この作品を書いてるときの作業用BGMです。わからない人は東京タワーが赤い理由で調べて、どうぞ。
海風最後の作品は甘さ控えめです。
はーい、用意スタート
あっさりとした報告になるが、海風は提督とケッコンカッコカリを行った。姉妹や他の艦娘が改二に増えていて、海風は戦闘能力は改二の艦娘より劣っている事は海風自身が自覚していた為、本当に海風で良いのかと何度も提督に言ったのだが、他の皆の後押しと、何より提督自身が海風とケッコンをしたいと言う誠意を見せた為、海風は喜色の涙ながらにケッコンを受け入れたのだ。
鎮守府の皆から祝福され、海風は仮ながらも提督と夫婦の関係となった。
そんなわけで、夫婦となった記念に提督から何か海風の為にしてあげたいと言ったのだ。大本営から送られた物でなくて、ちゃんと提督から海風への記念の贈り物を贈りたいと。
その言葉を受けて、海風は何がいいかと自室で丸一日考えていた。新婚旅行のような物にも行きたいが提督は忙しい身で簡単に長期の休みはとることが出来ない。だったら、物はどうだろう?でも、貰ってずっと手放せなくてどこかで無くなったら…。
心配性で思いやりの強い海風は同時にマイナス方面な事に考えてしまい中々決めることが出来ない。
あれでも無い…これでも無い…。
散々悩み抜いた結果、海風はとある事を思い浮んだ。そう。これからもずっとやって欲しい事が。
さて、して欲しい事は決まった。後は、お願いを聞いてくれる提督の元に向かうのみ。
足取りは軽やかに海風は提督のいる執務室に向かう。執務室の扉をコンコンと軽くノックすると中から提督の返事がくる。その返事を受けて海風はドアノブを回して入室する。
「失礼します!」
いつもより何段階も大きくはつらつとした声で入室する。海風らしからぬ元気の良すぎる返事に提督は面食らったような表情を一瞬だけ浮かべるが、にこにこと笑みを隠しきれない海風を見て、海風が元気な理由を察した。
「何を贈って欲しいのか決まったのか?」
机に頬杖を突きながら、気楽な雰囲気で海風に問う。海風がよけいに緊張して、言い辛くならないようにと言うちょっとした提督なりの気遣いの表れだ。
「はい!決まりました!!」
「んっ。じゃあ、言ってみてくれ」
海風は一呼吸おいて気持ちを整える。提督も海風の緊張感に飲まれるように密かに息を呑む。
呼吸を整えた海風は一息に自分の願いを伝える。
「はい。海風のお願いは――――」
その日の夜、提督と海風は寝間着姿で提督の私室に居た。
「なぁ海風?」
「何ですか?」
「本当に良かったのか?」
海風の提督の私室に居るのは彼女の願いに寄るもの。いや、居ると言う言い方では少し違う。海風は提督の私室に住まう事にしたのだ。
彼女の願いとは『提督の傍にもっと、ずっと、居る事』だった。
業務の中と夜のちょっとした自由時間を一緒にするだけでなくて、提督の傍にずっと居て、更に出来うる限り同じ空間で同じ時間を過ごす事。
それが彼女の出した提督への願いだった。
「良いんです。寧ろ、それでいいんです。それが海風の願いですから」
空色のパジャマを着た海風は可憐に微笑む。それが、本当に彼女の願いであると示すように。
彼女の願いに提督は思わず吹き出す様に笑ってしまう。
「な、何で笑うんですか?!」
突如提督に笑われた事に海風は頬を膨らませて抗議する。
不服の表情になった海風を見て、笑いが収まった提督は気恥ずかしそうに頬を掻きながら素直に自分の胸の内を語る。
「いいや、その事ならお願いされなくても俺からしてたなーって事」
「ふぇ?!じゃ、じゃあ提督も同じ気持ちだったという事ですか?」
「まぁ、そんなトコ。もっと、仕事が落ち着いて来た頃に提案しようと思ってた」
同じことを考えていたとわかり海風の表情はマイナスから一気にプラスの方向に変わり、また笑みを浮かべる。
先ほどまで気恥ずかしそうにしていた提督だが、海風の喜びを分かち合うように海風に微笑みかける。
同じことを考えていた喜びが二人の胸に満ちる。これからは、二人は同じ屋根の下、同じ景色を見て、時に感情を共有する、二人で一人の毎日を送る。
その事が嬉しくない筈がない。二人は互いを認め、想い合うパートナーで伴侶だ。ここからは二人で共に歩みだすだろう。
とは言え、今の時間は夜。大抵のすべきことは朝に終わらしてるし、仮状態ではあるが新婚でも軍人なので明日も仕事だ。
二人の時間を増やすことも重要だが、公私を混同しすぎるのも余りよくは思っていないので今は明日の為にも寝るべきだ。
「まぁ、今日の所は特にやる事無いし大人しく寝ようか」
僅かな時間何も言わず見つめ合ってた二人だが、提督が苦笑をうかべながら提案した。
「はい、そうですね。明日もお仕事がありますから、本日はもうおやすみしましょう」
小さく笑みを浮かべながら海風も同意する。
