誰かが何かをするだけの話   作:なぁのいも

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 陽炎は可愛いそれだけで十分です。(訳:陽炎の作品もっと増えろ)


酔った陽炎がキスするの話

 夜も更けて来た鎮守府の敷地内にある提督の私室。

 

 淡々と一人で残った書類をひっそりとこなしていた所に部屋の扉が叩かれた。

 

 提督は扉を叩いた主にちょっと待つようにお願いし、出来るだけ物音を立てずに書類を箪笥の中のスペースに隠してから扉を開ける。

 

「どうし…どういう状況だ?」

 

 疑問に疑問を重ねそうになった提督。そんな風に言いかけた理由は、頭を垂れた陽炎が不知火と黒潮に肩を貸されている形でドアの前に立っていたからだ。

 

「どんな状況かと言いますと…」

 

「えっと、そのなぁ…」

 

 不知火が決まりが悪そうに眉を潜め、黒潮が誤魔化す様に苦笑いを浮かべていると、項垂れていた陽炎がゆっくりと顔をあげる。

 

「司令…?」

 

 提督が目の前に居る事を認識したようで、迷子が親を発見したようなか細い声を上げる。

 

「あぁ、俺だぞ陽炎」

 

 提督は若干困惑したような様子ながらも陽炎の疑問に答える。そこで陽炎の顔を見た提督は、陽炎の異変に気が付いた。そう、陽炎の顔が異様に赤く染まっているのだ。それも何だか熱があるような。

 

「どうした?陽炎は具合が悪いのか?」

 

 普段とは違う位赤い顔に不安を覚えた提督は、二人に問う。

 

「その…」

 

「まぁ、ある種のびょーきかもしれへんけど…」

 

 二人の表情と答えは相変わらず要領を得ない。二人のはっきりしない態度に若干苛立ちそうになった提督は二人に強く問い詰めようとするが、その言葉と行動は遮られる。何故なら、

 

「しーれー!!!」

 

 先ほどまで項垂れていた陽炎が満面の笑みで、司令に飛びついて来たからだった。

 

「にょわっ!」

 

 男らしくない悲鳴をあげながら、陽炎を守るように抱きしめながら倒れ込む。腰は強打したが、異常な痛みは感じない。陽炎はきっちり自分がクッションになったから大丈夫。よって、二人とも無傷。

 

「大丈夫か陽炎?!」

 

 突如、陽炎が飛びついてきた事よりも、彼女の心配する気持ちが上回っていた提督は陽炎に無事かを確認する。

 

「しれー、しれーだー♪うふふ♪」

 

 対する陽炎は提督から離れまいと自分から抱きしめ、彼の胸元に頬ずりしている。

 

 ここで、提督は陽炎の異変の正体を理解する。彼女の吐息に混じって、感じる異臭がその原因だ。

 

「…まさか、酒でも飲んだのか?」

 

「そのまさかです」

 

「何というか…司令はんも罪な男やね」

 

「どういうことだってばよ…」

 

「それは直接本人に聞いてください」

 

「ほな、うちらは役目果たしたし、お暇させて貰うんよ」

 

 不知火は一礼をして、黒潮は苦笑を浮べながら手を振って、扉を閉める。

 

「待ってくれ!せめてもうちょっと詳細に――」

 

 二人を引き止める為に手を伸ばそうとするが、提督の注意が完全に二人に言った事に気に入らなかったのか、陽炎が頬を小さく膨らませると、提督の肩に手をついて提督と唇を重ねる。

 

 提督は驚いて目を開けたまま唇を重ねているが、陽炎は彼の唇を味わうように優しく目を瞑って堪能する。

 

 扉が音を立ててしまった頃合いに陽炎は唇を離す

 

「よそ見しちゃ、やーよ♪」

 

 唇に指を当てながら可愛らしく彼女は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 離れようとしない陽炎の靴を何とか脱がし、陽炎を抱っこで居間まで運んでテーブルの側に降ろす。

