DreamCross外伝 ~歪んだ世界の裏側で~ 作:(略して)将軍
……うん、話を聞く前からそんな感じはしていた。
学園の物じゃない制服を着た、小学生くらいの女の子が、
あのタイミングで、あんな現れ方をする時点でただ事ではないけど、
話を一通り聞いて確信した、この子はこの世界の人間じゃない。
一般常識を弁えたいい子ではあるが、その他の学園における常識、
それ以上に、現在の世界において、知らないはずの無い知識が、完全に抜けている。
強い力の持ち主だと言う事は感じるが、それを他人にあまり知られたくないのか、
明らかに何か隠し事をしている様子は見受けられる、傍から見たらバレバレだけども。
だが、どう見ても悪い子には見えないのでそこは置いておこう。
重要なのはこれからどうするかだ。
【ノータッチ】の勘が働いたのか、今日はいつもは寄り付かない連中が来店してくる。
地元に仕事で来た際、知り合いの家のワガママ娘に偉く好かれて櫻崎は、
少し離れた席に案内したが、頻繁に彼女の方を見ており、
気づいた彼女が、笑顔で会釈するのを見てあわてて目をそらした。
この現場に、あのワガママ娘が踏み込んできたら、偉い事になるだろう。
日暮は、入店時から彼女の事を凝視していたので、更に少し離れた席に案内してやった。
服飾の趣味がある日暮は、彼女をモデルにして服が作ってみたかったのか、
もう少し近い席にしてほしいと頼み込んできたが、
コイツも疑惑は薄くない方なので、これで限度と断った。
小柄な日向なら、まだなんとかなったと言ったら、
物凄い形相で涙を流していた……お前、そこまで実兄が嫌いか。
大練寺と魔崎は、一番遠い席に案内した。
それぞれ、連れの少女にからかわれて真っ赤になって否定しているが、
やはり笑顔で会釈した彼女を見ると、妙に赤い顔で笑顔を返して
また連れから、追求を受けている。
鳴海と黒木の真っ黒コンビは、店先から彼女の姿をみるや否や、店に飛び込んでこようとしていた。
こんな奴等、店に入る事すら許さん。
子供に暴力シーンを見せるのは良くないので、彼女の位置から死角になる場所で
すごい勢いで店に飛び込もうとした2人を一撃でノックアウトする。
漫画のノリで、『お前達に、今日食わせるメシはねぇ!』と言ったら、
『表からじゃ、無駄な乳の女が邪魔』『【ノータッチ】は人類共有の宝』などととんでもない事をのたまった。
こんな輩にかける慈悲は無いが、ふと彼女から聞いたある事を思い出し、2人の耳元にささやく。
「あの子の友達がまだ見つかってなくて、もしかしたら樹海の中に居るかもしれないぜ」
それを聞いた途端、物凄い勢いですっ飛んでいった2人。
行き先はもちろん、樹海の真っ只中。
一通り見回して、それらしい人間は確認できなかったし、樹海の中に住む連中にも頼んできたが
事が事だけに、状況はネコの手も借りたいといった所。
期待度はネコ以下だが、それでも無いよりはマシだろう。
ネコに鰹節……という言葉も浮かんだが、そっちの方は心配ないだろう。
見つかってない友達の容姿を聞かずにすっ飛んでいくんだもの、相手は男とおまいらの射程範囲外だ。
まぁ、せいぜいがんばってくれ。
再び彼女の元に行くと、先ほど用意した新メニューの冷やし中華を美味しそうに啜っていた。
泣きたい位に心細い状況だろうに、回りに心配をかけまいとしてるのか、その顔に曇りは無い様に見える。
一刻も早く、何とかしてあげたいと思うも、現状頼りになりそうな相手は学園内に居ない。
学園長達は、なにかの会議の為に全員出張。
島内のホテルで総料理長をやってる親戚のオッちゃんも、料理大会の為に不在。
学園を管理する3つの財閥は……危険な気がするのでやめておいた。
水無月は、彼女の持つ力について興味を持つ可能性があるし、
九重も、最近きな臭い噂が立ち込めている。
朱雀院は……完全に論外だ、あの【キャッキャッ、ウフフ】お嬢様が彼女の事を知ったら
例え、地球の裏側に居てもすっ飛んでくるだろう。
