

「でかしたわ!! 光汰!!!」

 祐太郎も純も『使命』に対して俄然やる気が出た、とすぐわかることを言った。

(あ。………シャナになれたんだから、『アレ』が出来るんじゃ?)

 思い立って全神経を集中させたら、すぐに《フレイムヘイズ化》を実現できた。……忘れないぞ、この感覚。

「……よし!!」

 自分に改めて気合を入れる。

「よし! 光汰君!!」

 悠二が急に叫んで、『あるもの』を僕に投げてよこしたから、レイピアを地面に突き刺してキャッチする。

 ……見てみると、シャナのペンダント型神具・『コキュートス』だった。

 不思議に思って悠二を見た。悠二が口を開く。

「さっき空から落ちてきたんだ。その中に、君の2人目の……」

 僕は悠二が説明し終わる前にもう理解した。

「……パートナーのアラストール、でしょ。悠二。」

 自然とシャナと同じ、淡々とした口調で僕は言った。そして、話す相手も変える。

「よろしく、アラストール。」

 挨拶すると、さっき悠二が僕のことを話していたらしく、アラストールも、

「うむ、こちらこそよろしく頼む。」

と、しっかりとした挨拶を返してくれた。

 それから、『コキュートス』を首にかけ、レイピアを右手に持ち直す。

 もう我慢がならないのか、ゲネオスは。

「ガキどもが……調子に乗るな!!!」

と狂ったように叫ぶと、右手に剣を出し、僕めがけて突進してきた。

 そっちがその気なら僕も負けてられない。もう戦略的コツを掴んだし。

「さっき、キリトに迷惑かけた分……今、ここで返す!!」

 迫り来るゲネオスの剣を、右手のレイピアで、

 

 

 ――――――キィィン!!

 

 

 と高い金属音を鳴らしつつ流し、ゼロ距離に近くなったところで彼の左の脇腹を、

 

 

 ――――――バスッ!!

 

 

 ……『贄殿遮那』で深く切りつけた。そのため、少し返り血を浴びてしまう。

「がっ!! …何、だと……??」

 僕は後ろからの援護攻撃を気にしていたため、シャナの身軽さを利用して、サッとゲネオスから10メートル以上離れた。

 その、気にした「後ろ」では。

「もう一発……『超電磁砲』っ!!」

 二度目の『超電磁砲』が炸裂し、しっかりゲネオスに命中。

「しまったぁっ!! ……た、退却する!!」

 吹き飛ばされながら、奴は逃げ帰った。

 悔いが残る中、『贄殿遮那』をコート型神具・『夜笠』に収納し、僕はアスナ姿に戻った。

「……逃げましたか。」

 フィオナさんが遠い目をしてつぶやいた。同時に敵が行った『時間封鎖』の維持をしているのは言わずともわかった。

 ……それよりも。

「ごめんなさい……キリト君……。」

 たった2回しか僕は攻撃できてない。呵責の念が駆り立てられる。

「いいんだ。初回であれだけ戦えたら十分だ。……教室に早く戻ろう。」

 感心したような口ぶりで、僕の謝罪をキリトは受け流す。

「……ええ。」

 キリトの優しさに心を慰められた僕は、微笑んで返事をした。

 校内に戻ってから、やっとフィオナさんは『時間封鎖』維持をやめた。

 その解除とともに、僕たち3人とも制服姿に。

 念のため、アラストールに話しかける。

「えっと……姿は変わらないけど……、こっちが常の『僕』だから、ごめんね。アラストール。」

 僕の一人称の変化にアラストールは驚いていた。

「うむ……それが2つの『世界』の境界の崩壊による影響か……。計り知れぬ危機であるな。」

 ……悠二、説明を一部抜かしたな。仕方なく補足説明を入れる。言いにくいけど。

「それが、さ。周りの人には……僕の姿は男のまんまで、悠二やキリトは見えてないんだ、今のところ。」

「そ、そうか。礼を言う。」

「どういたしまして。」

 

 その後は何もなく平穏に昼休みを迎えた。

 弁当を(キリトはフィオナさんから支給されたサンドイッチ類を)食べて、僕が窓からにぎやかな校庭を眺めていたら、キリトが近寄ってきた。

「どうした? そんなにぼうっとしてさ。」

「ああ、それね。」

 失礼ながら顔を見ないで、訳もなくこうしている理由を、キリトだけに届く程度の声で話した。

「ここが……さっき戦ったところのすぐ近くなのかなって思っちゃうくらい……にぎやかだから……。」

 アラストールが話題を変える。

「その通りなのだが、キリトよ。どうやら我も貴様と同類項のようであるな。」

「つまり、光汰や祐太郎とかにしか、見えないってことか……。」

 僕は外を眺め続けながら、話に割り込む。

「まあ、僕としてはその方がラッキーなんだよね。祐太郎は……元の男としての姿に見えてるってことで、会話楽しんでるけど。」

 

