『IS』二人目の未来   作:echo21

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独自展開のタグがいる?
独自解釈、設定あるから大丈夫ッ(?)
根本がずれたら全体は歪むのさッ(暴論)

シリアス侵食中……?
今回もアメリカンなの?
フォルたんはフォルたんだよッ(?)




『IS』二人目の未来 12 ダリル・ケイシー

 ダリル・ケイシーは黄昏れていた。空を眺めると落ち着くダリルは『雨。降らねぇかなぁ』と呟くことが多い。アメリカの代表候補生であるダリルは、三年生で唯一の専用機持ちだ。あまりにも気怠い雰囲気をみせるのでダリルを慕う者は少ない。すぐそこにある将来のことで、三年生はギラついている。例外は二人だろう。更識に仕える虚と軍に入る予定のダリルだ。そんなダリルに相方といわせた『フォルテ・サファイア』は、ダリルのひとつ下になる。二年生のフォルテはギリシャの代表候補生、専用機持ちであり、二人のコンビプレーは『イージス』と呼ばれるほど凄まじいものだった。

 

「やっぱり、屋上にいたんスね」

 

「おう。なんか用か?」

 

「特にないっス」

 

 そうかと呟いたはずの言葉はダリルの口から出ることがない。ぼんやりと空をみるダリルの体温に触れるよう、すぐ側に座るフォルテは笑顔だ。こんなオレを慕うなんてバカだよ、お前は。

 

「電話がさぁ。きたんだ」

 

「そうっスか」

 

「動け。そんだけ」

 

「そうっスね」

 

 ダリルはフォルテに隠していることがある。意味不明にしかならない言葉でもフォルテは肯定した。小柄のフォルテは髪を三つ編にして屈託なく笑う少女で、金髪のホーステールが特徴的な、背の高いグラマラスな身体つきのダリルとは何もかもが反対だった。その前向きな感情でさえも。

 

 産まれが悪い。そんなことは百も承知だ。それならどうする? 知らないね。逃げてみるか? バカだよ。そんな結果は知っている。ダリルの悩みは尽きない。

 

「雨。降らねぇかなぁ」

 

「降らないっスね」

 

 静寂を塗り潰す喚声がダリルの耳に入る。眉を寄せてフォルテをみた。

 

「──なあ? うるさくね?」

 

「いつものヤツ、一人目じゃないっスよ。アメリカの二大美女っス」

 

「は? なんでだよ?」

 

 ダリルは困惑する。アメリカの二大美女はイーリス・コーリング、ナターシャ・ファイルスだ。イーリスは世界を飛び回って好きに暴れ、ナターシャは訓練と軍務、イーリスがキャンセルしたメディアへの露出と多忙だ。いや、なにやってんだ? ダリルの顔をみたフォルテが小馬鹿にするように息を吐く。

 

「本当に知らないんスか? 昨日から来てるっスよ。一年の海に行くヤツに同行するらしいっス。二年は羨ましそうっス。さすがはアメリカの有名人っスよね。ダリル姉といえど、アメリカの二大美女は知ってるんスか?」

 

「バカ野郎、世話になったんだ。マジにいんのか、挨拶とかメンドくせぇなぁ。姉御はいいが、ナタルさんはなにやってんだ。働けよ。いや、働きすぎか」

 

 ダリルは舌打ちをして頭をかく。有名人的な認識よりも近い発言をするダリルにフォルテの目が輝いていった。

 

「オレも興味があるっス。どんなことがあったか教えてほしいっス」

 

「フォルテの興味はオレだろ? 仕方ねぇが、顔をみせなきゃいけねぇ。話しながら行くぞ。オレが代表候補生になったばかりで、専用機持ちになる前だ────」

 

 アメリカの代表候補生から専用機持ちになるまでの道程を抑揚のない声で話すダリルに、フォルテは楽しそうに相槌をうっていく。騒ぎの中心にいるだろうと雑な予測を立てて歩いていたダリルの遠目には二人の男がいた。一人目は学園のアイドルだ。優し気で頼りになりそう、絵になる、爽やか系だとしてダリルも知っている。あまり話さないクラスメイト達が騒いでいた。あれはうるせぇよ。一般人の理想の男は気にくわない。ダリルには物足りなかった。

 

「──やっぱり、人気ないっスね。二人目のほうは」

 

 あれだ。八嶋楓。二人目の男は動くのが早い。発覚してすぐに左腕を失うも最強と天災を味方につけた。団体の発足を始め、委員会や政府との交渉までこなす──奇妙な芯が一本入ってる異常者だ。話を聞いたダリルには薄気味悪く感じていた。昨日までは一般人の健常者、明日からは世界的に貴重な片腕となったら発狂する、そんな自信がダリルにはあった。だからだろうか。ふと思った。だから壊れたのか、だからヤれるのかと。

 

「ちくしょう、考えが甘かったぜ。興味ないからって無視はダメだわ。……フォルテ、二人目の噂はないか? なんでもいい」

 

 ダリルとフォルテはアリーナに向かう男達に背を向ける。他に騒がしい場所はグラウンドか? 

