『IS』二人目の未来   作:echo21

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あれほどR15だとッ……。

最初に言っておく、私は謝らないッ。

悪女ほいほい楓くん。
甘く切ない大人のお時間。
いくら妄想が刺激されても
私は責任をとらないッ(?)




『IS』二人目の未来 13 スコール・ミューゼル

 報告を受け終えたスコール・ミューゼルは赤ワインを舌で転がしている。まあまあね。飲み残したワイングラスを叩きつけても気は晴れない。床に散らばる赤色に舌打ちをすればどうだ? イラつきが増すだけね。深く息を吐いて吸っても、身体の火照りはなくならない。椅子を蹴飛ばし、テーブルの上に座った。浮かべた足で遊んでみても気分は悪くなる一方だ。

 

「慰めてくれる相手なんていないし、いじめる相手も出かけてたわねぇ……。ほんと、どうしようかしらね。──なら、エム? ないわよねぇ。そんな趣味もないし」

 

 ワインボトルを持ち上げて数瞬のためらい。悩んでみても変わらないとしか思えない。ボトルに口をつけて直に飲む。酔いたい。久しぶりに悪酔いがしたい。ほんと、バッカみたい。今さら? 今さらよねぇ。先ほどから悪態ばかりが頭を過っていく。スコールの唇の端からワインが垂れて首を這う。スコールはひとりだ。無意味に豪華な室内で黄昏れ、手からボトルが転がり落ちていった。

 

「雨。降らないわねぇ」

 

 スコールは死んだ人間だ。スコールが所属する『亡国機業(ファントム・タスク)』は質の悪いことに『世界悪化』を掲げている組織になる。実際は死の商人だろう。ちょっとした小悪党やテロ目的、たとえ狂信者の類であっても客は客だ。相手の規模の大小や思想、人種に年齢は関係がない。買えるのなら売る。条件はシンプルに金だけだ。持っていないなら売らないし、踏み倒したら探し出し、追い込んで殺しにいく。そんなくだらない雑務ばかりを押しつけられる実働部隊、『モノクローム・アバター』を率いる女幹部がスコールとなり、すでにもう、十年以上はこの生活を送っていた。

 

「ほんと、バカみたい……」

 

 亡国の亡霊は土砂降りだ。かつて、アメリカ軍にいた頃の作戦で生死不明になり、生き長らえるためには身体の一部を機械化する必要があった。同意や承諾などない。適当に探した人間がスコールであり、数々の処置と称した人体実験が施されて若返っている。不老不死のプランでもあったのかしらね。自身を変えた者をひとり残らず殺したスコールに居場所なんてものはなかった。気がつけば若返り、気がつけば殺し尽くして、残ったのは亡国の亡霊だけである。そうしていたら世界に『IS』が登場していた。『亡国企業』としては焦っていたようだが、スコールはまた、世界に置いていかれた気分になる。

 

「女の兵器にぃ、女権団にぃ、女を優先する? それでなにが変わったのかしら。バカみたい。元から優先されてたのよ。汚いことを知らないからいえるんだわ」

 

 テーブルから飛び降りたスコールはワインボトルを踏み砕く。不快なドレスを脱ぎ捨て、シャワールームに向かった。戦場では差別や人種に性別すらもない。いや、正確にはあったのだろう。ただ生き残る以外は贅沢だ。戦場で遊べるのは余裕のある人間で、駄肉や贅肉で動き回れないヤツらだけだった。それらを肉塊に変えていたらココにいる。なんだ、自業自得じゃないの。一頻り笑ってからシャワーを浴びる。

 

「……笑ったわぁ。ちょっと泣いた?」

 

 男から女へと変動した世界は今、反動にあっている。それは『IS』の男性操縦者二名で始まり、束の夢を掲げた『S.R.F.』の発足で噴出した。女性を神の僕に、男性を奴隷に変えようとした者達こそが嘆いた。束と千冬を天界まで押し上げた利益に浸る宗教家どもを残し、信者達は続々と発狂していた。それは今もなお、世界中で起こり続けている。

 

「まったく。バカばっかりよねぇ……」

 

