無理ならバックでお願いいたします。
うららかな春の陽気に包まれて、…………。あー……、もうこのまま眠りについてしまいたい。
「なに、勝手に締めに入ろうとしてるのさ」
「あだっ」
机に突っ伏していたら、コツンと頭を叩かれた。
「…ヌフルナールか。いいじゃん、あったかいし。後で一緒に寝ようぜ」
「全く……いつまでそんな地味な格好をしているんだい? そんなんじゃ、クリスカにまた怒られちゃうよ」
後半を俺にしか聞こえないくらいの大きさで囁いてくる。
「まぁ、散々振り回してきた身としては、たまにはグータラしてもいいけどね。私としては大活躍して欲しいんだけどね」
ヌフルナールは、首に抱きついてじゃれついてくる。たまに狐っぽいところが出てくる。狐だけど。まあ、人前では周りの目を気にしてもらいたいものだ。
――大和side
「大和ぉー、何であんな根暗がヌフルナールちゃんに抱きつかれてるんだよー!」
岳人が、涙を流しながら近寄ってくる。
確かに岳人の気持ちも分かる。今、教室の視線を独り占めしている場所にいる二人。片方は、学園でも有名なヌフルナールさんだ。
キラキラと輝く金髪や、スッと切れ長な目元がクールなのに対して、とても親しみやすい性格で、学年性別を問わずに人気がある。
だが問題なのは、そのヌフルナールさんがいつも一緒にいる男、清涼院 輝螺である。成績はいいようだが、髪がヌフルナールさん並みに長く、逆にその髪が根暗な印象を与えており、ヌフルナールさんファンの生徒からは邪魔者扱いされている。髪を纏めればそこそこだと思うんだけどな……。
ヌフルナールさん以外とはほとんど話していないが、数少ない例外である俺もごく稀に話すが、話せば普通である。というか、かなり落ち着いていて、年上と話している感覚だった。よく見ていると、梅先生とはそこそこ話していて、仲が良さそうだったし。
「まぁ、岳人もいいとこ勝負じゃないの?」
「それは納得いかねぇっ!!」
モロのツッコミが結構キツイ。
「なーんか、言われてるねぇ」
「いいさ。どうせ、少しすればS組と何か勝負するだろうし、そうなりゃ、嫌でも動かなきゃならなくなるんだし。せめてそれまではのんびりさせてくれ」
注目されるのは、ヌフルナールと一緒にいる時点で決められている。そのことは嫌というほど経験しているので、一度くらいはこんな経験もして見たいのである。
「ふふふ、そうだね。なんか、S組のお嬢ちゃんがプリプリしてたから、すぐに来るとおもうけど……」
「F組に決闘を申し込むのじゃ!!」
バーンと扉を開け放って、着物少女が入ってきた。
「ほらね?」
「だな」
ということで、のんびり暮らしが終了したのと同時に、騒がしくも楽しい生活が始まったのであった。
…………のだが。
「今日は教師が立ち会えないから、決闘を行うのは明日だ」
そりゃないぜ、梅先生。
「ただいま」
「ただいま、お菓子買ってきたよー」
家に帰ってくると、バタバタとこちらに向かってくる足音が一つ。
「おかえりなさい! あきら!」
バッと飛びついてくる銀色の影。俺はその子の頭を撫でて上げる。
「ただいま、イーニァ。いい子にしてたか?」
「うん、わたし、いいこにしてたよ」
この可愛らしい生き物は、イーニァ・シェスチナ。ロシア人の女の子で、俺と一緒に世界を渡ってくれている女の子の一人である。
「おや、イーニァ。私にはおかえりを言ってくれないのかい?」
「ヌフルナールもおかえりなさい!」
ニパッと穢れのない笑顔を向けられたヌフルナールは、鼻を押さえた。
「だめ。こんなピュアな子に、下ネタは言えない」
「他にも言うな」
分からないでもないが、学校とかでも下ネタとか言わないで欲しい。
イーニァと戯れていると、奥から二つの足音が向かってきた。
「なにをしてるんだ、早く上がって来い」
「お夕飯はできていますよ」
奥からやって来たのは、二人の女性。