 

「二人目の噂っスか? ……あれっスね。委員会の仕事やら団体の仕事やらで授業を抜けるのが多いらしいっス。贔屓目にみても学生じゃないっスね。学園では三年間の保護、猶予期間とか準備期間とかで……。先を見据えすぎてよくわからないってのが二年の噂っスね。政府関係の人気は逆っス。やらかした一人目はデータ的には貴重ではあるが、今後はレールを走るだろうといわれてるっス。二人目は組織的な意味で貴重な注目の的っスね。今後もなにをするのか、さっぱりわからないっスよ。ギリシャからは絶対に接触しないで情報を拾え、なんて無茶ぶりっス」

 

 楓には接触するな。接触されても控えろ。そんな指示が各国で出回っているらしい。楓から親しくなるのを待てといわれ──年頃の学生が、すぐそばにいる異性を意識しないのは難しい──普通なら従わないところだが背景が怖いのは『IS』の関係者ならば、情報に敏感であれば知っている。珍しく、フォルテはタメ息を吐いて顔をしかめていた。これにはダリルも頷くしかない。フォルテの肩を軽く叩いた。

 

「わかるわぁ。あのバックだろ? なにされるかなんてよ、わかったもんじゃねぇ。博士に認識されたら一大事、邪魔扱いで排除されてもたまらねぇ。フォルテには同情するが、アメリカ万歳だ。……にしてもよ、特例かぁ。授業を抜けていいとか、羨ましすぎるわ」

 

「なにいってんスか? ダリル姉。あそこ、あそこっス。あれが二大美女じゃないっスか?」

 

「……なぁ。やる気がごっそり減ったわ」

 

 いつもないっス、うるせぇという、毎度のやり取りを終えてから足を向けた。生徒達に囲まれたイーリスと目が合い、ナターシャの肩を叩くイーリスがこちらを指差している。ダリルに気づいたからだろう。ダリルに向かってイーリスが歩み寄って来たので、フォルテから離れて笑う。

 

「よう。姉御」

 

「おう。ダリル」

 

 ダリルの右手はイーリスの顔を目指す。イーリスの拳はダリルの腹に刺さった。突如始まるダリルとイーリスの殴りあいに周囲は戸惑い、フォルテは固まってしまう。ナターシャは額に手をやって空を仰いでいった。

 

「いい天気だわあ……」

 

 

   ◇

 

 

 ダリルは切れた口を腕で拭いながら起き上がった。それを指差してバカ笑いするイーリスにフォルテの顔がひきつる。手当てをしようと焦るフォルテは、ダリルにハンカチを差し出すので精一杯のようだ。それをみたナターシャが微笑み、うっすらと頬を染めたダリルの肩をイーリスが強引に抱き寄せて耳打ちをした。

 

「楽しく過ごしてんな、おい」

 

「うるせぇ」

 

「ダチは大切にしろよ、負け犬」

 

「うるせぇぞ、姉御」

 

 ダリルはイーリスを突き飛ばして向かい合う。周囲の戸惑いは変わらないが、それなりに距離があるために会話は聞かれていなかった。ダリルは気づいてないが、ここまで暴れているダリルにも原因がある。普段とは違い、文字通りに目の色が変わっていたのだ。殴りあいが再開しそうな雰囲気に当てられたのか、おろおろするフォルテをナターシャが手招きしている。

 

「ちょっとちょっと。ダリルのお友達?」

 

「……オレっスか?」

 

「ナタルさんよ? ババ臭ぇぞ」

 

「お? テレてんのか? お?」

 

「うぐっ。誰がババアよ? 誰がっ。殴んぞ、オラッ」

 

「うるせぇぞ、クレイジーコンビ。ナタルさんも素が出てんぞ? ん?」

 

 ハッとしたナターシャが口を手で隠して笑い出す。誰がどうみても誤魔化しているのだから始末に悪い。ここで騙されたヤツの頭を疑うわ。そう思ったダリルが身体の力を抜き、イーリスはケッと笑った。

 

「やる気なくしたわ。まあいい、部屋に来いよ、飲むぞ。それも一緒だ。ちみっ子も連れてこいよぅ、負け犬?」

 

「クソがっ」

 

「呆れた……。イーリ? 昨日は千冬に飲み負けて二日酔いじゃなかったの? あと、ダリル。おいで」

 

「おいおい、ナタル。なにいってやがる。昨日はラムだ、スコッチだわ、日本酒だろ? 今日はバーボンオンリーさ。おら、行くぞぉ。浴びるぞぉ」

 

「ダっ、ダリル姉? どうするんスか?」

 