 その日は後期夏期補習(という名の通常授業)の最中だから、6限で終わった。

 4階に一旦6人とも集合。

「んじゃ、無事揃ったし、帰りに何があるかわかんねーけど、またな!」

 純がみんなを一瞥して言う。

「おう。悠二、パートナーだから来るんだろ?」

「まあね。」

 祐太郎と悠二が先に帰りだした。

「それじゃ、僕もキリトと一緒に帰るよ。フィオナさん、純をお願いします。」

「任せてください。」

 フィオナさんと軽いやり取りを交わしてから、僕とキリトも帰路についた。

 

 それから3、40分して、自宅最寄りの地下鉄の駅に到着した。

 敵のことを気にしながら、いつもの通学路を歩いていく。

「今のところ、ここに敵は……。」

 キリトがぼそっと呟いた。礼儀として、僕も言葉を返す。

「まだいないだけ……だろうね。」

 

 互いに話すこともなく、数分歩き続けた時、本日2度目の『変な波動』、時間封鎖の波動を感じた。

「うう……敵が……僕の家の近くに……!!!」

「今度は誰の魂を嗅ぎ付けたって言うんだ!!」

 突然の敵の出現に、怒りを覚え、2人揃って全速力で走り出した。

 そして、小学生の時の集団登校班の集合場所だったマンションの前に、僕は制カバンを放り投げた。

「誰が……」

 『血盟騎士団』副団長・アスナのユニフォームに変身する。

「誰が、私の家の近くで……暴れていいなんて言ったのよ!!」

 僕はスピードをのせて、勢いのままそこにいる怪物に飛び蹴りをお見舞いする。

「グワァァッッ!!」

 作用・反作用の法則に従って、怪物は叫び声をあげて結構吹っ飛んでいった。

 狙われた光球を探し出し、ライトを照射。

「今度は誰……って、ええっ!? ……『ブレイブルー』のノエル=ヴァーミリオンじゃないの!!」

 すぐにノエルの光球を、キャプチャーモードで『回収』した。

「今日で……もう2人も、確保した…のね。」

 キリトが僕の横に並び立つ。……朝の時に決意したことを彼に伝えなくては。

「キリト君。」

「何?」

「……朝のような失敗は、できればもうしない。……私、戦い方が少しはわかったから。」

「じゃあ、必要なら『フォーム・チェンジ』も、な。」

 鞘からレイピアを抜き、すぐに『贄殿遮那』も左手に召還する。

「我も可能な限り援助を行うぞ。」

 アラストールもやる気十分。

「…さあ、早いこと倒しましょうよ。……私たちの敵を!!」

 準備万端となったところで、僕は真剣に言い放った。

「今回も俺が先陣を切るぜ!」

「任せるわ、キリト君!」

 朝のことを考えてのキリトの発言で、前衛・後衛が決まった。

 怪物もやっとリカバリー。

 それと同時に駆け出したキリトの後を、わざと4、5秒遅れて付いていく。

 脳みそが小さいのか、怪物はまず、キリトに攻撃を仕掛けた。

 ……だが、あまりにも大きすぎる予備動作だから、キリトは楽に対応してみせた。

「甘いな。」

 そう言って、キリトは相手の巨大な右拳を、深く切り裂く。

「ギャッ!!」

 愚鈍な怪物は、突き出した手の痛みで喚いた。

 その隙を突いて僕は高く跳び、大きく両手の剣を振りかぶって、

「やーーっ!!」

怪物の両腕を切り落とした。

「ギョエエエエッ!!」

 再び怪物の悲鳴。

「これで完全にガードは出来ない!!」

 キリトは相手の胸あたりまでジャンプで上がった。

「……スターバースト・ストリーームッッ!!!」

 これも2度目の、連続16回攻撃。《二刀流》じゃないとできない高速技だ。

「フォーム・チェンジ……シャナ!!」

 レイピアを鞘にもどし、大声で叫ぶ。

 ――――――2つ以上『回収』していると、名前を叫ばないとたぶんランダムになってしまうだろうから。

 変身が完了し、《フレイムヘイズ化》する。両手で『贄殿遮那』の柄をグッと握る。

 そして、炎の翼を出し、怪物に急接近して、リーチが届く少し前に前回転を加えた。