イーニァと同じ銀色の髪の女性は、クリスカ・ビャーチェノワ。イーニァと同じロシア人で、少し冷たい印象のクール美人。とは言え、実際はとっても可愛い女の子である。ちなみに、今の世界では同い年。イーニァの一つ上のお姉さん的な存在である。
もう一人の大和撫子は篁 唯依。こちらも、俺たちと同い年の女の子である。少し固い性格なのだが、そこがまた可愛いのである。さらに、とても家庭的で、お嫁さんにしたい女の子No.1である。
「ごめんごめん。じゃあ、イーニァも行こうか」
「うんっ! きょうはわたしもてつだったんだよ。ね、ゆい」
「はい。とっても美味しく出来てるんですよ。お二人もビックリすると思います」
可愛い子が微笑ましい会話をしている絵は、とても素晴らしい。現に、さっきから黙っているヌフルナールは、自らの変態ぶりに罪悪感を感じているようで、胸を押さえてうずくまっている。
……そこまで自分の変態っぷりを自覚しているなら、もっと自重しろよ。
「そういえば、いつまでその髪でいるんだ?」
夕飯食べ終えて、イーニァとじゃれついていると、ふとクリスカがそんなことを尋ねてきた。
「ん? これ?」
「そういえばそうですね。目立ちたくないのでしたよね?」
お茶を持ってきた唯依も話に加わる。
「んー、そうだったんだけど、明日のS組とするから、そん時髪あげようと思ってる。クリスカ達も入ってくるしね」
そう。ちょうど決闘の後にクリスカ達が川神学園に編入して来るのだ。というわけで、せっかくクリスカ達とスクールライフを満喫できるのに、後ろ指を指されるのは嫌だ。
「そうか。ようやく、煩わしい髪を見なくてもいいのか」
「なんだクリスカ。これ、そんなに嫌か?」
「あぁ。お前が誰かにバカにされているなど、想像もしたくないし、何より……」
そういうとクリスカは、ヘアピンをとって、俺の髪をかき上げた。
「お前の顔を見れないから嫌なんだ」
そう言って髪で隠れなくなった俺の顔を見つめながら、何ともこっぱずかしい台詞を言ってくれた。
流石にこれには俺でも照れる。それは、周りももちろん、言った本人も恥ずかしかったようで、みるみる内に、顔を真っ赤にさせた。
「こ、こほん。ともかく、さっさと髪を切れ。分かったな」
顔を逸らしながら命令して来るクリスカに思わず笑ってしまった。見ると、唯依も少し笑っていた。
「な、なんだ二人とも」
「いや、なぁ?」
「えぇ。ですね」
唯依と顔を見合わせて笑うと、クリスカの顔がもっと赤くなっていた。
教室に入ると、何やらいつもと雰囲気が違う。決闘があるのだから仕方がないが、みな少し緊張気味だ。
というかロリ委員長が前に立っていた。
「あ、清涼院君、やっと来ましたね。早く座ってください」
「あ、うん」
どうやら、俺が最後だったらしく、俺が席に着くと委員長は話を始めた。
「えっと、それじゃあこれから、今日の決闘に出る人を決めたいと思います。今回は三人選びます。やりたい人はいますか?」
「はーい!! わたしー!」
「私も出るぞ!」
一瞬で二人が決まった。川神一子、クリスティアーネ・フリードリヒの二人だ。
「あはは……えっと、あと一人、いませんか?」
「はい」
俺が手を挙げると、皆がざわついた。まぁ、根暗で通してきた奴が、いきなり決闘に出るとか言ったのだから無理もない。というか、ヒソヒソ話がここまで聞こえてきている。
「えーっと、いないのなら決定しちゃいますよー?」
「ちょっと待った。そんな奴が出るなら、俺様が出るぜ!」
そう言って立ち上がったのは、島津岳人。さっきの二人と同じ、風間ファミリーの一員である。
ともあれ、筋肉バカで通っている彼の方が良いと思うのは当然か。
「とはいっても、俺も出たいしなぁ」
「はっ、お前みたいなやつが出ても負けるだけだ!」
どうだろう。実際、川神百代にも負けない自信はある。人生数百回、千年以上生きて訓練とかしてると、最強とか、あんまり気にならなくなってくるのである。