 

 そのままテーブルを挟んで、陽炎の対面に座ろうとしたが、陽炎が傍までやって来て提督の膝の上に座ったので、彼女のされるがままにする事に決めた。

 

 陽炎とはケッコンカッコカリした関係であり、公認の男女の関係である。

 

 そのパートナーが好きに飲酒することは構わないが、ここまで酔っぱらっていて尚且つここに連れてこられても困る。

 

 いや、別に陽炎が今ここに居る事に困っているのとか、飲酒してて面倒くさそうな状況だから一緒に居る事が嫌とかそういう訳では無くて――

 

 と、心の中でよくわからない言い訳がましい事を考えていたのだが、陽炎が何時の間にか、自分と向き合う形に座っている。それに陽炎の表情は何処か不服そうだ。

 

「どうした陽炎?」

 

 心の中の不安定な気持ちがばれないように落ち着いて陽炎の様子を伺うが、陽炎は何も言わず、提督の頬を彼女のか細い両手でロックする。

 

「うみゅ」

 

 提督の頬が押しつぶされた事で、顔が不細工に歪むが、

 

「可愛い…」

 

 そんな事、今の陽炎は全く思って無い様で、また提督と唇を重ねる。

 

 こんな強引な口付けでも提督は不思議と安堵と幸福感を得るが、それだけでは終わらない。何と陽炎は提督の上唇をついばんで吸ってきた。

 

「ん、んっ!?」

 

 突然の吸い付きに提督は驚きを隠せないが、提督の気持ちなどお構いなしに、陽炎は提督の上唇を甘噛みしたり、舌で舐めて味わう。

 

 提督はされるがままになりながらも、何度か陽炎の背を叩いて止めるように促すが、陽炎にはそんな意図は伝わらない。

 

 提督が抵抗を諦めた頃合いに陽炎は提督の上唇を解放する。

 

 陽炎と提督の間にかかる二人の関係の結晶である透明な橋が小さくかかるがすぐに落ちてしまう。

 

「しれーのくちびるざらざらしてる」

 

 あぁ、そう言えば全くリップクリームをやって無かったかと、放棄しかけた思考の片隅で陽炎の答えを受け止めた提督。

 

「でも、おいしい…」

 

 でも、それでも満足した様に微笑む彼女の姿に、提督の心臓が一度強く跳ねるとともに胸の内が満たされる。

 

 彼女をもっと喜ばせたいと心から思い、それを実行に移すべく、提督は陽炎の解かれた燈色の髪に大きな手を添えて、ゆっくりと撫で上げる。

 

「あたま、あったかい」

 

 提督の思惑通り、陽炎が喜んだようで、提督の鎖骨の当たりに頭を埋める。

 

 いっそこのまま寝かせてしまい、明日の朝に不知火達に陽炎を連れてきた理由を問おう。

 

 軽く算段を立てた提督は、そのまま陽炎が眠るように優しく頭を撫で続けたが甘かった。

 

 陽炎は提督の鎖骨あたりを子犬の様に舐めると、その舐めた箇所に続けて吸い付く。

 

「陽炎?!」

 

 予想外の行動に驚きつつも陽炎を引きはがそうとするが、陽炎は上手く提督に絡みつき、腕を動かせないようにロックする。

 

「まって!待ってくれ!!」

 

「ひゃりゃ」

 

 アルコールを飲んだ事による呂律の回らなさと、吸い付いて上手く発音できないながらも短く提督の懇願を否定する。

 

 やがて、提督の首筋にちくりとした痛みが走る。

 

 ――ああ、止められなかった。

 

 陽炎が首筋から離れて、満足そうに頷いている所を見ると、首筋に赤い花が咲いたという事だろう。

 

 アルコールが入って自由になった陽炎でも少し疲れたのか、提督の膝の上にごろんと頭を乗っける。

 