 ダリルは油断するとニヤける顔を殺すように舌打ちし、フォルテの肩を叩いて『行くぞ』といった。イーリスが『悪い。解散だわ』といって周囲を散らす。ダリルがアメリカにいた頃によくあった光景だ。当時はバカ野郎だったわ。ダリルに過ったのはアルコールが傷にしみた自分だったので苦笑してしまう。

 

「なあ、姉御。バーボンだけか? ビールならぬるいぜ。飽きたわ」

 

「おう。旦那がな? 用意してくれたヤツでいくつかあったわ。あたしはいい、好きにやんな。今日は飛びきり安いバーボンなんだわ。ダリル、意外と話せるぜ? 旦那はよぅ」

 

「旦那? 誰よ?」

 

「楓よ、八嶋楓。二人目の男ね。イーリと話せるから大丈夫よ? それよりね、ダリルぅ? ないことないこと、この子に教えちゃっていい? 嫌ならトレーニングでもしましょっか? 昔みたいに、うんとハードなの」

 

 二人目はクレイジーか。

 

「やめろ。どっちも願い下げだからな。……これだからナタルさんは嫌なんだ。殴っても倒れやしねぇし、うぜぇ。姉御なら不意打ちでいけんのによ。あ、と、だッ。あんなもんは、ハードでもトレーニングでもねぇ。クレイジーだ、クレイジー。いい加減に、トレーニングジャンキーだと自覚しろつったろうがぁ」

 

「ぇぇぇ」

 

 小声でひくフォルテは知っている。ダリルと一緒のトレーニング。毎回だ。途中で倒れるフォルテは、あれ以上を知りたくなかった。そんなフォルテに近づいたイーリスが肩を掴まえて頬を舐めてくる。フォルテは逃げた。ダリルの背に隠れて顔を出している。殺すぞ姉御。やってみろ負け犬。一頻り罵りあってからイーリスに微笑まれたフォルテは小さい悲鳴をあげた。

 

「おう。お嬢ちゃん。ナタルはあたしと引き分ける女だぜ? 生身で『IS』の武器をふるうバカ野郎だしよぅ。スターみたいにモデルして優し気に笑うひとが……。なんて思ったか? 意外と頭イッてるだろ?」

 

「ちょっとイーリ? 私がバケモノみたいな扱いにしないでくれる? ただ鍛えてるだけですからね。テストパイロットの嗜みよ、嗜み。それに、千冬もできることよ。私だけじゃないしねっ」

 

 ナターシャのウインクに震えるフォルテの頭をなでてやる。ダリルに自覚はないが、イーリスと仲良く殴りあう姿は『リトルコーリング』そのものであり、後輩にモテるのが証拠だと軍内で囁かれている。

 

「ナタルさんよ? あんま無理すんな。可愛くねぇからな? そんで、フォルテ。アメリカの国民は知らなくても軍人はいってるのさ。『あれは自殺もテストするためのトレーニングだぜ』なんてな。あっちもクレイジーだ、こっちもクレイジーだわ、クレイジーコンビだ。雰囲気に騙されんなよ? 最強の女、織斑先生が比較対象になると思うか? ……そういうこった。わかったな?」

 

 ダリルの背中を押しながらコクコクと頷いたフォルテが思い出したかのように、ゆっくりと手をあげて『あのぅ』といった。いってしまったら注目される。

 

「ひぃ」

 

「フォルテ? 心配すんな。殴られるのはオレだからいっちまえ。ほれ」

 

 それはそれでと思ったフォルテは間違ってない。それでもいわなければと深呼吸をしていった。

 

「……あ、はい。──そのっ。ですね? ……学園内でアルコールはちょっとまずいかなぁ、なんて。ごめんなさいっ!」

 

 イーリスとナターシャが顔を見合わせ、フォルテに笑いかけた。どうやら殴られないとわかり、安堵するフォルテの頭をダリルがなでた。

 

「大丈夫だろ? あたしは国家代表だ。文句があったらロシアの代表か、ブリュンヒルデが来る。いわれたら飲ましゃいい」

 

「楯無は弱かったわね。すぐ潰れちゃったわ。結局、千冬と最後まで付き合ったのは私と楓だし。介抱された楯無は役得だったみたいね。だから大丈夫よ、大丈夫っ」

 

 震えるのはフォルテで、呆れたのはダリルだ。ブリュンヒルデはまだいい。生徒最強はなにをしてるんだ。会長だろ? そして二人目だ、なんなんだ? 反応が分かれていたのに、不思議と同じ思いと疑問だったダリルとフォルテであった。

 

「にしても、二人目ねぇ。ちょっと話してみたい気分になったわ──」

 

 ──相談でもしてみるか? なんてな。

 

 





次回『嘘』予告

消えない炎があるのよ
何度も土砂降りを被ったわ
やまない雨に濡れ惑っているの

次回『静止した闇の中で』

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