彼女の容姿は、ストライクゾーン通り越して魔球の域だもの。
……まぁ、学園内が頼りにならなければ、外に頼ればいいのだ。
多少手間がかかるが、そっちの方が安心なので、懐に入れた電話に手を伸ばす。
当ては、いつも世話になっている知り合いの爺さん。
子供好きなので、きっと話に乗ってくれるだろう。
そう考え、懐から電話を出し、爺さんへとかけたのだった。
「本ッ当~~~に、能力者の事知らないの?」
信じられないって感じの顔で、紬さんが聞いてきたこの質問。
李君の様な魔法使いや、はぁとさんの様な聖女は知っているけど、
能力者と言う力を使う人の事は、聞いたことがない。
「……はい、私は一度も見たことも聞いたこともないです。」
「鈴衣さん、そんなに何度も聞いたら可哀想だよ……」
隣に座るミカドさんが、紬さんに軽く注意してくれた。
聞いた話では、こちらの世界には、普通に魔法のような力を使う事の出来る
【能力者】って呼ばれる人達が居る達がいるみたい。
今、私が居るSRC島っていう島の学園には、その能力者に対して
正しい使い方を学ぶ為に、日本中の能力者が集まっているんだって。
紬さんや、ミカドさん、さっき料理を持ってきてくれた姫神さん。
そして、他にもお店の中に居る生徒のほとんどは能力者って話をしてくれた。
最初は信じられなかったけど、窓の外を行く人の中に、
すごいスピードで走ったり、空を飛んだりする人が見えたから、
紬さん達の話は本当なんだってわかった。
……ここが、私の居た世界じゃないってことも。
「あ……ごめんね、あまりにも信じられなくて」
「いえ、いいんです!」
紬さんが、謝るように頭を下げたが、かえって申し訳なく感じてしまった。
私が、初めてケロちゃんやクロウカードと出会ったときや、
はぁとさんと出会った時に、魔法や聖霊について、すぐには信じられなかったみたいに
こっちの世界では、能力者が居るのが普通だと思ったから。
「それにしても、これからどうするの? 帰る当てとかある?」
「わかりません、どうやって来たのかわからないし、気が付いたら、2回で眠ってたから……」
「姫神君が拾ってきたんでしょ、なにか気づいた事は……」
紬さんが、姫神さんに話題を振ったけど、姫神さんは誰かに電話をしていて聞こえなかったみたい。
なんか、電話の相手に対して不機嫌そうに話してる、相手は、お爺さんみたいだけど……
「……とりあえずは、それ全部食べちゃおうよ。
お腹が空くと、いい考えが浮かんでこないと思うし。」
「……はい、色々とすみません。」
ミカドさんに進められて、まだ残っていた冷やし中華に手をつけた。
お腹が空いていた事を差し引いても、とっても美味しい冷やし中華で、
紬さんは私と同じ1杯だったけど、ミカドさんは5杯目を口にしていた……
雪兎さんと同じくらい食べるんだ、ミカドさんって……
「さくらちゃん、こっち向いて~♪」
「ほえ?」
カシャッ
姫神さんの声で振り向くと、片手に構えた携帯電話からシャッターの音がした。
……ひょっとして、今、写真に取られた?
「ちょっと! 女の子が食べてるのに写真を撮るのは失礼だよ!」
紬さんが抗議してくれたが、姫神さんは再び電話をかけて、声が耳に入ってないみたい。
どうやら、さっきと同じおじいさんに、今の写真を送ったようだけど……
はぅ~……恥ずかしいよぅ
お店で、冷やし中華をご馳走になった後、また眠くなってきた私は、
シャワーを浴びて、着替えてから休む事にしました。
着替えは、鈴衣さんと日暮さんと言う人が用意してくれ、
お礼を言ったら、二人とも気にしないでと言ってくれました。
お布団に入って、横になったらすぐに眠くなって……
どの位眠ってたんでしょうか、次に目を覚ました時は、
隣で、ミカドさんがグッスリと眠っていて。
外はすっかり暗くなっていて、気が付いたら、
お昼をご馳走してもらったのに、またお腹が空いてました。
はぅ~、ずっと眠ってばっかりだったのに……
本当に、どれくらい眠ってたんだろう……?