 発明の神様は信者なんて知らず『勝手に宇宙に行く』と嘲笑い、闘争の神様は奴隷に用はなく『結婚したい男がいる』と赤ら顔だ。これまたご丁寧に、全世界のテレビをジャックしたので発狂者は量産体制へ移行した。出荷先はどこか? 運があれば刑務所、なければ死体袋だ。女神とされた彼女達は好きに生きているだけ、自分の人生を楽しもうとしている。たったそれだけのことだ。スコールはそう思っている。まあ、少しばかり規模がおかしいのもチャーミング、そういう男性がいるのだから幸福だろう。

 

「ほんと、羨ましいわ……。んしょ」

 

 全身を拭き終えて気づく。鳴る予定のなかった通信が入っていた。数時間前だ。あらあらと口ずさみながら繋げてみれば、顔を真っ赤に染めた少女が映った。

 

「遅いぞっ。な、なんだそれはっ。スコール、お前、服を着ろっ、服をっ! なにをしていたっ」

 

「ほんと、うるさいわね。私は肌を磨いていたのよ。歳を重ねるとお手入れが大変だわ。若いっていいわね? ケアしてる?」

 

「知らん! 知らんといったら知らん! ……もういい。姉さんは? 『S.R.F.』はどうなっているんだ? オータムからの報告はないのか?」

 

「あったわ。『お前が来い』だそうよ? 勧誘しに行かせたら誘惑されて帰ってくるわけ。ねぇ、エム。お仕置きを悩んでいるのよ。泣かすのと鳴かすのと啼かすのとね。いったい、どれがいいのかしらね?」

 

「知らんといってるだろっ。……どうするんだ? その。姉さんに会える。──会っていいと思うか?」

 

「知らないわよ。私は行ってみるから、お留守番したいのなら、おひとりでね?」

 

「……行くっ!」

 

 通信が切れる。クローゼットを開けて眺めたスコールは、服装で悩む自分に気づいて腹を抱えた。土砂降りはやまない。それでも歩みを止めるわけにはいかなかった。諦めなければいい。ヒトは意思があれば歩き続けられるのだから──。

 

「──そうね。そうよね」

 

 思いきり初に行こうかしら。イタズラを思いついた悪ガキの笑みを浮かべたスコールは、とても愉快な気持ちで口紅を手に取る。

 

「あら? 乙女みたいなの、初な髪型ってなんだったかしら? 誰か身近に……。いないわよねぇ。プロに任せましょう。服装はそうねぇ──」

 

 

   ◇

 

 

 ──『S.R.F.』の一室。数時間前まで着けていたスコールの洋服は脱ぎ散らかされ、床に捨て置かれていた。また達する。日を跨いだ行為はスコールの熱を静めるどころか、ありし日の想いを燃え上がらせていった。翻弄するつもりだったスコールはされている。いい、いいの。心地好い脱力感に襲われているスコールは顔を寄せていた。

 

「ねぇ」

 

 返答のキスは物足りない。何度も塞がれた唇を舐める。軽く交わしたあとに深いものを貰い、疼き出す手を身体へと這わせていく。返された温もり。次々と襲いくる波に声が出た。

 

「ここまでだ」

 

「んもう。……わるい男ね」

 

 しばしの静寂と抱き合う身体……。どちらからともいわずに離れ、スコールは枕に顔を埋めた。ずるい男だわ。久しぶりの男性は悪い男だ。女を溺れさせる才能がある楓を思い、笑い声が漏れてしまう。それを叱るように撫でられたスコールの声は甘い。ほんと、ひどい男。

 

「……それで?」

 

「いわせたいの? あなたに厄介な女が集まる理由がわかったわ。……ほんと、ダメになりそう。初めてがあなたならね? 逃げられないわ」

 

「褒め言葉だな。ワインでも?」

 

「いただきましょう。あなたは?」

 

「甘いラムかな?」

 

 ぶつけあったグラスの中身を唇を通して交換する。すでに話はついていた。それがわかっていても話したい空気だった。グラスを持ったままのスコールが楓の胸に倒れこむ。柔らかく抱かれ、その格好のままに言葉が出た。

 

「ダメ?」

 

「ダメだな」

 

「ダメかぁ……。なら、話しましょう」

 

「なにを話そうか。おさらい?」

 

「おさらい。本当に受け入れるなんてね」

 