「…紅蓮の大太刀っ!!」

 締めの1回転に勢いをつけて、怪物を一刀両断。『コア』を切る固い音と感触もした。

 即座に怪物は崩れ去った。

 アスナ姿に戻ると同時に『時間封鎖』も解けて、制服姿になった。

「ふう。また一件落着だな、光汰。」

「だね。さすが、《SAO》で元アインクラッド攻略組。」

「…それ、お世辞か? ……ま、敵の人間はもう逃げてったようだけど。」

 ……重要なことを忘れかけた。

「あ、そうだ。カバン取ってくるよ。」

 あのマンションまで急いで戻って、カバンを回収。キリトのところに引き返す。

「ごめん、ごめん。……さて、僕の家の中に入るとしますか。何しろ汗かいて不快だからね。」

「ああ。お前の家族に俺は見えないだろうけど、お邪魔させてもらうよ。」

 

 自分の部屋に入ると、おそらくフィオナさんがやったであろうことが、すでに発生していた。

「うわ、キリトの私服まで……こっちに送られてる……。」

 ……今は夏。さっきので肌着が汗でぐちょぐちょになってることの方が気になる。

 自然とそっちに思考が移った。

「な、キリト。僕はこれからシャワー浴びるつもりだけど、どうする?」

「え、ええ!?」

 しまった。口を慎めばよかった。

 キリトは今、絶対に、意識している。………見た目上、男と「女」の同時入浴になってしまうんだから。

 直葉となんて、したこともないんだろう。

 僕の突拍子もない提案に、何分かキリトは熟考した挙句の果てに、こう言った。

「今の光汰はアスナ、だけど………不自然さを隠すには、一緒に入る以外手段がない、か……。戦って俺も汗かいたし。」

 そして、今度はアラストールが僕に指示を出した。

「佐々倉光汰。貴様は目を布でも使って隠せ。」

 そうくるか。仕方ない。

「はいはい。じゃ、シャワーの後のごまかしは僕に任せて。キリト、入ろう。」

「あ、ああ……。」

 

 ……で、浴室の中。僕はタオルで目隠ししながら、キリトに迷惑を振り撒いている。

 いつも短い髪だから慣れてない、ってことでキリトが代わりに洗ってくれている。

 その間、見てはいけないから、ずれないよう両手でタオルの両端を持ち続けるはめに。

「よし、終わった。いいか? シャワーかけるぞ?」

「うん。」

 そうしてキリトは、ハンドルを全開にして、自分のと『アスナ』姿の僕の髪を、シャワーでシャンプーごと洗い流しだした。

「…………。」

 何だか妙に恥ずかしかった。……情けなくて、気持ちがいろいろ混じり込んで、泣きたい。

 ごまかす言葉も見つからない。

「おいおい、妙な黙り方、す、するなよ。」

 キリトが不意に黙り込んだ僕を気にしている。

 『コキュートス』は、私服と一緒に隣の脱衣所に置いているから、これらの会話はアラストールが聞いてないとは思えない。

 キリトがシャンプーを流し終えたのか、ハンドルの、ググッ、という音が聞こえた。

「……って泣いてるのか?」

 キリトは後ろじゃなくて、すぐ左から話しかけてきたらしい。目隠しのタオルをもう一回結んだから全く見えない。

 たぶん口元の歪み具合で――――――実際そうなりかけだが――――――判断を下したんだろう。

 ……キリトの配慮に甘えさせてもらおう。そうじゃないと、堪え切れない。

「ねえ、キリト。」

「ん?」

「君も、一回さ。目を閉じてくれないかな?」

「!!」

 キリトが敏感に反応したのが、ちょっと触れていた手の震えで分かった。

 僕のしたいことを瞬時に理解された。

「………我慢すっから、いいぞ。」

「ありがとう……。」

 静かにキリトの背後に回る。

 そして、キリトに抱きつかせてもらった。

 

 

「……僕、さ。その……?」

 言いかけたところで、嫌な感じがした。感覚が鋭くなってきてるし目隠ししてるから、なおさら。

 ……キ、キリトがこっそりにやついている。

(もう、何余計な思考を働かせているんだ!! キリト!!!)