 提督は陽炎につけられたキスマークにをどう隠そうか考えて居た。彼は普段薄着な為、突然厚着になったら何かと疑われるからだ。

 

「どうしてくれるんだ陽炎…」

 

 隠す手段が思い浮かばず、こうなったら開き直って厚着するしかないと項垂れながら陽炎を見つめると、陽炎はニコニコと答える。

 

「みんなに見せつければいいじゃない。しれいは、わたしのものだって」

 

「それはなぁ…」

 

「なーに?陽炎のものだってことがやーなの?」

 

 陽炎の声が不安げに沈む。

 

 そんな彼女の不安を打ち消す様に提督は自分の本心を彼女にぶつける。

 

「そんな事だけは絶対にない。俺はお前だけの物で、お前は俺の物だ。一から十まで、つま先から髪の先まで全部、全部」

 

 自分の想いを全部言い切った提督は気恥ずかしくなり、そっぽを向いてしまう。対する陽炎は一瞬だけ、きょとんとした顔になった後、彼の言った言葉の意味がわかった様で、アルコールの赤さとは別の赤さを顔に纏わせる。

 

「うれしい…うれしいよ…しれー」

 

 すこしばかり上擦った声で言う陽炎に不安感を覚え彼女に視線を戻すと、彼女が涙を流していた。

 

「かげ…ろう…?」

 

「しれい…」

 

 陽炎は涙に彩られた貌で自分の想いを告げる。

 

 数か月前から新人が沢山配属され、新人に仕事を教えるため提督が指導をしていた事で、提督の時間が少なくなり寂しかった事。

 

 新人も陽炎より魅力がある女性ばかりで、その人たちに提督の笑顔が向けられるたびにやきもちをやいていた事。

 

 夜中に会いに行こうともしたが、提督が疲れているからと遠慮していた事と、こっそり終わらなかった仕事をやっていた事を知っていた事。

 

 そして、提督の事に関して不知火と黒潮にお酒を飲みながら相談していた事。

 

「…そういう事か」

 

 やっと、あの二人が言っていたことがわかった。確かに自分は罪な男なのかも知れない。だって、こんなにも自分の事を思ってくれる素敵な少女が居るのだから。

 

「陽炎、俺は他の人が傍に居てもお前の事をずっと思ってた。うん。本当は俺も寂しかったよ」

 

「司令…」

 

 涙を流した事で落ち着きを取り戻し、ある程度酔いも醒めたのか、彼女の滑舌は元に戻りつつあった。

 

 陽炎に起きるように促し、彼女の肩に手を置いて唇を重ねる。彼女の唇は少しだけしょっぱかったが関係ない。だって、その気持ちよりはるかに温かさと幸福感が勝っているのだから。

 

 口づけを止めると、陽炎は提督の肩に腕を回して抱き付く。まるで、もう離さないと言うように。

 

「明日から、新人の教育の時は陽炎を補佐につけるよ」

 

「ありがとう司令…。それと、忘れないでね。私って結構嫉妬深いから…これからちょっとでも、私の事忘れたら凄く怒るから…ね…?」

 

「ああ、覚えた。でも大丈夫だ、安心してくれ。陽炎の事を忘れた事なんて一度も無いんだから」

 

「ばーか…。でも、ありがと。好き、大好き、本当に大好きで愛してる。ごめんね。重くて面倒くさい女で」

 

「お前こそバカだよ。そんな事、承知で…とっくにわかっててお前の事、好きになって、好きなままなんだから」

 

「ばーか」

 

「バーカ」

 

 お互いを罵る言葉を浮べながらも、二人から笑みが絶えることは決して無い。

 

 二人はもう一度唇を重ねる。

 

 久しぶりの二人っきりの夜はまだ始まったばかり。




 次は何も書く話が無かったらリクの消化です。今書きたいの本当に無いので、リク無いとモチベ無くなって休止する可能性高いです。採用されるかわかりませんが、よかったら提案してくださると嬉しいです。

 
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