 スコールの率いる部隊ごと『S.R.F.』に所属する予定であり、今の任務が済み次第に合流する手筈を整えている。いつ棄てられるかわからない組織よりも束に使われたほうがマシだと結論が出たのは──たとえ表に戻れなくても、宇宙を目指す為に関係すること以外は自由なのである──束の夢の手足になるだけでいいからだ。裏側に疲れていた者達は歓迎し、反対の者達は組織へと返した。亡国は束の夢を新たなビジネスと捉え、宇宙の利権争いに汗を出し始めている。その契約として、スコール達『モノクローム・アバター』は束に売られ、亡国はナンバリングのない『IS』コアをひとつ手に入れていた。思惑は違えど、お互いに先を見据えた結果となる。

 

『姉さん。私は姉さんの──』

 

 話し合いに参加していた千冬と束は案の定、エムこと、織斑マドカに注目した。千冬のクローン体であるマドカは失敗作だ。スコールとマドカの説明を束の横で聞いていたクロエが『私と似ている?』と呟かなければ、束は排除にかかっていたと白状している。千冬は千冬で『姉妹にはなれないが妹分ならいい』と、束の家族としてあっさりと受け入れた。驚愕したのは束である。クロエは喜び、マドカは涙を、千冬が笑うのだ。

 

『──妹に。妹になれたんだ』

 

『マドカ様……。良かったですっ』

 

『ハッ。ちーちゃんに嵌められたッ……』

 

『束が治療をしてくれるはずだ。良かったな? クロエ、マドカ。束なら簡単にやってくれるだろう。私に黙って交渉をしていたのは束だからな。束。満足したか?』

 

『謀ったな。ちーちゃん! 束さんを謀ったなあ!』

 

『兎だからさ』

 

『うぎぎっ。……だって、ちーちゃん! 束さんは手駒が欲しくてさッ。数がいるのさっ、数がっ』

 

『わかってる、わかってるさ。独りぼっちは、寂しいもんな……。やったな、束。家族が増えたぞ』

 

『束さんはッ。……キレちまったゼッ』

 

 睨みあい、部屋を出てから殴るだけの冷静さはあったらしい。室外の音などなかったように、クロエはマドカへと質問を繰り返している。戸惑いながら応えるマドカが可笑しかった。スコールとマドカは違う。生まれた環境が悪いとはいわないが、それ以外を認めようとしなかったマドカは常に冷酷な顔を浮かべていた。暴れたいマドカの相手を千冬がしたことでおさまったのは、環境の不満と恐怖より未来が勝ったからだろう。スコールはマドカの頭をなでた。

 

『私とは違うのよ。エムは死んだわ。今からはもう、ただの少女、マドカになったわね』

 

 そう、スコールが伝えれば、マドカが慟哭をあげてしまった。

 

「そういえば、スコール。ママ?」

 

「マドカの話よね? 驚いたわよ。私も」

 

 マドカの慟哭で名前が出たのはスコールとオータムで、スコールがママに、オータムがママを独占する叔母だとわかった。落ち着いたマドカはしどろもどろでオータムに詰め寄っていたが、笑われるだけであり、こちらもケンカが始まってしまった。クロエを避難させてから、スコールと楓は祝杯をあげるため、楓の自室扱いのドアにジョッキが描かれた『酒部屋』へ。

 

「ご覧の有り様だな?」

 

「あら? 私のセリフじゃない?」

 

「そうか? ところで、あの計画な」

 

 キングサイズより大きいベッドとナイトテーブル、常備された酒と氷しか入っていない冷蔵庫にシャワールームがある部屋をみて改めて思う。

 

「知ってる? ラブホテルでさえね、もう少し物があるのよ」

 

「聞けよ。まあ、酔い潰れたら寝るしな」

 

 ────グラスを空にして投げる。

 

「おかわり?」

 

「おかわりね」

 

 スコールが押し倒せば────。

 

 




R15ょ? R17ぁ?
R18だと思うならさ『わっふる』
書けばいいじゃないのッ(白目)

だが私は謝らないッ。
私にはR15だからなッ。


次回『本当』予告

ブリュンヒルデの辞退
第二回の優勝者は公言する
失意の彼女は呼ばれるだろう

次回『称号のない二代目』

この次も、サービスサービスぅ!

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