「じゃあ、島津のパンチを処理できたら、俺が出る。駄目だったら、島津が出るってのは? 手っ取り早いし」
まぁ、負けはしないだろう。もう、目立たないでいる理由もないし。
どうやら島津は単純なタイプだったので、この提案に乗ってくれた。
ということで、梅先生が来ない内にということで、俺と島津は少し広い所で向かい合った。
「よっし、いくぜ!」
「ん、いつでも」
流石に構えないのは失礼なので、軽く構える。島津は思いっきり振りかぶって、全力で殴りかかってきた。
その筋肉の豊富さに加えて、日々のトレーニングの賜物か、十分力強くいいパンチ。とはいえ、大昔の三国の彼女たちに比べれば、さして恐ろしくはない。
「うおぉぉぉぉ――って、うおぁ!?」
とまぁ、島津の腕をヒョイと取って、そのまま一本背負い。もちろん叩きつけないように、本気で綺麗に投げました。
とはいえドンと、すこし大きめなの音がしたが、島津は平気そうだった。何が起きたか分かっていないようだったが。
それは、クラスのみなも同じようで、風間翔一が目を輝かせている以外はみな一様にポカンとしていた。
「んじゃ、委員長、俺が出るってことでいいのかな?」
このままではしょうがないので、委員長に話しかけると、ハッと気を取り戻した。
「は、はい! そう言う約束でしたもんね。じゃあ、この三人で決定です」
時間も迫って来ていたので、委員長の一言で、決闘に出るメンバーが決定した。しかし、まだ教室はざわついており、梅先生が来るまでの間、俺へと突き刺さる視線はなくなることはなかった。
トントン進んで昼休み。いつも通り唯依ちゃんお手製のお弁当を頂くのである。肉じゃがが絶品なのである。ヌフルナールと一緒に舌鼓を打っていると、川神さんが近寄ってきた。
「ねーねー清涼院くん、一緒に食べてもいい?」
これは珍しい。というか、奥を見てみると、風間ファミリーの面々が心配そうにこっちを見ている。取って食ったりはしないって。
「もちろん。ここ座る?」
「うん!」
元気よく返事をしてくれるので、見ているだけで和む。
「ほわー、美味しそうなお弁当。ヌフルナールさんが作ってるの?」
「いや、家にいる子が作ってくれてるんだ。食べてみるかい、はいアーン」
「アーン……むむっ! もしかして、まゆっちのよりも美味しいかも!?」
唯依ちゃん謹製の肉じゃがは絶品。何物にも代え難いおふくろの味。
……まぁ、それだけ美味しいのだ。一朝一夕では作れない味なのである。
そんなこんなで一緒に食べていると、川神さんがどんどん話しかけてきた。
「でも、清涼院くんって、強いのね!」
「んー、ぼちぼち?」
「んーん、だって、あれだって本気じゃないでしょ?」
おや、分かっていたようだ。そりゃ、朝から、怪我をさせるわけにはいかないし。
「まぁ、ノーコメントで。決闘の時はちゃんといくよ」
本番で手加減するほど腐っちゃいない。おそらくS組から来るのは、言いだしっぺの不死川心や小雪ちゃん、ハゲ、忍足あずみのあたりが出てくるだろう。誰とあたっても楽しそうだ。というか、手加減したとか、相手を舐めたとかが唯依ちゃんに知れたら死ねる。
「おー、本気の目だ」
「そゆこと。川神さんだって出るんだし、頑張ってね」
「うん!」
うん。ナイスな笑顔です。思わずナデリコナデリコ。
「おおぅ。なんという撫でテク」
そりゃイーニァ相手に毎日やってますから。
そんでもって、あっという間に放課後。
「よーしっ、三人とも絶対に負けるんじゃねーぞ!!」
風間翔一の激励が校庭に響く。ここで二人ではなく三人と言ってくれるのはとてもうれしい所だ。
ちなみに、S組から出てきたのは、予想通りなのは小雪ちゃんと不死川心。予想外だったのは、マルギッテ・エーベルバッハ。ガチ軍人の人である。……いや、反則じゃね?