歯も磨いた。戸締りもOK。お布団も敷いてある。
寝る準備は整っている。
二人は自然に手を繋いで寝室へと向かう。
ある日の出来事から海風が手を繋いでくるようになったため、いつの間にか習慣化してしまった行為だ。
最初こそ海風がしておきながら恥ずかしがっていたりもしたが、今は堂々と手を繋ごうとするぐらいだ。
寝室についた提督は、寝室のドアを閉めて手を離し部屋に一度明かりを灯すと、一番小さい電球になるように操作して寝室を薄暗くし、布団に入る。
寝室に敷いてある布団は一組。これは海風が望んだ事。一緒の布団で提督と身を寄せ合って寝るのも海風の望みの一つ。
「おいで海風」
提督は布団をめくり上げて、海風を誘う。
海風は一度息を呑むと、失礼しますと緊張を隠せない声で言って、提督の隣に入る。布団は大きくないので、二人が横向きで寝て丁度入るくらいだ。
「そう緊張するなって、これからはずっと二人でこうやって寝るんだからさ」
「ずっと、じゃないかも知れませんよもしかしたら海風と提督の子供も一緒―――」
からかうように言った提督に天然気味に返した海風ではあったが、自分の言いたい事の本質に気づき、暗くてもはっきりわかるくらいに顔を真っ赤にする。
対する提督も海風の言葉の意味に気づき何だか気恥ずかしい気持ちになって苦笑しながら額を掻く。
海風は真っ赤になった顔を今は見られたくなくて提督の胸元に飛び込むように抱き付く。
「うおっ?!」
提督は驚いた声を上げながらも海風の頭を抱き留め、ポンポンと落ち着くように叩く。
恥ずかしさを誤魔化したくて抱き付いてる海風だが、ふとした瞬間強い鼓動に気が付いた。
――この音は…提督の?
心強く、耳に染み渡るような提督の心音。初めて聞く提督の生きている証明の音。とても――とても心地の良い音だった。
提督の心音を聞いて落ち着いて海風は、自然と笑みを浮かべながら顔をあげる。
「提督も緊張しているのですね」
「まぁな。海風とこうやって寝るの初めてだし…。変な事言うし」
「へ、変な事って何ですか?!海風は提督と将来の事をちゃんと考えて――」
「ん、わかってる。俺も海風との子供いつかは欲しいと思ってる」
提督に頭を撫でられ海風の言いたい事は止められてしまう。
「あっ…」
――もう、ズルいんですから。
内心では不服そうな声を上げながらも、実際は表情が緩みきって笑みを浮かべている。
海風は提督に頭を撫でられるのが大好きだった。撫でられると言うより、提督とのスキンシップが好きなのだ。
嫌いになる要素など何一つも無い。慕う人と時間を共有できている証拠なのだから。
「でも、今は大変な時期だから、せめて海風がもうちょっと成長して、環境も落ち着いたら…かな」
「もう…今の海風じゃ魅力が無いという事ですか?」
「正直、今も魅力的過ぎる位だよ。海風が成長期だから益々綺麗になると困る。辛抱堪らなくなるかも」
「ふふっ。そうですか。あなたからそう言って貰えると嬉しいです」
海風は提督の肩に腕を回す様にして抱き付く。提督は海風の晴天の空の様な澄んだ瞳と見つめあう。
「取りあえず、明日の朝食は海風が腕によりをかけて作らせて頂きます」
「うん。楽しみにしてる」
「お昼は忙しいと思うので食堂になりますが、夕餉はあなたが作ってくれますか?」
「料理なんて久方ぶりだからなぁ…。海風の期待に添えるどうか…」
「この前、お料理してたじゃないですか。お返しのクッキーとっても美味しかったです」
「そりゃ、海風のは特に特別だ。なんたって海風への愛情を沢山こめたからな」
「うふふ。では海風はこれからもあなたから受けた愛情よりも沢山愛情を込めた料理をお作りしますね」
「んじゃ、俺も海風の込めた愛情以上の料理を作らないとな」
二人は互いに見つめ合うと、自然と顔を近づけ、だんだんと瞳を閉じて、唇を重ねる。
二人の気持ちは一つとなり、膨大な量の幸福を互いに共有する。
――好き。大好き。愛してます。これからもずっと
その想いを乗せて、海風は提督と口づけを交わす。
互いに腕を回し、離れないようにして幸福を共有していたが、段々と息苦しくなりどちらともなく名残惜しそうに離れる。
「ずっと、あなたをお慕いします」
「ずっと、君だけを深く愛するよ海風」
もう一度だけ短い口づけを交わすと、海風は彼の胸の中に再び納まる。
海風が大好きな彼の鼓動と温かさを感じながら、海風は目を閉じる。
提督は海風の綺麗な白波色の髪に手櫛をかけるように撫でながら、海風の後を追うように瞳を閉じる。
「おやすみなさい、あなた…」
「おやすみ、海風」
―――明日からは更にいい日になりますように。
二人の新たな明日を祝福するかのように、窓から刺す月明かりが二人の事を照らしていた。
海風のSSがもっと増えますように。と言うか増えて(切実)