DreamCross外伝 ~歪んだ世界の裏側で~ 作:(略して)将軍
ブゥゥゥン!!
金髪の少女が、大きな鎌のような武器を振るう。
小狼は、それをかわした直後、札と共に、剣をかざして、力を持つ言葉を放つ。
「風華招来!!」
並みの人間なら、大きく吹き飛ばされるであろう強風が少女に向かう。
流れるような動きから繰り出す魔法に、一瞬躊躇う少女だったが、
すぐに反応して上空に逃げた。
「アイツ、速い……!」
攻撃を避けられた小狼は、悔しそうな顔でつぶやく。
奢っている訳ではないが、自分と同じか、年下かもしれない少女に
こうも苦戦するとは思っていなかったのだ。
どこかの組織から差し向けられたのだとは思うが、
さくら以外で、これだけの魔力を持つ少女の噂は
小狼も、今まで聞いたことがなかった。
闇の聖霊を使う、緋色の目をした聖女の事は
耳にしたことはあったが、少女の戦法はアルカナ使いのそれとは明らかに違う。
一方、冴姫ももう一方の襲撃者を相手にするも、苦戦しているところであった。
桁外れな巨躯、力強そうな豪腕を持つ大男を相手に、
距離をとりつつ翻弄しようとするも、巨躯に反して、男は意外にも身軽な動きを見せた。
ならばと、聖霊の力を借りて雷撃の力を放ち直撃させるも、
男は少し驚いた表情をした以外、まるで応えてない様子を見せる。
そして、焦りを見せる冴姫に、男は片手を突きつけ、力を持つ言葉を放つ。
「エアロラ!!」
男の手から放たれる魔法の風、威力は小狼の風華に劣らない。
突然の攻撃に驚くも、ギリギリの所で冴姫は魔法の風から逃れる。
力だけと思っていた相手の、身軽さと魔法に意表を突かれる形で、
冴姫は、大男にどう対抗するか、攻めあぐねていた。
……さくらは、二人の戦いをそれほど離れていない距離から眺めていた。
最初に狙ってきたターゲットがさくらだったことから、
小狼が、相手の目的をさくらだと判断し、自分に任せて逃げるよう指示したが、
友人を置いて逃げるような真似はさくらには出来ず、
また、日中なのに自分達以外の人間の気配を感じられなくなったこの空間からは
たやすく逃げ出すことは出来ないと、直感で感じていた。
「……二人を助けなきゃ!」
そう決めたさくらは、自身のペンダントを手に持ち、力ある言葉を唱える。
「闇の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。
契約の元、さくらが命じる……封印解除(レリーズ)!! 」
普段はペンダントに姿を変えている魔法の杖、封印の鍵を
本来の姿へと帰るための呪文……。
……しかし、鍵が彼女は言葉に応えなかった。
「え……?」
予想していなかった事態に、一瞬思考が停止するも、
もう一度、今度は力強く呪文唱える。
「闇の力を秘めし鍵よ! 真の姿を我の前に示せ!
契約の元、さくらが命じる……封印解除(レリーズ)!! 」
だが、それでも鍵は応えない……
「どうして……?」
小狼と冴姫が、さくらの異変に気づくも、
目の前の敵から目を逸らせず、彼女に近づくことが出来ない。
……その時、その場にいた皆の上で、強い力の気配が感じられた。
「あれは……?」
その気配に気づき、全員が思わず上を見上げる。
そこにあったのは、空に穴が開いたかと思うような、周囲とは違う赤い空間であった。
(あの色、夢の中と同じ……?)