「えー、それでは、2-S対2-Fの決闘を始める。ではまず、出場選手には、このくじを引いてもらおうかの」
今回の審判役は学園長である。ちなみに実況席の解説は川神百代先輩。川神さんの姉である。
「えーと、あ、三番だ」
「私は一番! 切り込み隊長だね!」
一番を引いたのは川神さんのようだ。俺は三番なので、二番はクリスティアーネさんだろう。
「私は二番手か。犬、絶対に勝つんだぞ!」
「りょーかい!」
元気よく返事をする川神さん。うん、元気元気。
「頑張ってね、川神さん」
「うん。清涼院くんも頑張ってね」
そう言うと、川神さんは前へと出た。俺達も後ろに下がる。どうやら、川神さんの相手は不死川さんのようだ。
「なぁ清涼院」
川神さんのことをボヘーっと見ていると、クリスティアーネさんが、突然話しかけてきた。
「なに、クリスティアーネさん?」
「む、私のことはクリスでいい。それで、別に馬鹿にする気はないが、お前は強いのか? その、さっきはびっくりしたんだが、その髪型とか、戦いにむいてないと思うんだ が……」
「まぁねぇ……。クリスさん、ヘアピンとか持ってる?」
「ヘアピンか? いいぞ、ほら」
やはり女の子。ヘアピンとかは常備しているようだ。
「ありがと。……ちょいちょいっと」
借りたピンで前髪を上げる。見事にすっきり、前がよく見える。
「ありがとう。決闘が終わったら返すね」
「ん、わかっ……た……。ん? 誰だお前は?」
おおぅ、まさか、そこまでかい。すぐ隣で、髪上げてたのに、俺だって気付かれないとは。なんか複雑。
正面にいるS組の面々は、何やらざわざわしているが、背を向けているF組は、何の反応もしていない。……一応、唯依ちゃん達と並んで歩けるくらいの自信はあると思いたいんだけどなぁ……。
「おれおれ、清涼院。というか、髪上げただけだから」
「す、すまん。いや、驚いたぞ。まさか、そんなに変わるとは思わなかった」
「クリスさんみたいな可愛い女の子にそう言ってもらえるなら、頑張った甲斐がありました」
「んなっ!? か、からかうんじゃない!!」
こっちの思った通りの反応をしてくれるクリスさん。うん、弄り甲斐があるタイプだ。
と、クリスさんをからかっていると、川神さんの勝負が始まりそうだった。相手は、不死川心だ。確か、柔道の腕は全国区だったはずである。対する川神さんは、薙刀使い。中距離タイプだから、懐に入られなければ有利なはずである。
「ふむ、川神さん有利かな?」
「む? 分かるのか?」
「分かるというよりも、一般論というか。それに、川神さんは反応速度はいいし、第一、不死川さんは着物だから、動きにくいと思うしね」
いくら全国区レベルだと言っても、あれだけ慢心していりゃ、そりゃ負ける。
「にょわーっ!?」
ほら、な。
「勝者、川神一子!」
「やったーっ!」
意気揚々として戻ってくる川神さん。と、俺の近くに来ると、キョロキョロし出す。
「ねぇクリ。清涼院くんは? あと、このかっこいい人は?」
クリスさんと同じことを言っていた。それにしても、かっこいい人とは嬉しいことを言ってくれる。
「ありがとう、川神さん」
「ほぇ?」
「俺、清涼院。髪上げたの。こうすれば分かる?」
ピンを外すと、川神さんも俺だと気付いたようだ。もう一度髪を上げると、驚いたのか、ポニーテールをぴょこんとはね上げていた。
「ほえー、清涼院くん、イケメンくんだったんだねー」