 カーッと頭に血が上る。顔も赤くなっているのを感じつつ、ゆっくり両腕を交差させていく。

「……。」

 油断しているのを確認して、一気にキリトの首を締め上げた。

「―――――――っ!!」

「うぐっ!? な、何、く、苦しいって!」

 もう寂寥感が怒りに変わっちゃた。完全に涙目の状態で、一切容赦しない。

「変なこと考えたな!! キリトのバカーーッ!!」

 怒りを表しつつ、小声で当り散らした。

「うぐぐ、ぐるじいっで、わがっだ、俺が、俺が悪がっだ―――っ!!」

「やっぱり、自覚してたんだ! ……泣きたいのがバカらしくなったよ・・・・・・」

 本当に窒息されると困るから、首絞めはやめた。

「……ごめん。」

 もうこれで、目隠しがあろうとなかろうと、キリトには全く関係ないと分かった。

 タオルの結び目をほどく。

「次からはもう目隠しなんかしないからな。」

「……はい。」

 キリトが逆に迷惑をかけたことに反省してもらいつつ、むしゃくしゃした心持ちで、僕は体を自分で洗い出す。

(………許せん。)

 2分くらいで全身を洗い終え、後はシャワーで流すだけ、となった時に、泡だらけの(さっき目隠しに使った)タオルを、俯いているキリトに全力「投球」。

 キリトが顔を上げたと同時に、そのタオルは彼の顔面にヒット。

「ふごっ?! なにすんだよ!!」

「うるさいっ!!」

 

 めちゃめちゃなシャワータイムが終わった後、仲直りして僕の部屋に戻った。

 勉強机に頬杖をついてぼーっとしていたら、いきなり睡魔に襲われた。

「ふぁぁ……。」

 姿が女の子らしからぬ、みっともない大あくび。

「私服は完全に男のものであるな。……容姿を考慮しなければ、の話だが。」

 胸元の『コキュートス』からアラストールが声を出した。

 それでも、睡魔は強くなってくる。

「確かにアラストールの言う通りだけど……。」

 キリトも僕の布団に座ったままで、アラストールに同意。

(あ、………も、もう、……ダメ………)

 耐久限界に達して、意識が遠のいた。

 

 再び目覚めた時には、今度はキリトが居眠りしていた。しかも45分くらい経っていた。

「うわー……、これはまずいよ……。」

 急いで準備を開始。と思ったら、

 

 

 ――――――ガンッ!!

 

 

「ったたた………。」

 固いものが頭の上から落ちてきた。さらに床で鈍い音をさせたから、その物体を見てみる。

「うわ、ノエルのチェーン・リボルバーだ……。」

 1人でぶつぶつ言っていると、

「ん? 何をしている?」

と、アラストールが質問してきた。

「あ、ああ。学力が中途半端だから塾に行くんだ。これから。」

「そうか。しかし、今の武器転送はあのフィオナとかいう女神の能力か?」

「そうだと思うんだけどさ、僕の頭の真上からなのは……どうかと思うな……。」

 そこにもうひとつ、ドサッとという音。………後ろのキリトの方だ。

 振り返って見てみると、落ちてきたものは明らかに食べ物で、キリトの頭に軽く直撃したらしい。

「……これ、フィオナさんだな?」

 目覚めがよろしくないキリト。

「そうだろうね。」

 僕は笑って言い返す。

 またキリトが口を開く。

「? 光汰、お前そんな準備して、どこに行くんだ?」

 これ、また説明がいるな。アラストールにしたのと同じように。

「中途半端な成績しか取れないから、塾に行くのさ。」

「へえ。……ってその二丁銃はなんだ?」

 君、質問連発って……まあ、いいか。

「これもフィオナさんが転送してきた、『ブレイブルー』のノエル=ヴァーミリオンの相棒、『チェーン・リボルバー』だよ。」

「お、遠距離戦闘ができるな!」

「君も、早く《GGO》バージョンの《キリト》を取り戻すようにすれば?」

「うっ、でもそれには、俺、《フォトン・ソード》が……」

「あ! はいはい、君は何が何でも《剣士》でないとな。」

 会話はそれきりにして、塾に行った。

 

 無事、敵の襲撃なく塾の自習室が終わる時間まで済んだ。

 で、今はもう家に帰ってきて、夕飯もちゃんと頂いた。

「ふ、ふぁぁぁ……。」

 またアスナ姿で、はしたない大あくび。これで2回目だ。何を自分はしているのやら。

「おい、光汰。もし、お前の姿が周りにも『アスナ』に見えてたらどうすんだよ。……無遠慮にも程があるだろ。」

「はい、すいませんでした。万一のためにおしとやかな態度でいられるようにします。」

 

 眠いから、さっさと風呂に入ろうよ、キリト。

 

 

 

 

 




後半は、至って日常的な内容でした。
・・・若干絵にしてはまずいとこあったかも・・・・・・?
まあ、戦闘はまた次回もあります。
新しいキャラと新フォームが出ます。
・・・っていうか、女神さんの物体移動能力まで判明です(゚Д゚;)

もしよかったらお気に入り登録よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。