ダンジョンに鉄の華を咲かせるのは間違っているだろうか   作:軍勢

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いやぁ…難しい。
結構描写不足だし、色々変じゃね?とは自分でも思いますが。
それでも此処でモタモタしてエタるよりかは…と考えて投稿させて貰います。


第2輪

 

(地球……此処が地球だって……?)

 

自分でも薄々そうじゃないかという考えはあった。

この廃墟の建築様式だけではなく、そこかしこに樹木が生えているのだから。

 

だが、

 

 

「どうしたんだい!?ホントに顔色が悪いよ君!」

 

 

 

「教えてくれ、鉄華団はどうなった!ギャラルホルンの報道はなんて言ってた!?」

 

 

 

今まで押し殺していた焦燥と不安が抑えきれなくなった。

火星から地球まで2週間掛かる。つまりオルガが地球に居るという事は、あれから少なくとも2週間以上は経過している事になる。

それだけ時間が経っているなら十中八九事態が終了してしまっているだろう。

だからこそ、鉄華団がどうなったのかが知りたかった。

 

 

 

 

 

 

―――だが

 

「ちょっと待ってくれ!ギャラルホルン…ってヘイムダルの角笛がどうかしたのかい?」

 

「……は?」

 

帰ってきたのは全くの見当はずれな答えだった。

鉄華団の事は兎も角として、ギャラルホルンを知らないという事はありえなかった。

人類が絶滅の危機に晒された厄祭戦以後三百年に渡り世界の治安を担ってきた巨大組織だ。

その成り立ちと今までの実績、良くも悪くも有名であり常識と言っていいその組織を知らない?

 

「な……なぁ、ホントに知らねぇのか……?」

 

「てっかだん?の事は知らないし、ギャラルホルンってヘイムダルの角笛以外に何があるのさ」

 

その返答を聞き何かがおかしいと感じた。致命的なナニカがズレているような……。

 

その感覚を振り払う様に……いや、振り払いたいと思って目の前の少女に質問を繰り返した。

怪訝な顔をされるが、必死なのが伝わったのか目の前の少女は素直にオルガの質問に答えていった。

 

質問の内容は各経済圏やモビルスーツにリアクターや火星やコロニー自分の思いつく限りの事を聞いていく。

だが少女は知らないと首を横に振るばかりで、逆に少女の言うこの町の事やモンスターの事もオルガは理解できないでいた。

 

そんな応酬を続けていく内に少女も何かがオカシイと感じて廃墟の並ぶ通りから町中へとオルガを一度案内することにした。

百聞は一見に如かずという言葉が有るように、口で説明するよりも見せた方が早いという考えだったのだろう。

 

 

そして事実として、ソレは正しかった。

オルガがオラリオの街中で見たものは自分の中の常識とは違ったものだったからだ。

 

往来には剣や槍を携え鎧などを着た人々の姿があり、その人々の姿の中に明らかにオカシイものがあった。

耳の長い人間は居るだろう、少年少女の姿をした人が成人男性相手に年少者の対応をしているのもいい。

だが、獣の耳や尻尾を持つ人間は居るハズがなかった。

 

流石に触る事はしなかったが、それよりも目の前を檻に入れられた怪物が運ばれていくところを見れば問答無用で理解させられる事になった。

 

 

 

 

―――ここは自分の知っている地球ではないのだと。

 

その時オルガはガラガラと自分の中の何かが音を立てて崩れた音が聞こえた。

同時に体も崩れ落ちそうになる所を少女に支えられて元の廃教会の隠し部屋に戻った時にはすっかり日が沈んでいた。

 

「大丈夫かい?」

 

「あぁ……すまねぇな、また迷惑かけちまって」

 

椅子に掛けながらそう返すオルガの姿には覇気がなかった。

落ち込む……と言うよりも呆然としていると言った方が正しいのか、この現状を受け止めきれていないのだ。

 

「ん、んんっ!そういえば自己紹介がまだたったよね、ボクはヘスティア」

 

「あ……あぁ、そういやそうだったっな」

 

思い返せば礼を言った後は質問ばかりだった事を思い出す。

それと同時に、目の前の少女、ヘスティアが自分の事を知らない事を改めて知った。

 

(ここが別の世界ってんなら…名前を隠す必要も無いよな)

 

鉄華団の名前は世界中に報道されていた、悪の組織として。

そして当然の事ながら団長である自分の名前も知られている、だからこそ当初は挨拶だけしてここを出たかったのだ。

恩人を巻き込みたくないという思いもあった。

 

だが、ここが完全な異世界だと判明した今となってはその必要もなかった。

 

「俺は鉄華団 団長、オルガ・イツカだ。」

 

「うん、よろしくオルガくん。」

 

 

 

 

 

「それでさ…聞いてもいいかな?そのてっかだんの事、君が生きてきた世界のこと」

 

「……あんま面白い話じゃねぇと思うぜ?」

 

「大丈夫、これでも聞き上手なんだよ?ボクは」

 