「妙に喜びにくい賞讃ありがとう。それより、川神さんもおめでと」
「うん! ありがとう清涼院くん!」
喜んでいる川神さんは、本当に犬のようだった。ワン子と呼ばれているのもよく分かる。
「さて、次はクリね! 絶対勝つのよ!」
「無論だ。行ってくる!」
意気揚々と歩きだすクリスさん。その姿は武士娘ならぬ騎士娘と言ったところか。
「でも、ちょっと厳しいか……?」
「た、確かに九鬼のメイドは強いけど……。でも、クリなら勝てるわ!」
何の根拠もない自信だけど、川神さんのそれは、クリスさんへの信頼の深さが読み取れる。
「そうだね。俺も応援しなくちゃな。クリスさん、ちょっと」
「ん? なんだ?」
少し前に進んでいたクリスさんは、俺の呼び掛けにきちんと反応してくれた。
「一つだけアドバイス。あのメイドさんの能力は君よりも高い。だからこそ、無茶はせず、相手のカウンターの更に次の次を狙ったら、勝機が見えるかもしれない。難しいけどできるか?」
突然の俺のアドバイスに、すこし驚いているようだ。しかし、クリスさんは笑みを浮かべて頷いた。
「やってみるさ。応援ありがとう」
そういうクリスさんの顔つきは、惚れ惚れするほど美しい。そんなクリスさんを見送ると、俺も次の戦いの準備を始めることにする。
「あれ、クリの試合は見ないの?」
「見るけど、いきなり動くと危ないからね。というか、念入りに準備するとなると結構時間かかるんだよ。ヌフルナール、ちょっと付き合ってくれ」
「お? 私、今スカートだから、あんまり動くと、ヨンパチ君がハッスルしちゃうよ?」
何やらF組の方から、悲鳴が聞こえる。
「……あんまり、いじめてやるなって。どうせ見せないくせに。まぁ、軽く受け流してくれればいいから。そうだな……いっそ派手に華琳の大鎌でいこうかな」
「ツンデレちゃんでいくのかい? じゃあ、私は棒でいいよね。梅せんせー、ちょっと、ウォーミングアップするから、武器借りますね」
ヒョイヒョイとレプリカの武器を選ぶヌフルナール。大鎌と棒を選び出す。
「ほい。大鎌。ちょっと軽過ぎだけど、まぁ、大丈夫でしょ?」
大鎌を受け取るが、確かに軽い。そりゃ、レプリカだから仕方ないが、少し心もとない。
「っと、髪が邪魔だな。えーと……川神さん。もし嫌じゃなかったら、その髪縛るの貸してくれない?」
「ほぇ? いいよ。んーと……はい。先っぽに飾りが付いてるけど大丈夫?」
少しも嫌がらずに貸してくれる川神さん。縛っていない姿もキュート。
「うん、ありがと。ほんじゃ、ちょちょい、と。んじゃ、ヌフルナール、やろうぜ」
「オーケー。それじゃ私からいくよ。ちなみに一切受け止めないで畳みかけるから頑張ってね」
軽く棒を構えるヌフルナールに対して、こちらも気を少し鋭くさせる。イーニァたち以外の前でやるのは久しぶりだが、自重する気はないので、もう遠慮しない。
「んじゃ、覇王様に敬意を表するために、舞わせてもらうよ」
嘗て愛した女性に重ね、大鎌に力を込める。
大和side
今、F組はざわついている。
「ちょっ!? あのイケメンほんとに清涼院くん!? もしかしたらエレガンテ・クワットロよりイケメンじゃない!?」
「はわゎっ!? 流石にビックリです!」
その原因は、多くの人に睨まれていた根暗(だったはず)の清涼院輝螺である。何やら正面のS組の連中がざわついていたのだが、その理由は奴が振り向いた瞬間判明した。