さくらがそう考えた瞬間、その赤い空間は周辺のものを吸い込み始めた。
「これは……あの時と同じ……!?」
「クッ……木之本!!」
身体が浮き上がり、赤い空間に吸い込まれそうになるさくら達。
何とか抵抗しつつも、バラバラにならぬよう、さくらに向かって片手を伸ばしてくる。
「李君……!」
さくらも、小狼の方へと手を伸ばす。
だが、吸引を始めた空間の起こす風はあまりにも強く
中々二人を近づけさせようとはしない。
そして、あと少しで手が届くという距離で
強い風が巻き起こり、さくらと小狼を大きく離してしまった。
「李君!!」
「……! さくらぁぁぁぁぁぁっ!!」
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「ほえ……ここは?」
気がつくと、さくらは見知らぬ部屋で目を覚ましていた。
内装は、畳敷きにふすまと、古い漫画に出てきそうな一室だったが、
古さを感じさせるものは全くなく、清潔で綺麗な部屋であった。
ぼうっとしながらも、ひとまず落ち着くと、
自分が眠っていたのは、布団の上だったことに気づく。
誰かが、気を失っていたさくらを、ここまで連れて来てくれたようだ。
「……あの時、空にあいた穴に吸い込まれて……
そうだ! 李君! 冴姫さん!!」
共に居た二人の名を呼び、辺りを見回してみるも、部屋の中に姿はない。
窓から外の様子を伺ってみる、そこには、深い森が広がっていた。
一瞬、公園の近所かという考えが浮かんだが、
森の規模の大きさに、公園の林ではない、見慣れない風景だということに気づく。
「……他の部屋に、いるのかな?」
そう言って、入り口のふすまを開け、部屋の外に出るさくら。
その先には、内装によく会うアパート風の廊下が広がっていた。
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「……それで、その子は?」
「私達の部屋で寝てるよ、疲れてるみたいだけど、特に怪我はないみたい」
さくらの居た建物とつながった、もう一つの食堂らしき建物の中では
二人の少女が、話をしていた。
「いったい、どんな子なの?」
テーブルにかけている眼鏡の少女、鈴衣 紬(すずえ つむぎ)が少女について問いかける。
「歳は小学生くらいかなぁ? 寝顔しか判らなかったけど、ちっちゃくて、すごく可愛らしい女の子だよ」
コップを運び終えたお盆を抱え、大柄な少女、ミカド=ミスマルが問いに答えた。
服飾の趣味を持っているからか、可愛い少女と言う所に反応し、紬は興味心身で、更に話を聞こうと身を乗り出す。
「可愛いって、どれくらい?」
「お嬢様って言うよりは、元気な子ってタイプだけど
可愛さは、もうものすごく!! って感じ」
「フリフリのドレスとか、似合いそう?」
「色にもよるけど、明るい色なら似合おうと思うよ。」
数年前にあった知り合いの好むドレスと、それを身に着けた少女の姿を思い浮かべながら
力説するミカド、話に聞き入る紬。
「……けど、そんな子がどうして樹海の中で?」
「なんだよねぇ……狩りの途中で拾ってきたって言うんだけど」
疑問を口にし、テンションが一転する二人。
「その子、ヌコモドキ……じゃないよね?」
「もちろん、それもあるって考えて、チテイ人の所にも聞いてきたらしいけど
どっちも違うって、そもそも耳は普通で、尻尾も生えてなかったし」
樹海の中に住む、人によく似た2つの種族を思い浮かべる紬。
ヌコモドキは、語尾に癖があるだけで、普通に会話できるレベルだが、
チテイ人は、言語自体が独特で、普通に会話するのは難しいはず
そんな相手に、どうやって聞き出したのか、いささか疑問に思うのであった。
「それに、来てた服もどこかの学校の制服みたいだったけど
学園のデザインの制服じゃなかったんだよね」
「……やっぱり、3学園の制服、全部違うってこと?」
「うん」
ミカドからの肯定の返事を受け、口元に手を当てて考える紬。
見たことのない少女、という切り出しで、その可能性は高いと思っていたが
いくら考えても、外部の学校の人間が樹海の中で倒れている理由が浮かばなかった。
異世界に通じる聖域の門の噂は、入学後から幾度か耳にしたことはあったが、
所詮、眉唾物の作り話程度の滑稽な噂話である。
最近、樹海の内部で行われているという、黒い噂のことも頭を掠めたが、
少女を保護してつれてくるという行為自体、その噂の内容とそぐわない。
「……どこの子なんだろうね、その子?」
「まぁ、もうすぐ目を覚ますだろうから、その時に話を聞けば……」
ふと、視線を紬から横に逸らした直後、ミカドの話が止まる。
その視線を追ってみると、奥に繋がる廊下の出入り口から、
少女がオロオロと戸惑っているのが見える、こちらと視線が合うと、驚いた様子で一言言葉を発する。
「ほえ……?」
紬は、彼女が件の少女であると、直感で理解したのだった。