一日の業務も終わり、夜の帳が下りた鎮守府。
残った明かりは寮で生活する艦娘の部屋、明日の仕込みをする食堂、遅くまで作業する開発部門の部屋、提督の私室だけだ。
その中で明かりがついた部屋の一つ提督の私室には、部屋の主である鎮守府の提督と提督の良きパートナーであり、ケッコンカッコカリを済ませた伴侶である舞風が寝間着姿で共に過ごしていた。
提督はテーブルに小説を置いて読みふけっており、舞風は提督の左側に陣取って小説を読んでいる提督の顔を頬杖をついてじっと見つめている。
いつもは明るく騒がしい様にも思われがちな舞風ではあるが、しっかりとした艦娘が多い陽炎型の姉妹艦であるおかげかきちんと場は弁えているので提督の趣味を中断させてまで自分の趣味を優先するような真似はしない。
提督は艦娘達と違い休暇も休憩時間も少ない。戦闘や遠征やメンテナンスを除けば、特訓と秘書艦だった物は秘書艦の仕事をしたりするのが主なため、仕事が無い時は本格的に時間をもてあます事が艦娘は多いが、提督は管理と業務の為基本的には休みが殆どない無い。
彼の固定の秘書艦である舞風ではあるが、彼女にも趣味と…提督にだけ打ち明けた別の意味もある踊りの為に割ける時間を提督は隙を見て彼女に与えている。
陽炎型の中でも子供らしい面が強いと思われがちだが、どこか大人びた面もある彼女は、提督とも踊りたい思いを抑え、今は提督の趣味である読書の時間を邪魔しないようにしているのだ。
彼の読書の時間中、舞風は手持ち無沙汰かと言われればそうでもない。何故なら、提督の顔を眺める事は舞風にとって好きな事だからだ。
否、舞風は提督が大好きで、共に居るだけでも幸せなのだ。提督の横顔を眺めるだけで、自然と鼻歌を口ずさんでしまう程に。
「~♪~~~♪」
提督も舞風の鼻歌の口ずさむ可愛らしい鼻歌が好きで、それをBGMにして小説を読み進めていく。静かな空間に舞風の奏でるBGMとページを捲る音だけが響く。それだけで、提督の心に安らぎを与え、昼の忙しさもその疲れも癒されていく。
舞風の鼻歌が提督を癒すのも彼女の事が大好きだからこその効果。他の人物の鼻歌では、仕事の疲れを癒すほどのリラクゼーション効果はもたらされる事は無いだろう。
小説の内容に表情を僅かに変化させる提督と、提督の変わる表情をみて楽しみ、笑みを浮かべながらBGMを提供する。
そんな二人だけの幸福な一時がこの夜の時間だった。
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そんな風に二人だけの静かな一時も大好きな舞風ではあるが、舞風は提督と二人っきりの時にもっと好きな一時がある。
読んでいた本が一段落ついた様で、栞を挟みふぅと一息ついてから本を閉じる。この一連の動作を取るとその夜はもう本を読むことは無い。
舞風は座ったままの姿勢で提督の隣に移動する。
「提督っ!!」
舞風の呼びかけに応え提督は舞風の方に体を向ける。舞風は満面の笑みを浮かべて、提督の膝の上に座り、少し力を込めて握ったら折れてしまうような細い腕を提督の首に絡ませる。
「なんだ?」
対する提督は、微笑を浮べながら小首をかしげるようにして、舞風の返答を待つ。
舞風は目を瞑って体を持ち上げて提督の顔に端正な彼女の顔を近づけると、そのまま彼と唇を重ねた。
軽く触れただけですぐに離れてしまった彼女は相変わらず満面の笑みを浮かべて提督と向かいあう。
「大好きっ!!」
そして舞風はまた提督と口づけを交わす。
そう、舞風の好きな事とは提督との口づけである。
唇を重ねる。それだけで得られ共有できる莫大な幸福感が彼女は大好きであり、病みつきである。
それはもう、執務中にも互いに少しでも余裕が出来ればするほどに。
二人としては、ある程度は自重しているつもりなのだが、割とあちこちで二人だけの空間を作り上げている為、二人の空間の被害者は多い。
特に夜は二人っきり、提督の私室と言う名の二人だけの空間では止める物は居ない。
提督の趣味が終わったら二人の趣味の時間だと言わんばかりに舞風のリミッターは外れ、一気に甘えたなキス魔の舞風となる。
二人の趣味と言った通り、提督も舞風との口づけは大好きである。
「俺も大好きだよ」
舞風が交わしてくれたように今度は提督から口づけを交わす。
簡単に、だが、多大な気持ちの共有は二人にとって大切な事であり、愛おしい一時。
自分の秘密を全て明かし心から信頼している相手同士だからこそ得られる膨大な幸せな気持ち。
だから、舞風は提督との口づけが大好きなのだ。
互いに何度も口づけを交わすと、舞風は提督を座椅子にするように向き直って提督の膝の上に座る。
「提督に頭撫でて欲しいなーって」
「はいよ。お安い御用だお姫様」
「えへへ。ありがとう」
提督には見えないように恥ずかしい位に緩み切った表情を浮かべながら提督に頭を撫でて貰う。
提督の撫でる動作は髪に上質なブラシをかけるように心地よく、ブラシには無い温かさを持っている。
頭を撫でる側である提督も舞風の髪の上質な髪の手触りを存分に楽しむ。
「今度はぎゅ~て舞風の事を抱きしめ欲しいかも~」
「了解。こうか?」
舞風の新たな要求に応え、右手を舞風の肩の上から、左手を舞風のお腹から抱きしめる。
「うんうんっ!そのままずぅぅぅぅぅっとお願い!!」
舞風は提督の右腕を掴んで背中から伝わる提督の体温と包まれるような温もりを享受する。
時折、提督の腕にもキスを落としながら彼からの温もりを堪能する。キスをされる度に提督は擽ったそうな声を上げるのも舞風がついついやってしまう理由だ。
そのまま暫くして、ある程度満足したのか、提督に抱きしめるのを止めて貰い、また彼と向きあう形になって口づけを交わし合う。
「提督っ!これからも舞風にこうやってしてくれますか?」
口づけを止めると、不安そうな顔になって舞風は提督に訊ねる。
それに対する提督の答えは決まっている。提督は一度舞風と口づけすると満面の笑みで答える。
「勿論、これからもやるよ。キスも一緒に踊るのもずっと、ずっと。舞風の事が大好きだから」
「えへへ、ありがとう!!舞風も提督の事が大好き!!」
踊りと同じかそれ以上に幸福な事を見つけた舞風は、今日も提督と唇を重ねて夜の時間を楽しんだ。
舞風はてんしなのです舞風は天使