まさに超イケメン。
キャップや源さんでもその姿が霞んでしまうほどのイケメン。そんなイケメンがヌフルナールさんが一緒にいるのだから、その場に光が差し込んでいるかのような錯覚さえ受ける。
「ほらほら、回転率を上げちゃうよー」
「こちらこそ。こんなんじゃ、覇王様に怒られちまうからな」
二人は軽い口調で会話しているが、ウォーミングアップ(らしい)の速度は尋常じゃない。というか、早すぎて全然見えない。にも拘らず、ものすごく綺麗だということだけはわかる。くるくると回転しながら武器を打ち合わせている様子は、ダンスを踊っているようにも見えた。
「はっはっはー。まだまだ回っちゃうよー。華琳と手合わせした時並みのエンターテインメントを見せてあげよう!」
「悪いが、この武器でへたな子とすると、雷が落ちるからな。簡単には取らせないよ」
ウォーミングアップのはずなのに、何やらどんどんヒートアップしている様子。御蔭で、仕合をしているクリスと九鬼のメイドでさえも、二人に注目していた。
と、二人は見られていることに気が付いたのか、回転を止め、武器をおろす。
あまりの光景に、皆ざわついている。クリスとメイドも同様のようで、ため息とともに腕を下ろす。
「あんなの見せられたら、へたなこた出来ねぇよ」
「私も同様だ。あんな綺麗なモノを穢すことはできないな」
第二回戦クリスVSあずみ 両者戦意喪失により引き分け
「んじゃ、俺の番か。っと、その前にクリスさん。お疲れ様。邪魔しちゃってごめんね」
鎌を持ち直して、前に出ようとすると、クリスさんが戻ってきた。
「気にするな。こちらこそ、いいものを見せてもらったしな」
ニコッと笑うクリスさんはとても魅力的でした。
「それならもっと凄いの見せるから、楽しみにしてて」
「っ、あ、あぁ。それじゃあ見せてもらおうかな」
そうクリスさんに言ってから、前に出る。そこにはすでにマルギッテさんがスタンバイしている。
「ようやく来ましたか」
「待たせちゃったか? それはすまない」
殺気全開のマルギッテさんだが、「この程度」の殺気ならば気になるものではない。
「……その余裕の態度は気にいりません。私相手にその態度は無礼だと知りなさい」
「ふむ。そんなに馬鹿にしたつもりはないんだけど」
「その態度が、馬鹿にしているというのだ」
どうやらマルギッテさんは、なかなか難しい女性のようである。
「じゃあ、そっちも片目なんかじゃなくて、本気で来てくれますか?」
「っ!? ……いいでしょう。先ほどの実力を見れば、本気でいかざるを得ないでしょう」
そういうとマルギッテさんは眼帯を取った。その瞬間、闘気が溢れ出すのが分かる。
「そうそう。そのくらいじゃないと相手にならんです。それに、貴女ほどの実力者とは、本気でやり合いたいですし」
「ほほう。その点については私も同感です。その大鎌の舞、すべて受け切ると理解しなさい」
マルギッテさんも先ほどのヌフルナールとのウォーミングアップを見ていたのだろう。こちらの攻撃を受けきると言ってくれた。カウンターが主な大鎌に対して、受けると言ってくれたのだ。そんな人に、手加減をするようでは、あまりに無礼というほかない。
「では、強者への礼儀として、名乗りを。九尾流主席《舞姫》清涼院輝螺。覇王として参ります」
流派の名前とか適当なのでご了承を。
次から多分三人称