シュパン! シュパン!
夏の夕暮れ。鎮守府弓道場に弓を引く音が鳴り響く。
「う~ん…。今日は、調子がでないなぁ~。」
弓を射っていたのは飛龍だ。赤城や加賀達一航戦の先輩達へ少しでも早く追い付き、そして追い越せるように非番の日は遅くまで弓の練習をしていた。
「やぁ、弓の調子はどうだい?」と、仕込みの材料を買って帰ってきた提督が声を掛ける。
「あっ、提督。そうねぇ、今一つってところかしら?」
「飛龍は熱心だからなぁ。今日はあとどのぐらい射つんだい?」
「明日は非番だし、的のど真ん中に当たるまで射つつもり。蒼龍には遅くなるって言ってあるの。」と言いつつ弓を引く。
ギギギギギ…。 シュパン!
「いたっ!」
撃ったとたん弓矢を落として手を押さえる飛龍。「おいおい、大丈夫か?」と、提督があわてて近くによる。すると、飛龍の左手のマメが潰れて出血していた。
「こ、このくらい大丈夫よ。深海棲艦の攻撃に比べたら…。」
「大丈夫な分けあるか!君たちにはいつもお世話になっているんだ。無理はするな。」と、提督は飛龍を叱った。提督の真剣な顔を見て飛龍は「ご、ごめん…。」と謝る。包帯で傷口を手当てをしたあと、提督は飛龍を食堂へ誘った。
「…。」
コト…。
「これ、食べて今日はゆっくり休みな。明日は非番だろ?」提督は冷蔵庫で冷やしていたぜんざいを出した。冷えた小豆のぜんざいには小さな白玉が数個入っていた。
「…提督、これって。」
「入港ぜんざいだよ。港に入る前の日に食べるんだろ?丁度、小豆があったから作ってみたんだ。」
「…でも、お代は。」と、お金の心配をする飛龍に提督は「いいんだよ。今日はサービス。」と答えた。
「人知れずあそこまで頑張って弓矢の練習をしているの見てたよ。毎日遅くまでやっているようじゃないか?」という提督の言葉に少し照れる飛龍。「…どうしてそこまで熱心にやろうとしているんだい?」提督は飛龍に訊ねた。すると…。
「あのミッドウェーの戦いの時、私がもっと索敵をしてれば赤城さん達先輩を危険な目に合わすことはなかったと思うの。仲間を守りたい。その一心で、練習してるの。」
「なるほどなぁ、でも無理しちゃいかんよ。空母は先手必勝なんだろ?」「うん。慢心はダメ絶対。って、多聞丸からきつく言われてるから…。」と、多聞丸の話をする飛龍。
「でも、たまには息抜きも必要だよ。ずっと気を張ってちゃ疲れてしまう。」と提督が話す。
「そうね。たまには息抜きも必要よね。提督ありがと!」と、入港ぜんざいを食べ始める。
飛龍が提督食堂に来たのはこれが初めてだった。それからと言うと、飛龍は姉妹艦の蒼龍と共に弓道の練習のあとにはよく立ち寄るようになった。また、南雲部隊の空母同士で飲みに来ることもあるが、飛龍は必ず二日前には来店予約を入れるようしている。あの提督手作りの入港ぜんざいを食べるために…。
この話は書く前から飛龍が主役だなと思っていました。人知れず頑張る彼女とそれを影から見守る提督。二人の絆を描きたく作りました。私自身艦これをやっており。秘書艦は飛龍です。彼女の言葉って、元気もらえるんですよねぇ~♪仕事から疲れて帰ってきたときの心の支えになっています。