とりあえず、廊下に出てみたら会談の方から人の声が
……片方は、姫神さんの声……まだ起きてるんだ
「そうか、そいつはご苦労な事だな」
「ご苦労さんじゃないよ、こっちは大変な目にあったんだから
なんとかギリギリ解決したものの、今度は……」
昼と同じ様に、出入り口の影から様子を伺ってると、
姫神さんと、同じくらい背の高い人が喋ってました。
「……んで、連れて帰って来たら
あのバカ、人が【ノータッチ】に走ったとか、とんでもない勘違いをして……」
「それで、その後はいつものパターンか?」
「残念ながら、子供の前じゃ出来ないからね……
お仕置きは、あの子の事なんとかしてからに……?」
話していた人が、出入り口に居た私に気づくと
姫神さんも、その人に釣られる形で、こちらに気づきました。
「なるほど、彼女が件の少女か」
「さくらちゃん、起きて来てたのか……
まぁ当然か、お昼からかなりの時間が経ってるし……
シュウ……このお兄さんと、同じ物でいいかな?」
高見沢秀一(たかみさわ しゅういち)さん、ミカドさんと同じく、
姫神さんの幼馴染と言うこの人は、このお店に頻繁に出入りしているそうで、
遅めの晩御飯を食べに、お店にやってきたそうです。
晩御飯を頂く時に、いろいろと話をしましたが、
ちょっと怖い雰囲気の人だけど、私にも優しくしてくれて、
少しお兄ちゃんに似てるかな、と思いました。
「別の世界からたどり着いた……か
確かに、この学園でならそう言う事が起こっても、おかしくは無いな」
「この学園で……?
ここ、私みたいな子がよく来るんですか?」
「似たような事は、今まで何度か起こったという噂は聞いたが
別に、そういう意味で言ったわけじゃない……
ただ、この島では、何が起こってもおかしくないと言う事だ」
「こら、シュウ! 小さい子を脅かす真似をするんじゃないよ
……たく、妹への意地悪じゃ物足りなくなってきたのか?」
軽く鼻で笑う高見沢さん、姫神さんの話では、高見沢さんにも、同じ年頃の妹さんが居るそうです。
……やっぱり、そういう所もお兄ちゃんに似てるかも。
「まぁ、お前が居るなら特に問題は無いだろう。
……じゃあ、俺はこの辺で失礼する。」
「ああ、気をつけて帰れよ。」
そういって、高見沢さんは帰っていきました。
少し遅れて晩御飯を食べ終わった時には、
今度は姫神さんがどこかに出かける支度を始めていました。
「こんな夜遅くに、どこかに出かけるんですか?」
「うん、ちょっと用事が出来ちゃってね……
少し帰りは遅くなるかもしれないから、ミカドと一緒に寝ててやってくれ
眠れないんだったら、居間のテレビとかは自由につかっていいから」
「はい、ありがとうございます……」
姫神さんや、ミカドさん、ここで出会った人達は優しい人達ばかりだけど、
私、いつまでここに居るんだろう、ちゃんと帰れるのかな……。
お父さんとお兄ちゃん、心配してないかな、李君と冴姫さんは大丈夫なのかな……
ふと、そんな事を考えてたら、また悲しい気持ちになってきてしまって……
気が付いたら、涙があふれてきてました。
「心配ないさ、今はちょっと間が悪いだけで、もうちょっとしたらきっと良くなるって」
そういって、姫神さんは慰めるように私の頭を撫でてくれました。
「姫神さん……」
「はぐれた友達とも会えるし、きっと元の世界に返れる。
だから、心配しないで……な」
ただの慰めなのかもしれないけど、その言葉には、
本当に何とかしてくれるような力がありました。
「そうですよね……きっと、李君も冴姫さんも……絶対、大丈夫だよ」
「うん、そういう事♪ それじゃ行って来るから、ミカドの事をよろしく頼むぜ。」
そう言って、勝手口の方から姫神さんが出かけていって、
私は、元に部屋に戻って、また眠る事にしました。
……この時は思いもしませんでした。
次の日、学園が変な赤い霧に包まれてしまい、何人もの人が行方不明になって
その中に、姫神さんも含まれてしまったなんて……
エピソード・オブ・さくら【END】