ムンと豊かな胸を突き出しながら言う少女、ヘスティアを見ていて何となく…何となく話してしまおうという気がした。

身の上話をするという事は今までの人生でも殆どないことだったのにだ。

 

 

「……鉄華団ってのは、鉄の華…決して散らない鉄の華って意味だ。」

 

するりと言葉が零れた。

出会って間もない赤の他人の筈なのに、オルガは不思議に思いながらもポツリポツリと話し始める。

 

大人に虐げられ、利用されていたCGS時代の事。

 

クーデリア・藍那・バーンスタインから始まった鉄華団創設の事。

 

始めて出会った尊敬できる大人である兄貴分、名瀬・タービンの率いるタービンズの事。

 

色々な事を話した。

 

道中で無茶した事や仲間が死んだこと、色々な犠牲を払って仕事を成し遂げた事。

それからの二年の月日の出来事や最近の出来事まで気が付けば話していた。

 

自分たちの辿ってきた道のりを、オルガは様々な感情を堪えながら話していった。

 

そしてマクギリス・ファリドの要請に従い参加した革命で大敗を喫したこと。

その所為で自分たちが犯罪者として見せしめにされる事となった事や、そこから旧友達の助けもあり一縷の希望が見えたこと。

 

そしてその帰りに襲撃を受けて……死んだこと。

 

そこまではなして、トンと衝撃が走った。

 

「え…?」

 

オルガはヘスティアに抱きしめられていた。

突然の事で反応が遅れてしまうが、女性特有の匂いやら感触やらで状況を判断させられた。

 

「ちょっと何を――「大変だったんだね…もういいんだ、君は泣いても良いんだよ?」…え?」

 

それは思ってもみない言葉だった。

そして、理解できない…したくない言葉だった。

 

「な、何言って…」

 

「此処には君を知っている人は居ない、逆に君が知っている人も此処には居ないんだ」

 

グサリと、それは急所を突くかの様な言葉だった。

此処は君の居た世界ではない、君は一人ぼっちなのだと宣告されたも同然の言葉だった。

 

「お……お…れは……っ!!」

 

オルガ・イツカの心はまだあの世界に有った。

事態は何一つとして収束していなく、旧友達の手により希望は見出せたが未だに地獄の真っ只中だ。

それなのに自分は死んでしまって、気が付けば異世界に居るなどという意味の分からない事態に陥っている。

 

本音を言えば今直ぐにでも駆けつけたい。

だがそれは出来なくて、自分に出来ることはただ家族たちが生きて欲しいと願うことだけだった。

 

「でも…ううん、だからこそ君は泣いて良いんだ。だって…悲しいのは当たり前に辛いじゃないか」

 

何故だと自分でも分からない、この人は恩人ではあるが出会ったばかりの赤の他人だ。

なのに…なのにどうしてこんなにもこの人の言葉が心にくるのか。

 

それ程までにヘスティアの言葉は優しく、温かかった。

分からない…分からない……でも、もう抑えきれなかった。

 

「俺の所為で!俺が間違った所為で家族を死なせちまった!!」

 

「兄貴が嵌められたのだって俺の所為だ!兄貴の危機だってのに俺は…俺は…ッ!」

 

堰を切った様に感情が溢れ出す。

積もりに積もった悲しみと怒りと自責の念がヘスティアの言葉を切っ掛けに流れ出した。

 

此処には誰も居ない、仲間も、親友も、家族も知り合いすら誰もいない。

 

だからこそ、一度此処で全てを吐き出させるべきだとヘスティアは確信していた。

でなければ、彼はそう遠くない未来に潰れてしまう…泣きたい時に泣けない事はとても辛い事だから。

 

 

 

実の所、ヘスティアはオルガの話の全てを理解出来ている訳ではなかった。

火星、阿頼耶識システム、モビルスーツ、ガンダム、ギャラルホルン……偶に知った単語が出てくるがどれも聞いていると自分の知っているものとは別のモノ。

それでも途中で聞き返したりはせずに、ヘスティアはひたすらに聞き役に徹した。

 

―――ヘスティアは神である。

ヘスティア神とは家庭生活の守護神、祭壇・祭祀の神であり、そして同時に『全ての孤児たちの保護者』である。

例え神としての権能は地上に降りてくる時に封印し、人間と変わらぬ脆弱な体と力しか持たなくなったとしても自分の根源であるソレは変わらない。

 

そもそも、保護者である事…即ち親であるという事に権能など必要ないのだから。

 

辛かったときは優しく慰めてあげればいい。

 

間違ったときは叱ってあげればいい。

 

成功すれば喜び、悲しい出来事があった時は泣けばいい。

 

 

 

ヘスティアはじっと抱きしめ続けた。

 

 

オルフェンズの涙が止まるまで。

 

 

 




そんな訳で第2輪でした。
こんな初心者がシリアス系文章書くなんて無謀も良いところだったのだろうか…でもヘスさんの設定見た時にピンと思いついた箇所なのでそれでも書きたかったんだ

と言うかまだファミリアになってないってどういう事なんでしょうねぇ。
こんな作品ではありますが、批評感想をお待ちしておりますのでよろしくお願いいたします

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